25 / 54
第三章 休みくらい好きにさせて
第7話 緑鷺 1
しおりを挟む
適当に理由作りに協力させられた。お兄様が来ることは予想していなかっただろうが、それを利用して、私が教えに行けない口実を作ったのだ。
あのスパルタは、教えるのが大好きだからね。その場にいるやつは全員巻き込むから、私も行ったらやらされそうだな。
私は、休憩の意味合いも込めて、ベッドでうつぶせにゴロゴロしていると、誰かが入ってくる。悪意も感じなかったし、廊下を歩く音も聞こえなかったので、ドアの音がしなければ、私は入ってきたのに気がつかなかっただろう。
でも、ドアの方を見ても誰もいない。ドアが開いているので。誰かが入ってきたのは間違いないんだけど。
「ごーしゅーじん!」
そんな声とともに、何かが私の背中に乗ってくる。いや、落下してくるという方が正しいかもしれない。
誰なのか予想はできるけど、ゴロゴロと寝ていたので、反応が送れてしまった。
「ぐふっ!」
見事、私は下敷きになる。柔らかいベッドじゃなければ、冗談抜きで骨がポキッと鳴ったかもしれない。ベッドがクッションのようになり、衝撃を吸収してくれた。
「……レア。重いからどいて」
私を下敷きにしてきたのは、レアだ。声と、私の呼び方と、こんな登場でわかりきっていたことだけど。
「ご主人!女の子に重いはしつれーじゃない!?」
「私よりも年上のやつが何を言ってるのよ」
女の子という言葉は、本当に幼い子どもにだけ使っていい言葉なのだ。こんな、見た目だけは子どもな存在に使う言葉ではない。
私が冷たくそう言ったら、レアはほっぺを膨らませる。
「レアだって、好きで長生きしてるわけじゃないもん!死なないからしかたないじゃん!」
「……えっ?」
今、何て言った?死なない?……もしかして、レアが幼いけど年上なのは、不老不死とかそんな理由?でも、いくら魔法があるファンタジーな世界だからって、簡単に不老不死とかなれるものなの?
レアの年齢から不老不死が始まったなら、10歳くらいのころにその能力を手に入れたことになるけど、そんなことが可能なの?
「それってどういうーー」
「お、奥様からお菓子を貰ってきたから一緒に食べない?」
私が何か聞こうとすると、それをシャットアウトしてきた。
そして、ぐいぐいと私に何かを押しつけてくる。両手で抱えられるくらいの大きさの袋で、そこにはクッキーと思われるものが入っている。
あんな突撃みたいなのがあったのに、よく割れずにいられたなと感心した。それを一口食べると、サクサクしていて結構おいしい。
「……それで、わざわざ姿を現したのはなんでなの?」
メイアやアイリスは、姿から使用人に扮することが可能だろうけど、子どもの容姿のレアには絶対に無理だ。
私がそう思って聞いてみると、レアは真剣な表情になった。
「これこれ。サリーから渡してくれって頼まれたの。ご主人がお願いしてたやつだって」
レアがそう言って、どこに隠し持っていたのだろうという量の紙を渡してきた。
それは、5枚あり、しかも、しわとかもあまりないので、本当にあのベッドダイブでよく無事だったなと感心するばかりだ。
それにしても、サリアかメイアが直接来ることはできなかったのだろうか。二人が来れなかったとしても、一般隊員も来れないような状況なのだろうか。
そう思いながら読んでみると、その理由がわかった。
あの宇宙人ヒロインのことだけど、どうやら転生者ではなさそうだ。母親の言動による洗脳状態みたいになっているとのこと。つまりは、母親が転生者である可能性が高い。可能性でしかないのは、当然だけど、白梟のみんなは転生のことなんて知らないから。転生ということを知らなければ、その人がおかしな言動をしているだけにしか見えないだろう。
そこまでは、まぁ普通かな、という感じだ。あの宇宙人の言動にも納得できた。
問題はここからだ。
