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第一章 辺境の街 カルファ
7. 入り口の検問
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厄介なトラブルに巻き込まれたものの、そこからは列は順調に進み、ついに僕たちの番になった。
あの言い争っていた人たちがどうなったのかは知らないけど、街に入るとしても、並び直していることだろう。
「はい、次ーーって、子ども?」
僕らを訝しく見るのは、先ほどの治安隊とは違う格好をした男の人。多分、門番のような役割をしてるんだろう。
おそらく、立場としては兵士だろう。騎士の役目は、主に要人の護衛だけど、近くにそのような人は見当たらない。
「お前たち、親はいないのか?」
「うん。いないよ」
治安隊の人にも同じこと聞かれたなと思いながらも、そう返事をすると、僕らを訝しく見る。
まぁ、怪しいか。子どもだけなのは。
「子どもだけでどうやってここまで来た?荷物らしい荷物もほとんどないじゃないか。まさか、遊びに来たってわけじゃないだろ」
兵士は、僕たちが背負っているカバンを見ながらさらに目を細める。
僕らのカバンはリュックみたいになってるけど、決して大きさは大きくない。せいぜい、お尻に届くくらいの大きさだ。
確かにこれでは、遠足に来た小学生のようにしか見えないけども。
「一応、僕たちも自衛できるくらいには戦えるから、護衛とかはいらなかったの。荷物は、このカバンに入れてるんだ。大きさ以上にいろいろ入るの。中が大きくなる魔法がかかってるから」
僕は、肩からリュックを下ろしながら説明する。兵士の注目は、僕たちの戦闘能力よりも、カバンにいったようだ。
「へぇ~。マジックバッグか。このタイプは初めて見たが、そんな高価なものよく手に入ったな」
兵士は感心するように僕たちのカバンを見る。その目は、疑っているというよりかは、興味深いものを見る目だ。
そうか。空間魔法が使える人ってそんなに多くないから、こういうアイテムは貴重なんだっけ。父さんが当たり前のように量産するから、感覚が麻痺していたよ。
まぁ、もらったって言うのが妥当かな。
「僕たちと一緒に住んでる人にもらったの。その人、空間魔法が使えるから」
「へぇ~、すごいやつだな」
感心するだけで、疑いの目を向けてくることはない。どうやら、信じてくれたらしい。空間魔法使いは、少ないだけでいないわけじゃないしね。
「じゃあ、お前らはなんで自分たちだけで来たんだ?住んでるやつと一緒に来ればいいだろ?」
当然の疑問が兵士から飛んでくる。
一応、子どもだけの二人旅の理由は考えてあるので、問題はない。
「その人が、家を出ていってから帰ってこなくて、探しに来たの。こっちのほうに歩いていったから」
養う人がいなくなったというのは、一番納得されやすい言い訳だ。
人間は食べなくては生きていけないから、保護者を探そうとするのはおかしな考えじゃないし、どこに行ったのかわからないという理由ならば、いろいろなところをふらついていてもおかしくはないと思う。
「そうか……大変だったな」
予想通り、納得してくれた。おかしな言い訳じゃないみたいだし、これからはこの言い訳を通していくとしよう。
「とりあえず、事情はわかった。だが、お前ら。身分証はあるのか」
「ううん。家を出てきたからないよ」
「じゃあ、手続きしてやるから、こっちに来てくれ」
「わかった。行くよ、ルーナ」
「あ~い……」
僕は、うつらうつらとしているルーナの手を引いて、兵士についていく。ルーナも、目を擦って意識を覚醒させながらついてきた。
離れてもいいのかと後ろを振り返ると、別の人が並んでいる人たちに対応しているのを見て、僕は再び前を向いた。
そして、街の門の脇にある通用口のような場所から中に入ると、そこには小部屋があった。僕らが入ってきたドアの向かい側と右側にそれぞれ別のドアがある。
構造からして、向かい側は、おそらく街に繋がっているのだろう。
装飾はかなり質素で、テーブルもカウンターのようなものが一つ無造作に置かれてるだけなのに、椅子だけは十脚はありそうな数だ。
客を案内するというよりかは、待機させるための部屋といったところかな?
