突然、母が死にました。

山王 由二

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18日目(前編。長くなったから二つに分けます)

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 とは言え、前日そう思ったからと言って、いきなり気持ちが切り替わるわけもなく。

 週が明けて、母の遺品整理や遺産の手続きなどをしていると、やはり「オレ、なんでこんなことしているんだろう?」と言うやるせない気持ち、疑問がわいてきたりする。実家で線香をあげている時も、虚無感に度々襲われたりする。ただ、これは当たり前のことで、これはもう、しょうがない事なのだ。と自分なりに落としどころが見つけられている分、マシにはなっているのだけど。

 さて、仕事やら遺産手続やらをしている最中、ふと、「はて? ウチの親父おっさんの持ち金はナンボや?」と疑問を抱き、確認してみることに。
 ウチの親父は、金の管理が全くできない人で、およそ貯めるということを知らない。あればあるだけ使い、老後に残すなどの発想もない。と言うか、誰かが助けてくれる、やってくれると思っており、それを信じて疑わない、当たり前のことと思っているので、自分が生きるためにどれくらいの金が必要なのかすら気にも留めていないダメな人なのだ。
 どれくらいダメなやつかと言うと……

 うちの父は部類の酒好きでチェインなヘビースモーカー(ちなみに私は酒などめったに飲まず、たばこなど匂いを嗅いだだけで気持ち悪くなる。つくづく、アレとは合わないのだ)で、ひどい頃には焼酎のデカいヤツ(何リットル入ってるか知らない)が数日と持たずに無くなり、たばこは一日3箱吸うと言うアホみたいな生活を送っていて、結果――

 ものの見事に脳の血管がイってしまった。

 ウチの従業員が親父の様子に気づき、救急車の出動を要請。見事、脳溢血で病院送りとなったわけだ(のち、私と母はよく「なんでほっといてくれなかったのか。あのままほっといて死んでくれればよかったのに」とよその人が聞いたら割と外道な会話を交わしたりしてた)
 で、数か月の入院となったわけだが、これおかげ(?)で、一つあることが判明した。
 父は度々、「金がねぇ! 金が足りねぇ!」などと喚き、他の従業員に自分はこれだけしかもらっていない。と愚痴を漏らしては同情を買おうとしていた。
 実際、父がもらっていた金では、普通に生活するのは苦しいのだ。そう、普通なら・・・・・・・
 が、父の当時の生活は普通どころか恵まれていて、生活にかかるお金(税金やら健康保険、食事代に果ては携帯の使用量まで、ありとあらゆるお金)は全て母が出してくれていた。父がもらっているお金は全てお小遣いとして使えるお金だったのだ。
 世間一般のサラリーマンのお小遣い平均の倍以上もらっていながら、金がねぇ、金がねぇなどとたわけたことを言っていて、普通なら貯蓄できるくらいもらっているのに、そのすべてを酒とたばこ(それ以外に金の使い道を知らない。趣味とか持ってないし)に費やす日々を過ごしていた。
 私たちはよく「金がないっていうならタバコ吸う本数減らせ。酒飲むの控えろ」と言っていたのだが、しかし、それでも止めることはないどころか……

 よりにもよって、消費者金融に借金してまで酒飲んでいやがった! それも30万も借りていやがったのだ!!

 金が無いのはわかっていたが、まさか借金までしていたとは、私も母も、そしてそのことを最初に教えられた兄も、夢にも思っていなかった。
 入院してしまい、支払いが出来なくなってしまった父は、兄に借金のことを打ち明け、代わりに払ってもらうよう頼んだのだ。(なぜ兄かと言えば、わたしや母に言えば盛大に罵倒されるのがわかっていたからだ)
 そのことを知った母は、借金30万を全額、払った。が、父はその母に対し、ありがとう。や、すまないの一言もなく、当たり前のことと平然としていた。(うん、改めて、やっぱあいつはクズだね! って思うね)
 この一件があったため、私は父がもう借金ができないよう、手を尽くし、見事借りれなくしてやった。本来は借金依存症と言うか、自分を上手くコントロールできない人向けで、かつ本人の同意などが必要だったりするのだが、同意とか無視して手続した。(向こうも、わかっている感じだったけど)
 ちなみに、その時利用した手段と言うのが日本貸金業協会の貸付自粛制度と言うやつで、つい借金してしまうという人は利用してみると良い。永遠に借りれなくなるわけではないので、借り癖を治すために利用するのも手だと思う。ただし、カードや家を借りる時の信用度はかなり落ちてしまうけど。

 まあ、そんなおっさんなので、父の金はそれまで母が管理し、生活の面倒を(本当に嫌そうに)見ていたわけで。その母がいない以上は、私が面倒を見るしかなくなるのだ。(兄は忙しすぎて、そこまでやってられない)
 父の持ち金を確認し、一か月に必要になるお金で割ってみると……

 これ? 年内保たないんじゃね?

 と言う、衝撃的と言うか、むしろそれくらい想定しておけよ! 的な事実が判明した。
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