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第一章 虐げられた姫
第35話 精霊の光と魔力の光
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「フィレンティア皇女殿下、そろそろ起きる時間ですよ」
「う~ん……ねむい……」
眠気がずっと襲ってくる。夜中に歩き回ったせいで、疲れたのかな。
「では、せめて一度起きてください。陛下がいらしているのです」
「とーしゃまが……?」
目を擦りながら体を起こす。まだ首がガクンとするけど、なんとか起きられる。私を着替えさせることはせずに、大きめの羽織をかけてきた。
そして、セリアがドアを開けた。
「来るのが早かったか?」
父様が何かを手に持って入ってきた。
「フェレスから鑑定板を貰ってきたが、出直した方がいいか?」
「らいじょーぶ……」
「そうか」
そう言って、私の隣に座ってきた。
「これに、魔力を通せば分かる。この下の方についている水晶に触れれば自動的に通る」
そこには、白い板と下の方に水晶があった。
言われた通り、触れてみる。すると、何かが抜けていくような感じがした。
「もう充分だ」
そう言って、手を離された。
最初は透明だった水晶が黒くなっていた。私が触れるのをやめたとき、水晶の色が抜けていくのと同時に、色が浮かび上がる。色んな色が浮かぶけど、黒が多い。
「この濃さならフェレスと同じくらいはあるかもしれないな。属性は全属性みたいだが、邪が強いらしい」
「フェース?」
「あいつが強いのは聖属性だがな。色が濃いほど魔力量が多く、色の組み合わせで魔法の属性も分かる」
色ごとにどんな属性になるのかも教えてくれた。赤が火。青が水。緑が風。橙が地。
この4つはこのうち一つは持っていると言われる基本の属性で、希少なものも存在する。
黄緑が緑魔法という植物を自在に操るもの。紫が闇。黄色が光。聖が白。邪が黒。空間は無色。
「だから、これでは空間属性を持っているのかは分からん。色が見えないからな」
この色の話はどこかで聞いたような……あっ。昨日の精霊の話だ。
「せいえい」
「精霊のことか?」
「せいえい、しろ、ひかり。くろ、やみ。こえ、きいろ、ひかり。むあさき、やみ」
「精霊と色が違うのが気になるのか?」
「うん」
精霊だったら白は光属性。黒は闇属性だった。でも、この板は白は聖属性で、黒は邪属性。
「まず、前提として光属性は聖属性の派生。闇属性は邪属性の派生とされている。聖属性を持つ者は、光属性の魔法を使えるからな。同じように、邪属性を持つ者は闇魔法が使える」
それなら、フェレスは光魔法も強いのかな。
「だが、そもそもそう区別しているのは人間だけだ。聖属性も光属性の一部であることには変わりはない」
「じゃあ、やみも?」
「そうだ。人間が特別感を出したいから勝手に分けただけだ。だから、ここには黄色と紫はないだろう?」
そう言われて見返してみると、確かにその二色はない。
「とーしゃまとフェースは?じょくしぇい、なに?」
「奴は全属性あるが、私は火、風、闇、水が少しくらいだな」
フェレスも全属性持ってるんだ。そこまで珍しいわけではないのかな。でも、いっぱい属性を持っている人もいるんだから、全属性持っている人が何人かいてもおかしくないよね。
「やみ、ひる、みえう。ひかり、よる、みえう。なんで?」
「簡単な話だ。見えにくくなっているんだ。周りの色と同化してな」
じゃあ、夜に闇属性の精霊がいないわけではなくて、暗いから見えにくいだけってことなのかな。
「光は夜に姿を現すことはあまりないんだが……昨日は結構いたな」
「たくしゃん、いた」
黒い光は複数で見たことはないけど。昨日は白い光をたくさん見た。
「あれを追っていたと言っていたが、そこまで近づいてきたのか?」
「うん」
近づいてくるのがおかしいことなのかな。そういえば、最初は結構離れていたような気がする。近づいていたのは、フロー姉様を見たときに周りにいた光だけ。
「なんでついていこうと思ったか分かるか?」
「……わかんない」
言われてみれば、なんでついていこうと思ったんだろう。あのときはそれしか考えてなかった。
私の言葉を聞いた父様は何か考えている。
「黒い光は?」
「いっこだけ」
「追おうとは思わなかったか?」
「うん」
ただそこに見えていただけ。白い光みたいについていこうとは思わなかった。何が違うんだろう。白い光と黒い光は。
「私はもう戻ろう。眠いのだろう?」
そう言われたら、眠くなってきた。
「最後に言っておくが、もう光にはついていかない方がいい」
「らめなの?」
「精霊は魔力がかなり強いからな。触れてしまったら、魔力が暴走する可能性が高い。とくに、フィレンティアは魔法が不安定な状態だからな。下手したら魔法が暴走する可能性がある」
「わかうの?」
「私はルメリナの魔法を喰らったことがあるからな。それと似ているから、なんとなく分かる。それに、フェレスから聞いたからな」
フェレスから……父様とフェレスは仲がいいのかな。父様はフェレスのことよく知ってるし。フェレスからは父様の話を聞いたことはあまりないけど。
「ともかく、下手に魔力に触れたら弱体化されている魔法が暴走して強くなる可能性がある。それが嫌なら精霊に触れてはいけない」
それだけ言って、部屋から出ていった。
魔法が強くなるのは別に嫌じゃない。完全な人形に戻ってしまっても、別に構わないとまだ思っている。
