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birthday
23-3
ベッドの上に引き摺り上げ、大きく息を吐く。短い距離にも関わらず、随分と時間が掛かった。真冬だと言うのに、額には汗が滲んでいる。
しかし、休んでいる暇は無い。
熟睡している昂良を仰向けにし、その上に跨る。
胸の前で両腕を固定する為、居間を物色している際に見つけたガムテープを入念に巻きつけた。
暴れた時を想定して、足首も固定する。
彼が目覚めたら、ナイフで脅して、大人しくなったところを絞殺するつもりだ。
――――結局、本心を有耶無耶にしたまま、決行日を迎えてしまった。
今現在も、心は迷っている。
けれど、昂良の誕生日である今日の日を逃してしまえば、一生復讐を果たせないという確信があった。
昂良が目を覚ましたのは、睡眠薬により眠った、およそ三時間後のことであった。
予想以上に早い覚醒に、些か驚く。だが、驚愕に目を瞠っているのは、昂良もまた同じだ。彼は戸惑い気味にあちこちを見回した。
「……何? ……何これ、どういうプレイ?」
口角を吊り上げるが、その顔には焦燥の色が滲み出ている。
目を合わせたまま、黙りこくる。静かに、ゆっくりと呼吸をして息を整えた。
「お、おい、さく……」
言い終える前に、昂良の腹に馬乗りになり、同時に首にナイフを突きつける。
「…………とぼけるな」
黒光りするナイフの先端が、昂良の喉仏に当たる。指先まで駆ける震えが皮膚を切り裂いてしまわないか不安になるが、必死にナイフを握り続けた。
「僕が……許したとでも思った……?」
「え……」
「許すわけ、……ないだろ」
愕然とする昂良の瞳は、絶望に満ちていた。
やはり、彼は信じ切っていたのだ。それゆえの失意が、ひしひしと伝わってくる。
「さ……」
「黙れ!」
我武者羅に叫ぶと、彼の体躯がびくりと強張るのが分かった。
情に振り回されるなと脳が指令し、それに従った心が自制を振り切る。
幾度も味わってきた恥辱や責め苦を反芻しながら、さらに声を張り上げる。
「お前が……お前が奪ったんだよ、僕の人生を!!! ……僕のこと、縛って、犯して、傷付けて……気まぐれに優しくなったり、怒ったり、弱いとこ見せたり……からかったり……僕がそれにどれだけ振り回されてきたか……考えたこともないだろ……! 僕だって、あんなことがなければ普通に生きていけるはずだったんだ!! ちゃんと仕事して、友達も作って、普通に……生きていけたのに……!」
昂良は無言で、朔斗を見据えた。何故だか、視界が霞んでいて彼の表情がよく見えない。
「昂良の所為だ! 昂良の所為だ……! だから、絶対殺してやるって、ずっと前から決めてたんだ……!!」
一頻り吐き出し、漸く呼吸の乱れに気付く。肩で息をするたびに、ナイフの刃先が昂良の肌を突いた。
暫くの沈黙の後、昂良が自嘲的に小さく笑った。
「…………そういうことか」
諦めにも似た声が、静寂にぽつりと落とされる。
「どうせ俺は死に損なったクズだ。死ぬ時期がちょっと遅れただけだよな」
彼は目を閉じて、自分に言い聞かせるように、独白を続けた。
しかし、休んでいる暇は無い。
熟睡している昂良を仰向けにし、その上に跨る。
胸の前で両腕を固定する為、居間を物色している際に見つけたガムテープを入念に巻きつけた。
暴れた時を想定して、足首も固定する。
彼が目覚めたら、ナイフで脅して、大人しくなったところを絞殺するつもりだ。
――――結局、本心を有耶無耶にしたまま、決行日を迎えてしまった。
今現在も、心は迷っている。
けれど、昂良の誕生日である今日の日を逃してしまえば、一生復讐を果たせないという確信があった。
昂良が目を覚ましたのは、睡眠薬により眠った、およそ三時間後のことであった。
予想以上に早い覚醒に、些か驚く。だが、驚愕に目を瞠っているのは、昂良もまた同じだ。彼は戸惑い気味にあちこちを見回した。
「……何? ……何これ、どういうプレイ?」
口角を吊り上げるが、その顔には焦燥の色が滲み出ている。
目を合わせたまま、黙りこくる。静かに、ゆっくりと呼吸をして息を整えた。
「お、おい、さく……」
言い終える前に、昂良の腹に馬乗りになり、同時に首にナイフを突きつける。
「…………とぼけるな」
黒光りするナイフの先端が、昂良の喉仏に当たる。指先まで駆ける震えが皮膚を切り裂いてしまわないか不安になるが、必死にナイフを握り続けた。
「僕が……許したとでも思った……?」
「え……」
「許すわけ、……ないだろ」
愕然とする昂良の瞳は、絶望に満ちていた。
やはり、彼は信じ切っていたのだ。それゆえの失意が、ひしひしと伝わってくる。
「さ……」
「黙れ!」
我武者羅に叫ぶと、彼の体躯がびくりと強張るのが分かった。
情に振り回されるなと脳が指令し、それに従った心が自制を振り切る。
幾度も味わってきた恥辱や責め苦を反芻しながら、さらに声を張り上げる。
「お前が……お前が奪ったんだよ、僕の人生を!!! ……僕のこと、縛って、犯して、傷付けて……気まぐれに優しくなったり、怒ったり、弱いとこ見せたり……からかったり……僕がそれにどれだけ振り回されてきたか……考えたこともないだろ……! 僕だって、あんなことがなければ普通に生きていけるはずだったんだ!! ちゃんと仕事して、友達も作って、普通に……生きていけたのに……!」
昂良は無言で、朔斗を見据えた。何故だか、視界が霞んでいて彼の表情がよく見えない。
「昂良の所為だ! 昂良の所為だ……! だから、絶対殺してやるって、ずっと前から決めてたんだ……!!」
一頻り吐き出し、漸く呼吸の乱れに気付く。肩で息をするたびに、ナイフの刃先が昂良の肌を突いた。
暫くの沈黙の後、昂良が自嘲的に小さく笑った。
「…………そういうことか」
諦めにも似た声が、静寂にぽつりと落とされる。
「どうせ俺は死に損なったクズだ。死ぬ時期がちょっと遅れただけだよな」
彼は目を閉じて、自分に言い聞かせるように、独白を続けた。
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