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第一章 鬼神と巫女
第六話 異形
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ここは、学園の校舎裏。
私は、そこで複数の女子に囲まれています。
それは、私が人気者だからとかそんな素晴らしい理由ではありません。そのーー逆です。
「神野さん。昨日、赤城さまと何のお話をしていましたの?」
私にそう詰め寄ってくるのは、星宮さん。夜見のファンクラブの一年生筆頭である。
どうやら、私が昨日、夜見の家に入るところを会員の一人に見られてしまったらしい。
そして、夜見にそれとなく聞いてみたところ、話をしただけとしか返ってこなかったらしく、私に詰め寄っているということだ。
ファンクラブの人たちは、夜見から無理やり聞き出すことはしないのである。
「ちょっとした世間話を……」
「はぁ?それなら、学校でやればいいじゃない!なんでわざわざ家まで行くのよ!」
やるなと言わないのが、彼女たちの優しいところなんだよなぁ……。
ーー現実逃避するなという声が聞こえた気がする。でも、こんなことになったら、現実逃避の一つや二つしたくなるものだ。
それに、彼女たちが優しいと思っているのは本当のことだ。
だって、先輩たちと一緒に圧迫面接的なことはしてこない。教室にもその事情聴取などには来なかったから、おそらくは一年の間にしか広めていないと思われる。
しかも、詰め寄られていると言っても、それなりの距離は保っているので、壁ドンみたいなこともないし、多対一ではあるけど、対等にお話はできる状況。
まぁ、現状説明はさておき、この状況はどうしようか。ないしょ話と言えば、内容を聞き出すまで返してくれない気もする。
夜見に聞けと言っても、そもそも夜見に強く出られないから私に聞きに来ているわけで、それは本末転倒だ。
「夜見が忘れ物したみたいだから、届けに行っただけですよ」
昨日は、夜見のほうが苦しみから少しでも早く解放されるために、陸上選手並の速さで帰宅していた。さようならとほぼ同時に教室を出ていっていた。帰宅部ならエースになれるスピードだ。
私は夜見の席の隣。これなら、何か忘れ物をしたことに私が気づいてもおかしくないし、家が隣の私が届けることにも違和感はない。
あの話をしただけだから、滞在時間もそれほど長くないというのも、今回は功を奏した。
「……そうでしたの?それなら良いのですけど……」
星宮さんも、嘘と確信が持てないからかはわからないけど、とりあえずは納得してくれたらしい。
そう言って、星宮さんたちは立ち去っていった。
ほっと一安心したとき、急に疲れがどっと押し寄せて、その場に崩れそうになる。
ほんと、夜見のファンクラブの相手は疲れる。
◇◇◇
授業を終えて、帰宅している途中、目の前から自転車が走ってくる。
ちょうど、そこは歩道がない道路だったので、私は脇を歩いていた。ちゃんと左側を。
逆走するんじゃないと思いながらも避けようと、車が来ていないことを確認して中央のほうへと移動する。
すると、なぜか自転車も私のほうに来た。近づいてきて気づいたけど、この自転車に乗っている人は、黒いもやを纏っている。
そして、私と目が合うと、そのもやがまるで噴火のように噴き出して大きくなる。
もうぶつかると思って、腕で身を守る動作をする。反射的に目も瞑ってしまったけど、なぜか衝撃が来ない。
ガシャンという音がして、私が目を開けると、私の目の前に男の人が立っていた。
スタンドも立てていないので、自転車は倒れていた。どうやら、先ほどのガシャンというのは、自転車が倒れた音だったらしい。
私は、一歩ずつ後退する。
「ミコ……ミコ……」
男の人はそう呟きながら私のほうに近づいてきた。
あの黒いもやが何なのかはまだわからないけど、あのもやみたいなのに男の人が操られているのはわかった。
そして、巫女である私を狙っていることも。
あのとき、夜見は言っていた。私なら雑魚同然と。
私は、まだ力の使い方がよくわからない。どう使えばいいのかわからない。
でも、何もやらないよりは、少しでも足掻いてみせる!
「やあ!」
私は、男の人に手を突き出す。どんなものかもわからない力をその手に込めて。
でも、それが功を奏しているのか、突き出した右手が熱いような気がする。
私の手に男の人が近づいたとき、男の人に纏っていたもやは、塵になって吹き飛んだ。
男の人は、力が抜けたようにその場に倒れる。
追い払えた……?
