突然、母が死にました。

山王 由二

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20~24日目

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 四十九日に関しての諸々の作業がひと段落し、一息入れた私に一本の電話がかかってきた。
 電話の相手は社会保険の厚生年金担当者。
 厚生年金にはちゃんと入っているし、毎月支払いも行っている。なので、電話を受けた時は用件の見当がつかず「?」と首をかしげていたのだが、

 「今月分が引き落とされていません」

 担当さんのその一言に「!?」と驚き、振込用紙と督促状が送られてくるというので対応することに。
 ――で、まず引き落とし口座を確認しようと思い、そこで初めて気づいた。そもそも、その引き落とし口座がどれかわかっていなかったことに(←こんなんでよく、毎月支払っているとか思えたものである)
 てっきりメインバンクから引き落とされているものと思っていたのだが、通帳をたどってみても引き落とされた形跡はなく、それ以外の銀行も同様だった。
 「???」
 もう、なんで? である。自分が知らないほかの銀行でもあるのか? とか疑い始めたところで、ふと一つの可能性を思いついた。
 で、ソレを確かめるため、一番可能性の高い(残高不足で落ちなかったと思われる)銀行からあたることに。
 確認したのは一月前だったのだが、二月、三月前の履歴を確認してみれば……

 三月前には、ちゃんと引きとされていた跡が。

 つまり、母もやらかしていたわけである。
 だから、通帳に引き落としの記録など記載されておらず、その上、最初に金の流れを把握する時に、各銀行の一か月間の動きしか確認していなかった私は、確認を終えた時点で社会保険のことはすっかりすぽーんと頭から抜け落ちていたのだった。
 母が(意図せず)仕掛けたトラップに、まんまとハマってしまったのである。
 振込用紙が届いてすぐ、ついでとばかりにお寺に49日の振り込みも一緒にすませ、他にはもうトラップは存在しないよな? と確認作業を行っていたら、追加のトラップが発見された。
 あるはずのもの――駐車場の支払い履歴が、通帳のどこにも存在しないのである。
 なんでよっ!?
 と思わず叫びそうになったまさにその瞬間、税理士の先生からその件で連絡があった。
 実は、ウチの会社は駐車場代を一年分一括で支払っているのだと(←こうすると税で優遇されるらしい)。それからどの口座で支払いを行っているかを教えてもらったのだが、そこにさらにトラップが一つ隠されていた。
 ウチは3人の大家から駐車場を借りている。で、うち二人の振込カードは見つかったのだが、残る一人はどこを探しても振込カードが見つからない。
 どういうこと?
 と思っていたら、税理士先生が答えを教えてくれた。
 そもそも、振込などしていないのだ。と。どうやら手渡しで納めていたらしいのだ。と。
 ああ、なるほどそれで。と納得した瞬間、さらに大きな問題が発生。

 ワシ、その大家さんのことまるっきり知らないのだけど。

 何とか名前だけはわかったのだが、どこに住んでいるのかも連絡先も分からない。
 大丈夫ですか? と心配する税理士の先生に
 「き、近所の人に聞いて、何とか探してみます」
 と答え、電話を切った。
 それから私は新たなる問題――大家探しに取り組むことになったのであった。 
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