『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。

さらさ

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20話 ディアルド王国

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ディアルド王国は気候もアイスバーグ王国と変わりない為か、街並みもそれ程変わりはなく、特徴といえば、お茶畑があちこちに広がっていることだった。
農村地帯はとてものどかで、ほのぼのとした空気が流れるようだ。
そんな場所を抜けて進む事二日、夕方には王都に入ることが出来た。
王都は通り過ぎて来た町とは比べ物にならないほど栄えていて活気に溢れていた。
流石は鉄製品の交易で栄えている国だけあって、あちこちに金物屋や武器屋がある。

「エリシアは鉄製品には興味無いよな 」

見慣れぬ街並みにキョロキョロと車窓を眺めていると、レオンハルト様が話しかける。

「そうですね、武器なんかには興味ありませんけど、お茶をお土産に出来たら・・・と思ってます 」

そう言って、武器屋外から離れた場所に見えていた紅茶のお店が点々と並ぶ場所を眺める。

「ああ、そうだな、最終日に見て回れる時間を作ろう 」

「え? 本当ですか? 」

私はまさか街を見て回れるとは思っていなかったので、嬉しくて思わずレオンハルト様に詰め寄ってしまう。

「ああ、そんなに嬉しいか? 」

私の食いつきに、ちょっと引き気味で問いかけるレオンハルト様。

「もちろん! 異国を歩けるだけでなく、大好きなお茶を直接買いに行けるなんて、ワクワクします! 」

今の私は目をキラキラさせて満面の笑みを浮かべているだろう。
レオンハルト様はそんな私を見つめてゆったりとした笑顔で微笑んだ。
その笑顔が、黒髪から覗くサファイアブルーの瞳がキラキラと瞬いているように見えてドキッとする。

レオンハルト様ってば、それでなくてもイケメンなんだから無駄にキラキラしないで欲しいわ。思わずドキッとしちゃったじゃない。
私はレオンハルト様に自ら近付きすぎていた事に気が付いて、慌てて何事も無かったかのように元の位置に戻ると、赤くなってしまった顔を見られないようにまた外を眺めた。

しばらくして馬車は王城の門をくぐり抜ける。

「分かってると思うけど、エリシアは俺の恋人で婚約者って設定だからな、忘れるなよ 」

レオンハルト様に言われて思い出した。
そうでした。私はレオンハルト様の恋人役で来たんだったわ。(無理矢理)
出来れば仲良くなんてなりたくなかったのに、ここまでの旅路で十分打ち解けてしまったし、今更やらないなんて言わないけど、国に戻ってからがめんどくさくなりそう・・・

「分かってます!」

私も覚悟を決めて演じてやるわよ!

覚悟を決めた私を迎えるように煌びやかなエントランスに到着すると、馬車を降りる。
そこには一人の男性が待ち構えていた。

「レオンハルト殿下、ようこそおいでくださいました。私はクルシュと申します。ご滞在の間ご案内させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします 」

腰を折って深々とお辞儀をするクルシュさんは見た感じ30代前半くらいかな? 温和な笑顔で嫌悪感を与えさせない身のこなし。
流石はお城の使用人だわね。

「出迎えありがとう。よろしく 」

レオンハルト様はよそ行きのキラキラ王子スマイルで答える。

「長旅お疲れでしょう。先ずはお部屋へご案内させていただきます。どうぞこちらへ 」

私達は案内されるまま彼に従ってついて行った。

「こちらに殿下のお部屋を用意させて頂きました。お連れ様のお部屋は隣になります。後ほどご案内させていただきます 」

そう言ってから部屋に入って中の設備を説明してくれる。
流石はVIP、部屋の中は4つに区切られていて、リビング、ベッドルーム、シャワールーム、それにドレスアップルームまである。
私の部屋はベッドルームとシャワールームだけなのに、凄いわね。
感心しながらも、部屋をくまなく観察したくて仕方がないのをぐっと耐える。
キョロキョロするのは令嬢としてやってはいけないことよね。

「案内ありがとう、彼女の部屋は隣なんだね? 用意してもらって悪いけど、あまり使わないかもしれないね 」

突然レオンハルト様がそう言いながら斜め後ろにいた私の腰を抱き寄せる。

「レ、レオンハルト様?! 」

「照れなくてもいいよ、でも照れてるエリシアも可愛いね 」

そう言って突然のことに驚く私の頬に手を添える。
何この恥ずかしい行動?
と一瞬迷ったけれど、これは演技なのだと思い出して、私も少し乗ってみる。

「レオンハルト様・・・恥ずかしいですわ 」

「そういう所が可愛くてもっと見ていたくなるんだよ 」

レオンハルト様は甘い声で私を見つめる。
それにしても、二重人格者め・・・馬車をおりるまでとまるで別人じゃない。

「お連れ様のお部屋は右隣となります。後ほど今夜の晩餐のご案内をさせて頂きます。どうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ 」

クルシュさんは空気を察したのか、さっと説明だけすると部屋を出ていってしまった。



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