そう思いながら男の人の様子を窺っていると、男の人が気がつき、その場から起き上がった。
「あれ……?なんで俺、こんなところで寝てるんだ……?さっきまで自転車に乗ってて、目の前に女の子が現れて……」
「あの……大丈夫ですか?」
私が声をかけると、男性は驚いたようにこちらを見る。
「ああ!ごめん!大丈夫だよ。ありがとう」
私にはそう言ったけど、まだ混乱している様子で、乗ってきた自転車に再び跨がって立ち去った。
どうやら、あの黒いもやに操られている間の記憶はないらしい。それなら、放置してしまったけど、あの女性も覚えていなかったのかも。
あの男の人の最後の記憶は、私が視界に入ってからのようだ。
なんとか追い払えたけど、あれが私の力なんだろうか。無我夢中で手を突き出しただけだけど、あれでもやが吹き飛んでしまった。
「あれ、何なんだろう……?」
「神通力だ」
後ろから声がして、私が振り返ると、そこにはある人物が少し離れた場所に立っていた。
「夜見!」
どうやら、私から少し離れたところを歩いていたらしい。家が隣同士だから、帰り道もほとんど同じだ。
駆け寄ろうとすると、夜見は後ろに下がる。どうやら、声が聞こえるギリギリの距離を保とうとしていらしい。私は、急ブレーキをかけて、それ以上近づくことはしなかった。
「じん……なに?」
「神通力。霊力を込めることであやかしや、ああいう異形を追い払う力のことだ。俺が前にやった神通発破も神通力の一つだな」
「へぇ~……」
そう言われても、あまりピンと来ない。夜見が前に見せてくれたのを思い出すけど、夜見が神通発破と言ったら急に塵になったことしか覚えていない。
「……って、異形?あのもやが?」
「ああ。異形はあやかしと違って、霊力の強い人間やあやかしにしか見えないんだ。この辺だとお前と俺と俺の両親くらいだろうな」
「ああ、それで花音には見えなかったのか……」
理解したというか、納得したという感じだ。
花音が見えていないであろうことはわかっていたけど、それが何でなのかはわかっていなかった。
「まぁ、異形はさっきみたいに追い払えばいい。お前にとっては雑魚同然だっただろ」
「まぁ、確かに……」
手に力を込めてぶつけたら勝手に散ってしまったから、これからもああいうのを見かけたらそうすればいいだろう。
そうすればいいだけなんだけど。
「でも、そもそも寄ってきて欲しくないんだけど」
「諦めろ。奴らは強い霊力を求めるんだ。現に、俺にもよく寄ってきているからな」
「そっか……」
どうやら、異形に関しては諦める他ないらしい。
まぁ、さっきみたいにやるだけだから、ちょっと手間だけど、そこまで苦労はない。
それに、異形を退治することで力を感じ取れたり、制御もできるようになるかもしれないと考えると、結構いいことかもしれない。
「よし!どうせ寄ってくるなら、今後は巫女らしく異形退治でもしてみるか!」
「いや、そんな大それたことではないぞ……?」
夜見が呆れたようにそう言っているけど、そんなことは気にせずに、私は天高くガッツポーズをした。
私は、そこで複数の女子に囲まれています。
それは、私が人気者だからとかそんな素晴らしい理由ではありません。そのーー逆です。
「神野さん。昨日、赤城さまと何のお話をしていましたの?」
私にそう詰め寄ってくるのは、星宮さん。夜見のファンクラブの一年生筆頭である。
どうやら、私が昨日、夜見の家に入るところを会員の一人に見られてしまったらしい。
そして、夜見にそれとなく聞いてみたところ、話をしただけとしか返ってこなかったらしく、私に詰め寄っているということだ。
ファンクラブの人たちは、夜見から無理やり聞き出すことはしないのである。
「ちょっとした世間話を……」
「はぁ?それなら、学校でやればいいじゃない!なんでわざわざ家まで行くのよ!」
やるなと言わないのが、彼女たちの優しいところなんだよなぁ……。
ーー現実逃避するなという声が聞こえた気がする。でも、こんなことになったら、現実逃避の一つや二つしたくなるものだ。
それに、彼女たちが優しいと思っているのは本当のことだ。
だって、先輩たちと一緒に圧迫面接的なことはしてこない。教室にもその事情聴取などには来なかったから、おそらくは一年の間にしか広めていないと思われる。
しかも、詰め寄られていると言っても、それなりの距離は保っているので、壁ドンみたいなこともないし、多対一ではあるけど、対等にお話はできる状況。
まぁ、現状説明はさておき、この状況はどうしようか。ないしょ話と言えば、内容を聞き出すまで返してくれない気もする。
夜見に聞けと言っても、そもそも夜見に強く出られないから私に聞きに来ているわけで、それは本末転倒だ。
「夜見が忘れ物したみたいだから、届けに行っただけですよ」
昨日は、夜見のほうが苦しみから少しでも早く解放されるために、陸上選手並の速さで帰宅していた。さようならとほぼ同時に教室を出ていっていた。帰宅部ならエースになれるスピードだ。
私は夜見の席の隣。これなら、何か忘れ物をしたことに私が気づいてもおかしくないし、家が隣の私が届けることにも違和感はない。
