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㉜エレオルト王(クロード)
しおりを挟むエレオルト城に到着すると、エレオルト王自ら客を出迎えてくれた。
エレオルト王は四十代のガタイのいい男だ。
「ようこそおいでくださいました。ルシリア皇帝陛下。長旅お疲れでしたな。」
「この度はお招き頂き感謝する。挨拶もそこそこで申し訳ないのだが、連れが高熱でうなされている。部屋をお借りしていいだろうか?」
俺の言葉に、エレオルト王は驚く。
「なんと、お連れが?如何されました?」
「同中、熱毒虫にやられました。」
その言葉を聞いてエレオルト王が焦りを表す。
「熱毒虫?いつ熱が出ましたか?医師をすぐに呼びましょう。」
「いや、医師は結構。既に解毒薬を飲ませてある。」
その言葉にも驚きを露わにする。
「なんと!解毒薬をお持ちか、珍しい薬なのによくお持ちでしたな!部屋へはこちらの者が案内させるのでどうぞゆっくりさせてやってください。」
そう言って一人の侍女を指す。
「ありがとう。お言葉に甘えさせていただきます。」
俺はそう言うともう一度馬車に乗り、レイラ嬢を抱いて降りると、エレオルト王に会釈をして侍女の案内について行った。
部屋にたどり着くまでに、すれ違う侍女が頭を下げるのも忘れて、俺と抱き上げたレイラ嬢の姿に見惚れていたが無視する。
「こちらが皇帝陛下とお連れ様のお部屋になります。」
しばらく歩いた先で、侍女が立ち止まって扉を開ける。
まさかとは思っていたが、俺とレイラ嬢は同じ部屋か・・・
その後、シドとライルも各自部屋を案内されていた。俺の部屋の両隣りだ。
部屋に入るとすぐにレイラ嬢をベッドに寝かせてやる。
額に手を置くと、めちゃくちゃ熱い。
とりあえず、楽にしてやらないと・・・
「レイラを楽な服に着替えさせてやってくれ。」
俺はミーナに頼むと隣の部屋に移る。この部屋は客間でも賓客用なのか、寝室と居間とパウダールーム、侍女の為の部屋が二部屋ある立派な作りの部屋だ。
しばらくしてミーナが呼びに来たので、レイラ嬢の元へ戻ると、シドにも来てもらって様子を見てもらう。
俺とレイラ嬢の部屋と言っても、いつもレイラ嬢に付いてるミーナとシドと、俺の側仕えのライルが居るので、何時もの光景と変わらない。
皆でレイラ嬢の容態を見守りつつ、それぞれ旅の疲れを癒すため休憩していると、ドアが鳴る。
「なんだ?」
俺の言葉に先程案内してくれた侍女が入ってくる。
「失礼致します。エレオルト国王様が、皇帝陛下と晩餐をお望みですが、如何なさいますか?」
「陛下、レイラ嬢の事は見てるからいいよ。」
シドがすかさず言ってくれる。
呼ばれてお邪魔している身で、部屋に篭もる訳にもいかないので助かる。
レイラ嬢のことが心配だが、今はシドに任せよう。
「分かった。支度をするのでしばらく待ってくれ。」
俺はライルに手伝ってもらって、サッと準備を済ませると、ベッドでうなされているレイラ嬢の額にキスをした。
「レイラ嬢、行ってくる。」
振り向いて先程の侍女に案内を頼むと、侍女は顔を赤らめて「どうぞ。」と言って先に立って歩き出した。
会場に着くと、どうやら俺とエレオルト王だけのようだ。
「お連れが大変な時にすまない。一度ルシリア皇帝と差しで話がしみたくてね。」
そう言って促されて食事を共にすることとなった。
話してみると、エレオルト王は気さくで、情に厚い男だと思った。
剣の腕も自慢らしく、今までの功績を色々と聞かされた。
あと、酒のスピードが早い。
「貴殿も剣については相当な腕前だとお聞きしている。どうだね?明日、一度手合わせしてみんか?」
息子の結婚式前に流血騒ぎになったらどうするつもりだろう・・・
まあ、その腕で国を盛り立ててきた男の実力には俺も興味がある。
「よろしいですよ。お受けします。」
「良し!では、明日の朝結構だな!決まったら今日はじゃんじゃん呑め!」
はいはい、じゃんじゃん呑んでますよ。
このオヤジ、いつ潰れるんだ?
そう思いながらも相手をしていると、そのうち眠り始めたので、侍女に任せて席を立った。
「陛下、酒臭!」
部屋に戻るとシドに言われた。
「かなり飲まされたからな・・・すまない。しばらく寝かしてくれ。」
レイラ嬢の眠る姿を見て安心すると、俺はカウチに横になって直ぐに落ちた。
俺も結構限界だった。旅の疲れもあってか、かなり眠かったのだ。
「お疲れ様です。おやすみなさい。」
シドの声が聞こえていた。
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