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第三章 休みくらい好きにさせて
第16話 街中デート!? 2
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さて、見て回るのを提案したのはいいんだけど、私もこの街にそこまで詳しいというわけではない。
私は、とりあえず目のついた方を指差した。
「じゃあ、こっちから回りましょう」
有無を言わさずに、引きずるようにカインを連れていく。だって、そこには何があるのかとか聞かれれば答えられないし。
でも、スタンピードで指揮経験があるだけあり、すぐにカインがリードするようなことになった。
やっぱり身長が高くて男の人だと、歩くスピードも速いもの。でも、ゆっくり歩いてくれる。
正確には、カインが人混みではぐれないように、しっかりと手を繋いで、私のペースに合わせている。
「良い街だな」
ずいぶんと大人びた表情で、カインはボソッと呟く。
カインが、初めて次期公爵っぽく見えたわ。
まるで、ここに視察に来たかのように、辺りを観察している。
普段からこんな感じなら、私ももうちょっと扱いをましにするんだけどなぁ。ヘタレには、私は関わりたいとは思わないんだよ。ヒロインから守ってくれなさそうだもの。
ヒロインとは、関わりたくないと思っているのに、その可能性が高まりそうなこいつの側にはいたくない。一緒にいてもいいと考えたのは、ヒロインがいないとわかっているからというのもあるくらいだ。
まぁ、あのヒロインにちょっとは同情している。でも、それだけだ。私には何もできない。
まだ、モニカちゃんみたいに家族を人質に取られているとか、そういうのだったらまだなんとかできたかもしれない。
でも、向こうは家族間の問題だ。部外者が口出しすれば、余計に拗れるに違いないだろう。
「……表向きは、だけど」
思わずそう呟いてしまった。
知っているから。良い街というのは、人々が笑って暮らせる街ということだ。でも、よく見ればホームレスのような人たちがいる。そんな人たちには、誰も見向きもしない。
これが現実なのだ。発展すればするほど、こういう人たちは出てきてしまうもの。それのすべてに手を差し伸べるなんて、どんな聖人にもできないだろう。
人を雇えばいいというのは、簡単に言うけど難しいことだ。給料が払えないといけないから経済面での問題もあるし、人が多すぎると、割り振る仕事は少なくなる。
それならば、労働者は喜ぶかもしれない。でも、それで給料が少なかったら、反発もされるかもしれない。
最低ラインの給料を払いつつ多くの人を雇うことができるのは貴族の屋敷くらい。でも、貴族はどこの馬の骨ともわからない人間なんて迎え入れない。
当然だけど、貴族には暗殺などの危険が付きまとうため、やはり身分がしっかりしている人を迎えたいのだ。
これは、どっちが悪いとかはないけど、問題にはなってしまうだろう。
そう思っての発言だったけど、カインが、えっ?と言いたそうな表情をしながら、振り返る。
「なんでもありません」
私は、なぜか顔をそらしながら、そう言ってしまう。なぜか、今のカインの顔は見られそうになかった。
「それはどういうーー……っ!」
カインが何か言いかけたと思ったら、突然私を引き寄せる。
???????????
私は状況が理解できずに、頭にたくさんのはてなマークが浮かぶ。
今、私はどうなっている……?
整理しよう。私はカインとこの街について話していた。そして、カインが良い街と言ったから、私は思わず否定してしまった。
そこで気まずい空気が流れて、なんでかカインが私を抱き寄せてーーいやいや、ほんとになんで!?理由がわからない!
「ど、ど、どうしたのですか!?」
混乱していたので、思わず動揺したような話し方になってしまう。決して、こんな状況にドキドキしたとかそんなのではない!断じてない!
私はこうなってても色恋に話を持っていったりはしないし、カインに限って何の理由もなく抱き締めるわけがないとわかっているから。
「ーーあっ、すまない。視線を感じたような気がして、つい……」
カインは顔を赤くしながら、慌てて私を離した。
そして、カインも私も、少し距離を取る。
カインは気まずさからだろうが、私は完全に警戒しているからだ。
(視線を感じたら抱きしめるって、あんたの思考回路はどうなってんのよ!)
