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第二章 あやかしとの共存を目指して
第二話 あやかしというのは
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私は、家に帰ってから、教わった通りに制御の特訓を始めた。
アッキは、私が部屋でむんむんとしながら顔を歪ませていたせいか、まるで変質者を見ているかのような目で見られたのは、見た目が子どもなのもあり、かなり心に来てしまった。
「う~ん……難しい……」
なんとなくは、できているような気もする。
循環させるという感覚を直接感じ取ったからか、循環させることはできている。でも、少しでも気を抜いてしまうと、すぐに力が霧散してしまう。これでは、力を制御できたとは言えない。息をするようにコントロールできないと、感情的になってしまったときなんか抑えることはできないだろう。
制御というのは、使いたくないときは抑え込み、使いたいときは好きなように使うというのが制御だと思っている。
そして、循環させているうちに、なんとなく力の感じもわかってきた。
この力は、私の意志に反応して動いている。適当にやっても、発動なんかするわけもない。
無意識に使うことはできない。でも、私の生物としての本能も働いているようで、おそらくは死にたくないとか、怖いものは寄ってこないでほしいとか、そんな理由で私はあやかしとかを無意識のうちに遠ざけていたのかもしれない。
怖そうなものは見たくないと感じて、そのお陰で異形は見えていなかったんだろう。
そして、夜見から力のことを聞いて、それがあるなら大丈夫かと一安心して、自動防御が弱まったのかも。だから、あやかしや異形が周りにちらほら現れるようになった。
そう考えると、辻褄があうというものだ。
あくまでも推論の域からは出ないから、確信が持てるわけではないけど。
「アッキ。まだ漏れてるよね?」
「少しはましになっている。が、ボクは触れられない」
「だよね~……」
その言葉は、私に深く刺さる。
だって、アッキがもし私に触っても問題なくなれば、きっと夜見も特に問題はなくなるはずなのだ。
アッキは、私の力が少しずつ漏れているのには、薄々気がついていたようで、私からは距離を取り始めていた。
今は、私がどれくらい制御できているかの指標として、近づけるギリギリの距離まで近づいてもらっている。
でも、距離を取るくらいで済んでいるから、夜見も、直接触れない限りはおそらく大丈夫だろう。
「……そういえば、前に言ってたことなんだけど」
「なんだ、急に」
このまま黙って制御の特訓しているだけなのもと思って、アッキに雑談の話題を振ったら、アッキは少し困惑している。
「ただ黙々とやるのもね。こういうのは少しくらい話していたほうがはかどるものよ」
「そうなのか……?」
あやかしには仲良くお話しするなんて文化はあまりないんだろう。アッキには理解するのは難しいようだ。
私が、「人間はそういうものなの」と返すと、「そうか」と言った。ひとまずは納得してくれたらしい。
「それで、お前の言っているのはなんのことだ?」
「ほら、ここに来たときに言ってたでしょ?あやかしを狩っているあやかしがいるって」
「ああ……あれか」
私が言って思い出したみたいで、アッキは複雑そうな顔をする。
嫌なことを思い出させたみたいで、少し申し訳なくなった。
「……それって、どんなやつなの?人間が人間を傷つけるのは、不幸な偶然とか、その人に恨みがあったりとかがほとんどだけど、あやかしも同じなのかわからないの」
「わからん。あやかしも、気に入らんやつは消していくが、ボクはやつに恨まれる覚えはない。存在自体が気に入らんのかもしれないが」
「そう……」
存在だけで……と思ってしまうけど、あやかしでは当たり前なのかもしれない。それを否定したりしても、彼らにとっては、私が異端に見えるだけだろう。
「姿とかは?」
「そんなものは知らん。ボクと同じように瘴気に覆われていたからな」
私は、初めて会ったときのアッキの姿を思い浮かべる。確かに、あれしか見ていないのなら、詳細などわからないだろう。
「あやかしって、みんなそうなの……?」
私が聞くと、アッキはこくりと頷く。
「あやかしは、ほとんどのものが瘴気を持つ。あの鬼神だって持ってるはずだ。でなければ、狩りに困る」
「狩りって、なんの……?」
嫌な予感はしつつも、私はアッキに尋ねる。
アッキは、何を言ってるんだという風に私を見ながらも答えた。
「人間に決まっているだろう。鬼神は、人の心を食らう存在だぞ?」
「……夜見、が……?人の心を……」
正直、信じられるものではない。私の知る夜見は、そんなことをする存在ではない。
でも、だからといって、アッキが嘘をついている様子もなかった。
どちらを信じればいいのかわからない。夜見は、人間を襲うつもりがないのか。それとも、巫女がいるから襲わないのか。
