悪役同士の開拓生活

コリモ

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開拓地へ

閑話 送り出す側2

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sideクリストファー・スクルト公爵(メアリ父)

まさか私が作った魔法陣が悪用されるとは思っても見なかった。
それも作ったのは学生時代だからもう30年近く前のことだ。最初は相手の心の中の嫌悪感がわかればと言うつもりで作ったのだが、ここに対象人物を複数入れると婚約破棄を起こす魔法陣になるとは思っても見なかったのだ。
とにかく私の宰相の辞任と息子カーターへの公爵位と宰相職の譲渡。この手続きが意外にも時間がかかってしまって、メアリの出発する3日まえに全く用意をしてやっていないことに気がついた。全くの箱入り娘であったメアリが、平民として開拓団に参加するのだ。最低基礎を教えられる者をつけないと大変なことになる。
「おいメイソンはいるか?」と声をかけると
「大旦那様、如何致しましたか?」と執事のメイソンが執務室に入って来た。
「すまん。メアリの出発のための準備はできているだろうか?」
「一応あジックバッグを買い求めて必要な物を入れておきましたが、問題は冒険者が着る普段着はシャツとズボンなため、お嬢様はきっと嫌悪されるかと」
「仕方がない。汚れてもいいようにある程度の普段着を持たせよう。それから、護衛についてなのだが」
「女性で公爵家の出だと知られた場合犯罪に巻き込まれる可能性があります。今回参加される開拓団はスラム街や冒険者で構成されておりますので、問題が起きないように冒険者ギルドに傀儡師あたりを紹介してもらうのは如何でしょう」
「なるほど。彼に力を借りて生活魔法や家事ができるようになってくれれば開拓村での生活は楽だな」
「ではすぐに冒険者ギルドに掛け合って来ます」
「ではそのものにこの装備と金子を渡すようギルドに渡してくれ」そう言って私はマジックバッグに移動の際に必要なものとゴーレムの核を入れて、金貨3枚分を使いやすいように銀貨と銅貨そして薬草を注文するように指示を出した。
「これだけあればかなりの傀儡師が護衛についてくれると思います」そう言ってメイソンは冒険者ギルドへと足を運んでくれた。あとはメリアと今後について話しておかないといけない。しかし、きちんと説明するためにはもう少し詰めないといけないことがあってメアリと話すのが出発前日となてしまった。

「誰かメアリを呼んでくれ」そう言うと侍女がメアリを連れて来た。
「お呼びでしょうかお父様」そう言って商家の娘に見える姿で現れた。
「うむ。今、お前の開拓団への参加準備について話していたのだが、決まったことを話す。まず、
1.お前は商家の娘として参加すること。
2.護衛として冒険者ギルドから傀儡師を一人雇うので彼に必要なことを学べ。
3.最初は難しいかもしれないが、各開拓団は約1月をかけて入植地へ至る。その間に必要なスキルを身につけるのだ。
4.必要なものができれば、商家実家からの救援物資として送ることができる。そのための魔法陣はできている持っていけ。
5.必要最低限のものはこのマジックバッグに入っている。お前の魔力なら時間停止機能が付加されるだろう。
6.共に参加するメルク子爵令息は侍女を連れて行くそうだ。彼らとうまく付き合え。

                       以上だ。危険を伴うかもしれないが、お前の能力を信じている」
「ありがとうございます。大切にさせていただきます」そう言って形見分けをもらったようにマジックバッグをギュッと抱きしめた。
「大丈夫だ。この魔法陣には人の行き来もできる。お前がどうしても必要としたときに起動させなさい。行き先はわたしの別邸隠居先になるが商家の装いはしておく。買い出しとして起動させても良い。あと、急ぎの連絡はこの箱に」と言ってレターボックスを渡すと
「これは?」
「この中にメモでもなんでもいい。スタンビートが起きたとか流行病が出て薬が必要でもいい。緊急時に普通時間がかかる連絡が、これに入れると私の書斎に転送されてくることになっている。各開拓団へ同じ物を渡しているので安心してくれ」そう言ってマジックバッグに入れて持たせた。
「今までありがとうございました」そう言うとギルドから迎えが来てメアリは家を出て行った。



翌日


「しまった!新しい名前を言っておくのを忘れていた。まあいいか。しばらくは本名のメアリで過ごすのだから」

「しかしびっくりするでしょうね。メアリ様の偽物を作り出して、名前と年齢を変えて生活するのですから」

~~~~~~~~~~~~
意外とおっちょこちょいな元公爵でした。

でも出発に間に合ってよかったです。


同じ名前が別人の枠で出て来たので訂正します。
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