「皇女殿下、お休みになって大丈夫ですよ」
そう言われたら、すぐに目を閉じてしまった。
「う~ん……ねむい……」
眠気がずっと襲ってくる。夜中に歩き回ったせいで、疲れたのかな。
「では、せめて一度起きてください。陛下がいらしているのです」
「とーしゃまが……?」
目を擦りながら体を起こす。まだ首がガクンとするけど、なんとか起きられる。私を着替えさせることはせずに、大きめの羽織をかけてきた。
そして、セリアがドアを開けた。
「来るのが早かったか?」
父様が何かを手に持って入ってきた。
「フェレスから鑑定板を貰ってきたが、出直した方がいいか?」
「らいじょーぶ……」
「そうか」
そう言って、私の隣に座ってきた。
「これに、魔力を通せば分かる。この下の方についている水晶に触れれば自動的に通る」
そこには、白い板と下の方に水晶があった。
言われた通り、触れてみる。すると、何かが抜けていくような感じがした。
「もう充分だ」
そう言って、手を離された。
最初は透明だった水晶が黒くなっていた。私が触れるのをやめたとき、水晶の色が抜けていくのと同時に、色が浮かび上がる。色んな色が浮かぶけど、黒が多い。
「この濃さならフェレスと同じくらいはあるかもしれないな。属性は全属性みたいだが、邪が強いらしい」
「フェース?」
「あいつが強いのは聖属性だがな。色が濃いほど魔力量が多く、色の組み合わせで魔法の属性も分かる」
色ごとにどんな属性になるのかも教えてくれた。赤が火。青が水。緑が風。橙が地。
この4つはこのうち一つは持っていると言われる基本の属性で、希少なものも存在する。
黄緑が緑魔法という植物を自在に操るもの。紫が闇。黄色が光。聖が白。邪が黒。空間は無色。
「だから、これでは空間属性を持っているのかは分からん。色が見えないからな」
この色の話はどこかで聞いたような……あっ。昨日の精霊の話だ。
「せいえい」
「精霊のことか?」
「せいえい、しろ、ひかり。くろ、やみ。こえ、きいろ、ひかり。むあさき、やみ」
「精霊と色が違うのが気になるのか?」
「うん」
精霊だったら白は光属性。黒は闇属性だった。でも、この板は白は聖属性で、黒は邪属性。
「まず、前提として光属性は聖属性の派生。闇属性は邪属性の派生とされている。聖属性を持つ者は、光属性の魔法を使えるからな。同じように、邪属性を持つ者は闇魔法が使える」
それなら、フェレスは光魔法も強いのかな。
「だが、そもそもそう区別しているのは人間だけだ。聖属性も光属性の一部であることには変わりはない」
「じゃあ、やみも?」
「そうだ。人間が特別感を出したいから勝手に分けただけだ。だから、ここには黄色と紫はないだろう?」
そう言われて見返してみると、確かにその二色はない。
「とーしゃまとフェースは?じょくしぇい、なに?」
「奴は全属性あるが、私は火、風、闇、水が少しくらいだな」
フェレスも全属性持ってるんだ。そこまで珍しいわけではないのかな。でも、いっぱい属性を持っている人もいるんだから、全属性持っている人が何人かいてもおかしくないよね。
「やみ、ひる、みえう。ひかり、よる、みえう。なんで?」
「簡単な話だ。見えにくくなっているんだ。周りの色と同化してな」
じゃあ、夜に闇属性の精霊がいないわけではなくて、暗いから見えにくいだけってことなのかな。
「光は夜に姿を現すことはあまりないんだが……昨日は結構いたな」
「たくしゃん、いた」
黒い光は複数で見たことはないけど。昨日は白い光をたくさん見た。
「あれを追っていたと言っていたが、そこまで近づいてきたのか?」
「うん」
近づいてくるのがおかしいことなのかな。そういえば、最初は結構離れていたような気がする。近づいていたのは、フロー姉様を見たときに周りにいた光だけ。
「なんでついていこうと思ったか分かるか?」
「……わかんない」
言われてみれば、なんでついていこうと思ったんだろう。あのときはそれしか考えてなかった。
私の言葉を聞いた父様は何か考えている。
「黒い光は?」
「いっこだけ」
「追おうとは思わなかったか?」
「うん」
ただそこに見えていただけ。白い光みたいについていこうとは思わなかった。何が違うんだろう。白い光と黒い光は。
「私はもう戻ろう。眠いのだろう?」
そう言われたら、眠くなってきた。
「最後に言っておくが、もう光にはついていかない方がいい」
「らめなの?」
「精霊は魔力がかなり強いからな。触れてしまったら、魔力が暴走する可能性が高い。とくに、フィレンティアは魔法が不安定な状態だからな。下手したら魔法が暴走する可能性がある」
「わかうの?」
「私はルメリナの魔法を喰らったことがあるからな。それと似ているから、なんとなく分かる。それに、フェレスから聞いたからな」
フェレスから……父様とフェレスは仲がいいのかな。父様はフェレスのことよく知ってるし。フェレスからは父様の話を聞いたことはあまりないけど。
「ともかく、下手に魔力に触れたら弱体化されている魔法が暴走して強くなる可能性がある。それが嫌なら精霊に触れてはいけない」
それだけ言って、部屋から出ていった。
魔法が強くなるのは別に嫌じゃない。完全な人形に戻ってしまっても、別に構わないとまだ思っている。
「皇女殿下、お休みになって大丈夫ですよ」
そう言われたら、すぐに目を閉じてしまった。
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