突然、母が死にました。

山王 由二

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4日目

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 月曜日になり、私はいつもよりも少し早めに出勤。会社に着くなり外注様方やお付き合いのある元請け様方にFAXにて葬儀の日程をお知らせすることにした。
 それから税理士事務所に連絡を入れ、17時に会う約束をして仕事にとりかかった。
 自分の仕事と母の仕事、その合間に葬儀や母の死亡がらみの手続きなどしていると、疲れからか、不意に頭痛に襲われるようになった。
 頭痛と言っても、頭が割れるように痛い~とか、二日酔い後のガンガン響くあれ~とか、頭が万力で締め上げられるような~と言うような痛みではなく、頭が内側からふくれあがる感覚と言うか、我慢できないほどではないけれどゆるく痛い。そんな頭痛が断続的に襲ってくるようになった。現在進行形で。
 体温は正常値以下、血圧もちょい引くくらい低いのに、熱が出てるように頭が熱かったりと、ちょっとした体調不良に襲われながら作業を続けることしばし、気づけば昼を過ぎ(結局何も食べなかった)、税理士の先生との約束の時間となった。
 お会いした税理士の先生からお悔やみの言葉を告げられ、それから重たい事実を突き付けられることとなる。
 それは、会社の経営状況だった。
 月単位、近年の経営状況でいえば、国内の中小企業でいえばマシな部類に入る。――が、さらに過去にさかのぼれば、まあ真っ赤っかだったわけで。しかもその時の負債がずっしりとまだ乗っかってるわけで。
 それらを返しながら何とかわずかなたくわえを貯めていき、春に待ち受ける法人税の支払いに充て、尽きたたくわえをまたちょびっとずつ貯めていって、年2回から4回(支払う総額によって、回数が変わる。ウチ規模で4回払いはまずない)の消費税を支払い、また貯めていって来年の法人税に備える。――の繰り返し。
 …………これ、割とギリギリな自転車操業じゃね? ほんの小さな歯車でも、どっかで狂ったらウチ終わらね?
 会社が終われば、従業員たちの生活も大幅に狂うわけで。
 仕事を頼んだりしている外注先にも迷惑がかかるわけで。
 仕事をいただいている元請け側にも影響が出るわけで。

 わしのもっろい(とくにメンタルな面で)双肩に、どんだけ重たいもんのっけてくれるんじゃい!

 私のチキンハートにけっこうなクリティカルダメージを与えた税理士先生はさらに、母の相続税なんかの話も追加ダメージでくれたわけで。
 ダメージ喰らい過ぎて呆然自失となった私は、それからのことを全てオートモードでおこなっていた。
 帰っていく税理士先生を見送り、兄とともに母に会いに行き、そこで父方の親戚と合流、それから家に帰ってお風呂入って前日に作っておいたカレーをちょっとだけ食べて、そうして初めてオートモードを解き、寝た。
 夢の世界へ現実逃避し旅立っていったのだ。
 まあ、逃げきれずに数時間で目を覚ましてかえってきてしまったのだけど。
 それから仕事に行く時間になるまで、ぐるぐると同じことを考えてはオチ、考えてはオチを繰り返し――
 翌日早朝、またもいつもより早く出勤すると、自分なりに会社の経営状況、資産状況を把握することにしたのだった。 
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