初恋Chasing

亜双にゃん

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心から愛を込めて

第六話

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 先輩との飲み会から数日後、先生の住所が変わらない事をさり気なく聞き出した俺は、先生の住んでいるだろう辺りの隣町に部屋を決めた。

 東京の部屋も無事に入居者が決まり、こちらの方が物価が安いので家賃収入にも余裕がある。彼女への財産分与で現金を殆どあげてしまったので貯金の額が増えるのは正直助かる。

 30代の公務員が貯金100万以下では情けない。ローンを組むのは信用度としては高いけど、東京に持ちマンションがあるのに大阪にもって贅沢だし、それに先生に振られたらまた逃避行みたいに地方へ行くかもしれない。

 だから、賃貸で1LDK 風呂トイレ別。
 築10年で月八万。

 まあ、住む所を決めたらまた購入を考えよう。ローン返済の方がまだ賃貸の家賃より安い内に決断だ。

 まだその時期じゃないから余裕はある。

 恋の余裕は全くないけどなっ。

 会いたい……。

 ……会いたくない。

 心の中で花びらが何枚も無駄になってる。
 いや、心の中だから実害はない。大丈夫。

 探し出すのにウロウロもしてないし、見つけ出して跡を付けたりもしてない。俺はストーカーじゃない。ストーカーじゃないよ~。


 引っ越して、新しい職場へも勤め始めた。同じ業種でも学校毎にやり方が違うので、まだまだ慣れない事も多いが、何とか経験で誤魔化しながら日々をやり過ごしている。

 東京よりもこちらの方が職場の人間関係は作りやすい。
郷に入っては郷に従え。
 相手が関西弁ならば、15年の東京生活も何のその。すぐに関西弁が溢れ出てくる不思議。

地元だな~ってホッとする。

 新しく赴任して来たばかりと配慮もしてくれて、部活も週2回の副顧問、軽音部となった。楽器の経験はないと言ったけど、経験のある部活の顧問の方が今は珍しいからとゴリ押しだ。まあ、副顧問な上に週2回、帰宅が遅くなるだけなので楽はさせて貰ってる。

 どうも東京で垢抜けたようで?見た目の評判はすこぶる良い。元から身体のバランスは良かったようで、元妻のスタイリングがハマったのだろう。

 傷が抉れるので、同僚には俺の離婚の話はせずにただの独身で通している。


 明日からゴールデンウィークで10連休という事もあり、また先輩から飲み会のお誘いも受けた。

 前回は俺が空元気で通して、変な慰めの言葉はなかったが今回はどうだろう。

 どう考えても、俺が悪いのであまり詳しく話したくはない。自虐ネタは苦手だ。面白おかしく話す事も出来ないので、出来れば高校時代の思い出話しへと持っていきたい。


 地元の有名な繁華街へと辿り着き、待ち合わせ場所へと向かう。この間は地元の飲み屋だったけど、今日はちょっとちゃんとした居酒屋チェーンだ。

 なんだ?ちょっとちゃんとって。

 ふふっと笑いながら店へと入った。

 店員さんに個室へ連れられてる間に服装チェック。うん。まあ店からは浮いてないから大丈夫だろう。薄めの黒のジャケットに元妻選択のお洒落なパンツなら問題ない。Tシャツもよれてない。っていうか引っ越しで新し目の外出着と部屋着以外はかなり捨てた。靴下と下着は卸問屋で纏めて買ったしな。勤務中は隠してある耳にも、最近衝動的に買ったピアスを嵌めてきた。

 普段仕事ではしないから、気分転換にはアクセサリーを着けるようになったのはいつ頃からか。髪は茶色や金髪に染められないしね。

 まあ、職場でスーツで垢抜けてると言われるぐらいなら、私服ならよりベターだろ。

 この間の飲み会が盛り上がったので、今日も誘ってもらえてテンションが上がって気合いが入ってしまった。

 この間は急だったし、今日なら飲みの後カラオケでもいいかもしれない。先輩達なら俺の声も馬鹿にしたりしないしな。

 テンションが上がるまま、案内された個室へと足を踏み入れた。

「こんばんは~。先輩、この間はありがとうございました。」

「お~っ!新しい職場も大丈夫そうだな。元気そうじゃん。ま~そこ座れ。」

「はーい。」

 明るく返事をして先輩2人の迎えに座ろうとして、そこにもう1人いるのに気付いた。

「久しぶりだね。ヨッシー?」

 


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