突然、母が死にました。

山王 由二

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18日目(後編)

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 さて、父が年内にも無一文になることが判明したため、私たちは一刻も早く遺産の相続を決めねばならなくなった。(ちなみに、父はこのことを知らない)

 このことが判明する前は、いっそのこと親父に財産放棄させたろか! とも考えていた。

 理由は二つで、一つは感情論。母のことを考えれば、あの親父に自分の金が渡るなどと言うことは絶対に許せなかっただろうし、私自身、納得いかなかったから。

 もう一つの理由が、経済的理由から。父は現在老人ホーム暮らしをしている。年齢的にはまだ早い(実際、老人ホームにいる人の中で一番若い)のだが、前編で語った通り、この人は一人で生きることができない、自己管理? ナニソレ? な人なので、ある程度管理された環境に放り込んでおかなければならなかったからだ。

 で、老人ホームと言うのは入るときにまず入居料を払い、それから毎月、生活費を支払っていくことになるのだが、この生活費、前年の収入によって支払う額が変わってくる。この時点ではまだ前年にそれなりの収入があったので、支払う額は最高額(十五万越え)。が、今年は収入ゼロ。つまり、来年度は支払う生活費が最低額まで減らせる。なのに、相続などさせてしまったら結局来年度も最高額を支払うことになってしまう。それを嫌ったのだ。が、今回、そうも言ってられない事情が発覚してしまったのである。故、相続放棄のアイデアは却下。

 ちなみに、この相続放棄。けっこう手続きが面倒なようで、相続の協議書を作成したり(これはほかの相続でも同じらしいのだが)、放棄を宣言した人間は家庭裁判所に呼ばれ、その経緯などを質問されることにもなるという。
 で、もしうちの父親に相続放棄をさせていたら、裁判官の質問に対し「いや、知らねぇな」か「息子にそうしろと言われたから」しか答えられないだろう。こんな答えされたらこっちが大変な目になるので、まあ、最初からこの手段は無理だった、のだけど。

 以上の理由から、父にも母の遺産を渡さねばならなくなったわけだ。が、相続にも種類があって、この時点で考えていたのは分割にするか一括にするか、だった。
 分割相続の場合、全財産から3000万円+引い相続人の数×300万を引いた額が相続税になる。(生命保険金や死亡退職金にはさらに、300万×法定相続人の数の控除も受けられるらしいが)つまり、財産が3000万円以下なら相続税はまずかからないということだ。
 それから一括相続(相続人の内の一人が全額相続すること)の場合だと、1億円くらいまでなら控除を受けられる。らしい。

 どちらを選んだにしても、普通に考えれば一般家庭的には税の問題など発生しない。財産6000万以上とかふつうないだろうし。だが、ウチの場合だとちょっと条件が違ってきて、母は不動産を所有していたのだ。(と言っても中古マンションの一室ですが)
 しかもこの不動産、現時点で人が住んでいたりする。私たち家族――ではなく、以前触れたK婆さんが。ちなみに、この人から家賃をもらったりしていない、光熱費もどうもこっちもちだったりする。
 この不動産、手放すことなどできない(K婆さんが住んでいるので)。のに、母所有の不動産だから遺産扱いになる。つまり、相続の対象になる。さらに、会社が母にかけていた保険金、これを会社のプールに入れてしまうと税金がかかってしまうので、そのまま母の死亡退職金に回すことになるのだが、これらを合わせると不動産の資産価値によっては6000万の大台を超えてしまうかもしれないという事態に。
 なので、父に一括相続させれば良いのだが、ウチの親父もいつぽっくり逝くかわからない(いまだに酒を飲み続けてるし。酒が原因で死にかけたっつうのに)。そうなれば、母の不動産に実家も加わり、相続税がさらに困ったことになりかねない。
 なので、「さて、どうするかね?」と兄と相談、私の前述した感情的理由もあって、なかなか決めかねていたのであった。
 結局、どれくらいのお金になるかわからないことにはどうしようもない。と言うことで結論は今しばらく保留することになった。

 なので、財産を相続するまでの間、父の生活費をどうにか工面していかなければ! とさらに厄介な問題に頭を悩ませることに。どうにかこうにか金のやりくりを考えながら仕事を終え、家に帰宅する。――と、北海道にいる伯母から電話がかかってきた。

 用件は49日について。日程は告別式後にお寺と話した通りで時間も決定した。が、それ以外の諸々についてはまだ決まっていなく(伯母が決めてくると言っていたことすら、決まっていなかった)、お寺から私に電話がかかってくるのだと。
 まだかかってきてないと言えば、伯母はおかしいと首をかしげていた。ので、翌日、私はお世話になるお寺に電話することにしたのだった。
 

 
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