突然、母が死にました。

山王 由二

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17日目

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 一週間。会社と銀行と税理士事務所と家を回って回って回りまくって一週間。母が亡くなってから2度目の休みがやってきた。

 午前中は、まず職場に行って、事務所内にある母の遺品や経理関係の資料をまとめ、多少なりとも自分が使いやすいように配置を変えていく。のだが、何故か事務所内に私と兄の幼いころの写真や賞状、通知表なんかが残っていたりして、母が自分たち兄弟のことをどれだけ大切に思っていてくれていたかに気づき、涙ぐんだりしてちょいちょい作業の手が止まったりしていた。
 年取ると涙もろくなるっていうのは、本当だと実感させられる。
 それから、午後になるととある神社へと参拝に行った。ってか、とあるというか神田明神なんですが。神田明神は、ヲタクさんに理解ある素晴らしい神社です。アニメとコラボったり境内でアイドルライブやる神社ってここくらいなんじゃなかろうか?
 実は、私は月二回、神田明神にお参りすることを習慣にしている。これはとある知人から言われたことが影響していて、その知人曰く、
 
 「年に一回会うかどうかの赤の他人同然のヤツが、いきなり「お願い聞いて?」とか言っても、「なんやこいつ、アホか!」って思われるだけだろ。聞いてほしけりゃ足しげく通えっつの」

 おっさん、これには「然り!」と深く納得した次第。なので、ちょくちょくお参りに行って神田明神の神々に顔を覚えてもらおうと思ったのである。(そして、その後にアキバに行くのだ!)
 神田明神にて、天国へと旅立つ母に力を貸してもらえるようお願いし、それからアキバをめぐる――つもりが、乗り気になれず。
 一応立ち寄ってみたもの、『親が死んでひと月もたってないのに、何してんだ自分』と行いを自戒し、アキバに来ると食べたくなるゴーゴーカレー(と言ってもエコノミーより上のクラスとか無理。ファーストとか食べる人、まぢですげぇ! って感心する)もスルーした。あの頃はまだ食は細く、一日の食事量が普段の日の一食分くらいで、食欲もまるでなかったためだ。
 結局、日ごろのクセでアキバに足を運んではみたものの、何処にも立ち寄ることなく家路についた。
 母の墓前に線香をあげ、兄と今後の予定の打ち合わせ(この時点ではまだ、四九日の予定が全然決まってなかったのだ。伯母から連絡なかったし)をするため兄の部屋に立ち寄ると、

 兄、ゲームしてた。テイルズを。ネットに助けてもらいながらやってた。

 その兄を私は「俺、もうクリアしてるけどネタバレしていい?」などと言っていじったりしながら、内心ではこう思ったのである。

 『……ああ、遊んでも良いんだ』

 と。
 母の喪に服し、自分の楽しみ、やりたいことを自重し、楽しもうとすればそれを自戒し、自ら取り上げる。
 こんなことしていれば、いつまでたっても気持ちは上向くことなどできないし、心は沈み、体調がよくなることなどない。
 たまの休みに遊ぶ兄の姿が沈んでいた心が上向くきっかけとなり、これを境に、私は母の死に囚われ、身動き取れずに嘆き悲しむことをやめた。すぐには、完全には、無理だったけど。少しずつ、少しずつだが、母の死を自分なりに受け入れ、前を見ることとなったのである。




 
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