16 / 23
第一章 鬼神と巫女
第十六話 校外学習 1
しおりを挟む
日は経ち、いよいよ校外学習の日がやってきた。
まずは、動植物園に行くことに。午後に美術館のほうに移動するそうだ。
バスに乗って移動し、動植物園のほうに向かう。私は、バスで疲れてぐったりしていた。
「三咲。なんでもう疲れてるの」
バスの座席で隣になった花音が、私の様子に気づいて話しかけてくる。
「いや、ちょっと家でいろいろあってね……」
私が疲れているのは、ちゃんと理由がある。
アッキを振りきってきたからだ。
アッキは、ちゃんとあの条件を守ってくれている。この部屋を追い出されたくないのか、私が怖いのか、どっちなのかはわからないけど。
そして、両親に見つからないように、滅多に部屋には出ない。
両親は、私にご飯の用意だけして、すでに出勤しているので、ご飯を持って二階に行くのが変だとは思われないのは都合がいいだろう。
私は、自分の部屋でアッキとご飯を食べて、学校に行こうとしたんだけど、アッキはどこに行くのかしつこく聞いてきて、私が校外学習のことを話すと、「ボクも一緒にいく」なんて言い出してしまった。
あやかしはあやかしでも、やっぱり見た目どおり子どもっぽいところはあるんだと痛感した出来事だ。
私は、疲れを癒すように、水筒に入れたお茶をこくこくと飲む。
「そっか。てっきり、また赤城くんとなんかあったのかと」
「むぐっ!」
花音の言葉に、私はお茶を吹き出しそうになった。
なんとか飲み込んで、花音の言葉を否定する。
「いやいやいや!なんでそこで夜見が出てくるの!」
「中学校でずっと二人を見てきた私が気づいてないとでも?さらに互いに距離を取ってるでしょ」
「そ、それは……」
花音の指摘に、私は言葉が詰まる。
これでは、花音の指摘に肯定しているようなものだ。花音もそれがわかってるのか、にやにやと笑っている。
「で、また何かあったの?あなたが話しかけもしないなんて相当だよ?」
「別に、何もないよ。ただ……」
私は、それ以上は言えなかった。夜見があやかしだというのを話したくないとか、そんなのではない。
でも……話せなかった。
「いや、なんでもない。ちょっと話しにくいことだから、忘れて」
「三咲がそう言うなんて相当ね……」
花音が真剣な表情で呟く。
私は普段どう思われてるんだ……?
◇◇◇
動植物園に着き、それぞれ班ごとに自由行動となった。
今回の校外学習では、終わった後にレポートにまとめる必要があるので、ふざけないで真面目にやらなければならない。
私と花音は、それぞれ班のメンバーで集まる。人数は五人。女子が三人と男子が二人。
男子とは、見事に誰も話したことすらない初めましてなメンバーになったけど、一人が同じ紅月中学校ではあるため、私のことは一方的に知ってる存在だ。
私が一方的に知られているのは、皆さんご存じ、夜見の幼なじみだから。
紅月中学校では、夜見の名前は毎日のように耳にする言葉だ。そうなると、必然的に幼なじみである私のことも耳に入りやすい。
私が自己紹介したとき、『赤城の幼なじみだろ?知ってるよ』と当たり前のように返されたくらい。
そのため、私を知らないのは他の中学校から来た人のみ。
「それじゃあ、どこに行く?動物園?植物園?」
「やっぱり動物園でしょ。トラとライオンと……」
「オオカミも外せねぇだろ」
花音の質問に、男子の二人が答える。
やっぱり、男らしく猛獣などに食いついている。
私は、一人ぽつんとしている存在に声をかけた。
「萩山さんは?」
私が声をかけたら、萩山さんはびくんと体を震わせる。
「わ、私は……どこでもいいです……。ついていきますから……」
ボソボソとそう言った。
う~ん……なんか気まずい。
