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続.雪豹くんと魔王さま
2-34.襲い来るもの④
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アークが「これで同じような襲撃はないだろう」と宣言した。
そこで、白狼族は数人の監視を塀沿いに残して、族長の家に集うことにする。アークから説明を受けるためだ。誰もが真剣な表情である。
スノウも早く真実が知りたくて、ソワソワする心を必死に抑えた。
抜け駆けしてアークに聞くのは、なんだかいけないことな気がするから。
「あ、おばあ様!」
族長の家に着くと、大きな広間にはすでに多くの白狼が集っていた。その中にはラトとナイトの姿もある。
アークをチラリと見上げると、仕方なさそうに頷かれた。
スノウは微笑み返してから、ラトへと駆け寄る。
「怪我がなさそうで良かった!」
「私は魔法要員だからね。白狼も、さすがに雨で懲りて、無闇に飛び出さなかったから、守るのも簡単だったよ」
ラトが肩をすくめた。その横で、ナイトが苦笑している。
事前に雨の洗礼がなかったら、無謀にも飛び出して白狼族が全滅していたという可能性はなくもないのだ。白狼族があまり頭を使わない戦闘タイプであることを、ナイトはよく知っている。
「……うん、良かったね! 僕も、たくさん頑張ったんだよ」
「へぇ、どんな魔法を?」
首を傾げるラトに説明すると、なぜか爆笑されてしまった。
「――スノウ、っ、まさか、そんなところで、白狼の血を引いているところが表れるなんて……!」
「おい。白狼は単純馬鹿って言いたいんだろうが、それ、孫も貶してるからな?」
「この場合、間違ってないだろう。スノウは可愛いから許される」
真顔で言いきるラトを、ナイトがなんとも言えない顔で見つめた。
スノウはきょとんとしたけれど、ラトが楽しんでくれたので『まぁ、いっか!』と受け流す。
(それにしても、みんな賑やかだなぁ……)
広間を見渡すと、白狼たちが戦果を主張して騒いでいる姿がそこかしこにあった。昨日の宴から引き続き、彼らは陽気で楽しそうだ。
一族以外への態度には難ありのようだが、白狼族は元々は明るい性格なのだろう。単純とも言い換えられるけれど。
「――全員集まったようだな」
上座に現れた白狼が言った途端、雑談がピタリと止まる。白狼たちの視線が一人に集まった。
スノウはラトと一旦別れ、最上位に座すアークの元へ戻る。
「ここにおいで」
「やぁだ」
アークが膝をポンポンと叩くのを見て、にこりと笑いながら隣に座る。
こんなにたくさんの人がいる前で、アークの膝に座るなんて子どもみたいな真似はできない。アークは番だから構わないだろう、なんて言うかもしれないけれど。
静まり返った一同を眺めて、スノウはリダがいないことに気づいた。
一緒に帰ってきたけれど、家のどこかで寝込んでいるのだろう。アークの治療を受けず、回復はいつになることか。
「まず、謝らせてほしい。……愚息が世話をかけた。あれは家に閉じ込めておく。反省が見られるまで、相手をしなくてもいい」
傍にいる白狼が苦々しい表情で呟き、頭を下げた。彼が族長なのだ。
スノウは初めて会った白狼をまじまじと見つめる。
壮年に見える顔立ち。おそらく、彼の命はもう長くない。白狼族の中で、もっとも年かさだろう。
(こんな年まで、息子のことで思い悩むなんて、親って大変だなぁ……)
族長としての威厳よりも、親としての顔が窺えた。
スノウが子どもを持った時、同じような悩みを抱くことがあるのだろうか。
「――では、俺が分かったことについて、説明しようか」
いつの間にか話が進んでいたことに、アークの言葉で気づく。
スノウはハッと顔を上げて、アークを見つめた。どのような真実が語られるのか気になる。
それは白狼族も同様で、真剣な眼差しがアークに集まった。
「人間が仕掛けたことですな?」
「そうだ。先程の泥人形の襲撃。あれは間違いなく、白狼族を根絶やしにするために行われたものだろう」
「っ……さようですか。確かに、雨への対策ができていなければ、我らはろくに戦うこともできず、戦ったとしても泥にやられて地に伏していたでしょうな」
族長が苛立ちの籠もった声で応える。
白狼族をコケにされたことに鬱憤が溜まっているようだ。多くの白狼族も目に鋭い光を浮かべている。
「泥人形は自律行動が可能だった。里の内部に侵入し、家で雨を逃れても泥の餌食になっただろう」
「そうなっていれば、我らは終わりでしたな」
アークの言葉で、スノウは先程の襲撃の危険性をより明確に感じた。
押し寄せてくる泥人形の群れ。それを狭い空間で泥に触れずに倒すことができるとは思えない。
白狼族は全滅の危機だったのだ。
「人間はどのようにして、そのような仕掛けを作り出したのでしょうか」
セイローが真剣な表情で呟く。
アークはセイローを含め、白狼たちの顔を見渡してから口を開いた。
