30 / 71
30話 自由ですね
しおりを挟む「・・・え ? 」
まさかここで私に振られると思っていなかったので、びっくりして目を見開いてしまった。
「レオンハルト殿、女性にこんな話は無理だろう 」
シュナイダー王がククッと笑いながら私を見る。
私もここでまともな意見を言って注目されたくもないので、ヘラりと笑い返す。
「そうですわ、レオンハルト様ったらびっくりさせないで下さい 」
「エリシアは鉱山で何か思った事があったようだけど? 言ってごらん? 」
げっ、レオンハルト様、私がなにか考えてたのを何で知ってるの?
てか、私に何を言わせようとしてるんだ、この人は。
「なんの事ですか? 」
とぼけて首をかしげながら可愛く聞き返してみる。
「思った事、何でもいいから言ってごらん 」
優しく微笑んでるけど、目が怖いです、レオンハルト様、これは素直に従わないとあとでまた何か言われそうだ。
私も言うからにはちゃんと思った事を言いたい。
「・・・それでは、ディアルド王国は、大きな何人も乗れる馬車を作る優れた技術をお持ちのようでしたので、馬で引くのではなく、他の技術でもっと早く進む物が作れないかと考えておりました 」
「ほう・・・具体的には? 」
シュナイダー王が少し驚いたように私を見る。
「私にも不確かなのですが、蒸気を動力に走る物が作れないかと・・・」
「蒸気? そんな物で鉄の塊が動くのかね? 」
「ええ、私もどこかで得た知識ですので詳しくはやってみないと分かりません 」
「ふむ・・・その原理、また詳しく聞かせてくれないか? 」
「はい、喜んで 」
私の返事をにっこり笑って頷いてから、シュナイダー王は去って行った。
シュナイダー王は社交辞令なのか、私の話に少し興味を持ったのか、とりあえず変な案でも聞くことにしてるのか分からないけれど、また聞きたいと仰った。
これは我が国の為にもいい流れになるのかもしれない・・・って、私はこんな事に首を突っ込みたいんじゃないのに、レオンハルト様は何を考えてるの?
レオンハルト様を見上げると、何故か満足そうに微笑んでいた。
それからは平凡に、何事もなく晩餐会も終わりを向迎え、私達は自室へと戻ってきた。
「ちょっと、レオンハルト様、色々と聞きたいことがあります! 」
今はレオンハルト様の部屋の居間にいる。
「ん? 何だ? 」
シャツのボタンを外してソファーに深く座ってくつろぎながら私を見る。レオンハルト様、何故貴方はその仕草一つでそんなに色っぽいのですか・・・
「何だ? 」
はっ、危ない危ない、レオンハルト様の色香にやられるところだったわ。
私もお酒を飲んだせいかしら・・・・・・じゃなくて、あー、なんだったかしら、いろいろ言いたいことがあったのに!
「・・・さっきのシュナイダー国王様とのお話、なぜ私にあんな話を振ったのですか? 普通に考えて女性が答えられるはず無いでしょう!」
「ああ、あれか、お前なら何か答えるだろうと思って振ったみた 」
「何ですかそれ! 」
「さっきも言ったけど、鉱山でなんか考えてただろ 」
「何で私がそういう事を考えてるって分かったんですか? 」
「鉱山にあったトロッコと移動に使ってた大きな馬車をチラチラと見てただろ、なんか考えてるなって思ってたんだが、違うか? 」
大当たりですレオンハルト様、何故わかったのかしら・・・
「その通りです。でも、何故あの場で発言を促されたのですか? 」
恥をかかせるつもりだったようには思えないけど、女性がああいうことを言うとあまりよく思われない。
「シュナイダー王はちゃんと意見を聞く方だ。エリシアの意見も聞いてくれると思った 」
「だからって、私にこんな事させてどうするつもりなの? また何か企んでる? 」
「ははっ 」
突然、レオンハルト様が楽しそうに笑う。
「なっ、私が真剣に話してるのに、何故笑うの? 」
「いや、すまん、気にするな 」
何故か楽しそうにニコニコと笑いながら言われても気になります。
めちゃくちゃ気になるけど、ここで問いただしたら私が負ける気がする。私が聞きたいことから本題をそらされそうなので、仕方なく話を戻す。
「ですから、何故あの場で私に発言をさせたのですか? 」
「あ、戻った 」
また私の発言を遮るようにレオンハルト様がボソリと呟く。
「・・・さっきから私の邪魔をして何が言いたいんですか? 」
私が話してるのに、レオンハルト様は何か違うことに気を取られているようだ。
「ああ、ごめん、エリシアの言葉遣いが敬語に戻ってしまったからガッカリしてた 」
え? 私敬語使ってなかった? 感情的になってしまったので抜けてしまったのかしら。
「申し訳ございません、失礼致しました 」
「いや、いいんだ、むしろ普通に話してくれる方が嬉しい 」
王族に対して礼儀をかいてしまったことを謝ったのだけど、何故かレオンハルト様は少し寂しそうに話す。
その表情がなんだか寂しげで、一瞬、理由を聞きたくなった。
いやいや、私は基本レオンハルト様と親しくするつもりは無いので敬語継続で!
「いえ、それは出来ません、で、質問の答えをお願いします 」
「うん、疲れたからまた明日でもいいか? 」
「・・・はぁ?よくありません!」
何を言ってるの? この自由な猫かぶり王子は! はっ! まさしく猫ね!猫だと思うと可愛い? なんて事はどうでもいい!今は話をしてるのよ?
「俺は寝る。あ、今日も俺の寝室で寝ろ、部屋へは戻るな 」
レオンハルト様はそう言うと、眠りに落ちた。
10
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる