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69話 決意の後
しおりを挟むレオンハルト様を助ける為、クシャナに行くと決めた後、リーリエ様に挨拶に行った。
「レオンハルトの為にあなたが犠牲になることなんて無いのよ? どうしてそこまで・・・ 」
「私、レオンハルト様の事が好きなんです。だから、たとえこの先会うことが出来なくても生きていて欲しいと願ってしまったんです。そして、私に出来ることでレオンハルト様が助かるなら何でもすると、だから私は誇りを持ってクシャナに行きます 」
「エリシアさん・・・ 」
リーリエ様は私を見て何かを思案するように視線を彷徨わせた。
「? 」
「今更こんなこと言ったらエリシアさんの決心が鈍るかもしれないけど・・・でも知っていて欲しいの 」
「何をですか? 」
「・・・・・・エリシアさんは昔、街の図書館で男の子と仲良くなったと言ってたわね 」
「はい、そうです 」
初恋の男の子、私がお話を書くきっかけをくれた人。
「あの時会った男の子はね、エリシアさんの事が大好きだったのよ 」
「え? 」
優しい眼差しで私を見つめるリーリエ様。
ハルトが私を好きだった?
「真っ直ぐな瞳で、自由に生きる貴方に憧れてもいたわ 」
「・・・・・・何故リーリエ様がそれを・・・ 」
「あの子は私の所に来る度によく話してくれていたのよ、エリシアさんを幸せにするにはどうしたらいいかって 」
懐かしそうに話すリーリエ様の表情に、とある思考が頭をよぎる。
「まさか・・・あの時のハルトがレオンハルト様なの? 」
私の質問に、リーリエ様は優しく微笑むだけだった。
「エリシアさんが幸せになる事はあの子の願いでもあるの、だから、どうか幸せになってね 」
その言葉に、今まで我慢していた感情が一気に溢れて涙が幾重も頬を伝う。
「・・・っ・・・、はい、・・・っ、必ず幸せになります! 」
そして、ジャスタ殿下に連れられて国王陛下の元に行ったあと、すっかりいつもの様子に戻って何か忙しそうにしていたお兄様にも別れを告げた。
お兄様は自分の失態で妹を多国にやる事を本当に悔やんでいたけど、お兄様に、
「私はクシャナの皇族になるのよ?今の暮らしよりずっといい暮らしができるわ、今から楽しみで仕方がないの 」
と笑って言うと、少し困った表情で笑っていた。
お兄様を騙せるとは思わないけど、そう言えばお兄様はレオンハルト様と私を引っ付けるために協力していたんだっけ? ごめんね、お兄様。
なんて事を思いながらクシャナに向かった。
クシャナに着いてすぐに、私は皇帝に謁見する為、身を清めてクシャナの正装を着せられた。
そして、ジャスタ殿下と共に皇帝の御前にひれ伏した。
「陛下、既に知らせを入れております者を連れて参りました 」
ジャスタ殿下が敬語を使うの初めて聞いたわね、なんてどうでもいい事を考えて緊張を紛らわせていると、ジャスタ殿下の口から思いもよらぬ言葉が飛び出した。
「この者を陛下の養女に迎えて下さい 」
・・・・・・え?
「うむ、詳細は既に聞いておる。その者、顔を上げよ 」
「・・・・・・はい 」
私は顔を上げながらもさっきのジャスタ殿下の言葉が聞き間違いだったのか考えていた。
「うむ、見目美しいな、読解の能力を持っているものは珍しい、それにジャスタが言うのだ、間違いなかろう。良かろう、その者の覚悟があるなら血の儀式を行うが良い 」
ジャスタ殿下のお父上にしては意外と老けたおじいちゃんに近い(失礼)陛下はあっさりと私を皇族に迎える事を了承してくれた。
「ジャスタ殿下、ちょっと待ってください 」
謁見の間を出て直ぐに慌てて呼び止める。
「何だ? 」
「私が皇帝の養女? ジャスタ殿下の側室か何かじゃないんですか? 」
てっきり私はジャスタ殿下のお嫁さんになるんだと思ってた。
「その方が良いなら俺も嬉しいんだけどな、もちろん側室ではなく、正室にするぞ 」
ニヤリと笑うジャスタ殿下。
「いや、今は側室とか正室とかそんな事ではなくて、私はどういう立場でここに来たんですか? 」
「父上の養女にする為だが、嫌なら俺が嫁に貰うぞ 」
あっけらかんと言い放つジャスタ殿下に、一瞬思考が停止しそうになるのを何とか回す。
「私そんなこと聞いてません! 」
「うん、言ってないからな 」
そう言うと、急に真顔になって壁に片手を付いて迫ってきた。
おお、イケメンの壁ドン! ・・・なんて喜んでる場合じゃない。
「俺はお前を幸せにしてやる。だから、大人しく俺に従っとけ 」
そっと耳元で囁かれて耳が火照る。
「ど、どういう事ですか? 」
さっぱり分からない私を楽しそうに見つめる俺様なジャスタ殿下は何処と無くレオンハルト様を思い出させる。
「今はまだ教えてやらん。それより陛下の許しは得た。血の儀式は皇族全ての承認が必要だ。今から皇族を一人一人回るけど、体力は残ってるか? 辛いなら明日にするぞ? 」
何だか分からないけど、こういう気遣いはジャスタ殿下だわ。いい男過ぎる。
「大丈夫です 」
私も皇室に入ると心を決めてきたんだから、今更逃げない。今はジャスタ殿下の言う事に従おう。
そうして皇族全てを回ったけれど、余程ジャスタ殿下が皆から信頼されているのか、私が皇族の仲間入りをすることに対して、誰も反対する人は居なかった。
血の儀式、一番濃い皇族、つまり皇帝、皇后、ジャスタ殿下等の皇帝の子の血をお酒の入った杯に1滴ずつ混ぜて飲み干す儀式で私は皇族の仲間入りを果たした。
それを見届けると直ぐに、ジャスタ殿下はまた旅立ってしまったんだけど、後から聞くと、ラグマドルに攻め込み、見事攻め落としてきたらしい。
やっぱりジャスタ殿下は凄いと感心した。
そして、その功で、皇帝が座を明け渡すと宣言した為、ジャスタ殿下は皇帝の座に着くことになった。
後から私が養子になった理由を聞かされた時は、本当にジャスタ殿下に頭が上がらなかった。
「クシャナの皇女ならあのいけ好かないアイスバーグの王妃も文句はないだろ? 」
満足そうに笑うジャスタ殿下に、何故そこまでしてくれるのか本当に不思議だったけど、ジャスタ殿下は無理やり人を縛るより、人の心を動かして自分に返ってくる事を望む人だと、傍で見ていて理解した。
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