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誕生日プレゼント
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「毎年張り切らなくてもいいのに…」
『よし!今日はもう店閉める!』と言ったたきり、買い出しに走った真夜を見送り、店じまいをしながらため息をつく。
前の街にいた頃、近所の子供の誕生日を羨ましく思ったコハクは真夜に聞いた。
「僕の誕生日はないの?」
一瞬、キョトンとした真夜だか、その後に拾ってくれた日を誕生日にしてお祝いをしてくれた。
ただ、その後は自分で決めた誕生日なのに、毎年忘れてしまって、ひとしきり落ち込んでは挽回しようと張り切ってとんでもないことになる真夜を見なくてはいけないので、いっそ言わなければよかったと思っている。
部屋がひっくりかえらないよう、真夜の代わりに自分で誕生日の用意を始めながら、コハクはもう一度小さなため息をついた。
たたそれは、呆れた感情だけではなく、安堵のため息でもあった。
「でも、今年も祝ってくれるんだ…」
半年前、部屋の十年時計が一周する少し前に引っ越しを決めた真夜は、「コハクは残る?」と聞いてきた。コハクは『友達と離れるのは寂しいなぁ』とふんわり考えていたが、自分が真夜と離れてここに残ることは少しも考えておらず、想定外の問いに慌てて「一緒にいく!」と答えた。
真夜も「まだ早いわよね」とついてくることを了承してくれたが、彼女がなにを考えていたのか、コハクには分からず、「まだ」がいつまでのことを指しているのかとひっそり怯えていた。
だから、できれば真夜には誕生日を忘れていて欲しいと思っていたコハクだが、誕生日を祝うと言われれば、なにかの契約が更新されたような安心感があった。
「コハク、今何歳だっけ?」
「十三歳ですよ」
その夜、真夜が戻ってきたのは日もとっぷり暮れた後だった。
コハクが用意したご馳走を囲みながら、真夜はコハクに訪ねた。
「道理で料理も上手くなるわけだわ。このフライも魔法みたいに美味しい」
「真夜さんのパンケーキには敵いませんよ」
その後、
「将来何なりたい?」という質問には間髪入れず、
「もちろん魔法使い!」と答えたが、真夜もすかさず「まーだ、言ってるの?」とつれない。
「毎年毎年全く…魔法なんか使えてもろくな目に合わないっていうのに…」と呟く真夜は「そんなになりたいって、魔法が使えたら何をしたいの?」と尋ねた。
やりたいこと…と聞かれて少しコハクは止まってしまってしまった。
真夜と離れたり、誰かに取られるのが嫌だから、魔法使いになりたかっただけで、力をどう使うかなんて考えたこともなかった。
しかし、ふと今日のナタリーの嬉しそうな顔が頭をよぎった。
「あのね」とコハクは切り返す。
「ぼく、魔法が使えるようになったら、真夜さんみたいにいろんな人を助けたい」
「助けたい?」
「マーサのおばあちゃんも、おじいさんも、他の人も、みんな真夜さんが元気にしてて、すごいなぁって思うんだ。僕もそんな魔法使いになりたい。」
真夜はアーモンドのような目を瞬かせるが、反応がない。コハクはまずい事を言ったかと耳の後ろをかきながら、「…変かな」と首を傾げてみせると、真夜はコハクの鼻をきゅっと摘み、「いっちょ前なことを言うようになって!」と揶揄った。
「魔法使いは向いてないと思うけど」
何処か諦めた様子の真夜は、どこから出したのか、ドンと大きな箱を机に置いた。
真夜の開けてみて、という目線に従って、コハクは丁寧に包装紙をめくって箱を開ける。
「わぁ…」
「…良い薬屋にはなるんじゃない?」
中には、沢山の本と、真夜が持っているものよりも少し小ぶりな調剤器具が入っていた。
「楽しくないプレゼントで悪いけどね、この街にいる間に普通よりは上等な薬屋をやってけるくらいには仕込んであげる」
コハクは何も言えないまま、顔を上げて真夜を見つめた。そんなコハクに真夜は照れからぶっきらぼうに言った。
「今日からは師匠って呼びなさい」
「師匠…」
「ああ、もう泣かないっての、オープナーちょうだい!もう一本ワイン開けるわよ」
「泣いてない…です。」
りんりん、と相変わらず綺麗な鈴の音に合わせてぽろぽろ流れる涙が収まるまで、真夜はワイン片手にコハクを撫で続けた。
ようやく落ち着いたコハクは、準備の疲れもあり、教科書を眺めながらゆっくり船を漕ぎ始めた。真夜はコハクをベットへ連れて行こうとしたが、どうしてもプレゼントと一緒に寝たいと言うので、ふらふらするコハクを支えながら、久しぶりの魔法でプレゼントも浮かせて、コハクの部屋へ運んだ。
箱はベットのサイドボードに着地させ、一際頑丈そうな本だけ取り出して枕元に添えてやると、コハクは満足そうに微笑んで、もう一度お礼をいってからゆっくりとした寝息を立て始めた。
