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第三章 探る者たち
49. 雪の降る日に
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レオンの失踪事件というイレギュラーはあったものの、無事にレオンとリーリアさまの誕生日会を終えて三日。ついに雪が本降りになり始めた。今までも寒い時間は少し降ったりはしていたけど、積もりそうなくらいに降るのは初めてだ。
これは冬ごもりの目安となるらしく、本降りになってから二週間くらいで向かい側の家すらもろくに見えないくらいに吹き荒れるそうなので、それまでに冬ごもりの用意を完璧にしておく必要があるらしい。
我が家は母さんが完璧に終えてくれているので、今はのんびりと過ごしている。
母さんは冬ごもりの間は針子としての仕事をするらしいけど、僕たちは本当にやることがない。
今までは赤ん坊だった僕のお世話があったけど、手がかからなくなってからはただ退屈な時間を過ごすだけだった。
僕としては雪遊びをしたかったんだけど、両親に危険だと止められてしまったから。
だからこそ、僕は前世ではそんなに嫌いではなかった冬が嫌いになっている。早く春にならないものか。
「知りません!帰ってください!」
突如として母さんの声が聞こえる。下のほうから聞こえるから一階だろうか。
僕が部屋のドアを開けると、廊下にはレオンもいた。
「あっ、ルイ。どうしたの?」
レオンも僕に気づいたようで声をかけてくる。
レオンは、失踪事件以降はあまり部屋から出たがらなかったのに、今日はどうしたのだろう。
「母さんの声が聞こえたから気になって。レオンは?」
「僕もそれが気になったんだけど」
「レオンはここにいて」
僕に行かないという選択肢はない。母さんの言葉からするに、相手は母さんに何かを聞いている上に立ち去ろうとしていないようなのだ。その時点で普通の客ではないことは確か。
そんな相手にレオンを会わせるわけにはいかない。会わせてはいけないような気がする。
ぼくはなるべく静かに廊下に出て、母さんを探す。
姿が見えないから食堂のほうかと思って食堂に繋がるドアを開けようとしたところで再び声が聞こえる。
「ここの家の子どもが巻き込まれたというのは聞いている。その話を聞きたいだけだ」
母さんの声じゃない。若そうな男の声だ。
声が聞こえた裏口のほうに向かい、思いきってドアを開ける。
「話ってなに?」
僕がそう言いながらドアを開けると、母さんがこちらを向く。
僕は母さんの側にいる人の姿を見て思わず息を飲む。
そいつは黒いフードを被っていた。顔はよく見えないけど、先ほどの声からして男だろう。いつの日だったか、不審者扱いされていた黒いフードの集団の一味に見える。
「ルイ!何しに来たの!」
母さんは僕の側に駆け寄り、僕を後ろに守るようにして立っている。
僕のことを叱りたいのだろうけど、まずは守ることを優先しているところを思うと、やっぱり最高の母さんだと実感する。
「その子が巻き込まれた子どもか?」
「だから知りません!」
巻き込まれた?僕に特に心当たりはない。となるとレオンしかいないけど……ああ、そういうことか。
「僕知らないよ。おじさん、お家を間違えてるんじゃない?母さん、お家戻ろ」
「え、ええ……。では、そういうことなので」
母さんは少し戸惑っていたけど、僕の言葉に従って家の中に入り、裏口を閉めてくれる。
男は押し入ってくるつもりはないようで、ドアが開けられる様子はない。
「母さん。あの人が来たのって、レオンが失踪したときのことが関係してるの?」
「それは……」
母さんは言いにくそうに目をそらしたけど、僕が目をそらさず、その場から動くことなく母さんを見続けると、諦めたように説明してくれた。
「そうよ。レオンがいなくなったときのことを詳しく聞きたいってしつこいの。誰って聞いてもはぐらかすし……。そんな人と今のレオンを会わせるわけにはいかないじゃない」
「うん、そうだね」
やっぱりレオンの失踪事件に関することか。黒いフードの集団はあまり街の人と関わりたがらず、なぜか吹雪の日を知りたがっていた。
もしあの男が黒いフードの集団の一人だと仮定すると、その集団はなぜかレオンの失踪事件のことを知りたがっている。
となると、レオンの失踪事件は吹雪の日を知りたがっていたことに何か関係しているのかもしれない。
レオンが失踪した当時の記憶が曖昧になっていることや、レオンだけが残されていたこと、黒いフードの集団が子どもと行動を共にしていたことなどを考えても、レオンの失踪事件は単なる誘拐事件と片づけることはできない。
領主さまも調べてくれているのだろうけど、これ以上家族や街のみんなを危険な目に合わせないためにも。
「母さん。父さんには話しておこう。レオンには僕からそれとなく伝えておくから」
「ええ。わかったわ」
「それと、領主さまにも話したほうがいいと思うんだけど、今は会いに行けないよね?」
「そうね……冬が明けてからにしましょう」
やっぱり難しいらしい。
冬が明けてから……それではきっと遅すぎる。向こうは吹雪の日を知りたがっているのだ。吹雪が終わってしまっては、この街から去る可能性もある。
危険が自ら去ってくれるのはいいことだけど、本当にただ立ち去ってくれるのかわからない。レオンが誘拐されたのであれば、他の子どもを連れ去る可能性もある。
「うん、わかった」
