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第二章
事故
しおりを挟む救護室にはエリィとイルミナがトーマの容態を診ている
ノック音がして部屋に入って来たのはコーラルとビビの二人、ビオルクが気を利かせて詰所の方まで呼んでくれたのだ
「エリィちん!トーマっち大怪我したソ!?」
「何があった?トリッパーか?」
二人は部屋に入ってベッドに駆け寄る
「はい……適性者試合は大丈夫だったのですが……シルフィア様が襲撃を受けまして……トーマくんが咄嗟に……いつも……みんなを助けてばかり……致命傷でした……まだ意識が……」
エリィは俯き、涙ながらに答える
「「――そんな……!」――トーマ……」
コーラルはトーマの手を握って涙を流しながら必死に声をかけ、ビビはエリィを後ろから抱きしめる
「起きろ~!トーマっち!エリィちんが泣いてるっちゃ!」
「エリィ……大丈夫だぞ……トーマはすぐに目を覚ます、コイツはお前たちを守るためなら魔王にでもなれる男だ!キスでもしてやれば飛び起きる」
「――えっ!キッ……キッ……キスですか……?」
「……そうなソ?」
ビビはこの場を和ませるために冗談でそう言った
「だっ……だめですよ!……姉さんというものがありながら……そっ……そんな……キッ……キスなんて……」
慌ててイルミナが割って入る
「いいっちゃ!どうせ寝てるソ!やっちゃお!やっちゃお!」
「だめですって!寝てますし!」
イルミナは必死に止める
「ウチが王子様になってトーマっち姫を起こすソ!」
「それもう逆になっちゃってますから!」
コーラルがトーマの顔に近付くとイルミナが後ろからキスをさせないように羽交締めにする
ビビはそれを笑いながら見て、エリィは独り言のように「キスですか?」とぶつぶつ呟いている
「イルミ~離してっちゃ~!」
「コーラルさん!落ち着いてください!」
「ここはウチに任せてイルミ~は先に行くっちゃ~」
「僕もここは引けません!姉さんのためにも!」
二人の揉み合いはヒートアップして足がもつれたイルミナは体勢を崩してベッドの方に倒れてしまう!
「――イルミ~!」
「――イルミナさん!」
「――おい危ないっ!」
「――!」
エリィ、コーラル、ビビには反応出来ない!
事故だった、イルミナの唇は寝ているトーマの唇と重なってしまった
「――あっ……!」
「――イルミナさん……!」
「――ほぅ……」
三人は時が止まったようにベッドの二人を見つめる
「わぁぁ~!ごっ……ごめんなさい!……ぼっ僕……」
イルミナは顔が真っ赤になり、ひっくり返って自分の唇に触れる
「……まあまあイルミ~、事故なソ……気にしないことっちゃ……」
事故の原因であるコーラルは気まずそうにイルミナを慰める
「……ですがトーマくん目が覚めませんね……」
「ふん、冗談だからな……すまん……」
「ビビりんのせいでイルミ~が傷付いたっちゃ……」
「それはコーラルのせいだろう?ビビは場を和ませるために……」
「なんて~ウチは本気でトーマっちを起こそうと……」
「こんな冗談信じるのはコーラルくらいだ!」
「ビビりん!ウチを愚弄してるっちゃ~!」
「ビビの決め台詞とるなコーラル!……ん?」
「「……」」
エリィを見るとどうやら本気にしていたみたいで落ち込んでトーマの手をハンドマッサージしながらイジイジしている
イルミナのほうはまだ立ち直れないようで体育座りで俯いている
しばらくしてビオルクが様子を見に来た
「その様子だとトーマくんはまだ目が覚めてないようだね……襲撃の犯人を唯一分かってそうなんだよね~」
エリィ達には分かっているが、トーマが「アース人」であることを告げずにそれを説明することは難しかった
宿の前で絡まれた二人、彼らが「トリッパー」であること
それを知っていることはトーマが「アース人」だから分かること
「申し訳ありません……ただシルフィア様が狙われていることは確かです……警護はしっかりお願いしますとトーマくんは言ってました」
エリィは「シオン・アーテル」に関してビオルクに何も言わなかったがビオルクのほうから情報を出してくれる
「ただ……重症だったハヤト・デイトナとシオン・アーテルの両騎士がいなくなってね~二人とも身体検査したけど怪しい武器は持ってなかったし、シルフィア様を攻撃したのは鉛玉を飛ばすやつなんだよね~トーマくんの体から出たきたから……う~ん」
「いなくなったソ?」
「では、そのシルフィア様とやらを狙ってくるな……もしくはエルフ全体……」
コーラルが不安そうにビビの袖を握るとビビはトーマのように考察する
この事はすでにトーマがビビに伝えていた、ビビは理解力があるのでトーマの考えを伝えたまでだった
「エルフ全体!?」
ビオルクはいつものニヤけ顔が消え、報告に行くと言って部屋から出て行った
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