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8話 レイの部屋
しおりを挟む僕は魔王様の突然の死に、みんなが慌ただしく行き交う中、レイにお姫様抱っこで部屋まで連れてかれるのかと思ったら、途中から違う場所に向かい始める。
「レイ? どこ行くの? 」
「俺の部屋だ、俺の部屋の方が近い」
そういえば、いつもレイが来てくれるから、レイの部屋には行ったことがない。
部屋に入ると、僕の部屋の3倍はある広い部屋と、大きなベッドがあった。
ポイントを深いグリーンでまとめた綺麗な部屋だ。
僕がレイの部屋をキョロキョロと、眺めていると、顎を持ち上げられてまたキスで唾液を流し込まれる。
しばらくして、レイが唇を離す。
「クリス、立てそうか?」
僕が優しく聞くレイに頷くと、ゆっくりと下ろしてくれる。
立ったけど、やっぱりまだふらふらしていて、レイにしがみついた。
「1人では無理だな、クリス、一緒にシャワーを浴びよう」
レイの言葉に、僕は聞き間違いかと思って、思わず目を見開いてレイを見上げる。
「レイ、何言ってるの? 」
何で突然シャワー?
しかもレイと一緒に?
「とりあえず、そのドレスを脱いで、体も洗わないと」
レイにそう言われて、自分を見ると、薄ピンクのドレスは返り血で血まみれで、僕の手も、魔王様の血で真っ赤になっていた。
さっきレイの顔に触ったから、よく見たら、レイの顔にも血がついている。
近くにあった鏡を見ると、僕の顔も、髪も血で赤く染っていた。
酷い姿だ・・・
僕は素直に頷くと、レイに服をぬがせてもらって、抱かれてお風呂場に入った。
流石王子様の部屋のお風呂・・・めちゃくちゃ広い。
レイは上半身だけ脱いで、下は履いたままだ。
僕は全身スッポンポンにされてるのに、なんか不公平・・・
レイは僕を椅子に座らせると、頭からお湯をかけて、石鹸で丁寧に髪を洗ってくれる。
髪を洗い終わると、身体を洗ってくれようとするので、僕は慌ててその手を止めた。
「僕自分で洗うから、もう少しだけ魔力ちょうだい? 」
自分で洗うには心許なくて、見上げてレイに魔力をおねだりする。
だって、レイに何度も身体を触られてるとはいえ、全身を洗ってもらうのは恥ずかしすぎる。
「・・・そんな煽るな、我慢できなくなるだろ! 」
煽る? え? 僕は今何を煽ったの?
意味不明な僕に、レイは僕の顎を上に向けさせて、覆い被さるようにキスをする。
僕は流れ込む唾液を飲み込むと、口を離したレイを見上げた。
シャワーを後ろから浴びて、レイの白銀の髪がキラキラと輝いていて、髪から滴り落ちる雫に、ドキドキしてしまう。
・・・僕はこんな時に何を考えているんだ。
ドキドキを無かったことにしようと、僕はレイから顔を背けると、自分で身体を洗って、なんとか歩けるようになったので、先にお風呂を出た。
僕の着る物がないと思ったら、レイが用意してくれていたシャツがあったので、上からすっぽりとかぶる。
レイのシャツかな、めちゃくちゃ大きい・・・
僕が着るとワンピースだよ・・・
しばらくレイのベッドに腰掛けて待っていると、濡れた服を着替えて、髪を拭きながらレイが出てきた。
レイを見て、僕は改めて謝る。
「・・・レイ、本当にごめんなさい。僕なら魔王様を助けることが出来たのに、間に合わなかった・・・」
「何度も言うが、お前のせいじゃない。お前は父の仇を伐ってくれたじゃないか、逃げられていたかもしれないのに、侍女の話ではお前が全て倒してくれたと言っていた。良くやってくれた。ありがとう」
レイは僕の前に片膝をついて座ると、僕を真剣に見つめて言う。
「でも・・・僕にもっと魔力があれば魔王様を助けられたかもしれないのに・・・」
「クリス、父はお前が来た時には既に息絶えていた。心臓を貫かれていたからな・・・助けることは出来なかったんだよ、クリスが気を失ってまで助けようとしてくれた事は感謝する。だけど・・・次からは絶対にあんな事はするな! 」
「どうして? 助けられるかもしれないと思ったら、僕は何度でもするよ? 」
「・・・クリスが気を失って、もしあいつらが1人でも生きていたらどうなっていたと思う? 」
「あっ・・・」
僕は戦いの上での1番大事なことを忘れていた。
そうだ、僕が気を失った後、1人でも息を吹き返していたら・・・もし、まだ他に敵がいたら、僕は確実に殺されていた。
侍女さん達も殺されていたかもしれない。
戦いの中では絶対に魔力切れを起こしてはいけない。
「・・・そうだね・・・ごめんなさい・・・」
僕が謝ると、レイは僕の頭をそっと撫でる。
「俺はあの状況を見た時、お前までやられたのかと、息が止まりそうになった。・・・無事でよかった・・・」
僕は立ち上がると、力なく笑うレイを抱きしめた。
いつもは俺様なレイが、今日は頼りなく笑うので、僕はなんだかレイを守ってあげなくちゃと思ってしまった。
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