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第二章

〜愛と魔法使いと吸血鬼〜④

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トーマの体が白く光る!

 メリンダも子供達も先程まで騒いでいたが優しく光るトーマを見て静まり返った
 
 ――イメージしろ……銃はあんなに精密なのに出来たんだ……じゃあイメージするだけで……――

 トーマの「白い手」が変化する!
 グローブがナノマシンのように組み替わり呼吸器のように変化した、それを手に取りロンの口元にあてる

 周りの者達は理解出来ない!

 ――ロンの体全体に酸素を送るイメージ……過度かどにやり過ぎないように――

 ロンは呼吸が浅くなり過ぎて体に酸素が足りていない状態、足を高い位置にし毛布で包み温かくする
 
 呼吸器で酸素を送りつつ様子を見る

 ――ゆっくり丁寧に……ロンの呼吸に合わせて――

ロンは顔色も良くなり呼吸も安定した、メリンダや子供達は聖者を見るようにトーマを見つめる

 見たこともないような方法でロンを救ったのだ

 その日、トーマは孤児院に泊まった、朝方までロンの容態を診ていたのでベッドにうつ伏せに寝てしまっていたのだ

 メリンダはエリィが心配するといけないと思いアッシュハート家に出向いてその事を伝えている

 エリィもコーラルも自分達が知らないところで、トーマがそんなことをしていたとはつゆ知らず、急いで孤児院に向かった
 
 二人が孤児院に到着すると、ロンの脇でうつ伏せに寝ているトーマを見つける
 ロンもその安定して気持ち良さそうに寝ている
 
「ちょっと寝かせてあげましょうか?」
「そうっちゃね!」
 二人は孤児院でゆっくりとトーマの目覚めを待った

 昼過ぎにやっと目覚めるトーマ
「ヤバい!……今何時?……体感的に昼過ぎかも……エリィに怒られる!……」
「怒りませんよ!」

 トーマが振り向くと、そこには天使がほほを膨らませて座っていた
「エリィ……」
 
 ――エリィ……頬ぷくって可愛い……怒りませんよとか言いながら頬ぷくっ……これはあれか……時間が遅くなることは怒らないけど、そんなことくらいで怒ると思っているオレにちょっと怒ってるパターンだな――

「出発の予定変わっちゃった!ごめんね」
「いいですよ、トーマくんは優しいですね」
「そう?普通だよ」
「ふふっそうですね」

 ロンの体調も落ち着いた、王都に発つ日だがこのまま吸血鬼を放ってはおけない
 三人はビビに会いに屋敷に行ったが不在のようで一旦アッシュハート家に戻ることにした
 
「吸血鬼いたソ?」
「姿は見てないけど魔素の残り香が被害者二人と一致したんだ……だから同じ犯人ではあると思う」
「吸血鬼がこのように連続で血を欲するなんて……チカラがよほど弱ってるのでしょうか……」
 
「……魔獣の可能性はないの?サラちゃんの時みたいに……喋れたりしてたし、そういう魔獣は?」
「……たしかに、狡猾で人間の姿に化けれる魔獣もいると聞いたことがあります」

「それビルバッドンっちゃ!」

「「――ビルバッドン!」」

「そうです!翼を持ち足が変な方向に曲がってる魔獣……人間に化けると言われています」
 
「コーラルが珍しく冴えてるな」
「なんて~!珍しくってなんちゃ~!」
「いや、いつもこういう時はボケっとしてるし」
「はぁぁ?トーマっちさんこそ昨日は冴えない男代表としてよく話しに出てましたね!っちゃ」
「なっ!人が気にしている事を……いいもんね~エリィが素敵って言ってたし~」
「エリィちんエリィちん、いっつも、キ~!」
「うわっ!やめろ!髪のセットが崩れる!」
「冴えない男にしてやるっちゃ~」
「やめろ~!くっ付くな~……はっ!」

「ふふっ……お二人は相変わらず楽しそうですね」
 言葉とは裏腹に地面に転がっている石を足で転がしてイジイジしている
 
 ――エリィ……いつものイジイジバージョン可愛い……トーマくん、わたしも髪の毛わしゃわしゃしたいです、しょうがないなエリィは……でももうオレの心は君でわしゃわしゃだよ……もうトーマくんったら……エリィ……トーマくん……――

 そんな話をしている帰りの道中、街のほうが騒がしい

 人だかりの中央では、街に常駐している兵士達が一人の少女を拘束し連行しようとしている

 少女も抵抗するが華奢きゃしゃでチカラも弱くあらがうことが出来ない

 街の人々も怒声や怒号のように非難している

「「この吸血鬼め!」やっぱりかこの魔女!」早く始末してくれ!おちおち夜も出歩けない!」

「「「吸血鬼!?」」」
 
人だかりの中から聞こえる言葉にトーマ達はお互い顔を見合わせる
 
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