もし襲わないのなら、一体なぜなのか。
それがずっと脳裏をちらついて、結局制御ができるようにはならなかった。
アッキは、私が部屋でむんむんとしながら顔を歪ませていたせいか、まるで変質者を見ているかのような目で見られたのは、見た目が子どもなのもあり、かなり心に来てしまった。
「う~ん……難しい……」
なんとなくは、できているような気もする。
循環させるという感覚を直接感じ取ったからか、循環させることはできている。でも、少しでも気を抜いてしまうと、すぐに力が霧散してしまう。これでは、力を制御できたとは言えない。息をするようにコントロールできないと、感情的になってしまったときなんか抑えることはできないだろう。
制御というのは、使いたくないときは抑え込み、使いたいときは好きなように使うというのが制御だと思っている。
そして、循環させているうちに、なんとなく力の感じもわかってきた。
この力は、私の意志に反応して動いている。適当にやっても、発動なんかするわけもない。
無意識に使うことはできない。でも、私の生物としての本能も働いているようで、おそらくは死にたくないとか、怖いものは寄ってこないでほしいとか、そんな理由で私はあやかしとかを無意識のうちに遠ざけていたのかもしれない。
怖そうなものは見たくないと感じて、そのお陰で異形は見えていなかったんだろう。
そして、夜見から力のことを聞いて、それがあるなら大丈夫かと一安心して、自動防御が弱まったのかも。だから、あやかしや異形が周りにちらほら現れるようになった。
そう考えると、辻褄があうというものだ。
あくまでも推論の域からは出ないから、確信が持てるわけではないけど。
「アッキ。まだ漏れてるよね?」
「少しはましになっている。が、ボクは触れられない」
「だよね~……」
その言葉は、私に深く刺さる。
だって、アッキがもし私に触っても問題なくなれば、きっと夜見も特に問題はなくなるはずなのだ。
アッキは、私の力が少しずつ漏れているのには、薄々気がついていたようで、私からは距離を取り始めていた。
今は、私がどれくらい制御できているかの指標として、近づけるギリギリの距離まで近づいてもらっている。
でも、距離を取るくらいで済んでいるから、夜見も、直接触れない限りはおそらく大丈夫だろう。
「……そういえば、前に言ってたことなんだけど」
「なんだ、急に」
このまま黙って制御の特訓しているだけなのもと思って、アッキに雑談の話題を振ったら、アッキは少し困惑している。
「ただ黙々とやるのもね。こういうのは少しくらい話していたほうがはかどるものよ」
「そうなのか……?」
あやかしには仲良くお話しするなんて文化はあまりないんだろう。アッキには理解するのは難しいようだ。
私が、「人間はそういうものなの」と返すと、「そうか」と言った。ひとまずは納得してくれたらしい。
「それで、お前の言っているのはなんのことだ?」
「ほら、ここに来たときに言ってたでしょ?あやかしを狩っているあやかしがいるって」
「ああ……あれか」
私が言って思い出したみたいで、アッキは複雑そうな顔をする。
嫌なことを思い出させたみたいで、少し申し訳なくなった。
「……それって、どんなやつなの?人間が人間を傷つけるのは、不幸な偶然とか、その人に恨みがあったりとかがほとんどだけど、あやかしも同じなのかわからないの」
「わからん。あやかしも、気に入らんやつは消していくが、ボクはやつに恨まれる覚えはない。存在自体が気に入らんのかもしれないが」
「そう……」
存在だけで……と思ってしまうけど、あやかしでは当たり前なのかもしれない。それを否定したりしても、彼らにとっては、私が異端に見えるだけだろう。
「姿とかは?」
「そんなものは知らん。ボクと同じように瘴気に覆われていたからな」
私は、初めて会ったときのアッキの姿を思い浮かべる。確かに、あれしか見ていないのなら、詳細などわからないだろう。
「あやかしって、みんなそうなの……?」
私が聞くと、アッキはこくりと頷く。
「あやかしは、ほとんどのものが瘴気を持つ。あの鬼神だって持ってるはずだ。でなければ、狩りに困る」
「狩りって、なんの……?」
嫌な予感はしつつも、私はアッキに尋ねる。
アッキは、何を言ってるんだという風に私を見ながらも答えた。
「人間に決まっているだろう。鬼神は、人の心を食らう存在だぞ?」
「……夜見、が……?人の心を……」
正直、信じられるものではない。私の知る夜見は、そんなことをする存在ではない。
でも、だからといって、アッキが嘘をついている様子もなかった。
どちらを信じればいいのかわからない。夜見は、人間を襲うつもりがないのか。それとも、巫女がいるから襲わないのか。
もし襲わないのなら、一体なぜなのか。
それがずっと脳裏をちらついて、結局制御ができるようにはならなかった。
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