「……穢れだ。魂の寄せ集めとも言えるな」
「は……?」
困惑の声があふれる。
スノウもその言葉が理解できなくて、眉を寄せて首を傾げた。
そこで、白狼族は数人の監視を塀沿いに残して、族長の家に集うことにする。アークから説明を受けるためだ。誰もが真剣な表情である。
スノウも早く真実が知りたくて、ソワソワする心を必死に抑えた。
抜け駆けしてアークに聞くのは、なんだかいけないことな気がするから。
「あ、おばあ様!」
族長の家に着くと、大きな広間にはすでに多くの白狼が集っていた。その中にはラトとナイトの姿もある。
アークをチラリと見上げると、仕方なさそうに頷かれた。
スノウは微笑み返してから、ラトへと駆け寄る。
「怪我がなさそうで良かった!」
「私は魔法要員だからね。白狼も、さすがに雨で懲りて、無闇に飛び出さなかったから、守るのも簡単だったよ」
ラトが肩をすくめた。その横で、ナイトが苦笑している。
事前に雨の洗礼がなかったら、無謀にも飛び出して白狼族が全滅していたという可能性はなくもないのだ。白狼族があまり頭を使わない戦闘タイプであることを、ナイトはよく知っている。
「……うん、良かったね! 僕も、たくさん頑張ったんだよ」
「へぇ、どんな魔法を?」
首を傾げるラトに説明すると、なぜか爆笑されてしまった。
「――スノウ、っ、まさか、そんなところで、白狼の血を引いているところが表れるなんて……!」
「おい。白狼は単純馬鹿って言いたいんだろうが、それ、孫も貶してるからな?」
「この場合、間違ってないだろう。スノウは可愛いから許される」
真顔で言いきるラトを、ナイトがなんとも言えない顔で見つめた。
スノウはきょとんとしたけれど、ラトが楽しんでくれたので『まぁ、いっか!』と受け流す。
(それにしても、みんな賑やかだなぁ……)
広間を見渡すと、白狼たちが戦果を主張して騒いでいる姿がそこかしこにあった。昨日の宴から引き続き、彼らは陽気で楽しそうだ。
一族以外への態度には難ありのようだが、白狼族は元々は明るい性格なのだろう。単純とも言い換えられるけれど。
「――全員集まったようだな」
上座に現れた白狼が言った途端、雑談がピタリと止まる。白狼たちの視線が一人に集まった。
スノウはラトと一旦別れ、最上位に座すアークの元へ戻る。
「ここにおいで」
「やぁだ」
アークが膝をポンポンと叩くのを見て、にこりと笑いながら隣に座る。
こんなにたくさんの人がいる前で、アークの膝に座るなんて子どもみたいな真似はできない。アークは番だから構わないだろう、なんて言うかもしれないけれど。
静まり返った一同を眺めて、スノウはリダがいないことに気づいた。
一緒に帰ってきたけれど、家のどこかで寝込んでいるのだろう。アークの治療を受けず、回復はいつになることか。
「まず、謝らせてほしい。……愚息が世話をかけた。あれは家に閉じ込めておく。反省が見られるまで、相手をしなくてもいい」
傍にいる白狼が苦々しい表情で呟き、頭を下げた。彼が族長なのだ。
スノウは初めて会った白狼をまじまじと見つめる。
壮年に見える顔立ち。おそらく、彼の命はもう長くない。白狼族の中で、もっとも年かさだろう。
(こんな年まで、息子のことで思い悩むなんて、親って大変だなぁ……)
族長としての威厳よりも、親としての顔が窺えた。
スノウが子どもを持った時、同じような悩みを抱くことがあるのだろうか。
「――では、俺が分かったことについて、説明しようか」
いつの間にか話が進んでいたことに、アークの言葉で気づく。
スノウはハッと顔を上げて、アークを見つめた。どのような真実が語られるのか気になる。
それは白狼族も同様で、真剣な眼差しがアークに集まった。
「人間が仕掛けたことですな?」
「そうだ。先程の泥人形の襲撃。あれは間違いなく、白狼族を根絶やしにするために行われたものだろう」
「っ……さようですか。確かに、雨への対策ができていなければ、我らはろくに戦うこともできず、戦ったとしても泥にやられて地に伏していたでしょうな」
族長が苛立ちの籠もった声で応える。
白狼族をコケにされたことに鬱憤が溜まっているようだ。多くの白狼族も目に鋭い光を浮かべている。
「泥人形は自律行動が可能だった。里の内部に侵入し、家で雨を逃れても泥の餌食になっただろう」
「そうなっていれば、我らは終わりでしたな」
アークの言葉で、スノウは先程の襲撃の危険性をより明確に感じた。
押し寄せてくる泥人形の群れ。それを狭い空間で泥に触れずに倒すことができるとは思えない。
白狼族は全滅の危機だったのだ。
「人間はどのようにして、そのような仕掛けを作り出したのでしょうか」
セイローが真剣な表情で呟く。
アークはセイローを含め、白狼たちの顔を見渡してから口を開いた。
「……穢れだ。魂の寄せ集めとも言えるな」
「は……?」
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