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第一章 鬼神と巫女
第十八話 校外学習 3
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声をかけてきたのは夜見。
夜見とは別の班になったので、会うことはほとんどないと思っていたんだけど、私たちは遭遇する運命のようだ。
「夜見こそ一人でどうしたの?班の人たちは?」
「トイレに行くって別行動をしてるんだ。ずっとあの空間にいては息が詰まる」
「ああ……星宮さんと同じ班になったんだっけ」
あの二人が宣言していた通り、校外学習の日までには、星宮さんは退院し、元気に学校に通うようになっていた。
あの二人が星宮さんに夜見がお見舞いに来てくれたという話をしたらしく、星宮さんは今以上に夜見に憧れを持つようになったみたい。
ちなみに、二人は律儀なところがあり、私が夜見に進言したということも話したみたいで、星宮さんに『感謝してあげてもよくてよ?』というツンデレ紛いの発言をされたことは置いておこう。
そんなわけで、夜見にとってはあの班はストレスになっているんだろう。
「それで、三咲はなんでここにいる」
「実は……」
私は、夜見に事情を説明する。
でも、半分くらい愚痴になってしまった。萩山さんに避けられるということが、私にとってはかなりショック大きかったらしい。
「……まぁ、わからなくもないかもな」
「えっ、どうして?」
「三咲は気づいてないのか……。俺も確信があるわけじゃないが、多分、あいつはーー」
その後、夜見が続けた言葉に、私は目を見開いた。
「それなら、やっぱり一度話さないと。じゃあね、夜見」
私は、迷子であろうが関係ないと、夜見に一方的に別れを告げて、来た方向とは逆のほうに向かった。
夜見は、三咲を少し三咲を見ながら、自分の班がいる方向へと向かった。
◇◇◇
一生懸命探していると、やっと見つけた。二階の奥の奥にいたらしい。
はぐれてはいなかったらしく、二人で一緒にいた。
「萩山さん!岩井くん!」
私が二人に呼びかけると、二人も私のほうに気づく。
でも、萩山さんは岩井くんよりも早く気づいていたみたいで、岩井くんの影に隠れている。
「神野さんか。他の二人は?」
「花音は私たちが入れ違いになったりしないように一階で待ってて、北条くんは、先生に知らせに行ったから、多分花音と一緒にいると思う」
「そうか……。じゃあ、戻るぞ。萩山」
岩井くんは萩山さんの腕を引っ張るけど、萩山さんは立ち上がらない。
それどころか、岩井くんの腕をぐいぐいと引っ張っているように見える。
岩井くんがはぁとため息をつくけど、萩山さんは行動を変えることはしなかった。そして、顔を少し出して、私を見て言う。
「後で行きますから……神野さんは、先に戻っていてください……」
「萩山、まだそんなこと言ってるのか?さっきも神野さんがいるから戻りたくないって言ってたが……」
そんなこと言ってたのか。夜見から事情を聞いた今の私はそこまでショックは受けないけど、知らなかったら立ち直れなかったと思う。
私は、萩山さんに視線を合わせて言う。
「大丈夫だよ、萩山さん。なにもしないから」
私がそう言うと、萩山さんは少しだけぴくりと反応を示した。
かまかけのようなものだったけど、この分だと、夜見の話に信憑性が増す。
「そりゃあ、私は夜見に迷惑かけてるけど、別に自分の意思で行ってるわけじゃないし、あなたのことも知らなかったの」
ここには岩井くんがいるから、ストレートに話すわけにもいかず、少し遠回りに伝えてしまう。
でも、萩山さんはそれでも理解してくれたのか、少し期待するような目で見る。
「そう……なんですか?」
「疑うなら夜見に聞いてみてもいいよ」
「……わかり、ました。神野さんを信じます」
萩山さんはそう言って、ようやく立ち上がってくれた。
どうやら、少しは信用してくれたらしい。
夜見があのときに言っていたのは、萩山さんがあやかし、または、その血を引いているかもしれないという話だった。
アッキがやっていたように、やはりあやかしは互いの妖力を感じ取り、あやかしかどうかを判断できるそうだ。
夜見は、登校し始めてから、萩山さんから感じていた妖力の波長が気になっていたようで、最初はあやかしに憑かれているのかと思ったものの、特にそのような気配はないので、萩山さんに妖力が存在することに気づいたそうだ。
そして、夜見のように純粋なあやかしでなかったとしても、あやかしの血が混じっている者の中には、祓い師を苦手とする者も多いらしい。
たとえ人間の血が混じっていても、あやかしの力が強ければ、祓われたり、弱体化させられたりするから。
萩山さんが私を避けていたのは、私の駄々漏れになっていた霊力に怯えていたのではとのことだ。
今は引っ込んだとしても、また自分があやかしの血を引いていることを感づかれでもしたら、祓おうとしてくるのではと、警戒していたんだろう。
だから私は、まったく祓うつもりなんてないということを、夜見をあやかしだと知っていながら祓っていないということを例に証明してみた。
萩山さんも、夜見があやかしというのは気づいていたんだろう。夜見の名前を出したら、すぐに信じてくれた。
岩井くんは何の話をしているのか理解していなかっただろうけど。
