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第一章 辺境の街 カルファ
8. 呼び出し
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僕が目を覚ましたのは、体を大きく揺らされたときだった。
気持ちよく寝ていたけど、ガクガクと揺れるような感覚があって、目を開くと、そこには先ほどの兵士がいた。
僕と目が合うと、兵士はカッと目を見開く。
「ようやく起きたな!何度も呼びかけたのに、ぐーすかと眠りこけやがって!」
「ご、ごめんなさい……」
前世の僕なら、呼びかけでちゃんと起きられたのに、激しく揺らされるまで気づきもしないとは。
恐るべし、精霊の本能……!
思えば、ルーナも体を揺らさないとなかなか起きないもんな。ルーナが怠け者だからかと思ったけど、それ以外に、本能が休みたがってたのもあるんだろう。
そういえば、ルーナは起きたのかな?
僕がルーナのほうに視線を向けると、とろんとはしているものの、目はちゃんと開いていた。僕が揺らされたときに衝撃で起きたのかもな。
「ねぇ、僕たちを起こしたなら、手続きっていうのは終わったの?」
「いや、ちょっと手続きで問題があってな。それで、手続きした奴が、確認したいことがあるからお前らを呼べって言うんだ」
手続きに問題?一体、何がいけなかったんだ?
日本とかなら、機械の故障とか、身分詐称とかだろうけど、異世界じゃ手続き方法から違いそうだから、問題の検討もつかない。
わからない以上、下手に抵抗しないで、素直に従うほうがいいな。
「わかった。どこに行けばいいの?」
「俺について来ればいい」
そう言うので、兵士の後を、僕はルーナの手を引きながらついていく。
案内されたのは、先ほど兵士が出ていったドアの先で、そこは先ほどの部屋とは違い、装飾が施された広い部屋だった。
部屋の中央にはテーブルと、それを挟むようにソファが向かい合って置かれている。
先ほどのがただの待機部屋ならば、ここは応接室のようだ。
そして、ソファの奥の執務机で何やら資料らしきものを睨んでいる強面な男がいる。
呼んでいるというのは、この男のことだろう。
「連れて参りました、兵士長」
僕たちを連れてきた兵士が、ペコリと頭を下げる。
あの男、兵士長だったのか。国全体で見たらわからないけど、兵士の長ならば、この街ではそれなりの立場ではあるのは間違いない。
そんな彼が、僕たちに何の用なんだ?
「ご苦労。お前は仕事に戻っていい」
「で、ですが……」
「悪いようにはしない。なにせ、子どもだからな」
字面だけなら、安心感を誘いそうな言葉だけど、ニヤリと不適な笑みを浮かべられ、子どもという部分が、どこか含みのあるように聞こえてしまうと、警戒してしまう。
ルーナも同じなのか、男のほうを見据えて、眠る気配も見せない。
まさか、僕たちの正体に勘づいたというのか。だとするならば、いつ、どうやって?
「かしこまりました。失礼します」
僕たちを連れてきた兵士は、そう言って部屋を出ていった。
これでこの部屋には、僕たち以外は兵士長の男しかいない。
「そんなところに突っ立ってないで、座ったらどうだ」
僕は、ごくりと息を飲んで、ルーナの手を引いて、ソファに座る。
かなりふかふかのソファだ。ルーナのお気に入りのクッションと感触が似ているから、これはフラッフィーのソファかもしれない。
ルーナ、寝たりしてないよね?
僕がちらりと横を見ると、ボーッとしている感じはあっても、寝てはいなさそうだ。さすがのルーナも、こんな空気では眠れないらしい。
「さて、お前らは呼んだのは他でもない。聞きたいことがあったんだ」
「……なに?」
「単刀直入に聞く。……お前らは何者だ?」
男の言葉に、僕はわずかにほっとする。
どうやら、違和感を覚えているだけで、精霊まではたどり着いていないらしい。
それなら、うまくごまかせるかも。
精霊と言ってしまえば早いけど、人型の精霊は、本当に珍しいのだ。
精霊界で百年以上暮らしてきたけど、精霊界全体に数百万以上いる精霊のなかで、人型の精霊は、お城で暮らしていた十数人以外にいなかったくらいだから。
精霊界でも珍しい人型の精霊と知られたら、絶対に面倒事しか持ち込まれない。
「なんでそんなこと聞くの?」
「街に入るには、仮の身分証を発行する必要があるが、その身分証には、種族の記載が必要だ。そのために、お前たちに魔道具を持たせて、魔力を回収した」
僕は、最初に持たされたビー玉を思い出す。
あれって、魔力を回収するための道具だったのか。
「その魔力を、専用の道具に通すことで判別するが、お前たちの魔力は、俺たちの管理しているどれも反応しなかった」
「……どれもって?」
僕が尋ねると、兵士長は立ち上がって、僕たちの向かい側に座る。
その右手には、小さい金属の板のようなものがあった。板の上部には、小さくて丸い窪みがある。ちょうど、ビー玉がはまりそうなサイズだ。
「これは、人間用だ。ここにこれを嵌め込んで判別する」
そう言って、兵士長はビー玉を嵌め込む。すると、金属の板が淡く輝きだした。
「これには、俺の魔力がこもってるが、俺は人間だから、これに反応している。他にも獣人やエルフ、ドワーフなんかもあるが、お前らのはそのどれにも当てはまらなかった。つまりは、お前らは単純に俺たちの知らない珍しい種族か、もしくは魔力が隠蔽されてる訳アリってわけだ。そんなやつをほいほいと通すわけにはいかねぇんでな」
……なるほど。これは、ごまかせなさそうだ。
僕は、ちらりとルーナを見る。ルーナも、真剣な顔でこくりとうなずいた。
それを確認して、僕は兵士長を見据える。
「僕たちは……精霊です」
気持ちよく寝ていたけど、ガクガクと揺れるような感覚があって、目を開くと、そこには先ほどの兵士がいた。
僕と目が合うと、兵士はカッと目を見開く。
「ようやく起きたな!何度も呼びかけたのに、ぐーすかと眠りこけやがって!」
「ご、ごめんなさい……」
前世の僕なら、呼びかけでちゃんと起きられたのに、激しく揺らされるまで気づきもしないとは。
恐るべし、精霊の本能……!