その母親が、『青の月』と交流がある可能性があるという。普通に『青の月』の一員としてなのか、ただの交流相手なのかまでは書かれてはいなかったけど、二人が来ないのは、少し詳しく調べているのだろう。
あの二人のことだから、へまをしてやられることはないだろうけど、ちょっと心配になってしまう。サリアはそこまで交流があったわけではないけど、メイアは最初に会った白梟なので、情のようなものはある。例えるなら、友人のような存在だ。まぁ、ソフィアたちやマナと比べればそうでもないけど。
「レアはこの内容を知ってるの?」
私がそう聞くと、レアはもちろんという笑顔でうなずいた。
「読むなって言われたけど、それは読めって意味だからね!」
ちげぇよ。どこぞの押すなよの芸人じゃないんだから。あの真面目なサリアが、そんなお笑いみたいなことをするわけがないでしょ。まぁ、メイアとかならやってもおかしくないかもしれないけど……
「そんなわけで、レアもちょっと離れるから!」
「そうなの?」
「サリーとルーくんとお話することがあるんだよね」
サリーとルーくんというのは、サリアとルクトのことだよね。隊長同士なら、何か話すことがあるのかもしれない。そんなわけでという言い方がちょっと気になるけど。
「ご主人の護衛にはアイちゃんが来るから安心してね~」
「安心できないんだけど?」
命の危機からは守ってくれるかもしれないけど、心のケアができないのよ。人の心を勝手に読んで、勝手に通訳するんだもの。
「アイちゃんが何かしたの?レアから叱っておこうか?」
……その叱っておくというのが、私の想像をはるかに越えそうなのは、私の考えすぎだろうか?
そう思って、私は「別にいいわ」と言った。
「どうしても嫌なら、リーちゃんとルーちゃんでもいいよ?」
「……誰?」
「緑鷺にいるんだけどねぇ~。潜入活動以外もいろいろできるんだよね~」
「へぇ~……ちょっと気になるわね」
緑鷺は、どこかで聞いたことがあるような気がするけど……。今までいろいろありすぎたせいで、どこで聞いたかはっきりと覚えていない。
「それじゃあ、ちょっと呼んでみるね!」
そうやって、レアは笑顔で出ていった。
あのスパルタは、教えるのが大好きだからね。その場にいるやつは全員巻き込むから、私も行ったらやらされそうだな。
私は、休憩の意味合いも込めて、ベッドでうつぶせにゴロゴロしていると、誰かが入ってくる。悪意も感じなかったし、廊下を歩く音も聞こえなかったので、ドアの音がしなければ、私は入ってきたのに気がつかなかっただろう。
でも、ドアの方を見ても誰もいない。ドアが開いているので。誰かが入ってきたのは間違いないんだけど。
「ごーしゅーじん!」
そんな声とともに、何かが私の背中に乗ってくる。いや、落下してくるという方が正しいかもしれない。
誰なのか予想はできるけど、ゴロゴロと寝ていたので、反応が送れてしまった。
「ぐふっ!」
見事、私は下敷きになる。柔らかいベッドじゃなければ、冗談抜きで骨がポキッと鳴ったかもしれない。ベッドがクッションのようになり、衝撃を吸収してくれた。
「……レア。重いからどいて」
私を下敷きにしてきたのは、レアだ。声と、私の呼び方と、こんな登場でわかりきっていたことだけど。
「ご主人!女の子に重いはしつれーじゃない!?」
「私よりも年上のやつが何を言ってるのよ」
女の子という言葉は、本当に幼い子どもにだけ使っていい言葉なのだ。こんな、見た目だけは子どもな存在に使う言葉ではない。
私が冷たくそう言ったら、レアはほっぺを膨らませる。
「レアだって、好きで長生きしてるわけじゃないもん!死なないからしかたないじゃん!」
「……えっ?」
今、何て言った?死なない?……もしかして、レアが幼いけど年上なのは、不老不死とかそんな理由?でも、いくら魔法があるファンタジーな世界だからって、簡単に不老不死とかなれるものなの?
レアの年齢から不老不死が始まったなら、10歳くらいのころにその能力を手に入れたことになるけど、そんなことが可能なの?