「それじゃあ、とりあえずオオカミを見に行こっか」
「はい……」
この子と仲良く、できるかな……
◇◇◇
数分ほど歩いて、シンリンオオカミのエリアに来た。離れたところにはトラとライオンのエリアもあるので、そこも見に行けるだろう。
私は、檻の近くまで近づく。
シンリンオオカミは、白い毛並みが美しかった。
メスらしいけど、まるで女王のようだ。黒い毛も混じっているから、完全に真っ白というわけではないけど。
「花音。萩山さん。すごいね……って、萩山さんは?」
後ろあたりにいると思った私は振り返ってそう言うけど、周りには男子と花音しかおらず、萩山さんがいない。
すると、男子の一人が「そこにいるぞ」と指を指した。
萩山さんは、シンリンオオカミの隣にある鳥のエリアを眩しい笑顔で見ていた。
どうやら、鳥が好きみたいだ。
「あのときに言えばよかったのに……」
「なんか萩山らしくないよなぁ……」
「どういうこと?」
男子の呟きに、私は聞き返した。
彼は岩井結城くん。
高校で初めて知り合った男子だ。
「僕は萩山と同じ中学だったんだけど、そのときはあんな感じで明るかったんだよ」
「えー……なんで急に」
「なんか、神野さんにだけあんな感じみたいだよ」
「えっ!?私だけ!?」
なんで?私、萩山さんには本当になにもしてないのに。
ある意味、夜見に避けられたときよりもショックだ。なにもしなくても嫌われてるってことだから。
これは、萩山さんと仲良くするのは難しいかもしれない……
まずは、動植物園に行くことに。午後に美術館のほうに移動するそうだ。
バスに乗って移動し、動植物園のほうに向かう。私は、バスで疲れてぐったりしていた。
「三咲。なんでもう疲れてるの」
バスの座席で隣になった花音が、私の様子に気づいて話しかけてくる。
「いや、ちょっと家でいろいろあってね……」
私が疲れているのは、ちゃんと理由がある。
アッキを振りきってきたからだ。
アッキは、ちゃんとあの条件を守ってくれている。この部屋を追い出されたくないのか、私が怖いのか、どっちなのかはわからないけど。
そして、両親に見つからないように、滅多に部屋には出ない。
両親は、私にご飯の用意だけして、すでに出勤しているので、ご飯を持って二階に行くのが変だとは思われないのは都合がいいだろう。
私は、自分の部屋でアッキとご飯を食べて、学校に行こうとしたんだけど、アッキはどこに行くのかしつこく聞いてきて、私が校外学習のことを話すと、「ボクも一緒にいく」なんて言い出してしまった。
あやかしはあやかしでも、やっぱり見た目どおり子どもっぽいところはあるんだと痛感した出来事だ。
私は、疲れを癒すように、水筒に入れたお茶をこくこくと飲む。
「そっか。てっきり、また赤城くんとなんかあったのかと」
「むぐっ!」
花音の言葉に、私はお茶を吹き出しそうになった。
なんとか飲み込んで、花音の言葉を否定する。
「いやいやいや!なんでそこで夜見が出てくるの!」
「中学校でずっと二人を見てきた私が気づいてないとでも?さらに互いに距離を取ってるでしょ」
「そ、それは……」
花音の指摘に、私は言葉が詰まる。
これでは、花音の指摘に肯定しているようなものだ。花音もそれがわかってるのか、にやにやと笑っている。
「で、また何かあったの?あなたが話しかけもしないなんて相当だよ?」
「別に、何もないよ。ただ……」
私は、それ以上は言えなかった。夜見があやかしだというのを話したくないとか、そんなのではない。
でも……話せなかった。
「いや、なんでもない。ちょっと話しにくいことだから、忘れて」
「三咲がそう言うなんて相当ね……」
花音が真剣な表情で呟く。
私は普段どう思われてるんだ……?