あの話をしただけだから、滞在時間もそれほど長くないというのも、今回は功を奏した。
「……そうでしたの?それなら良いのですけど……」
星宮さんも、嘘と確信が持てないからかはわからないけど、とりあえずは納得してくれたらしい。
そう言って、星宮さんたちは立ち去っていった。
ほっと一安心したとき、急に疲れがどっと押し寄せて、その場に崩れそうになる。
ほんと、夜見のファンクラブの相手は疲れる。
◇◇◇
授業を終えて、帰宅している途中、目の前から自転車が走ってくる。
ちょうど、そこは歩道がない道路だったので、私は脇を歩いていた。ちゃんと左側を。
逆走するんじゃないと思いながらも避けようと、車が来ていないことを確認して中央のほうへと移動する。
すると、なぜか自転車も私のほうに来た。近づいてきて気づいたけど、この自転車に乗っている人は、黒いもやを纏っている。
そして、私と目が合うと、そのもやがまるで噴火のように噴き出して大きくなる。
もうぶつかると思って、腕で身を守る動作をする。反射的に目も瞑ってしまったけど、なぜか衝撃が来ない。
ガシャンという音がして、私が目を開けると、私の目の前に男の人が立っていた。
スタンドも立てていないので、自転車は倒れていた。どうやら、先ほどのガシャンというのは、自転車が倒れた音だったらしい。
私は、一歩ずつ後退する。
「ミコ……ミコ……」
男の人はそう呟きながら私のほうに近づいてきた。
あの黒いもやが何なのかはまだわからないけど、あのもやみたいなのに男の人が操られているのはわかった。
そして、巫女である私を狙っていることも。
あのとき、夜見は言っていた。私なら雑魚同然と。
私は、まだ力の使い方がよくわからない。どう使えばいいのかわからない。
でも、何もやらないよりは、少しでも足掻いてみせる!
「やあ!」
私は、男の人に手を突き出す。どんなものかもわからない力をその手に込めて。
でも、それが功を奏しているのか、突き出した右手が熱いような気がする。
私の手に男の人が近づいたとき、男の人に纏っていたもやは、塵になって吹き飛んだ。
男の人は、力が抜けたようにその場に倒れる。
追い払えた……?
そう思いながら男の人の様子を窺っていると、男の人が気がつき、その場から起き上がった。
「あれ……?なんで俺、こんなところで寝てるんだ……?さっきまで自転車に乗ってて、目の前に女の子が現れて……」
「あの……大丈夫ですか?」
私が声をかけると、男性は驚いたようにこちらを見る。
「ああ!ごめん!大丈夫だよ。ありがとう」
私にはそう言ったけど、まだ混乱している様子で、乗ってきた自転車に再び跨がって立ち去った。
どうやら、あの黒いもやに操られている間の記憶はないらしい。それなら、放置してしまったけど、あの女性も覚えていなかったのかも。
あの男の人の最後の記憶は、私が視界に入ってからのようだ。
なんとか追い払えたけど、あれが私の力なんだろうか。無我夢中で手を突き出しただけだけど、あれでもやが吹き飛んでしまった。
「あれ、何なんだろう……?」
「神通力だ」
後ろから声がして、私が振り返ると、そこにはある人物が少し離れた場所に立っていた。
「夜見!」
どうやら、私から少し離れたところを歩いていたらしい。家が隣同士だから、帰り道もほとんど同じだ。
駆け寄ろうとすると、夜見は後ろに下がる。どうやら、声が聞こえるギリギリの距離を保とうとしていらしい。私は、急ブレーキをかけて、それ以上近づくことはしなかった。
「じん……なに?」
「神通力。霊力を込めることであやかしや、ああいう異形を追い払う力のことだ。俺が前にやった神通発破も神通力の一つだな」
「へぇ~……」
そう言われても、あまりピンと来ない。夜見が前に見せてくれたのを思い出すけど、夜見が神通発破と言ったら急に塵になったことしか覚えていない。
「……って、異形?あのもやが?」
「ああ。異形はあやかしと違って、霊力の強い人間やあやかしにしか見えないんだ。この辺だとお前と俺と俺の両親くらいだろうな」
「ああ、それで花音には見えなかったのか……」
理解したというか、納得したという感じだ。
花音が見えていないであろうことはわかっていたけど、それが何でなのかはわかっていなかった。
「まぁ、異形はさっきみたいに追い払えばいい。お前にとっては雑魚同然だっただろ」
「まぁ、確かに……」
手に力を込めてぶつけたら勝手に散ってしまったから、これからもああいうのを見かけたらそうすればいいだろう。
そうすればいいだけなんだけど。
「でも、そもそも寄ってきて欲しくないんだけど」
「諦めろ。奴らは強い霊力を求めるんだ。現に、俺にもよく寄ってきているからな」
「そっか……」
どうやら、異形に関しては諦める他ないらしい。
まぁ、さっきみたいにやるだけだから、ちょっと手間だけど、そこまで苦労はない。
それに、異形を退治することで力を感じ取れたり、制御もできるようになるかもしれないと考えると、結構いいことかもしれない。
「よし!どうせ寄ってくるなら、今後は巫女らしく異形退治でもしてみるか!」
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