白銀オメガに草原で愛を

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72.もっと

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「ユクガ、様……そのような、ところまで……」
「俺以外の男が触れたんだろう?」
「は、はい……」

 正直に言わないほうが、よかっただろうか。カガルトゥラードでゲラルドに暴かれそうになったことを素直に話したら、ユクガがキアラの体に余すところなく口づけを落とし始めてしまった。唇で触れられること自体は構わないけれど、足の先までユクガの口が触れるのは、心配になってしまう。

「ユクガ様、あの、湯浴みを、していない、ですから」
「お前の体に汚いところなどない」

 聞いてもらえず、舌まで這わされてなぜかどきどきしてしまう。それに、どうしてか、ユクガの舌がひらめく度に、お腹がきゅうっとする。
 じんわりと蕾からあふれてきてしまったような気がして、キアラは内ももをすり合わせた。

「キアラ」
「はい、ユクガ様」

 キアラの足を持ち上げていたユクガが、丁寧にベッドに下ろしてくれたかと思うと覆い被さってくる。ゲラルドのときは同じベッドにいるだけでも嫌だったけれど、ユクガの腕にこうして閉じ込められるのは、ちっとも嫌ではない。

「……俺は、寛容な男のつもりだったんだが」

 ユクガはいつもキアラの言葉を待ってくれるし、キアラの話を聞いて、きちんと受け入れてくれる。もちろん寛容だろうと思ったのだが、ユクガには思うところがあるようで、キアラは小首を傾げた。

「お前に他の男が触れたかと思うと、腸が煮えくり返る」
「も、申し訳ありません……」
「……お前を守れなかった俺自身と……相手の男に、腹が立っている」

 険しい顔のユクガが視線をそらしてしまって、キアラはそっと頬を撫でた。
 キアラがゲラルドに襲われたとき、ユクガはヨラガンにいたのだから、助けるというのは無理があるだろう。それに、カガルトゥラードからキアラを取り戻すために、ヨラガンでがんばってくれていたのもわかっている。

「……ユクガ様」

 名前を呼んで、こちらを向いてくれた人の唇に、そっと唇で触れる。

「……お心を寄せてくださるだけで、嬉しいです」

 思いを寄せる人が、自分を思ってくれている。それだけではなくて、傍にいて、言葉を交わして、肌で触れ合うことができる。
 離れていた間に叶わなかったことが、今は思いのままだ。

「……お前は、欲がないな」
「そう、でしょうか」

 もっとユクガに触れていたいとか、大きな手で撫でてほしいとか、いろいろあると思うけれど。
 ちょっと首を傾げたら、伸ばしたほうの首筋に口づけを降らされて、くすぐったい。小さく笑い声を漏らしているうちに、ユクガの顔が下りていって、鎖骨のあたりがぴりっとする。

「っん」

 キアラの声を気にする様子はなく、ユクガがわき腹を撫でてきて、キアラの胸にも口づけを落とす。

「あっ……」

 そのまま吸いつかれるのかと思っていたのだが、思っていたのと反対側をくりっと指で押しつぶされて、キアラは抑えきれず声を漏らした。
 女性のように膨らんではいないけれど、吸われたり、指でこりこりとつままれたり、快楽を受け取る部分なのだと、一度目のヒートで教え込まれてしまったところだ。舐められたりいじられたりしているうちにぷっくりと色が変わって、ユクガが満足そうな顔をする。

「春の果実のようだな」
「……恥ずかしい、です」

 キアラの薄い胸板に、色づいて膨れた突起が二つ、並んでいる。ユクガと口づけをすることも、肌を重ねることも嬉しいけれど、羞恥は拭いきれない。

「お前が、俺の手で気持ちよさそうにしているのが、嬉しいんだが」
「……私も、何か、してさしあげたいです」

 そうしたら少しは恥ずかしさが薄れるかもしれない。
 微笑んだユクガがキアラの背中に腕を回して、体を入れ替えた。

「ゆ、ユクガ様、これでは、あの、重たくありませんか」

 キアラと違ってユクガは強い人だし、体もしっかりしているけれど、人が上にまたがっていたら重いだろう。あたふたするキアラに面白がっている顔をして、ユクガがキアラの腰を掴んでくる。

「……いや、まだ難しいか」

 そのままユクガが器用に起き上がったので、体がずり下がって、キアラはユクガの胡坐の中に座るような形になった。
 難しいとは、何だろう。

「……キアラ、膝立ちになれるか」
「はい、ユクガ様」

 大きく足を開くことにはなるが、目の前のたくましい体に抱きつくようにして、ユクガの体の横に膝をつけば、できないことはない。ユクガが腕を回して腰を支えてくれるから、倒れてしまう心配もない。

