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学園入学
21 新しい環境
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会場入りした二人は、真っ先に生徒たちの注目を浴びる。
(緊張で倒れてしまいそうだわ……)
緊張のあまり、動きが固まっているところがあったが、セルネスに迷惑はかけられないという思いでなんとか王子の婚約者という重責をこなしていく。
セルネスはというと、こんなのは慣れているといわんばかりに動じることもしなかった。
(やっぱり、王子殿下は違うんだわ……)
育ちだけでなく、精神面の強さでも圧倒的に負けていたアドリアンネは、少し落ち込んでしまう。
そのままセルネスのエスコートで席につき、入学式が始まった。
(……あれ?この光景、前にもどこかで……)
自分が席に座って壇上を見たとき、アドリアンネは強い既視感に襲われた。
絶対にどこかで見たはずなのに、それがどこだったのか、アドリアンネは思い出せない。
思い出そうとすると、なぜかもやがかかってしまう。
そのことが気になってしまい、クーファの言葉も、教師の言葉も何も頭に入ってこなかった。
アドリアンネが無意識のうちに会場から出たときに、我に返る。
『もう入学式って終わりましたか?』
セルネスの裾を周りに気づかれない程度に軽く引っ張り、紙を見せて尋ねる。
「終わったけど……気づいてなかったの?」
アドリアンネは、少し恥ずかしがりながらこくりと頷く。
『ちょっと考え事をしてまして。すみません』
「いや、謝ることはないけど。それじゃあ、教室に向かおうか」
『同じクラスでしたか?』
アドリアンネがそう紙に書いて聞いてみた。
入学前で聞いたクラス分けでは、アドリアンネとセルネスは違うクラスだった。
それに、少しほっとしながらも、どこかで残念に思っていたのだが、まるで共に行こうとしているセルネスに疑問を感じた。
「うん。同じにしてもらったから」
そう微笑みながら答えるセルネスに、アドリアンネはこれ以上は聞かないほうがいいと本能的に感じ取った。
◇◇◇
セルネスとアドリアンネは特別クラス。
特別クラスは、優秀な成績を修めている者、伯爵以上の上級貴族、強い異能を持っている者が所属する。
アドリアンネも伯爵家であるが、もう長らく異能持ちも輩出しておらず、大して力を持っている家でもないため、普通クラスになるはずだった。
(セルネス殿下は何を言ったのかしら……)
王子の婚約者を普通クラスになんかいれられないとでも言ったのではないか。
そう思わなければ、セルネスが何かよからぬことをしたのではないかと疑心暗鬼になってしまう。
セルネスに手を引かれてアドリアンネが教室へと入ると、一気に騒がしくなった。
「セルネス殿下よ!」
「同じクラスだなんて光栄だわ……!」
「エスコートしているのはもしかして……」
セルネスにエスコートされている女性として、アドリアンネのほうにも注目が集まる。
(やっぱり、セルネス殿下は目立つのね……)
あまり目立ちたくはなかったアドリアンネは、セルネスから離れようとするが、セルネスはさりげなく手を握って離さない。
(えっ?どうして?)
セルネスは、そのまま手を引いて、席まで連れていった。
アドリアンネは、最後までセルネスの行動についていけていなかった。
◇◇◇
登校初日を終え、そろそろ屋敷に帰ろうとアドリアンネが支度をしていると、セルネスの姿が目に入る。
セルネスの周りには、たくさんの人が集まっていた。そのほとんどが女性だった。
(王子という身分も大変なのね……)
目立つのが好きではないアドリアンネも、セルネスの状況に多少同情した。
でも、そんな女性に囲まれているセルネスが、いろんな女性に目を向けているのを見ると、なぜかアドリアンネはもやもやする。
その光景を見ていたくなくて、アドリアンネは席を立とうとすると、アドリアンネの周りにも人が集まってくる。
「あなたがセルネス殿下の婚約者ですの?」
目の前の女子がそう聞いてきて、アドリアンネはこくりと頷く。
「あなたがワーズソウルの真珠と呼ばれているお方ですか。その話に違わずお美しいですわ」
『ありがとうございます』
真珠の話は初耳だったが、褒めてくれていると感じたので、そう書いて見せると、周りがこそこそと話し出す。
だが、その声は大きかったため、アドリアンネの耳にも聞こえていた。
「話せないって噂は本当なのね」
「伯爵家と言っても、末端の末端でしょう?なぜセルネス殿下と……」
その声を聞きながら、それは私も知りたいとアドリアンネは同意してしまう。
アドリアンネも、いまだに根拠のある理由は知らないからだ。異能は公表していないし、末端の末端なのも事実。
今は、セルネスとの仲も良好なので、続けてもいいと思ってはいるものの、最初は申し訳なさが勝っていた。
「アドリアンネ。よかったら、学校を見て回らない?」
いつの間にか近づいてきていたセルネスにさりげなく手を握られて、アドリアンネは少し赤面してしまう。
そして、ゆっくりと頷いた。
◇◇◇
学校を歩いているとき、アドリアンネはセルネスに先ほど気になったことを聞いてみる。
『先ほど、私のことを呼び捨てで呼んでいましたが』
「うん。そっちのほうが牽制できるかなって」
笑顔でそう答えるセルネスに、何を牽制するつもりだったのだろうと首をかしげる。
「これからはそう呼ぼうか。婚約者なのだから問題はないだろうし」
