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第一章 鬼神と巫女
第十七話 校外学習 2
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なんとか萩山さんと仲良くなってみたいけど、難しいかもしれない。
私はまったく心当たりがないのに、あんな風に怯えられてしまったら……。
でも、くよくよしてばかりもいられない。一日だけとはいえ、一緒に行動するのだから、知り合い以上くらいにはならないと!
そんな決意もむなしく、動物や植物を見て、お弁当を食べるだけで終わってしまった。隙を見て話しかけようにも、萩山さんのほうが避けてしまう。
バスに戻って、美術館へと移動している途中で、私は花音に相談してみることに。
「私って、萩山さんに何かしたのかな」
「私はわからないけど……あの子も赤城くんに憧れてたりして」
「いやいや。私、高校ではあまり夜見とは関わってないでしょ?いくら憧れてたって……」
私が反論するも、花音はなぜか得意気に言い返す。
「嫉妬よ嫉妬。赤城くんが女子の中で下の名前を呼ぶのは、三咲だけだしね」
「ええ~……」
本当にそんな理由なら、私にはどうしようもない。
夜見と幼なじみという事実は変えようがないし、お互いを名字で呼ぼうにも、おそらく私がぼろを出す。下の名前で呼んでしまうか、名字を呼ばれてもすぐに反応できない。
私たちの間では、『夜見』と『三咲』が当たり前だったんだから。
「まぁ、絶対にそうだとは言いきれないし、まだ午後もあるから、話しかけてみるしかないんじゃない?」
「う~ん……そうだね」
花音にはそう言ったけど、私は自信がなくなってきていた。
◇◇◇
美術館へと着いた。
この街では、美術館はここにしかない。そんなに大きな街でもないから当然かもしれないけど。
「美術館はあんまり興味ないんだよね……」
「俺も~」
「そう?僕は面白いと思うけどな~」
「私も好きです……」
私が館内マップを見ていると、他の四人で好きに会話する。
萩山さんは、確かにおとなしめな印象は変わらないけど、明るさも感じられる。
「結局、どこ見るの?」
私も会話に混ざると、萩山さんはびくっと体を震わせて、私から距離を取る。
ほんと、なんで私だけ……?
私が落ち込んでいると、岩井くんがはぁとため息をつく。
「……萩山。さっきから何なんだ?なんで神野さんを避けるんだよ」
我慢ならなかったのか、岩井くんが萩山さんに理由を聞いてくれる。
萩山さんは、ただうつむくだけ。
でも、時間を置いて口を開いた。
「……別に、なんでもないです。行きましょう」
いつも声は大きくないけど、今回は一段と小さな声だった。
「おい!」
岩井くんが止めるのも聞かず、萩山さんは美術館のほうに歩き始める。
そして、急に走り出した。
「ごめん、神野さん。悪いやつじゃないんだ」
別に岩井くんが悪いわけでもないのに、岩井くんは私に謝って、萩山さんの後を追う。
私たちも、続くように岩井くんの後を追った。
◇◇◇
美術館に入ったけど、二人の姿は見当たらない。完全に分かれてしまった。
岩井くんと萩山さんの足が思ったよりも早くて、振りきられてしまったみたいだ。
「ったく……どこ行ったんだ?」
「足が速いんだね、あの二人」
軽く息切れしながら花音がそう言うと、この場に残された唯一の男子である彼ーー北条彰くんが「ああ」と答えてくれる。
「バスに乗ってるときに結城から聞いたんだけど、あの二人、中学で部活が同じ陸上部だったんだってよ。しかも短距離だから、そりゃ速いよな」
「えっ!?萩山さんが!?」
「ああ……らしいぞ?」
私は本当に驚いた。
だって、岩井くんはともかく、萩山さんの見た目はどこからどう見てもインドアな女の子だ。どちらかといえば、文化系の部活に入っていそうなものなのに、バリバリの運動部だ。
ギャップがすごすぎる。
「とりあえず、二人を探さなきゃ。先生にも伝えないと」
「じゃあ、俺が伝えてくる」
そう言って、北条くんは事前に知らされていた先生たちがいる場所へと向かう。
当然、館内なので、走ったりはしていない。
「私はここで待ってるよ。入れ違いになってもよくないし」
……つまりは、私一人で探してこいということですか。
でも、別に不満はない。二人の言ってることがおかしいとも思わないし、反対されても私が探しに行くつもりではあったから。
「じゃあ、探しに行ってくるね!」
私は、とりあえず辺りを探してみることに。
ここには一年生全員が来ている。もしかしたら、誰か二人を見ている人がいるかもしれない。
そう思って、私は一年生に会ったら積極的に聞いていた。みんな制服で来ているからわかりやすい。
見かけてない人もいたけど、見かけた人もいるみたいで、その人たちの案内通りに歩き続ける。
でも、私は一つだけ忘れていたことがある。ここは、美術館なので、それなりの大きさはある。さして、私はここに来るのは初めてだ。マップも持っていない。
初めて来るそこそこ大きな施設で、マップも持たずにあっちこっちへと移動していたらどうなるか。
「私が迷子だ……」
ここが二階なのはわかるけど、美術館は二階建てだけど、無駄に広い。
私は、美術品にぶつからないようにというのは心がけていたけど、特にどこにどういうものがあったのかは見ていなかったので、どう行けば戻れるのかまったくわからない。
こんなときに下手に移動したらそれこそ迷子だ。だからといって、移動しなければ見つかるものも見つからない。
途方に暮れていると、誰かがこちらに近づいてくる。
「……三咲、一人で何してるんだ?篠田たちはどうした」
それは男子の声。男子で私を下の名前で呼ぶのは一人だけ。
「……夜見?」
私はまったく心当たりがないのに、あんな風に怯えられてしまったら……。
でも、くよくよしてばかりもいられない。一日だけとはいえ、一緒に行動するのだから、知り合い以上くらいにはならないと!