「いかが、でしょうか」
「ああ」

 上手にできたことを褒めるように口づけられて、つい安心して座り込みそうになる。でも、膝立ちになるように言われたのだから、ユクガの望む通りに動きたい。

「ひ、ん……っ」
「……濡れているな」

 何も意識していなかったところに指を入れられて、キアラは耐えきれずにぎゅっと抱きついた。ユクガの体を跨ぐようにしているから、大きく足を開いてしまっているし、隠せるようなものは何もない。
 くちゅくちゅと中をいじられては、うまく体を支えていられない。

「あ、ぅ、っん、ユクガ、様……っ」
「解さないと、入れられないだろう」

 足が震えて、ユクガに抱きついていないと崩れ落ちてしまいそうだ。それもユクガにしっかり腰を抱かれているから何とかなっているだけで、自分一人だったらあっさりくずおれてしまっていたに違いない。
 震えてしがみつくキアラの中を、ユクガの太い指が動いている。中を押し広げるように、ときどき、頭のてっぺんまで突き抜けるような衝撃の走る部分をこすられて、びくびくと体が跳ねてしまう。

「ユクガ、さま、そこっ、いや……ぁっ」
「気持ちいいだろう? 嫌か?」
「気持ち、ぃい、です、でもっ……」

 もう立っていられない。ユクガに支えてもらって、しがみついているから何とかなっているだけで、足はがくがくするし頭は働かない。
 助けてほしくて、ユクガに抱きつき直して訴える。

「も、がんばれな、ぃ、です」
「……そうか」

 ずるりと指を引き抜かれて、我慢できずに声を漏らす。うまく息ができずに荒い呼吸のキアラを横たえて、ユクガが覆い被さってくる。
 瞳がまるで、鷹のよう。

「……ユクガ、さま……」

 無言で体を寄せられて、腹のあたりにちょっとした重みを感じて視線を向ける。
 赤黒くそそり立ったものが、キアラの腹の上に乗っている。

「ユクガ、さま」
「お前の腹の、ここまで入る」

 とん、と指で押されて、そこから甘くざわつく感覚が広がっていく。ヒートのときは意識がほとんどとろけていて、ユクガのものの大きさなどまるでわかっていなかったけれど、キアラに受け止めきれるのだろうか。

「いいか?」

 腰をわずかに前後させて、ユクガが屹立したものの大きさを改めて見せつけてくる。下敷きにされるような形になったキアラのものは、立ち上がってこそいるが、覆い隠されてほとんど見えない。
 ただ、そうしてこすられると気持ちよくて、声は漏れてしまう。

「ぁ、んっ……」

 慌てて両手で口を押さえたものの、そろそろとユクガを見上げると、唇が弧を描いていた。

「かわいいな、お前は」

 わざとこすりつけるように腰を引いて、キアラの足を持ち上げ、ユクガが蕾に押し当ててくる。

「限界だ。入れさせろ、キアラ」

 ヒートのときのことなどよく覚えていないと思っていたけれど、これは知っている。くぷくぷと浅いところを出し入れされるとたまらなくて、早く、もっと、お腹いっぱいになりたい。

「ユクガさま、もっと……」
「もっと?」

 ときどきあの気持ちいいところにも当ててもらえて、ふわっと上に押し上げられる。
 けれど、それだけでは物足りなくて、もっと奥まで、ぎゅうぎゅうに満たされたい。

「もっと、奥まで……いらして、ください」

 ねだるとすぐに、ユクガに腰を掴まれた。押し進んでくるものの大きさにのけぞってしまうけれど、この先で得られる高揚を知ってしまったから、圧迫感にすら浮ついてしまう。
 ごりゅ、と最奥を突かれて、この先があるはずなのにうまく力が抜けない。吐息とも喘ぎともつかない声を漏らし、宙をかくキアラの足をユクガが掴む。

「……動くぞ」

 掴んだ足に口づけてから、短く告げてユクガが腰を動かし始める。

「っ、あ、ぁ……っ」

 満たされては、なくなって、自分ではどうにもできないまま追い上げられていく。奥をぐりゅぐりゅこね回されたり、浅いところをちゅぷちゅぷ焦らされたり、ユクガはキアラを翻弄する余裕があるようだけれど、目の前がちかちかと弾けて、お腹の奥はとろとろに融けていく。
 もう、声も出せない。

「っ、っ……」

 昇り詰めて震えるキアラに欲望を突き立てて、ユクガもわずかに唸り声を漏らす。ぐ、ぐっと何度か押し込まれるのは、キアラに子種を注いでいるのだろう。その動きに合わせて甘いざわめきが広がって、体がもっと、ユクガをほしくなる。

「……ゆくが、さま……」

 思ったよりたどたどしい声になってしまった。黄色の瞳がキアラを見つめてくれるから、手を伸ばして、頬に触れて、甘える。

「……もっと」
「……ああ」

 再び始まった律動に舌足らずな声を漏らして、キアラはユクガに与えられるものに蕩けていった。
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