「どこでも好きなところに座ってくれ」
そう言われたので、僕は入ってきたドアの近くの椅子に座る。
ルーナは、僕の隣の椅子に座った。
「じゃあ、これを持ってくれるか」
そう言って渡されたのは、透明なビー玉のようなものだった。
僕とルーナにそれぞれ一つずつ渡されて、僕らが手のひらに乗せると、ビー玉は白くて淡い光を放つ。
(うわっ!)
まさか光るとは思っていなかった僕は、声には出さなかったけど、口を開けて驚く。
ただのビー玉ではないと思ってたけど、これが手続きの道具なら、どうやって使うんだ?
僕がまじまじと観察しているうちに、発光は収まり、ただのビー玉がコロンと乗っているだけになった。
ルーナのほうを見ると、まだ光っていたけど、十秒くらいで収まった。ルーナのビー玉の発光が終わると、兵士は待ってましたとばかりに、僕たちの手のひらに乗ったビー玉を回収する。
「よし。じゃあすまねぇが、十分くらいここで待っててくれ」
「うん、わかった」
僕の返事を聞くと、兵士は右側のドアのほうに歩いていき、部屋を出ていった。
何の時間かは知らないけど、十分くらいなら大したことはない。
ぽけーとしていたらいつの間にか二十分は過ぎているなんてざらにあるくらいなのだから。
ルーナはどうせ寝るんだろうなと思いながらルーナのほうに視線を向けると、ルーナはふわぁとあくびして、僕のほうに視線を向ける。
「お兄ちゃん、ちょっと貸して」
「えっ?う、うん」
一体何をと思っていると、ルーナは目を瞑り、僕の肩にこてんと首を乗せてくる。
そして、一秒もかからずに、すーすーと寝息が聞こえてきた。
こ、これって、肩枕ってやつじゃないの!?
隣に座って眠りこけた美少女に肩枕させるなんて、男子なら一度は憧れそうなシチュエーションだ。相手は妹だけど!
貸してって言ったのは、肩のことだったのか。確かに、このざらざらした壁にもたれて寝ても、休まらないだろうな。
相手がまったく見知らぬお姉さんとかだったらドキドキしたかもしれないけど、自分と同じ顔をした妹の寝顔を見たところで、ただ微笑ましいだけだ。
妹の寝顔を見ていたからか、それとも精霊の本能につられてか、僕も眠くなってしまい、気づいたらこてんとルーナに頭を預けて眠りに落ちていた。
あの言い争っていた人たちがどうなったのかは知らないけど、街に入るとしても、並び直していることだろう。
「はい、次ーーって、子ども?」
僕らを訝しく見るのは、先ほどの治安隊とは違う格好をした男の人。多分、門番のような役割をしてるんだろう。
おそらく、立場としては兵士だろう。騎士の役目は、主に要人の護衛だけど、近くにそのような人は見当たらない。
「お前たち、親はいないのか?」
「うん。いないよ」
治安隊の人にも同じこと聞かれたなと思いながらも、そう返事をすると、僕らを訝しく見る。
まぁ、怪しいか。子どもだけなのは。
「子どもだけでどうやってここまで来た?荷物らしい荷物もほとんどないじゃないか。まさか、遊びに来たってわけじゃないだろ」
兵士は、僕たちが背負っているカバンを見ながらさらに目を細める。
僕らのカバンはリュックみたいになってるけど、決して大きさは大きくない。せいぜい、お尻に届くくらいの大きさだ。
確かにこれでは、遠足に来た小学生のようにしか見えないけども。
「一応、僕たちも自衛できるくらいには戦えるから、護衛とかはいらなかったの。荷物は、このカバンに入れてるんだ。大きさ以上にいろいろ入るの。中が大きくなる魔法がかかってるから」
僕は、肩からリュックを下ろしながら説明する。兵士の注目は、僕たちの戦闘能力よりも、カバンにいったようだ。
「へぇ~。マジックバッグか。このタイプは初めて見たが、そんな高価なものよく手に入ったな」
兵士は感心するように僕たちのカバンを見る。その目は、疑っているというよりかは、興味深いものを見る目だ。
そうか。空間魔法が使える人ってそんなに多くないから、こういうアイテムは貴重なんだっけ。父さんが当たり前のように量産するから、感覚が麻痺していたよ。
まぁ、もらったって言うのが妥当かな。
「僕たちと一緒に住んでる人にもらったの。その人、空間魔法が使えるから」
「へぇ~、すごいやつだな」