そんな決意もむなしく、動物や植物を見て、お弁当を食べるだけで終わってしまった。隙を見て話しかけようにも、萩山さんのほうが避けてしまう。
バスに戻って、美術館へと移動している途中で、私は花音に相談してみることに。
「私って、萩山さんに何かしたのかな」
「私はわからないけど……あの子も赤城くんに憧れてたりして」
「いやいや。私、高校ではあまり夜見とは関わってないでしょ?いくら憧れてたって……」
私が反論するも、花音はなぜか得意気に言い返す。
「嫉妬よ嫉妬。赤城くんが女子の中で下の名前を呼ぶのは、三咲だけだしね」
「ええ~……」
本当にそんな理由なら、私にはどうしようもない。
夜見と幼なじみという事実は変えようがないし、お互いを名字で呼ぼうにも、おそらく私がぼろを出す。下の名前で呼んでしまうか、名字を呼ばれてもすぐに反応できない。
私たちの間では、『夜見』と『三咲』が当たり前だったんだから。
「まぁ、絶対にそうだとは言いきれないし、まだ午後もあるから、話しかけてみるしかないんじゃない?」
「う~ん……そうだね」
花音にはそう言ったけど、私は自信がなくなってきていた。
◇◇◇
美術館へと着いた。
この街では、美術館はここにしかない。そんなに大きな街でもないから当然かもしれないけど。
「美術館はあんまり興味ないんだよね……」
「俺も~」
「そう?僕は面白いと思うけどな~」
「私も好きです……」
私が館内マップを見ていると、他の四人で好きに会話する。
萩山さんは、確かにおとなしめな印象は変わらないけど、明るさも感じられる。
「結局、どこ見るの?」
私も会話に混ざると、萩山さんはびくっと体を震わせて、私から距離を取る。
ほんと、なんで私だけ……?
私が落ち込んでいると、岩井くんがはぁとため息をつく。
「……萩山。さっきから何なんだ?なんで神野さんを避けるんだよ」
我慢ならなかったのか、岩井くんが萩山さんに理由を聞いてくれる。
萩山さんは、ただうつむくだけ。
でも、時間を置いて口を開いた。
「……別に、なんでもないです。行きましょう」
いつも声は大きくないけど、今回は一段と小さな声だった。
「おい!」
岩井くんが止めるのも聞かず、萩山さんは美術館のほうに歩き始める。
そして、急に走り出した。
「ごめん、神野さん。悪いやつじゃないんだ」
別に岩井くんが悪いわけでもないのに、岩井くんは私に謝って、萩山さんの後を追う。
私たちも、続くように岩井くんの後を追った。
◇◇◇
美術館に入ったけど、二人の姿は見当たらない。完全に分かれてしまった。
岩井くんと萩山さんの足が思ったよりも早くて、振りきられてしまったみたいだ。
「ったく……どこ行ったんだ?」
「足が速いんだね、あの二人」
軽く息切れしながら花音がそう言うと、この場に残された唯一の男子である彼ーー北条彰くんが「ああ」と答えてくれる。
「バスに乗ってるときに結城から聞いたんだけど、あの二人、中学で部活が同じ陸上部だったんだってよ。しかも短距離だから、そりゃ速いよな」
「えっ!?萩山さんが!?」
「ああ……らしいぞ?」
私は本当に驚いた。
だって、岩井くんはともかく、萩山さんの見た目はどこからどう見てもインドアな女の子だ。どちらかといえば、文化系の部活に入っていそうなものなのに、バリバリの運動部だ。
ギャップがすごすぎる。
「とりあえず、二人を探さなきゃ。先生にも伝えないと」
「じゃあ、俺が伝えてくる」
そう言って、北条くんは事前に知らされていた先生たちがいる場所へと向かう。
当然、館内なので、走ったりはしていない。
「私はここで待ってるよ。入れ違いになってもよくないし」
……つまりは、私一人で探してこいということですか。
でも、別に不満はない。二人の言ってることがおかしいとも思わないし、反対されても私が探しに行くつもりではあったから。
「じゃあ、探しに行ってくるね!」
私は、とりあえず辺りを探してみることに。
ここには一年生全員が来ている。もしかしたら、誰か二人を見ている人がいるかもしれない。
そう思って、私は一年生に会ったら積極的に聞いていた。みんな制服で来ているからわかりやすい。
見かけてない人もいたけど、見かけた人もいるみたいで、その人たちの案内通りに歩き続ける。
でも、私は一つだけ忘れていたことがある。ここは、美術館なので、それなりの大きさはある。さして、私はここに来るのは初めてだ。マップも持っていない。
初めて来るそこそこ大きな施設で、マップも持たずにあっちこっちへと移動していたらどうなるか。
「私が迷子だ……」
ここが二階なのはわかるけど、美術館は二階建てだけど、無駄に広い。
私は、美術品にぶつからないようにというのは心がけていたけど、特にどこにどういうものがあったのかは見ていなかったので、どう行けば戻れるのかまったくわからない。
こんなときに下手に移動したらそれこそ迷子だ。だからといって、移動しなければ見つかるものも見つからない。
途方に暮れていると、誰かがこちらに近づいてくる。
「……三咲、一人で何してるんだ?篠田たちはどうした」
それは男子の声。男子で私を下の名前で呼ぶのは一人だけ。
「……夜見?」
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それでは『分かりやすい日月神示のエッセイ 🔰女性向け』を最後まで、お読み下さい。
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