自分大好き姫と不細工な犬

花木 葵音

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ヒースの秘密と愛するということ

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 朝の気配にアンナは自然と目が覚めた。メイドたちが起こしにやってくる。そこでアンナはヒースがいないことに気付いた。
「えっと、あなた、リリーだったかしら? ヒースを見かけなかった?」
 リリーと呼ばれたメイドは初めて名前を呼ばれたことに驚いて瞬きする。そして後ろを振り返り、
「あら、本当ですね。ヒース殿はどこに行かれたのでしょう」
 と首を捻った。
 アンナは急に不安になった。
 ヒースがそばにいないなんて初めてだ。
「アンナ様! お着替えを!」
 リリーの声を聞かずに、アンナは寝間着のまま部屋中を歩き回る。
「ヒース!」
 大声でヒースの名を連呼し、棚を開け、小物をどかせて、アンナは隅々まで自分の目で探し回った。けれどもヒースはいなかった。アンナの心に不安が押し寄せてくる。
「ヒース!」
 泣きそうになりながら部屋を飛び出し、城内を廻った。
「あ! バルザック! ヒースを見なかった?」
 バルザックはアンナの格好にギョッとして、自分のマントを外しアンナの肩にかけた。
「お風邪を引かれては大変です。ヒース殿なら庭園の前に座っていましたので、私が連れて参ります」
 バルザックはアンナから目を逸らしてそう言う。
「ありがとう! バルザック!」
 アンナはバルザックに声をかけると再び走り出した。
「アンナ様!」
 バルザックはアンナの肩から滑り落ちた自分のマントを手にアンナを追った。

 果たしてヒースは庭園の入り口の前に座っていた。
 その後ろ姿からは哀愁が漂っていた。
 アンナは切なくなってヒースに駆け寄った。

「ヒース! どうしたの? 急にいなくなったから心配したのよ」
 ヒースは悲しげに空を見上げていた。
「ヒース?」
 アンナはヒースの背中を撫でながら声をかける。
「アンナ様……。私はアンナ様に呪いの話をしてしまいました。でも話さぬ方が良かったのではないかと後悔しているのです。アンナ様の負担になってしまったのではないかと」
 アンナはヒースの前にしゃがみ込んだ。
 後ろから追ってきたバルザックは少し離れていたところから二人を見守っていたが、そんなアンナに驚いた。
「ヒース?」
 アンナの呼びかけに、ヒースは目を合わそうとしない。アンナはヒースの顔を柔らかな白い手で挟み込んだ。
「ヒース。私は聞いて良かったわ。もし、私が何も知らないままで、ヒースが冬に死んでしまったら、きっと後悔するわ。とても寂しくて耐えられないわ。だからいいのよ。ヒース」
 ヒースは小さな目からほろりと涙を零した。
「アンナ様……」
「だから私の前から消えないでね、ヒース。今日は本当に心配してしまったわ」
「申し訳ございません。ありがとうございます」
 ヒースは再び涙を落とした。そんなヒースの首にアンナは腕を回して抱きついた。
 バルザックは声をかけられずにそれを見ていた。
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