◇◇◇
動植物園に着き、それぞれ班ごとに自由行動となった。
今回の校外学習では、終わった後にレポートにまとめる必要があるので、ふざけないで真面目にやらなければならない。
私と花音は、それぞれ班のメンバーで集まる。人数は五人。女子が三人と男子が二人。
男子とは、見事に誰も話したことすらない初めましてなメンバーになったけど、一人が同じ紅月中学校ではあるため、私のことは一方的に知ってる存在だ。
私が一方的に知られているのは、皆さんご存じ、夜見の幼なじみだから。
紅月中学校では、夜見の名前は毎日のように耳にする言葉だ。そうなると、必然的に幼なじみである私のことも耳に入りやすい。
私が自己紹介したとき、『赤城の幼なじみだろ?知ってるよ』と当たり前のように返されたくらい。
そのため、私を知らないのは他の中学校から来た人のみ。
「それじゃあ、どこに行く?動物園?植物園?」
「やっぱり動物園でしょ。トラとライオンと……」
「オオカミも外せねぇだろ」
花音の質問に、男子の二人が答える。
やっぱり、男らしく猛獣などに食いついている。
私は、一人ぽつんとしている存在に声をかけた。
「萩山さんは?」
私が声をかけたら、萩山さんはびくんと体を震わせる。
「わ、私は……どこでもいいです……。ついていきますから……」
ボソボソとそう言った。
う~ん……なんか気まずい。
「それじゃあ、とりあえずオオカミを見に行こっか」
「はい……」
この子と仲良く、できるかな……
◇◇◇
数分ほど歩いて、シンリンオオカミのエリアに来た。離れたところにはトラとライオンのエリアもあるので、そこも見に行けるだろう。
私は、檻の近くまで近づく。
シンリンオオカミは、白い毛並みが美しかった。
メスらしいけど、まるで女王のようだ。黒い毛も混じっているから、完全に真っ白というわけではないけど。
「花音。萩山さん。すごいね……って、萩山さんは?」
後ろあたりにいると思った私は振り返ってそう言うけど、周りには男子と花音しかおらず、萩山さんがいない。
すると、男子の一人が「そこにいるぞ」と指を指した。
萩山さんは、シンリンオオカミの隣にある鳥のエリアを眩しい笑顔で見ていた。
どうやら、鳥が好きみたいだ。
「あのときに言えばよかったのに……」
「なんか萩山らしくないよなぁ……」
「どういうこと?」
男子の呟きに、私は聞き返した。
彼は岩井結城くん。
高校で初めて知り合った男子だ。
「僕は萩山と同じ中学だったんだけど、そのときはあんな感じで明るかったんだよ」
「えー……なんで急に」
「なんか、神野さんにだけあんな感じみたいだよ」
「えっ!?私だけ!?」
なんで?私、萩山さんには本当になにもしてないのに。
ある意味、夜見に避けられたときよりもショックだ。なにもしなくても嫌われてるってことだから。
これは、萩山さんと仲良くするのは難しいかもしれない……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王弟が愛した娘 —音に響く運命—
Aster22
恋愛
村で薬師として過ごしていたセラは、
ハープの音に宿る才を王弟レオに見初められる。
その出会いは、静かな日々を終わらせ、
彼女を王宮の闇と陰謀に引き寄せていく。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
分かりやすい日月神示のエッセイ 🔰女性向け
蔵屋
エッセイ・ノンフィクション
私は日月神示の内容を今まで学問として研究してもう25年になります。
このエッセイは私の25年間の集大成です。
宇宙のこと、118種類の元素のこと、神さまのこと、宗教のこと、政治、経済、社会の仕組みなど社会に役立たつことも含めていますので、皆さまのお役に立つものと確信しています。
どうか、最後まで読んで頂きたいと思います。
お読み頂く前に次のことを皆様に申し上げておきます。
このエッセイは国家を始め特定の人物や団体、機関を否定して、批判するものではありません。
一つ目は「私は一切の対立や争いを好みません。」
2つ目は、「すべての教えに対する評価や取捨選択は読者の自由とします。」
3つ目は、「この教えの実践や実行に於いては、周囲の事情を無視した独占的排他的言動を避けていただき、常識に照らし合わせて問題を起こさないよう慎重にしていただきたいと思います。
この日月神示は最高神である国常立尊という神様が三千世界の大洗濯をする為に霊界で閻魔大王として閉じ込められていましたが、この世の中が余りにも乱れていて、悪の蔓延る暗黒の世の中になりつつあるため、私たちの住む現界に現れたのです。この日月神示に書かれていることは、真実であり、これから起こる三千世界の大洗濯を事前に知らせているのです。
何故?
それは私たち人類に改心をさせるためです。
それでは『分かりやすい日月神示のエッセイ 🔰女性向け』を最後まで、お読み下さい。
『神知りて 人の幸せ 祈るのみ
神の伝えし 愛善の道』
この短歌は私が今年(2025年)元旦に詠んだ歌である。
作家 蔵屋日唱
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる