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人魚姫は宇宙を泳ぐ
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「私はね、人魚であって人魚でないのだよ」
人魚は語った。この尾びれは生来のもので人魚の生を生きるのを過酷なものにしたと。
美しくもない。揺れることしかできない水の中にいながらも乾いた海藻のような尾鰭は不気味だって言われて人魚の群れの家族におけるお荷物もいいとこだった。家族から何度も言われたのはおとぎ話のように人魚から人足になれたら幸せだろうにと。
ある日、嵐が起きた。海の中も大荒れで海底で転がっていた人魚も水面まで押し上げられた。嵐の夜の中で月明かりを見たらしい。多分それは台風の目と呼ばれる場所でそこだけくっきりと夜空が見えた。月明かりが眩しくて、星が瞬く空に人魚は願った。
「あの夜空を泳ぎたい」
そう願ったまま、嵐の海を流されて、あの浜に着いた。そっから奇跡は起こりまくって今がある。
「私はね、いま一番幸せなんだ。憧れていた夜空がもうすぐそこにあるのだから」
その笑みは今まで見せたような、何かを隠すようなものではなくて本当に満たされたものだけが見せる幸福そのものだった。
翌日、人魚はロケットに乗せられた。水生生物である人魚特別仕様のロケットは大きな水槽のように感じた。大気圏を貫いてさあ宇宙につきましたよという時、ロケットが壊れてバラバラになった。人魚はそのままロケットの外に出てしまい、そのまま地球の重力に引っ張られてロケットの残骸と一緒に流れ星になった。
新聞記事には宇宙に憧れた悲劇の人魚姫、そう書かれていた。
悲劇なんかじゃない。やつは望んで宇宙に飛び出して泳いだ。足をもらえたおとぎ話じゃ比べられないくらい人魚は星空を泳ぐという幸せをえたんだ。
人魚は語った。この尾びれは生来のもので人魚の生を生きるのを過酷なものにしたと。
美しくもない。揺れることしかできない水の中にいながらも乾いた海藻のような尾鰭は不気味だって言われて人魚の群れの家族におけるお荷物もいいとこだった。家族から何度も言われたのはおとぎ話のように人魚から人足になれたら幸せだろうにと。
ある日、嵐が起きた。海の中も大荒れで海底で転がっていた人魚も水面まで押し上げられた。嵐の夜の中で月明かりを見たらしい。多分それは台風の目と呼ばれる場所でそこだけくっきりと夜空が見えた。月明かりが眩しくて、星が瞬く空に人魚は願った。
「あの夜空を泳ぎたい」
そう願ったまま、嵐の海を流されて、あの浜に着いた。そっから奇跡は起こりまくって今がある。
「私はね、いま一番幸せなんだ。憧れていた夜空がもうすぐそこにあるのだから」
その笑みは今まで見せたような、何かを隠すようなものではなくて本当に満たされたものだけが見せる幸福そのものだった。
翌日、人魚はロケットに乗せられた。水生生物である人魚特別仕様のロケットは大きな水槽のように感じた。大気圏を貫いてさあ宇宙につきましたよという時、ロケットが壊れてバラバラになった。人魚はそのままロケットの外に出てしまい、そのまま地球の重力に引っ張られてロケットの残骸と一緒に流れ星になった。
新聞記事には宇宙に憧れた悲劇の人魚姫、そう書かれていた。
悲劇なんかじゃない。やつは望んで宇宙に飛び出して泳いだ。足をもらえたおとぎ話じゃ比べられないくらい人魚は星空を泳ぐという幸せをえたんだ。
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