「それってどういうーー」
「お、奥様からお菓子を貰ってきたから一緒に食べない?」
私が何か聞こうとすると、それをシャットアウトしてきた。
そして、ぐいぐいと私に何かを押しつけてくる。両手で抱えられるくらいの大きさの袋で、そこにはクッキーと思われるものが入っている。
あんな突撃みたいなのがあったのに、よく割れずにいられたなと感心した。それを一口食べると、サクサクしていて結構おいしい。
「……それで、わざわざ姿を現したのはなんでなの?」
メイアやアイリスは、姿から使用人に扮することが可能だろうけど、子どもの容姿のレアには絶対に無理だ。
私がそう思って聞いてみると、レアは真剣な表情になった。
「これこれ。サリーから渡してくれって頼まれたの。ご主人がお願いしてたやつだって」
レアがそう言って、どこに隠し持っていたのだろうという量の紙を渡してきた。
それは、5枚あり、しかも、しわとかもあまりないので、本当にあのベッドダイブでよく無事だったなと感心するばかりだ。
それにしても、サリアかメイアが直接来ることはできなかったのだろうか。二人が来れなかったとしても、一般隊員も来れないような状況なのだろうか。
そう思いながら読んでみると、その理由がわかった。
あの宇宙人ヒロインのことだけど、どうやら転生者ではなさそうだ。母親の言動による洗脳状態みたいになっているとのこと。つまりは、母親が転生者である可能性が高い。可能性でしかないのは、当然だけど、白梟のみんなは転生のことなんて知らないから。転生ということを知らなければ、その人がおかしな言動をしているだけにしか見えないだろう。
そこまでは、まぁ普通かな、という感じだ。あの宇宙人の言動にも納得できた。
問題はここからだ。
その母親が、『青の月』と交流がある可能性があるという。普通に『青の月』の一員としてなのか、ただの交流相手なのかまでは書かれてはいなかったけど、二人が来ないのは、少し詳しく調べているのだろう。
あの二人のことだから、へまをしてやられることはないだろうけど、ちょっと心配になってしまう。サリアはそこまで交流があったわけではないけど、メイアは最初に会った白梟なので、情のようなものはある。例えるなら、友人のような存在だ。まぁ、ソフィアたちやマナと比べればそうでもないけど。
「レアはこの内容を知ってるの?」
私がそう聞くと、レアはもちろんという笑顔でうなずいた。
「読むなって言われたけど、それは読めって意味だからね!」
ちげぇよ。どこぞの押すなよの芸人じゃないんだから。あの真面目なサリアが、そんなお笑いみたいなことをするわけがないでしょ。まぁ、メイアとかならやってもおかしくないかもしれないけど……
「そんなわけで、レアもちょっと離れるから!」
「そうなの?」
「サリーとルーくんとお話することがあるんだよね」
サリーとルーくんというのは、サリアとルクトのことだよね。隊長同士なら、何か話すことがあるのかもしれない。そんなわけでという言い方がちょっと気になるけど。
「ご主人の護衛にはアイちゃんが来るから安心してね~」
「安心できないんだけど?」
命の危機からは守ってくれるかもしれないけど、心のケアができないのよ。人の心を勝手に読んで、勝手に通訳するんだもの。
「アイちゃんが何かしたの?レアから叱っておこうか?」
……その叱っておくというのが、私の想像をはるかに越えそうなのは、私の考えすぎだろうか?
そう思って、私は「別にいいわ」と言った。
「どうしても嫌なら、リーちゃんとルーちゃんでもいいよ?」
「……誰?」
「緑鷺にいるんだけどねぇ~。潜入活動以外もいろいろできるんだよね~」
「へぇ~……ちょっと気になるわね」
緑鷺は、どこかで聞いたことがあるような気がするけど……。今までいろいろありすぎたせいで、どこで聞いたかはっきりと覚えていない。
「それじゃあ、ちょっと呼んでみるね!」
そうやって、レアは笑顔で出ていった。
94
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつもりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。