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49話 王妃様
しおりを挟む「お待たせしました 」
着替え終わって外で待ってくれていたレオンハルト様の元へ行くと、レオンハルト様は壁にもたれて立ったまま、目を閉じて俯いていた。
きっと疲れてるんだわ、こんな所で立たせたままにしておくことも出来ないので、明るく声をかけた。
「ああ、エリシア、そのドレス似合ってるな 」
レオンハルト様は何事も無かったかのように瞬時に返す。
「ありがとうございます 」
「では、案内するから付いてきてくれ 」
「はい、お願いします 」
そうして私はレオンハルト様の斜め後ろに従って歩きながら、私のいる区画の説明をしてもらった。
「基本、この西の区画は自由にしてもらって構わない、それと、少し歩くけど案内しておきたい場所があるんだ 」
案内しておきたい場所? どこかしら?
レオンハルト様に付いて歩く。
それにしても、西の区画は花々が咲き乱れていてとても素敵な空間ね、花の香りがここまで届いて心を癒してくれる。
お城の中にこんな素敵な場所があったのね。
しばらく歩くと、少し雰囲気の変わった場所に出た。さっきまでの華々しい雰囲気とは違って厳格な感じの建物、どこに向かっているのかしら?
「あら、レオンハルト殿下、お久しぶりですこと 」
正面から女性が歩いて来て立ち止まる。
「王妃、マルグリット様、ご無沙汰しております。今日もご機嫌麗しゅう 」
レオンハルト様も立ち止まって、とびきりの王子スマイルで返す。
そうか、この方が王妃様、とても綺麗な方だわ。
私もレオンハルト様の後ろで頭を下げる。
王妃様は私を一瞥してレオンハルト様を見る。
「新しい侍女でも雇ったの? ちゃんと教養はあるんでしょうね?」
「マルグリット様、彼女は侍女などではありません。私の賓客ですのでお間違い無きようお願い致します 」
どうやら私を侍女だと思ったらしい王妃様はもう一度私を上から下まで眺める。
「顔は良いようだけど、あまり遊び過ぎない事ね、王族として恥じぬ行動を心がけなさい 」
「はい、肝に銘じておきます 」
ち、ちょっと!私今レオンハルト様の遊び女か何かと思われたんじゃない? レオンハルト様! 何で笑顔で返してるのよ!
「では、失礼するわ 」
マルグリット様が見えなくなるまで、レオンハルト様は王子スマイルを絶やさず見送り続けた。
そう言えば、レオンハルト様のお母様は側室の方だったわね、レオンハルト様も王妃様には頭が上がらないのかしら。
「エリシアすまない、先程の侮辱は俺が謝る 」
王妃様が見えなくなってからレオンハルト様が私に向かって頭を下げる。
「レオンハルト様、頭を下げるのはやめてください、私は気にしてません。王室にも色々と訳があるのでしょ? 」
そう言うと、レオンハルト様は顔を上げて私を柔らかな笑顔で見つめる。
「やっぱり俺はエリシアが好きだな 」
「な、何を急に言い出すんですか、どうせまた使える奴って思ったんでしょ、そういうことをあまり言わないでください! 」
私の心臓が持たないわ。
と心の中で付け加えた。
レオンハルト様はそんな私をくすくすと笑いながら、何事も無かったかのようにまた歩き出す。
本当に、その顔で好きだなんて軽々しく言って欲しくない。危うく心を掴まれるところだった。
つい反応してしまった心臓のドキドキを悟られないように、レオンハルト様からは顔が見えない位置を付いて歩いた。
「着いたよ、エリシアにはここが一番嬉しい場所かな 」
人通りが多くなって、さっきから猫かぶりモードのレオンハルト様にそう言われて見上げると、扉には「王宮図書室」の文字。
「ここって! 」
「そうだよ、エリシアの好きな物が沢山ある場所だよ 」
「ここに入ってもいいんですか? 」
「うん、いいよ、これは私の許可証、これを見せると入れるからいつでも使って 」
そう言って一枚の証書を渡してくれる。
「ありがとうございます! レオンハルト様って本当に私の事わかってくれてますね! 」
ここならまた違った本があるかもしれない。
これは本当に嬉しい。
「しばらく城に閉じ込めてしまうことになるんだ、これくらいは当然だよ 」
にっこり笑って答えてくれるレオンハルト様を無視して、図書室の中を覗いてみる。
「今日はここにいても大丈夫ですか? 」
「うん、夕刻には王に謁見してもらうからそれまでは大丈夫だよ、でもお昼まだでしょ? 少しお茶しようか 」
「は? 謁見? 私がですか? 」
レオンハルト様の口から飛び出した言葉に驚きを表せない。
なぜ私が王様に会うことになるの?
「エリシアが城にいるってことは、ディアルドの使者との会合もここで行うことになる。それにディアルドとの共同事業も波に乗ってきたから、そろそろ国王に報告をしてもいい時期だと思ってたんだよ、報告と、今後のエリシアのここでの自由の許可を頂かなくてはね 」
それを聞いて、私は本当に大変なことに首を突っ込んでしまっているんだと自覚した。
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