冷宮の人形姫

りーさん

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第一章 虐げられた姫

第34話 光の正体

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 夜中に目が覚めた。ハリナとセリアはいない。

 窓を見ても、朝が来るまでにまだ時間がかかりそう。
 一人だけなら、動く訓練をしよう。やっていても、誰も怒らない。そう思って、私は部屋の中を歩き回る。そして、窓の方に近づいた。
 ふと下の方を見たら、白い光がたくさん見えた。
 
 でも、今回はすぐに消えるようなことはなく、ずっと漂っていた。それどころか、そのうちの一つが、こっちに近づいてくる。窓を通り抜けて、私の側にまで来た。そして、ドアの方に向かう。

 その光の後をついていく。ドアを開けて、廊下を歩く。ただ歩いていく。その光だけを見て。外に出たとき、少し寒い感じがした。白い光は、木々が生い茂っているところに向かっていく。

 そのままついていこうとしたら、後ろに引っ張られた。

「何をしてる」

 声がする方を振り返ると、金髪に赤い瞳をした男の人。どこかで会ったような……?でも、名前が思い出せない。

「夜中に一人で歩き回るような真似はするな。お前を狙っている者がいないとも限らない」
「……らえ?」
「カイラード・レント・アベリニア。君の父親だ」

 そういえば、冷宮を出たばっかりのときに会ったような気もする。そして、そんなことを言われたような気も。

「ハリナとセリアはいないのか?」
「いない」

 そう言ったら、ため息をつかれた。そして、私の脇の下に手を入れて持ち上げる。

「軽いな……ちゃんと食べているのか?」
「食べてう。ぱんいっことすーぷひとくち」
「それは全然食べてないだろう……」

 でも、これでお腹いっぱいになってしまう。冷宮ではあまり食べることがなかったら、多い量は食べられない。

「夜中でも外に出るなら、使用人の数を増やしてもいいんだが……欲しいか?」

 欲しいか?と聞かれても、よく分からない。静香の記憶があるから、たとえ一人で放置されても生きてはいられると思うし、死にたくないと思っているわけでもない。

「わかんない」
「そうか。なら、今のところはその二人にするか」

 そう言って、持っている状態から、腕の上にのせて抱えた。

「フェレスから聞いたが、光が見えるそうだな」
「いま、しろいひかり、おってた」
「白なら光だな。黒いのも見えるか?」
「うん。おひる、みる」

 なんでお昼に黒い光で夜に白い光なのかは分からないけど。

「おそらくだが、それは精霊だろう。精霊は魔力が強いから、あまり魔眼が発達していなくても見ることが可能だ。白いのは、光属性を持つ精霊。黒いのは闇属性を持つものだ」

 精霊……お話とかでよく出てくる存在と同じかな。ここでは本とか読んだことないから、静香の記憶だけど。大抵が、それは神秘的な存在としてかかれている。普通なら見えないとか、そういう設定が多い。

 私を部屋に戻すつもりなのか、宮の方に歩きながら、続きを話してくれた。

「皇族の血筋のなかには、魔眼を持つ者が生まれてくることがある。その強さも人によって違うがな。私は少しぼやけて見えるくらいだが、フェレスははっきり見ることが可能だ」
「フェース、みえう?」
「聞いてないのか?あいつほどはっきりと見える奴はなかなかいないと思うが」

 何も聞いていない。あのとき、心当たりがあるようなことを言っていたのは、それが理由だったんだ。

「他に見えるのは……第一皇子と第一皇女くらいだな。魔力量は一般人よりも多少多いくらいだが、魔力は強い。お前と同じくらいはあるかもしれないな」

 魔力の多さと強さはあまり関係ないのかな。そして、私は魔力が強かったのか。比較対象なんて、ルメリナしかいなかったから、分からない。そもそも、私は魔法を使っていたという自覚さえなかったから。

「魔眼は、強いと瞳の色が黒く変わるそうだが……そんな様子は見えないな。まだ長時間は見えないんじゃないか?」
「うん。すぐきえう」

 見つけたと思って目をそらしたら見えなくなる。そういえば、なんだと思ったときも見えなくなる。意識しても見えないのかな。

「……とーしゃまは?」

 そう言ったら、一瞬動きが止まったけど、すぐに歩き出した。父様はダメだったのかな?姉様達が姉様と呼んでとか言ってきたから、これでいいかと思ったけど。

 怒られるかと思ったけど怒られないで、私の質問に答えてくれた。

「私は長時間は見えるが、はっきりとは見えないな。色の違いが分かるくらいだ。フェレスくらいになると、どのくらいの量なのか、どのくらいの強さなのか、場合によっては使っている魔法も分かるらしいがな。あいつのことだからどこまで本当か分からんが」

 ハリナの話でも、昔から魔法はすごかったらしいし、そんなことができると言われてもあまり驚かない。そうだろうねって感じ。

「うめいな、みえたかな?」
「ルメリナか?見れたと思うぞ。一族のなかでは最高と言われる魔力の持ち主だったそうだからな」

 そうなんだ。そう言われてもよく分からないけど。今まで目に見えるように魔法を使ってたのはルメリナだけで、他には第五皇子しか知らない。フェレスは一瞬だったからよく分からないし。

「魔力の強さは鍛練すれば、多少は大きくなるが、大抵は元々生まれ持ったものだからな。後天的になる可能性があるのは、ローランドくらいだろう。魔力量だけは多いからな。フェレスの半分くらいだったはずだ」

 そう言われたら、多いと思えない。フェレスがおかしいだけなのかもしれないけど。具体的にはどのくらいなのかな。

「どえくあい?」
「数字にするんなら……30万くらいか?一般が3000~4000くらいだな」

 一般の100倍なんだ。確かに、そう考えたら多いかも。なら、フェレスは60万くらいになるってことかな。

「とーしゃまは?」
「私はだいたい50万だ。ちなみに、奴は体にある分なら・・・・・・・60万くらいだな」

 私の予想と同じ……体にある分なら?それって、どういう意味?

「あいつは魔力が多すぎるからな。魔力をためておける魔道具を身につけて、そっちに移しているが、それも合わせたら100万は簡単に越える」

 100万か……多いな。普通ならもっと驚くかもしれないけど、人形から脱却したわけではない。まだ、多いね。すごいね。って感じにしか思えない。

「てぃあ、どえくあいかな」
「知りたいなら、確かめてみるか?鑑定板を使えばすぐに分かるが」

 鑑定板?なんなんだろう。言葉からすると、何かを調べるのに使うんだと思う。

「たしかめう」
「なら、明日持ってくるとしよう。もう部屋にはついたから、寝るといい」

 自分でも気づかないうちに、宮に入って部屋の前まで来ていたらしい。父様は私を抱えたまま部屋に入って、私をベッドの上におろした。

「寝るといいとは言ったが、無理に寝る必要はない。だが、一人で部屋から出るようなことはするな」

 それだけ言って、父様は静かにドアを閉めた。
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