Rely on

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birthday

23-1

 仕事に行く昂良を見送り、足早にキッチンに赴く。
 定位置にあるフルーツナイフを手に取ると、朔斗はそれをじっと見つめた。手が小刻みに震え出す。

「……大丈夫、大丈夫」

 うわ言のように何度も唱えていると、男女の写真がちらついた。写真の中の昂良と目が合い、逃げ出すようにキッチンを離れる。

 居間のソファーにはプレゼントらしき箱が、幾つか置きっぱなしになっている。
 立ち止まり、朔斗は唇を噛んだ。

「僕だって、お前みたいに生きれるはずだったんだ……」



 久方振りに包丁を握り、刻んだ野菜を本に記された手順通りに鍋に放り込んでゆく。
 昂良が日常的に料理をしているおかげで、食材や調味料には何一つ不自由しなかった。

 昔、腹を空かせている美叶に、よくトマトスープを作ってやったことを思い出す。それは決まって、両親が夜遊びから帰らない朝の事で、そんな朝だからこそ生まれる静けさと澄んだ空気が、大好きだった。

 その時、玄関から物音がした。昂良が帰宅したようだ。
 敢えて何も言わず、調理を続ける。

「うわ、びっくりした」

 予想通り、キッチンを覗き込んだ昂良が驚きの声をあげた。

「……え、なに?」
「ごめんね勝手に。……誕生日、これくらいしか出来ないから」

 スープをかき混ぜながら、朗らかに笑ってみせる。昂良は暫くの間立ち尽くしていたが、一息吐いて、ふわりと口元を綻ばせた。

「……お前、料理出来たんだな」
「昔はよくやってたから」

 一瞬、昂良の表情が揺らいだ。
 恐らく、家事を押し付けられていた幼い自分と重ねてしまったのだろう。
 彼はそっぽを向いて、少しだけ俯く。

「……ありがとな。着替えてくるわ」
「着替えたらすぐ食べれそう?」
「……うん」

 その背中が見えなくなったことを確認し、朔斗はポケットの中に隠し持っていた睡眠薬を取り出した。

 ――――計画が円滑に進行しすぎて、怖いくらいだ。

 本当に昂良は、僕を信じ切っている。
 こんなひ弱な人間が逆襲などするわけがないと、高を括っているのだろうか。
 もしかしたらそれ以外の理由があるのかもしれないが、今は考えても無駄だ。

 昂良の自傷癖を利用しているようで心苦しい部分はあったが、罪悪感を噛み殺し、彼の分のスープに睡眠薬を投入した。
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