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第三章 休みくらい好きにさせて
第8話 緑鷺 2
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部屋でまったりとしていると、どこからか二人の少女が入ってくる。少女と言っても、中学生くらいには見えるので、私と年はほとんど同じかもしれない。悪意は特には感じられないな。
そのまま無言で私の方に近づいてくると、覗き込むような感じで聞いてきた。
「あなたがリリアン様ですかー?」
「あなたがご主人様ですかー?」
少し離れていたときは気づかなかったけど、二人はドッペルゲンガーかと思うくらいに顔が似ている。違うのは、声と瞳の色くらいだ。私から見て右にいるのが赤い瞳で、左にいるのが紫の瞳。そして、地毛なのかは知らないけど、完全な金髪なので、どちらも毒々しいような見た目だ。結構な美少女だけどね。
「あなたたちは?」
「私はリーナ」
「私はルーナ」
「「レア様のご命令で参ったのです」」
お互いに自分の名前を私に言うと、最後は息ぴったりでここにいる理由を伝える。それなら、彼女たちがレアの言っていたリーちゃんとルーちゃんって子達かな……って、うん?レア様?なんであの子が様つけで呼ばれているの?
「レア様ってなによ」
私がそう聞くと、二人は目を輝かせる。
「レア様は我らが至高なるお方!」
「レア様は我らが崇めるべきお方!」
あっ、これはヤバイやつだ。あのロリデビルを崇めるならヤバイやつだ。白梟と緑鷺で部隊が違うとはいえ、レアの本性を知らないとは思えない。知っていて崇めているならヤバイ奴らだ。
私がだらだらと汗を流していると、ドアをノックする音が聞こえる。私が「どうぞ」と入室を促すと、入ってきたのはメイア。何かお盆のようなものを持っていたが、部屋に入ってきた瞬間、それを地面に落とした。
「なななな、なんでここにツイン・デビルズが……」
なにその中二病になりかけている小学生が考えそうなコンビ名は。それにしても、緑鷺で、双子で、悪魔扱いされるって、どこかで聞いたことがあるような気がするんだけど……どこで聞いたんだったかな?
「あっ、メイメイだ!」
「メイメイ!お仕事は終わったのか~?」
メイアの存在に気づいたリーナとルーナは、メイアの方に駆け寄っていく。メイアは怯えたような表情をして、「こっち来るなー!」と叫びながら、二人に掌打を喰らわせている。
そんな光景を見ながら、私は先程の話をどこで聞いたのか思い出している。
『レアと同じくらいヤバイやつですね。緑鷺に所属しているやつらで、実力はあるんですけど、身勝手な行動が多くて、白梟になっていないやつらです』
そんな声が、私の脳内で再生される。それと同時に、私は悟った。この二人が、サリアの言っていた緑鷺でヤバイ奴らということを。
それを悟った瞬間に、さらに汗が流れ始める。もう、着替えた方がいいだろうというくらいには。
「いきなり殴るなんてひどくないか!?」
「問答無用はひどくないか!?」
「いつも問答無用のあんたらには言われたくないわよ!」
リーナとルーナとメイアが2対1で言い合いしているけど、そんなのが気にならないくらいには、私は焦っていた。
ヤバイと言われるような奴らなら、アイリスの方がまだましだったかもしれない。なんか、殺意も悪意もなにもないのに、天敵と対峙しているような気分だ。
いつでも殺れるけど、生かされている。そんな気分。その天敵たちは、今はメイアと向き合っているけど。
「それで、なんであんたたちがここにいるのよ!緑鷺は旦那様の管轄でしょうが!」
えっ?そうなの?と思ったが、すぐに白梟は私に送られたものだったことに気がついた。元々は全部お父様のものだ。無意識に私物化していたことにちょっと反省しながらも、このよくわからない茶番の見学をする。
「レア様のご命令はあんなジジイよりも優先されるのね!」
「レア様のご命令は絶対なのね!」
おいおい。仮にも主はお父様なんだから、そのお父様がいる場所でお父様の陰口はまずいだろ。アイリスも、レアのいる場所でレアの情報を密告するような馬鹿な真似はしなかったぞ?
レアだって、なるべく私には本性を隠そうとしていたのに。あんたらはレア以下なのか。
「どういう命令が下ったのよ?」
「レア様のお気に入りの主をなんとしてでも守れとのことなのです」
「なので、メイアはお呼びじゃないのね」
いや、お守りなら、どちらかといえばメイアがいてほしいんだけど……。サリアがヤバイ奴ら扱いするような子達だけで一緒にいるのは苦痛でしかないんだけど。
私は立ち上がって、去ろうとするメイアの肩を掴む。
「私はお呼びだから一緒にいてね」
「そんな!私が死んじゃうじゃないですか!」
「安心するのね!私が治してあげるのね!」
ドーンと胸を張っているリーナに、メイアがガクガク震えている。そんなに震えるような発言をしていただろうか?治してあげると言っただけなのに。それだけで、恐怖対象になるというの?