「それじゃあ、みんなのところに戻ろうか」
「はい。そうですね」
萩山さんは、初めて私に笑顔を見せてくれた。
夜見とは別の班になったので、会うことはほとんどないと思っていたんだけど、私たちは遭遇する運命のようだ。
「夜見こそ一人でどうしたの?班の人たちは?」
「トイレに行くって別行動をしてるんだ。ずっとあの空間にいては息が詰まる」
「ああ……星宮さんと同じ班になったんだっけ」
あの二人が宣言していた通り、校外学習の日までには、星宮さんは退院し、元気に学校に通うようになっていた。
あの二人が星宮さんに夜見がお見舞いに来てくれたという話をしたらしく、星宮さんは今以上に夜見に憧れを持つようになったみたい。
ちなみに、二人は律儀なところがあり、私が夜見に進言したということも話したみたいで、星宮さんに『感謝してあげてもよくてよ?』というツンデレ紛いの発言をされたことは置いておこう。
そんなわけで、夜見にとってはあの班はストレスになっているんだろう。
「それで、三咲はなんでここにいる」
「実は……」
私は、夜見に事情を説明する。
でも、半分くらい愚痴になってしまった。萩山さんに避けられるということが、私にとってはかなりショック大きかったらしい。
「……まぁ、わからなくもないかもな」
「えっ、どうして?」
「三咲は気づいてないのか……。俺も確信があるわけじゃないが、多分、あいつはーー」
その後、夜見が続けた言葉に、私は目を見開いた。
「それなら、やっぱり一度話さないと。じゃあね、夜見」
私は、迷子であろうが関係ないと、夜見に一方的に別れを告げて、来た方向とは逆のほうに向かった。
夜見は、三咲を少し三咲を見ながら、自分の班がいる方向へと向かった。
◇◇◇
一生懸命探していると、やっと見つけた。二階の奥の奥にいたらしい。
はぐれてはいなかったらしく、二人で一緒にいた。
「萩山さん!岩井くん!」
私が二人に呼びかけると、二人も私のほうに気づく。
でも、萩山さんは岩井くんよりも早く気づいていたみたいで、岩井くんの影に隠れている。
「神野さんか。他の二人は?」
「花音は私たちが入れ違いになったりしないように一階で待ってて、北条くんは、先生に知らせに行ったから、多分花音と一緒にいると思う」
「そうか……。じゃあ、戻るぞ。萩山」
岩井くんは萩山さんの腕を引っ張るけど、萩山さんは立ち上がらない。
それどころか、岩井くんの腕をぐいぐいと引っ張っているように見える。
岩井くんがはぁとため息をつくけど、萩山さんは行動を変えることはしなかった。そして、顔を少し出して、私を見て言う。
「後で行きますから……神野さんは、先に戻っていてください……」
「萩山、まだそんなこと言ってるのか?さっきも神野さんがいるから戻りたくないって言ってたが……」
そんなこと言ってたのか。夜見から事情を聞いた今の私はそこまでショックは受けないけど、知らなかったら立ち直れなかったと思う。
私は、萩山さんに視線を合わせて言う。
「大丈夫だよ、萩山さん。なにもしないから」
私がそう言うと、萩山さんは少しだけぴくりと反応を示した。
かまかけのようなものだったけど、この分だと、夜見の話に信憑性が増す。
「そりゃあ、私は夜見に迷惑かけてるけど、別に自分の意思で行ってるわけじゃないし、あなたのことも知らなかったの」
ここには岩井くんがいるから、ストレートに話すわけにもいかず、少し遠回りに伝えてしまう。
でも、萩山さんはそれでも理解してくれたのか、少し期待するような目で見る。
「そう……なんですか?」
「疑うなら夜見に聞いてみてもいいよ」
「……わかり、ました。神野さんを信じます」
萩山さんはそう言って、ようやく立ち上がってくれた。
どうやら、少しは信用してくれたらしい。
夜見があのときに言っていたのは、萩山さんがあやかし、または、その血を引いているかもしれないという話だった。
アッキがやっていたように、やはりあやかしは互いの妖力を感じ取り、あやかしかどうかを判断できるそうだ。
夜見は、登校し始めてから、萩山さんから感じていた妖力の波長が気になっていたようで、最初はあやかしに憑かれているのかと思ったものの、特にそのような気配はないので、萩山さんに妖力が存在することに気づいたそうだ。
そして、夜見のように純粋なあやかしでなかったとしても、あやかしの血が混じっている者の中には、祓い師を苦手とする者も多いらしい。
たとえ人間の血が混じっていても、あやかしの力が強ければ、祓われたり、弱体化させられたりするから。
萩山さんが私を避けていたのは、私の駄々漏れになっていた霊力に怯えていたのではとのことだ。
今は引っ込んだとしても、また自分があやかしの血を引いていることを感づかれでもしたら、祓おうとしてくるのではと、警戒していたんだろう。
だから私は、まったく祓うつもりなんてないということを、夜見をあやかしだと知っていながら祓っていないということを例に証明してみた。
萩山さんも、夜見があやかしというのは気づいていたんだろう。夜見の名前を出したら、すぐに信じてくれた。
岩井くんは何の話をしているのか理解していなかっただろうけど。
「それじゃあ、みんなのところに戻ろうか」
「はい。そうですね」
萩山さんは、初めて私に笑顔を見せてくれた。
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