きっと家族には心配をかける。でも、このままじっとしていることはできない。
僕が動こう。
ーーーーーーーーーー
ようやくお話の展開がまとまりましたのでぼちぼち執筆いたしますが、『転生王子はあくまでも楽したい』のほうを優先させていただきます。
次世代ファンタジーカップに参加していますので、よろしければご覧ください。
これは冬ごもりの目安となるらしく、本降りになってから二週間くらいで向かい側の家すらもろくに見えないくらいに吹き荒れるそうなので、それまでに冬ごもりの用意を完璧にしておく必要があるらしい。
我が家は母さんが完璧に終えてくれているので、今はのんびりと過ごしている。
母さんは冬ごもりの間は針子としての仕事をするらしいけど、僕たちは本当にやることがない。
今までは赤ん坊だった僕のお世話があったけど、手がかからなくなってからはただ退屈な時間を過ごすだけだった。
僕としては雪遊びをしたかったんだけど、両親に危険だと止められてしまったから。
だからこそ、僕は前世ではそんなに嫌いではなかった冬が嫌いになっている。早く春にならないものか。
「知りません!帰ってください!」
突如として母さんの声が聞こえる。下のほうから聞こえるから一階だろうか。
僕が部屋のドアを開けると、廊下にはレオンもいた。
「あっ、ルイ。どうしたの?」
レオンも僕に気づいたようで声をかけてくる。
レオンは、失踪事件以降はあまり部屋から出たがらなかったのに、今日はどうしたのだろう。
「母さんの声が聞こえたから気になって。レオンは?」
「僕もそれが気になったんだけど」
「レオンはここにいて」
僕に行かないという選択肢はない。母さんの言葉からするに、相手は母さんに何かを聞いている上に立ち去ろうとしていないようなのだ。その時点で普通の客ではないことは確か。
そんな相手にレオンを会わせるわけにはいかない。会わせてはいけないような気がする。
ぼくはなるべく静かに廊下に出て、母さんを探す。
姿が見えないから食堂のほうかと思って食堂に繋がるドアを開けようとしたところで再び声が聞こえる。
「ここの家の子どもが巻き込まれたというのは聞いている。その話を聞きたいだけだ」
母さんの声じゃない。若そうな男の声だ。
声が聞こえた裏口のほうに向かい、思いきってドアを開ける。
「話ってなに?」
僕がそう言いながらドアを開けると、母さんがこちらを向く。
僕は母さんの側にいる人の姿を見て思わず息を飲む。
そいつは黒いフードを被っていた。顔はよく見えないけど、先ほどの声からして男だろう。いつの日だったか、不審者扱いされていた黒いフードの集団の一味に見える。
「ルイ!何しに来たの!」
母さんは僕の側に駆け寄り、僕を後ろに守るようにして立っている。
僕のことを叱りたいのだろうけど、まずは守ることを優先しているところを思うと、やっぱり最高の母さんだと実感する。
「その子が巻き込まれた子どもか?」
「だから知りません!」
巻き込まれた?僕に特に心当たりはない。となるとレオンしかいないけど……ああ、そういうことか。
「僕知らないよ。おじさん、お家を間違えてるんじゃない?母さん、お家戻ろ」
「え、ええ……。では、そういうことなので」
母さんは少し戸惑っていたけど、僕の言葉に従って家の中に入り、裏口を閉めてくれる。
男は押し入ってくるつもりはないようで、ドアが開けられる様子はない。
「母さん。あの人が来たのって、レオンが失踪したときのことが関係してるの?」
「それは……」
母さんは言いにくそうに目をそらしたけど、僕が目をそらさず、その場から動くことなく母さんを見続けると、諦めたように説明してくれた。
「そうよ。レオンがいなくなったときのことを詳しく聞きたいってしつこいの。誰って聞いてもはぐらかすし……。そんな人と今のレオンを会わせるわけにはいかないじゃない」
「うん、そうだね」
やっぱりレオンの失踪事件に関することか。黒いフードの集団はあまり街の人と関わりたがらず、なぜか吹雪の日を知りたがっていた。
もしあの男が黒いフードの集団の一人だと仮定すると、その集団はなぜかレオンの失踪事件のことを知りたがっている。
となると、レオンの失踪事件は吹雪の日を知りたがっていたことに何か関係しているのかもしれない。
レオンが失踪した当時の記憶が曖昧になっていることや、レオンだけが残されていたこと、黒いフードの集団が子どもと行動を共にしていたことなどを考えても、レオンの失踪事件は単なる誘拐事件と片づけることはできない。
領主さまも調べてくれているのだろうけど、これ以上家族や街のみんなを危険な目に合わせないためにも。
「母さん。父さんには話しておこう。レオンには僕からそれとなく伝えておくから」
「ええ。わかったわ」
「それと、領主さまにも話したほうがいいと思うんだけど、今は会いに行けないよね?」
「そうね……冬が明けてからにしましょう」
やっぱり難しいらしい。
冬が明けてから……それではきっと遅すぎる。向こうは吹雪の日を知りたがっているのだ。吹雪が終わってしまっては、この街から去る可能性もある。
危険が自ら去ってくれるのはいいことだけど、本当にただ立ち去ってくれるのかわからない。レオンが誘拐されたのであれば、他の子どもを連れ去る可能性もある。
「うん、わかった」
きっと家族には心配をかける。でも、このままじっとしていることはできない。
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