いきなり抱きしめてきたことにちょっとイラッとはしつつも、視線の主を視線だけで探してみる。レアからは、誰かにつけられていると聞いていたから、その誰かなのか、はたまたレアが言っていた存在とは関係ないのか。
どちらにしても、つけてきている時点で、私たちにとって良い存在ではないのだろう。
「……リリアン。もしかして、心当たりがあるのか?」
おそるおそるといった様子でたずねてくるカインに、私はドキッとする。
こういうところは、攻略対象らしく、勘がいいのかもしれない。
そうだとしても、話してもいいのだろうか。いくら婚約者といえども、ベルテルク公爵家の影の存在を、他の公爵家に話すのは良くないだろう。いや、次期公爵なのだから少しくらいは知っているかもしれないが、詳しく話すのは良くない。
向こうも以前私のことを部外者扱いしたのだ。こちらだって、部外者として扱っても許されるというか、許されなくても部外者扱いをする。
「……行きましょう」
私は、カインの質問は無視することにした。
私は、とりあえず目のついた方を指差した。
「じゃあ、こっちから回りましょう」
有無を言わさずに、引きずるようにカインを連れていく。だって、そこには何があるのかとか聞かれれば答えられないし。
でも、スタンピードで指揮経験があるだけあり、すぐにカインがリードするようなことになった。
やっぱり身長が高くて男の人だと、歩くスピードも速いもの。でも、ゆっくり歩いてくれる。
正確には、カインが人混みではぐれないように、しっかりと手を繋いで、私のペースに合わせている。
「良い街だな」
ずいぶんと大人びた表情で、カインはボソッと呟く。
カインが、初めて次期公爵っぽく見えたわ。
まるで、ここに視察に来たかのように、辺りを観察している。
普段からこんな感じなら、私ももうちょっと扱いをましにするんだけどなぁ。ヘタレには、私は関わりたいとは思わないんだよ。ヒロインから守ってくれなさそうだもの。
ヒロインとは、関わりたくないと思っているのに、その可能性が高まりそうなこいつの側にはいたくない。一緒にいてもいいと考えたのは、ヒロインがいないとわかっているからというのもあるくらいだ。
まぁ、あのヒロインにちょっとは同情している。でも、それだけだ。私には何もできない。
まだ、モニカちゃんみたいに家族を人質に取られているとか、そういうのだったらまだなんとかできたかもしれない。
でも、向こうは家族間の問題だ。部外者が口出しすれば、余計に拗れるに違いないだろう。
「……表向きは、だけど」
思わずそう呟いてしまった。
知っているから。良い街というのは、人々が笑って暮らせる街ということだ。でも、よく見ればホームレスのような人たちがいる。そんな人たちには、誰も見向きもしない。
これが現実なのだ。発展すればするほど、こういう人たちは出てきてしまうもの。それのすべてに手を差し伸べるなんて、どんな聖人にもできないだろう。
人を雇えばいいというのは、簡単に言うけど難しいことだ。給料が払えないといけないから経済面での問題もあるし、人が多すぎると、割り振る仕事は少なくなる。
それならば、労働者は喜ぶかもしれない。でも、それで給料が少なかったら、反発もされるかもしれない。
最低ラインの給料を払いつつ多くの人を雇うことができるのは貴族の屋敷くらい。でも、貴族はどこの馬の骨ともわからない人間なんて迎え入れない。
当然だけど、貴族には暗殺などの危険が付きまとうため、やはり身分がしっかりしている人を迎えたいのだ。
これは、どっちが悪いとかはないけど、問題にはなってしまうだろう。
そう思っての発言だったけど、カインが、えっ?と言いたそうな表情をしながら、振り返る。
「なんでもありません」
私は、なぜか顔をそらしながら、そう言ってしまう。なぜか、今のカインの顔は見られそうになかった。
「それはどういうーー……っ!」
カインが何か言いかけたと思ったら、突然私を引き寄せる。
???????????
私は状況が理解できずに、頭にたくさんのはてなマークが浮かぶ。
今、私はどうなっている……?
整理しよう。私はカインとこの街について話していた。そして、カインが良い街と言ったから、私は思わず否定してしまった。
そこで気まずい空気が流れて、なんでかカインが私を抱き寄せてーーいやいや、ほんとになんで!?理由がわからない!
「ど、ど、どうしたのですか!?」
混乱していたので、思わず動揺したような話し方になってしまう。決して、こんな状況にドキドキしたとかそんなのではない!断じてない!
私はこうなってても色恋に話を持っていったりはしないし、カインに限って何の理由もなく抱き締めるわけがないとわかっているから。
「ーーあっ、すまない。視線を感じたような気がして、つい……」
カインは顔を赤くしながら、慌てて私を離した。
そして、カインも私も、少し距離を取る。
カインは気まずさからだろうが、私は完全に警戒しているからだ。
(視線を感じたら抱きしめるって、あんたの思考回路はどうなってんのよ!)
いきなり抱きしめてきたことにちょっとイラッとはしつつも、視線の主を視線だけで探してみる。レアからは、誰かにつけられていると聞いていたから、その誰かなのか、はたまたレアが言っていた存在とは関係ないのか。
どちらにしても、つけてきている時点で、私たちにとって良い存在ではないのだろう。
「……リリアン。もしかして、心当たりがあるのか?」
おそるおそるといった様子でたずねてくるカインに、私はドキッとする。
こういうところは、攻略対象らしく、勘がいいのかもしれない。
そうだとしても、話してもいいのだろうか。いくら婚約者といえども、ベルテルク公爵家の影の存在を、他の公爵家に話すのは良くないだろう。いや、次期公爵なのだから少しくらいは知っているかもしれないが、詳しく話すのは良くない。
向こうも以前私のことを部外者扱いしたのだ。こちらだって、部外者として扱っても許されるというか、許されなくても部外者扱いをする。
「……行きましょう」
私は、カインの質問は無視することにした。
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