「あなたたちに体は預けないわ。何をされるかわかったものじゃないもの」
「むぅー、つまんないのね!」
リーナはそう言って、どんとソファに腰かけた。ルーナも、同じように腰かける。
「それじゃあ、私は寝るけど、逃げないでよね?」
「安心するのね!私たちが逃がさないようにするのね!」
お前らの発言が一番安心できないんだけど。というか、メイアにいてほしいのは、お前らの存在が不安だからだっつーの。
「あんたらだけの空間にいたくないからなんだけどね」
「「失礼な!」」
リーナとルーナのそんな声が聞こえたけど、私は気にせずに、ソフィアにもらった薬を飲んで、眠りについた。
そのまま無言で私の方に近づいてくると、覗き込むような感じで聞いてきた。
「あなたがリリアン様ですかー?」
「あなたがご主人様ですかー?」
少し離れていたときは気づかなかったけど、二人はドッペルゲンガーかと思うくらいに顔が似ている。違うのは、声と瞳の色くらいだ。私から見て右にいるのが赤い瞳で、左にいるのが紫の瞳。そして、地毛なのかは知らないけど、完全な金髪なので、どちらも毒々しいような見た目だ。結構な美少女だけどね。
「あなたたちは?」
「私はリーナ」
「私はルーナ」
「「レア様のご命令で参ったのです」」
お互いに自分の名前を私に言うと、最後は息ぴったりでここにいる理由を伝える。それなら、彼女たちがレアの言っていたリーちゃんとルーちゃんって子達かな……って、うん?レア様?なんであの子が様つけで呼ばれているの?
「レア様ってなによ」
私がそう聞くと、二人は目を輝かせる。
「レア様は我らが至高なるお方!」
「レア様は我らが崇めるべきお方!」
あっ、これはヤバイやつだ。あのロリデビルを崇めるならヤバイやつだ。白梟と緑鷺で部隊が違うとはいえ、レアの本性を知らないとは思えない。知っていて崇めているならヤバイ奴らだ。
私がだらだらと汗を流していると、ドアをノックする音が聞こえる。私が「どうぞ」と入室を促すと、入ってきたのはメイア。何かお盆のようなものを持っていたが、部屋に入ってきた瞬間、それを地面に落とした。
「なななな、なんでここにツイン・デビルズが……」
なにその中二病になりかけている小学生が考えそうなコンビ名は。それにしても、緑鷺で、双子で、悪魔扱いされるって、どこかで聞いたことがあるような気がするんだけど……どこで聞いたんだったかな?
「あっ、メイメイだ!」
「メイメイ!お仕事は終わったのか~?」
メイアの存在に気づいたリーナとルーナは、メイアの方に駆け寄っていく。メイアは怯えたような表情をして、「こっち来るなー!」と叫びながら、二人に掌打を喰らわせている。
そんな光景を見ながら、私は先程の話をどこで聞いたのか思い出している。
『レアと同じくらいヤバイやつですね。緑鷺に所属しているやつらで、実力はあるんですけど、身勝手な行動が多くて、白梟になっていないやつらです』
そんな声が、私の脳内で再生される。それと同時に、私は悟った。この二人が、サリアの言っていた緑鷺でヤバイ奴らということを。
それを悟った瞬間に、さらに汗が流れ始める。もう、着替えた方がいいだろうというくらいには。
「いきなり殴るなんてひどくないか!?」
「問答無用はひどくないか!?」
「いつも問答無用のあんたらには言われたくないわよ!」
リーナとルーナとメイアが2対1で言い合いしているけど、そんなのが気にならないくらいには、私は焦っていた。
ヤバイと言われるような奴らなら、アイリスの方がまだましだったかもしれない。なんか、殺意も悪意もなにもないのに、天敵と対峙しているような気分だ。
いつでも殺れるけど、生かされている。そんな気分。その天敵たちは、今はメイアと向き合っているけど。
「それで、なんであんたたちがここにいるのよ!緑鷺は旦那様の管轄でしょうが!」
えっ?そうなの?と思ったが、すぐに白梟は私に送られたものだったことに気がついた。元々は全部お父様のものだ。無意識に私物化していたことにちょっと反省しながらも、このよくわからない茶番の見学をする。
「レア様のご命令はあんなジジイよりも優先されるのね!」
「レア様のご命令は絶対なのね!」
おいおい。仮にも主はお父様なんだから、そのお父様がいる場所でお父様の陰口はまずいだろ。アイリスも、レアのいる場所でレアの情報を密告するような馬鹿な真似はしなかったぞ?
レアだって、なるべく私には本性を隠そうとしていたのに。あんたらはレア以下なのか。
「どういう命令が下ったのよ?」
「レア様のお気に入りの主をなんとしてでも守れとのことなのです」
「なので、メイアはお呼びじゃないのね」
いや、お守りなら、どちらかといえばメイアがいてほしいんだけど……。サリアがヤバイ奴ら扱いするような子達だけで一緒にいるのは苦痛でしかないんだけど。
私は立ち上がって、去ろうとするメイアの肩を掴む。
「私はお呼びだから一緒にいてね」
「そんな!私が死んじゃうじゃないですか!」
「安心するのね!私が治してあげるのね!」
ドーンと胸を張っているリーナに、メイアがガクガク震えている。そんなに震えるような発言をしていただろうか?治してあげると言っただけなのに。それだけで、恐怖対象になるというの?
「あなたたちに体は預けないわ。何をされるかわかったものじゃないもの」
「むぅー、つまんないのね!」
リーナはそう言って、どんとソファに腰かけた。ルーナも、同じように腰かける。
「それじゃあ、私は寝るけど、逃げないでよね?」
「安心するのね!私たちが逃がさないようにするのね!」
お前らの発言が一番安心できないんだけど。というか、メイアにいてほしいのは、お前らの存在が不安だからだっつーの。
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