『私の心臓が持たないのでやめてください』
紙で顔を隠しながら、アドリアンネはそう訴えた。
(緊張で倒れてしまいそうだわ……)
緊張のあまり、動きが固まっているところがあったが、セルネスに迷惑はかけられないという思いでなんとか王子の婚約者という重責をこなしていく。
セルネスはというと、こんなのは慣れているといわんばかりに動じることもしなかった。
(やっぱり、王子殿下は違うんだわ……)
育ちだけでなく、精神面の強さでも圧倒的に負けていたアドリアンネは、少し落ち込んでしまう。
そのままセルネスのエスコートで席につき、入学式が始まった。
(……あれ?この光景、前にもどこかで……)
自分が席に座って壇上を見たとき、アドリアンネは強い既視感に襲われた。
絶対にどこかで見たはずなのに、それがどこだったのか、アドリアンネは思い出せない。
思い出そうとすると、なぜかもやがかかってしまう。
そのことが気になってしまい、クーファの言葉も、教師の言葉も何も頭に入ってこなかった。
アドリアンネが無意識のうちに会場から出たときに、我に返る。
『もう入学式って終わりましたか?』
セルネスの裾を周りに気づかれない程度に軽く引っ張り、紙を見せて尋ねる。
「終わったけど……気づいてなかったの?」
アドリアンネは、少し恥ずかしがりながらこくりと頷く。
『ちょっと考え事をしてまして。すみません』
「いや、謝ることはないけど。それじゃあ、教室に向かおうか」
『同じクラスでしたか?』
アドリアンネがそう紙に書いて聞いてみた。
入学前で聞いたクラス分けでは、アドリアンネとセルネスは違うクラスだった。
それに、少しほっとしながらも、どこかで残念に思っていたのだが、まるで共に行こうとしているセルネスに疑問を感じた。
「うん。同じにしてもらったから」
そう微笑みながら答えるセルネスに、アドリアンネはこれ以上は聞かないほうがいいと本能的に感じ取った。
◇◇◇
セルネスとアドリアンネは特別クラス。
特別クラスは、優秀な成績を修めている者、伯爵以上の上級貴族、強い異能を持っている者が所属する。
アドリアンネも伯爵家であるが、もう長らく異能持ちも輩出しておらず、大して力を持っている家でもないため、普通クラスになるはずだった。
(セルネス殿下は何を言ったのかしら……)
王子の婚約者を普通クラスになんかいれられないとでも言ったのではないか。
そう思わなければ、セルネスが何かよからぬことをしたのではないかと疑心暗鬼になってしまう。
セルネスに手を引かれてアドリアンネが教室へと入ると、一気に騒がしくなった。
「セルネス殿下よ!」
「同じクラスだなんて光栄だわ……!」
「エスコートしているのはもしかして……」
セルネスにエスコートされている女性として、アドリアンネのほうにも注目が集まる。
(やっぱり、セルネス殿下は目立つのね……)
あまり目立ちたくはなかったアドリアンネは、セルネスから離れようとするが、セルネスはさりげなく手を握って離さない。
(えっ?どうして?)
セルネスは、そのまま手を引いて、席まで連れていった。
アドリアンネは、最後までセルネスの行動についていけていなかった。
◇◇◇
登校初日を終え、そろそろ屋敷に帰ろうとアドリアンネが支度をしていると、セルネスの姿が目に入る。
セルネスの周りには、たくさんの人が集まっていた。そのほとんどが女性だった。
(王子という身分も大変なのね……)
目立つのが好きではないアドリアンネも、セルネスの状況に多少同情した。
でも、そんな女性に囲まれているセルネスが、いろんな女性に目を向けているのを見ると、なぜかアドリアンネはもやもやする。
その光景を見ていたくなくて、アドリアンネは席を立とうとすると、アドリアンネの周りにも人が集まってくる。
「あなたがセルネス殿下の婚約者ですの?」
目の前の女子がそう聞いてきて、アドリアンネはこくりと頷く。
「あなたがワーズソウルの真珠と呼ばれているお方ですか。その話に違わずお美しいですわ」
『ありがとうございます』
真珠の話は初耳だったが、褒めてくれていると感じたので、そう書いて見せると、周りがこそこそと話し出す。
だが、その声は大きかったため、アドリアンネの耳にも聞こえていた。
「話せないって噂は本当なのね」
「伯爵家と言っても、末端の末端でしょう?なぜセルネス殿下と……」
その声を聞きながら、それは私も知りたいとアドリアンネは同意してしまう。
アドリアンネも、いまだに根拠のある理由は知らないからだ。異能は公表していないし、末端の末端なのも事実。
今は、セルネスとの仲も良好なので、続けてもいいと思ってはいるものの、最初は申し訳なさが勝っていた。
「アドリアンネ。よかったら、学校を見て回らない?」
いつの間にか近づいてきていたセルネスにさりげなく手を握られて、アドリアンネは少し赤面してしまう。
そして、ゆっくりと頷いた。
◇◇◇
学校を歩いているとき、アドリアンネはセルネスに先ほど気になったことを聞いてみる。
『先ほど、私のことを呼び捨てで呼んでいましたが』
「うん。そっちのほうが牽制できるかなって」
笑顔でそう答えるセルネスに、何を牽制するつもりだったのだろうと首をかしげる。
「これからはそう呼ぼうか。婚約者なのだから問題はないだろうし」
『私の心臓が持たないのでやめてください』
紙で顔を隠しながら、アドリアンネはそう訴えた。
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