感心するだけで、疑いの目を向けてくることはない。どうやら、信じてくれたらしい。空間魔法使いは、少ないだけでいないわけじゃないしね。
「じゃあ、お前らはなんで自分たちだけで来たんだ?住んでるやつと一緒に来ればいいだろ?」
当然の疑問が兵士から飛んでくる。
一応、子どもだけの二人旅の理由は考えてあるので、問題はない。
「その人が、家を出ていってから帰ってこなくて、探しに来たの。こっちのほうに歩いていったから」
養う人がいなくなったというのは、一番納得されやすい言い訳だ。
人間は食べなくては生きていけないから、保護者を探そうとするのはおかしな考えじゃないし、どこに行ったのかわからないという理由ならば、いろいろなところをふらついていてもおかしくはないと思う。
「そうか……大変だったな」
予想通り、納得してくれた。おかしな言い訳じゃないみたいだし、これからはこの言い訳を通していくとしよう。
「とりあえず、事情はわかった。だが、お前ら。身分証はあるのか」
「ううん。家を出てきたからないよ」
「じゃあ、手続きしてやるから、こっちに来てくれ」
「わかった。行くよ、ルーナ」
「あ~い……」
僕は、うつらうつらとしているルーナの手を引いて、兵士についていく。ルーナも、目を擦って意識を覚醒させながらついてきた。
離れてもいいのかと後ろを振り返ると、別の人が並んでいる人たちに対応しているのを見て、僕は再び前を向いた。
そして、街の門の脇にある通用口のような場所から中に入ると、そこには小部屋があった。僕らが入ってきたドアの向かい側と右側にそれぞれ別のドアがある。
構造からして、向かい側は、おそらく街に繋がっているのだろう。
装飾はかなり質素で、テーブルもカウンターのようなものが一つ無造作に置かれてるだけなのに、椅子だけは十脚はありそうな数だ。
客を案内するというよりかは、待機させるための部屋といったところかな?
「どこでも好きなところに座ってくれ」
そう言われたので、僕は入ってきたドアの近くの椅子に座る。
ルーナは、僕の隣の椅子に座った。
「じゃあ、これを持ってくれるか」
そう言って渡されたのは、透明なビー玉のようなものだった。
僕とルーナにそれぞれ一つずつ渡されて、僕らが手のひらに乗せると、ビー玉は白くて淡い光を放つ。
(うわっ!)
まさか光るとは思っていなかった僕は、声には出さなかったけど、口を開けて驚く。
ただのビー玉ではないと思ってたけど、これが手続きの道具なら、どうやって使うんだ?
僕がまじまじと観察しているうちに、発光は収まり、ただのビー玉がコロンと乗っているだけになった。
ルーナのほうを見ると、まだ光っていたけど、十秒くらいで収まった。ルーナのビー玉の発光が終わると、兵士は待ってましたとばかりに、僕たちの手のひらに乗ったビー玉を回収する。
「よし。じゃあすまねぇが、十分くらいここで待っててくれ」
「うん、わかった」
僕の返事を聞くと、兵士は右側のドアのほうに歩いていき、部屋を出ていった。
何の時間かは知らないけど、十分くらいなら大したことはない。
ぽけーとしていたらいつの間にか二十分は過ぎているなんてざらにあるくらいなのだから。
ルーナはどうせ寝るんだろうなと思いながらルーナのほうに視線を向けると、ルーナはふわぁとあくびして、僕のほうに視線を向ける。
「お兄ちゃん、ちょっと貸して」
「えっ?う、うん」
一体何をと思っていると、ルーナは目を瞑り、僕の肩にこてんと首を乗せてくる。
そして、一秒もかからずに、すーすーと寝息が聞こえてきた。
こ、これって、肩枕ってやつじゃないの!?
隣に座って眠りこけた美少女に肩枕させるなんて、男子なら一度は憧れそうなシチュエーションだ。相手は妹だけど!
貸してって言ったのは、肩のことだったのか。確かに、このざらざらした壁にもたれて寝ても、休まらないだろうな。
相手がまったく見知らぬお姉さんとかだったらドキドキしたかもしれないけど、自分と同じ顔をした妹の寝顔を見たところで、ただ微笑ましいだけだ。
妹の寝顔を見ていたからか、それとも精霊の本能につられてか、僕も眠くなってしまい、気づいたらこてんとルーナに頭を預けて眠りに落ちていた。
応援ありがとうございます!
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