Rely on

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birthday

23-2

「レシピ本とか持ってたんだね」

 クリームパスタとトマトスープが並んだ食卓で、何気ない話題を切り出す。

「あぁ、あれ、さつきが買ったやつ」
「…………そっか」

 予想していなかった答えに、しまった、と思う。

 返す言葉が見つからず、黙り込んでしまう。皮肉にも、この時初めて、人との会話に慣れておけばよかったと後悔の念を抱いた。

「美味い」
「……良かった」

 自分だけが感じているであろう異様な空気に喉が詰まりそうになる。
 今夜人生で初めての殺人に及ぶのだ。
 きっと、これが人間らしいと言える反応に違いない。

「にしても」

 突如昂良が開口し、びくりと肩が跳ねた。

「まさかこんなことしてくれると思わなかった」

 柔和な語調に、胸を撫で下ろす。
 如何やら睡眠薬を仕込んだスープは、本当に美味しく仕上がっているらしい。
 彼はスープを掬いながら、気弱な表情を浮かべる。

「俺は……お前にあんなことしたのに」
「いいよ、もう」
「優しいのな」
「優しくないよ。薬と酒ばっか飲んでるの見ると、気の毒すぎてそんなことどうでもよくなる」
「何だよその微妙な理由」

 苦笑する昂良の動きが、若干鈍くなる。注視していると、食事をしていた手が止まった。

「……眠い?」
「……ん……なんか……」
「昨日も眠れなかったの?」
「いや、……昨日飲んだやつが効きすぎてんのかな……」

 うつらうつらとしながら、彼は必死に眠気に耐えている。右手で頭を支えているが、それすらも心許無い。

「……布団行く? 肩貸すよ?」

 訊ねるが、返事は無かった。皿を避けるようにして机に伏せた昇良が、瞬く間に寝息を立て始める。

「昂良? おーい……」

 念の為何度か名前を呼んでみても、彼は深く眠ったままだった。
 息を呑む。

 ついに、この時が来てしまった。

 朔斗は深呼吸をし、脱力した昂良の腕を肩に担ぎ上げた。
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