真夜はいつも通り、コハクの額にそっとキスをして、起こさないように寝室の扉を閉めた。
「おやすみコハク」
『よし!今日はもう店閉める!』と言ったたきり、買い出しに走った真夜を見送り、店じまいをしながらため息をつく。
前の街にいた頃、近所の子供の誕生日を羨ましく思ったコハクは真夜に聞いた。
「僕の誕生日はないの?」
一瞬、キョトンとした真夜だか、その後に拾ってくれた日を誕生日にしてお祝いをしてくれた。
ただ、その後は自分で決めた誕生日なのに、毎年忘れてしまって、ひとしきり落ち込んでは挽回しようと張り切ってとんでもないことになる真夜を見なくてはいけないので、いっそ言わなければよかったと思っている。
部屋がひっくりかえらないよう、真夜の代わりに自分で誕生日の用意を始めながら、コハクはもう一度小さなため息をついた。
たたそれは、呆れた感情だけではなく、安堵のため息でもあった。
「でも、今年も祝ってくれるんだ…」
半年前、部屋の十年時計が一周する少し前に引っ越しを決めた真夜は、「コハクは残る?」と聞いてきた。コハクは『友達と離れるのは寂しいなぁ』とふんわり考えていたが、自分が真夜と離れてここに残ることは少しも考えておらず、想定外の問いに慌てて「一緒にいく!」と答えた。
真夜も「まだ早いわよね」とついてくることを了承してくれたが、彼女がなにを考えていたのか、コハクには分からず、「まだ」がいつまでのことを指しているのかとひっそり怯えていた。
だから、できれば真夜には誕生日を忘れていて欲しいと思っていたコハクだが、誕生日を祝うと言われれば、なにかの契約が更新されたような安心感があった。
「コハク、今何歳だっけ?」
「十三歳ですよ」
その夜、真夜が戻ってきたのは日もとっぷり暮れた後だった。
コハクが用意したご馳走を囲みながら、真夜はコハクに訪ねた。
「道理で料理も上手くなるわけだわ。このフライも魔法みたいに美味しい」
「真夜さんのパンケーキには敵いませんよ」
その後、
「将来何なりたい?」という質問には間髪入れず、
「もちろん魔法使い!」と答えたが、真夜もすかさず「まーだ、言ってるの?」とつれない。
「毎年毎年全く…魔法なんか使えてもろくな目に合わないっていうのに…」と呟く真夜は「そんなになりたいって、魔法が使えたら何をしたいの?」と尋ねた。
やりたいこと…と聞かれて少しコハクは止まってしまってしまった。
真夜と離れたり、誰かに取られるのが嫌だから、魔法使いになりたかっただけで、力をどう使うかなんて考えたこともなかった。
しかし、ふと今日のナタリーの嬉しそうな顔が頭をよぎった。
「あのね」とコハクは切り返す。
「ぼく、魔法が使えるようになったら、真夜さんみたいにいろんな人を助けたい」
「助けたい?」
「マーサのおばあちゃんも、おじいさんも、他の人も、みんな真夜さんが元気にしてて、すごいなぁって思うんだ。僕もそんな魔法使いになりたい。」
真夜はアーモンドのような目を瞬かせるが、反応がない。コハクはまずい事を言ったかと耳の後ろをかきながら、「…変かな」と首を傾げてみせると、真夜はコハクの鼻をきゅっと摘み、「いっちょ前なことを言うようになって!」と揶揄った。
「魔法使いは向いてないと思うけど」
何処か諦めた様子の真夜は、どこから出したのか、ドンと大きな箱を机に置いた。
真夜の開けてみて、という目線に従って、コハクは丁寧に包装紙をめくって箱を開ける。
「わぁ…」
「…良い薬屋にはなるんじゃない?」
中には、沢山の本と、真夜が持っているものよりも少し小ぶりな調剤器具が入っていた。
「楽しくないプレゼントで悪いけどね、この街にいる間に普通よりは上等な薬屋をやってけるくらいには仕込んであげる」
コハクは何も言えないまま、顔を上げて真夜を見つめた。そんなコハクに真夜は照れからぶっきらぼうに言った。
「今日からは師匠って呼びなさい」
「師匠…」
「ああ、もう泣かないっての、オープナーちょうだい!もう一本ワイン開けるわよ」
「泣いてない…です。」
りんりん、と相変わらず綺麗な鈴の音に合わせてぽろぽろ流れる涙が収まるまで、真夜はワイン片手にコハクを撫で続けた。
ようやく落ち着いたコハクは、準備の疲れもあり、教科書を眺めながらゆっくり船を漕ぎ始めた。真夜はコハクをベットへ連れて行こうとしたが、どうしてもプレゼントと一緒に寝たいと言うので、ふらふらするコハクを支えながら、久しぶりの魔法でプレゼントも浮かせて、コハクの部屋へ運んだ。
箱はベットのサイドボードに着地させ、一際頑丈そうな本だけ取り出して枕元に添えてやると、コハクは満足そうに微笑んで、もう一度お礼をいってからゆっくりとした寝息を立て始めた。
真夜はいつも通り、コハクの額にそっとキスをして、起こさないように寝室の扉を閉めた。
「おやすみコハク」
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