『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。

さらさ

文字の大きさ
20 / 71

20話 ディアルド王国

しおりを挟む



ディアルド王国は気候もアイスバーグ王国と変わりない為か、街並みもそれ程変わりはなく、特徴といえば、お茶畑があちこちに広がっていることだった。
農村地帯はとてものどかで、ほのぼのとした空気が流れるようだ。
そんな場所を抜けて進む事二日、夕方には王都に入ることが出来た。
王都は通り過ぎて来た町とは比べ物にならないほど栄えていて活気に溢れていた。
流石は鉄製品の交易で栄えている国だけあって、あちこちに金物屋や武器屋がある。

「エリシアは鉄製品には興味無いよな 」

見慣れぬ街並みにキョロキョロと車窓を眺めていると、レオンハルト様が話しかける。

「そうですね、武器なんかには興味ありませんけど、お茶をお土産に出来たら・・・と思ってます 」

そう言って、武器屋外から離れた場所に見えていた紅茶のお店が点々と並ぶ場所を眺める。

「ああ、そうだな、最終日に見て回れる時間を作ろう 」

「え? 本当ですか? 」

私はまさか街を見て回れるとは思っていなかったので、嬉しくて思わずレオンハルト様に詰め寄ってしまう。

「ああ、そんなに嬉しいか? 」

私の食いつきに、ちょっと引き気味で問いかけるレオンハルト様。

「もちろん! 異国を歩けるだけでなく、大好きなお茶を直接買いに行けるなんて、ワクワクします! 」

今の私は目をキラキラさせて満面の笑みを浮かべているだろう。
レオンハルト様はそんな私を見つめてゆったりとした笑顔で微笑んだ。
その笑顔が、黒髪から覗くサファイアブルーの瞳がキラキラと瞬いているように見えてドキッとする。

レオンハルト様ってば、それでなくてもイケメンなんだから無駄にキラキラしないで欲しいわ。思わずドキッとしちゃったじゃない。
私はレオンハルト様に自ら近付きすぎていた事に気が付いて、慌てて何事も無かったかのように元の位置に戻ると、赤くなってしまった顔を見られないようにまた外を眺めた。

しばらくして馬車は王城の門をくぐり抜ける。

「分かってると思うけど、エリシアは俺の恋人で婚約者って設定だからな、忘れるなよ 」

レオンハルト様に言われて思い出した。
そうでした。私はレオンハルト様の恋人役で来たんだったわ。(無理矢理)
出来れば仲良くなんてなりたくなかったのに、ここまでの旅路で十分打ち解けてしまったし、今更やらないなんて言わないけど、国に戻ってからがめんどくさくなりそう・・・

「分かってます!」

私も覚悟を決めて演じてやるわよ!

覚悟を決めた私を迎えるように煌びやかなエントランスに到着すると、馬車を降りる。
そこには一人の男性が待ち構えていた。

「レオンハルト殿下、ようこそおいでくださいました。私はクルシュと申します。ご滞在の間ご案内させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします 」

腰を折って深々とお辞儀をするクルシュさんは見た感じ30代前半くらいかな? 温和な笑顔で嫌悪感を与えさせない身のこなし。
流石はお城の使用人だわね。

「出迎えありがとう。よろしく 」

レオンハルト様はよそ行きのキラキラ王子スマイルで答える。

「長旅お疲れでしょう。先ずはお部屋へご案内させていただきます。どうぞこちらへ 」

私達は案内されるまま彼に従ってついて行った。

「こちらに殿下のお部屋を用意させて頂きました。お連れ様のお部屋は隣になります。後ほどご案内させていただきます 」

そう言ってから部屋に入って中の設備を説明してくれる。
流石はVIP、部屋の中は4つに区切られていて、リビング、ベッドルーム、シャワールーム、それにドレスアップルームまである。
私の部屋はベッドルームとシャワールームだけなのに、凄いわね。
感心しながらも、部屋をくまなく観察したくて仕方がないのをぐっと耐える。
キョロキョロするのは令嬢としてやってはいけないことよね。

「案内ありがとう、彼女の部屋は隣なんだね? 用意してもらって悪いけど、あまり使わないかもしれないね 」

突然レオンハルト様がそう言いながら斜め後ろにいた私の腰を抱き寄せる。

「レ、レオンハルト様?! 」

「照れなくてもいいよ、でも照れてるエリシアも可愛いね 」

そう言って突然のことに驚く私の頬に手を添える。
何この恥ずかしい行動?
と一瞬迷ったけれど、これは演技なのだと思い出して、私も少し乗ってみる。

「レオンハルト様・・・恥ずかしいですわ 」

「そういう所が可愛くてもっと見ていたくなるんだよ 」

レオンハルト様は甘い声で私を見つめる。
それにしても、二重人格者め・・・馬車をおりるまでとまるで別人じゃない。

「お連れ様のお部屋は右隣となります。後ほど今夜の晩餐のご案内をさせて頂きます。どうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ 」

クルシュさんは空気を察したのか、さっと説明だけすると部屋を出ていってしまった。



しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る

水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。 婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。 だが―― 「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」 そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。 しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。 『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』 さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。 かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。 そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。 そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。 そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。 アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。 ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。

追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

湊一桜
恋愛
 王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。  森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。  オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。  行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。  そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。 ※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

追放された悪役令嬢は貧乏になっても図太く生きますわ!

ワールド
恋愛
貴族の娘として生まれた公爵令嬢クラリッサ。 陰謀の濡れ衣を着せられ、華やかな社交界から追放――そして辿り着いたのは、ボロ小屋と畑だけの辺境村!? 「結構ですわ! 紅茶がなければハーブティーを淹れればいいじゃありませんの!」 貧乏生活でも持ち前の図太さで、村の改革に乗り出すクラリッサ。 貧乏でも優雅に、下剋上でも気高く! そんな彼女の前に現れたのは、前世(王都)で彼女を陥れた元婚約者……ではなく、なぜか彼の弟で村に潜伏していた元騎士で――? 「俺は見てた。貴女の“ざまぁ”は、きっとまだ終わっちゃいない。」 ざまぁとスローライフ、そしてちょっとの恋。 令嬢、辺境で図太く咲き誇ります!

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

処理中です...