陛下の溺愛するお嫁様

さらさ

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㉝手合わせ(クロード)

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明方に目が覚めると、レイラ嬢の寝息は少しましになっていた。
だが、高熱は変わらない。

「陛下、二日酔い大丈夫ですか?」

俺に気がついたシドが小声で話しかけてくる。

シドはレイラ嬢のベッド脇で椅子に座ったまま寝ていた。
一晩中レイラ嬢を見ていてくれたのだろう。

「シド、起こしてすまない。俺がレイラの事は見てるからしばらく休んでくれ。」

そう言うと、シドは椅子から立ち上がる。 

「では、お言葉に甘えて、少し横になってきます。」

そう言って一旦部屋を出ていった。
シドは昔自分が高熱を出して俺に付き添えなかった事があった事をかなり後悔している。 
なので体調管理には人一倍気を使っているようなので、俺の言葉に簡単に乗った。
寝ないと今後の事についていけなくなると判断したんだろう。
無理をされるより、素直に従ってくれる方が助かる。

俺はシドと入れ替わりでレイラ嬢の眠るベッドの横に座って、レイラ嬢の熱いおでこに乗る布を取って水で洗うと、もう一度そっと乗せてから手を取って握る。
しばらく見つめていると、レイラ嬢がうっすらとまぶたを開けた。

「ミ・・・カ?」

「レイラ嬢、気が付いた?」

良かった、少し意識が戻ったようだ。

「わたくし・・・どう・・・したの?」

レイラ嬢は高熱で苦しそうに息を吐き出しながらゆっくり話す。

「熱毒虫という虫にやられたんだ。薬は飲んだから命に別状はないけど、熱がしばらく続いて辛いと思う。」

俺の説明を聞いているうちに、レイラ嬢はまた眠りに落ちた。
熱で消耗している。大丈夫なんだろうか?

俺はそのまま辺りが明るくなるまで見ていると、ミーナが休んでいた部屋から出てきて、俺が布を濡らしてレイラ嬢の額に当てているのを見て、慌てて言う。

「陛下!申し訳ございません!変わります!」

俺はミーナに人差し指を唇に当てて、シッっと静かにするよう促すと、ミーナもあっという表情をしてから静かに俺の側までやって来た。

「お水を替えてきます。」

ミーナはそう言うと水を新しい物に替える為、部屋を出ていった。

その後ライルもやってきて俺に挨拶すると、朝食を部屋で取れるよう指示を出しに出て行った。
入れ替わりでシドが現れて、レイラ嬢の様子を見てくれる。

「昨日から何も口にされていないので、栄養剤を打ちますね。レイラ嬢が起きたら水を口に含ませて上げてください。」

シドはそう言うと注射器を取り出してレイラ嬢の腕に栄養剤を打つ。 

 
俺はしばらくレイラ嬢の様子を見て朝食を済ませてから、エレオルト王がお待ちだと言う侍女に連れられてエレオルト王の元へ向かった。




「やあ、昨夜は私が先につぶれてしまったみたいで情けない。」

俺を見るなり明るく話しかけてくるエレオルト王。

「お連れの様子はどうだ?」

「はい、未だ高熱が続いています。」

「可哀想に・・・辛いだろうね・・・しかし、貴殿の元には優秀な医師もついているようだから安心か、しかし、お連れの中に医師らしき者は居なかったように見受けたが?」

エレオルト王が疑問を口にする。
まさか騎士の格好をしている奴が医師だとは思わないだろうな。

「同行している医師は騎士でもありますので。」

俺の回答にエレオルト王は目を丸くして驚きを表わす。

「それは優秀な部下をお持ちですな。さすがはルシリア皇帝。」

「ありがとうございます。」

俺はエレオルト王の言葉に礼を述べる。

「では、昨日の約束通り、お手合せといこうか。」

エレオルト王は楽しそうに、ニヤッと笑って俺を見る。

「ええ、よろしくお願いします。」

そうして俺は広場のある場所まで案内され、向かうことになった。



「では、」

「お願いします。」

お互い向かい合って声をかけ合うと、剣を引き抜く。
エレオルト王の希望で、真剣での勝負になった。お互い、寸止めが出来ると判断されたのだ。

始まると同時に大振りでかかってくるエレオルト王の剣を受け止める。
これはコテ試しだな。
しかし、エレオルト王の剣は重い。
続けて打ち込んで来るが、様子を伺っているのか、まだ余裕が感じられる。
余裕で受け止める俺を見てニヤリと笑うと、急に動きが早くなった。
さっきよりも重い剣をガンガン打ち込んで来る。確かにエレオルト王は剣の腕を自慢するだけあって強い。
しかし、総合的にはシドと互角くらいかな、
シドの剣はこれ程重くはないが、動きに速さがある。小柄な身体をを活かした戦い方をするのがシドだ。

気が付くと、遠巻きに各国の王が集まって見物していた。

ここは、俺の知名度を上げる為にも負けてやる訳には行かないな。

うん、エレオルト王は楽しそうに打ち込みを入れてくるけど、受けるのにも飽きたから反撃に出るか。
俺はエレオルト王を見てニッと笑うと反撃に出る。
一瞬怯んだエレオルト王だが、俺の剣をかろうじて受け止めている。
これだけ打ち合えたのはシド以外で初めてだ。
俺も少し楽しくなって、つい本気を出してしまう。
エレオルト王の出した剣を剣でいなしながら懐に入り込むと、首に刃が届く手前で剣を止めた。

しばらくエレオルト王が固まった後、俺を見る。

「参った。いや、驚いた。剣鬼という異名があると噂があったが本当だな。」

エレオルト王は爽やかに笑いながら俺を見る。

「これだけやり合えたのは貴殿が初めてだ。しかも敵わないとか、驚きだな!」

そう言って俺に右手を差し出して握手を求めてくる。
俺はその手を取ってにっこり笑った。

「エレオルト王も腕を自慢されるだけあります。俺もここまで打ち合えたのは初めてですよ。」

シドがいるけど、それは内緒だ。シドがエレオルト王と同等だとすると、シドはかなりの腕だということになる。
俺が表で目立つのは抑止力になっていいが、隠し球は持っとかないとな。



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