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38話 帰宅
しおりを挟む長い旅ももうすぐ終わりを告げる。
アイスバーグ王国に入ってから王都に近付くにつれて心配が膨らんでいく。
「どうした? 長旅で疲れが出たか? 」
レオンハルト様が頬杖をつきながら問いかけてくる。
「ええ、ちょっと疲れましたわね 」
本当は帰るのが憂鬱なだけなんだけど、憂鬱だと言って訳を聞かれても本当のことを答えられない以上、突っ込まれるような発言はしない方がいい。
「今回は本当に助かったよ、ありがとう、また改めて礼をさせてもらう 」
「いえ、お礼なら最初に受け取っていますので、問題ありません 」
図書館の閲覧禁止区域の立ち入りなんて破格な報酬を受け取ってしまったのだから、今更お礼なんて要らないし、出来れば関わる回数を少しでも減らしたい。
「いや、今回は命の危険もあった、出来れば何か礼をさせてくれ 」
付いていた頬杖を外して真面目に話し出すレオンハルト様。
それでも私の考えは変わらない。
「私は十分な報酬は頂きましたので、お気遣いは無用です 」
「そうか? 何かあればいつでも言ってくれ、借りは返す 」
本当に何もいらないのだけど、これから関わっていく中で何があるか分からないので、貸しだと言うならそういうことにしておいた方が良さそう。
「わかりました 」
私が頷くとレオンハルト様も頷いてから、また窓の外に意識を戻した。
そしてしばらくして、馬車は私の家に到着した。
「エリシア! おかえり! 」
到着すると直ぐに、ジルフレアお兄様が出迎えてくれた。
「お兄様、ただいま戻りました 」
「うん、元気そうでなによりだ 」
久しぶりに見るお兄様の顔に、帰ってきたんだとほっとする。
「レオンハルト様、エリシアとは何もなかっただろうね? 」
「あたりまえだ、何も無い 」
「本当に? 」
少し疑うお兄様に、レオンハルト様は顔色ひとつ変えずにお兄様を見据える。
「何かあって欲しかったのか? 」
「そんなこと思ってないよ! 何も無かったのなら一安心です 」
にっこり笑うお兄様、レオンハルト様もお兄様に疑われても気にしていないのか、全然憤慨した様子もなく何時もの表情で頷いて返す。
「当然だ、それで、今後の事はジルに先に手紙を送ったから理解していると思うが、エリシアにはジルを通して連絡する。エリシアはしばらく待っててくれ 」
「ええ、分かりました。旅の間はお世話になりありがとうございました 」
「ああ、今回は本当に助かった、ありがとう。ではまた 」
レオンハルト様はにっこり笑って挨拶をして去って行った。
最後は猫かぶり王子だったわね・・・
「エリシア、旅行はどうだった? ディアルド王国はいい所だったか? 」
「ええ、とても楽しかったです 」
「良かった、詳しく聞きたいな 」
「はい、喜んで 」
旅の間の事をお兄様にお話し出来るのが嬉しくて笑顔で答えた。けれど、その後のお兄様の表情が何かおかしい。
少し真剣で、戸惑ったような、なんとも言えない表情。
「お兄様? どうかしました? 」
「うん、エリシア、いっぱい話を聞きたいんだけど、その前にお前にお客様が来てるんだ 」
お兄様のその言葉に息が止まる。
まさか・・・・・・
「・・・・・・お客様? もしかして・・・クリスティーナ様ですか? 」
「良くわかったね、全然知らなかったけど、いつクリスティーナ嬢と仲良くなったんだい? 」
やっぱり、私が今日戻るのは先触れで知らせが入ってるからお兄様から今日戻るのを聞き出して待ち構えてたんだわ。
お兄様にはこの前クリスティーナ様と仲良くなったのを話してなかったからクリスティーナ様から連絡があって驚いたでしょうね、しかも私が帰ってくる日に合わせて来るなんて、お兄様が何とも言えない微妙な顔をしてる訳だわ。
「実はこの前のレオンハルト様のパーティーで仲良くなったんです 」
「そうなんだ、知らなかったよ、応接室にお通ししてあるけど、行ける? 」
わざわざ帰ってくる日に待ち構えてるって事は、私に言いたい事がいっぱいあるって事よね、仕方ない、覚悟はしてたので行くしかないわ。
「はい、大丈夫です 」
「じゃあ、旅の話はその後だね、楽しみにしてるよ 」
お兄様と応接室の前まで一緒に来ると、そこで別れた。
扉の中にはクリスティーナ様が居る。
前世の話になるから場所は私の部屋に変えた方が良いわね、私も帰ったばかりで着替えもしたいし、少し待って頂いても構わないかしら・・・
これからの事を頭の中で整理しながら深呼吸をしてドアに手を掛けた。
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