『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。

さらさ

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44話 私が書く理由

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しばらくして、ティアルドからの使者が家にやってきた。

機関車の開発状況の報告を受けて、私が分かる範囲でアドバイスもさせてもらった。
クリスティーナ様は前世理系女子だったらしく、私の知らない知識も持っていてすごく助かった。
絵も上手なので、絵で具体的な説明もしてもらえる。
後はレオンハルト様とお兄様にどの辺りに線路を通すか相談に乗ってもらった。

もちろん、レオンハルト様は終始猫かぶり王子で対応していた。
何度も思うけど、疲れないのかしら・・・


「いや、クリスティーナ嬢の絵の上手さには驚いたよ、おかげで話が進めやすかった、ありがとう 」

「とんでもございません、お役に立てて何よりですわ 」

優雅に微笑むクリスティーナ様も役者ね、私と前世の話をしてる時とはまるで別人、それを言ったら私もか、レオンハルト様は完全に猫かぶり王子だし、裏表が無く変わらないのはお兄様だけかもしれない。

「クリスティーナ様がついていて下さると私も心強いです 」

「まぁ、嬉しいお言葉です 」

「本当に、二人がいてくれて助かるよ、これからもよろしくね 」

にっこり微笑みかけられたクリスティーナ様は頬を赤くして頷き返すしか出来ないでいる。可愛いなぁ。

「では、私はこれで失礼するけど、クリスティーナ嬢、送っていこうか? 」

「ありがとうございます。ですが、この後エリシア様と少しお話しがありますので、もうしばらくこちらに居ます 」

「そうか、では、またね 」

レオンハルト様は猫かぶり王子のまま爽やかな笑顔を残してうちを後にした。



「クリスティーナ様、レオンハルト様に送ってもらわなくて良かったの? せっかくのチャンスだったのに 」

私の部屋に移動してから、クリスティーナ様の選択を問い質してみる。
確かに、私との予定もあったけど、レオンハルト様と仲良くなれるチャンスだったのに。

「私もめちゃくちゃ後ろ髪引かれるけど、いいのよ、ここからは女子同士の打ち合わせですもの 」

そう言って、おもむろにクリスティーナ様は描いてきた絵をテーブルに広げる。

「うわ! すごい! これ全部クリスティーナ様が描いたの? 」

「そうよ、ストーリーに合わせて挿絵を描いてみたんだけど、どれがいいか見てちょうだい 」

どれがいいかと言われても、どれも全部素敵で、可愛くてカッコイイ。

「このヒーローカッコイイわね、イメージ通りだわ 」

「でしょ? ちょっとレオンハルト様をイメージして描いてみたの 」

「ああ、なるほど! 」

私達はきゃいきゃいと騒ぎながら挿絵を選ぶ作業をした。
なんだか時が遡って前世の女子高生時代のような感覚だった。


「ねぇ、エリシア様は前世でも小説を書いたりしてたの? 」

作業が終わってお茶を楽しみながらクリスティーナ様が不意に問いかける。

「いいえ、前世では書いてなかったわ、この世界に来てからよ 」

「なぜ書こうと思ったの? 」

「それはもちろん、この世界には面白い恋愛小説がないから自分で思い描く話を書いてみたくなったの・・・ 」

そこまで話して不意に何かに引っかかる。
あれ? ほんとうにその理由だけだったかしら。
何かを忘れてるような・・・

「エリシア様? どうかしたの? 」

私が黙り込んでしまったので、クリスティーナ様が心配そうに問いかける。

「あ、いえ、何でもないわ、今日は色んなことがあったから少し疲れちゃったみたい 」

「そう? では私はこれで失礼するわ、本が完成したらまた連絡するわね 」

私の取り繕った笑顔に、クリスティーナ様は気がついているのかもしれない。だけど見なかったようにしてくれている。その優しさは嬉しい。

「あ、それと、また何冊か借りてもいいかしら? 」

「いいわよ、また感想聞かせてね 」

私は今までに書き溜めていた物をいくつかクリスティーナ様に手渡した。
クリスティーナ様は私の書いた小説を本当に嬉しそうに大事に抱えて微笑みながら、また来ると言って帰って行った。



クリスティーナ様を見送った後、部屋に戻るとベッドに腰を下ろした。

「エリシア様、少しお休みになられますか? 」

「そうね、少し疲れたから横になるわ 」

朝からディアルドの使者の方とのやり取りが午後まで続き、その後もクリスティーナ様と製本の話をしていたのでちょっと疲れた。
そういえば、さっき何かに引っかかった気がするけれど、なんだったかしら・・・
そんな事を考えながら目を閉じると、本当に疲れていたのか、そのまま眠りに落ちていった。


ーーー「・・・なら、自分で作ればいい 」

「そんな事出来るかしら 」

「出来る出来ないはやってみないと分からないだろ? やってみる前から出来ないって決めつけるのはダメだよ 」

「・・・それもそうね・・・ 」

「うん、僕は君を応援するよ 」

「ありがとう 」

「そうだ、これは僕からのプレゼント、知ってるかもしれないけど、僕が好きな物語だ 」

「私に? ありがとう、大切にするわ 」

「気に入ってくれると嬉しいな 」

自信に溢れた柔らかな、素敵な笑顔、キラキラと輝く髪が午後の日差しを浴びて輝いている。

ーーーーああ、そうだ、私はこの笑顔が好きだった。





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