思えば、ルーナも体を揺らさないとなかなか起きないもんな。ルーナが怠け者だからかと思ったけど、それ以外に、本能が休みたがってたのもあるんだろう。
そういえば、ルーナは起きたのかな?
僕がルーナのほうに視線を向けると、とろんとはしているものの、目はちゃんと開いていた。僕が揺らされたときに衝撃で起きたのかもな。
「ねぇ、僕たちを起こしたなら、手続きっていうのは終わったの?」
「いや、ちょっと手続きで問題があってな。それで、手続きした奴が、確認したいことがあるからお前らを呼べって言うんだ」
手続きに問題?一体、何がいけなかったんだ?
日本とかなら、機械の故障とか、身分詐称とかだろうけど、異世界じゃ手続き方法から違いそうだから、問題の検討もつかない。
わからない以上、下手に抵抗しないで、素直に従うほうがいいな。
「わかった。どこに行けばいいの?」
「俺について来ればいい」
そう言うので、兵士の後を、僕はルーナの手を引きながらついていく。
案内されたのは、先ほど兵士が出ていったドアの先で、そこは先ほどの部屋とは違い、装飾が施された広い部屋だった。
部屋の中央にはテーブルと、それを挟むようにソファが向かい合って置かれている。
先ほどのがただの待機部屋ならば、ここは応接室のようだ。
そして、ソファの奥の執務机で何やら資料らしきものを睨んでいる強面な男がいる。
呼んでいるというのは、この男のことだろう。
「連れて参りました、兵士長」
僕たちを連れてきた兵士が、ペコリと頭を下げる。
あの男、兵士長だったのか。国全体で見たらわからないけど、兵士の長ならば、この街ではそれなりの立場ではあるのは間違いない。
そんな彼が、僕たちに何の用なんだ?
「ご苦労。お前は仕事に戻っていい」
「で、ですが……」
「悪いようにはしない。なにせ、子どもだからな」
字面だけなら、安心感を誘いそうな言葉だけど、ニヤリと不適な笑みを浮かべられ、子どもという部分が、どこか含みのあるように聞こえてしまうと、警戒してしまう。
ルーナも同じなのか、男のほうを見据えて、眠る気配も見せない。
まさか、僕たちの正体に勘づいたというのか。だとするならば、いつ、どうやって?
「かしこまりました。失礼します」
僕たちを連れてきた兵士は、そう言って部屋を出ていった。
これでこの部屋には、僕たち以外は兵士長の男しかいない。
「そんなところに突っ立ってないで、座ったらどうだ」
僕は、ごくりと息を飲んで、ルーナの手を引いて、ソファに座る。
かなりふかふかのソファだ。ルーナのお気に入りのクッションと感触が似ているから、これはフラッフィーのソファかもしれない。
ルーナ、寝たりしてないよね?
僕がちらりと横を見ると、ボーッとしている感じはあっても、寝てはいなさそうだ。さすがのルーナも、こんな空気では眠れないらしい。
「さて、お前らは呼んだのは他でもない。聞きたいことがあったんだ」
「……なに?」
「単刀直入に聞く。……お前らは何者だ?」
男の言葉に、僕はわずかにほっとする。
どうやら、違和感を覚えているだけで、精霊まではたどり着いていないらしい。
それなら、うまくごまかせるかも。
精霊と言ってしまえば早いけど、人型の精霊は、本当に珍しいのだ。
精霊界で百年以上暮らしてきたけど、精霊界全体に数百万以上いる精霊のなかで、人型の精霊は、お城で暮らしていた十数人以外にいなかったくらいだから。
精霊界でも珍しい人型の精霊と知られたら、絶対に面倒事しか持ち込まれない。
「なんでそんなこと聞くの?」
「街に入るには、仮の身分証を発行する必要があるが、その身分証には、種族の記載が必要だ。そのために、お前たちに魔道具を持たせて、魔力を回収した」
僕は、最初に持たされたビー玉を思い出す。
あれって、魔力を回収するための道具だったのか。
「その魔力を、専用の道具に通すことで判別するが、お前たちの魔力は、俺たちの管理しているどれも反応しなかった」
「……どれもって?」
僕が尋ねると、兵士長は立ち上がって、僕たちの向かい側に座る。
その右手には、小さい金属の板のようなものがあった。板の上部には、小さくて丸い窪みがある。ちょうど、ビー玉がはまりそうなサイズだ。
「これは、人間用だ。ここにこれを嵌め込んで判別する」
そう言って、兵士長はビー玉を嵌め込む。すると、金属の板が淡く輝きだした。
「これには、俺の魔力がこもってるが、俺は人間だから、これに反応している。他にも獣人やエルフ、ドワーフなんかもあるが、お前らのはそのどれにも当てはまらなかった。つまりは、お前らは単純に俺たちの知らない珍しい種族か、もしくは魔力が隠蔽されてる訳アリってわけだ。そんなやつをほいほいと通すわけにはいかねぇんでな」
……なるほど。これは、ごまかせなさそうだ。
僕は、ちらりとルーナを見る。ルーナも、真剣な顔でこくりとうなずいた。
それを確認して、僕は兵士長を見据える。
「僕たちは……精霊です」
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