突然、母が死にました。

山王 由二

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11日目~16日目

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 休みあけ。いよいよ母の相続をするために動き出すことにした。

 兄は仕事の合間(と言うより、仕事と並行して)に相続するのに必要な書類を揃え始めた。
 登記に耐えられるだけの書類を揃えると言って、母の出身地の役所に連絡をとったりしていたようだ。
 私と父も口座解約や口座情報の開示請求を行うために、住民票と印鑑証明を入手した。ちなみに、この作業が父が今回(だけではなくいつもだが)行った唯一の仕事である。
 
 それから、母のカードの解約や口座引き落としの把握と、支払作業を行う。正直これが一番しち面倒くさく厄介だった
 カード会社に連絡し(いつでもどこの会社も常に回線が混雑している)、訃報を伝え、解約と支払方法を話し合うのだが、毎回たらいまわしにされるのだ、これ。
 最初の担当と解約の手続きをおこない、それが終わったら次の担当へと回され、定期の引き落としがないか確認、それが終わったらまた次の担当へと回されて、今度は支払方法を話し合うのだ。
 これが、とても時間がかかるのである。しかも、まず最初に必ず身元確認、死亡日の確認などを行うのだが、その時、高い確率で性別を勘違いされたりもする(笑)
 私の声はけっこうキーが高く、若かりし頃はよくカラオケで奥井雅美とか歌ったり(もちろん、キーはいじりません)できたくらいには高い。(って言うか、若い頃髪伸ばしてたらおっちゃん何人かに「なんだおめぇ、男か!」とか言われたことあったな、そういえばw)
 まあ、そんなわけで、その声質のせいで、大体こう聞かれるのだ。
 
 「お電話口のお嬢様のお名前を教えてくださいますか?」

 と。
 で、名乗ったら「お電話の方は女性かと思われるのですが?」などと聞き返され「いえ、男です」と返すのがテンプレみたいになってた。これで余計に時間食ったりするのである。
 そんな無駄なやり取りをしつつ、同時並行で会社の支払いも把握し、資金移動を行っていく。通帳を記帳し、いつまでにどこの銀行にいくら入れておけば良いかを把握し、メインバンクからお金をおろしたり振り込んだりするのだ。が、実は、この時点であること・・・・に気づけなかったことを、私は後々後悔することとなった。
 この作業の中に、トラップが(意図せずに)仕掛けられていたのである。そのトラップにものの見事に引っかかり、約2週間後に慌て振り回されることとなるのであった。


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