雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

文字の大きさ
95 / 224
続.雪豹くんと魔王さま

2-34.襲い来るもの④

しおりを挟む
 アークが「これで同じような襲撃はないだろう」と宣言した。
 そこで、白狼族は数人の監視を塀沿いに残して、族長の家に集うことにする。アークから説明を受けるためだ。誰もが真剣な表情である。

 スノウも早く真実が知りたくて、ソワソワする心を必死に抑えた。
 抜け駆けしてアークに聞くのは、なんだかいけないことな気がするから。

「あ、おばあ様!」

 族長の家に着くと、大きな広間にはすでに多くの白狼が集っていた。その中にはラトとナイトの姿もある。
 アークをチラリと見上げると、仕方なさそうに頷かれた。
 スノウは微笑み返してから、ラトへと駆け寄る。

「怪我がなさそうで良かった!」
「私は魔法要員だからね。白狼も、さすがに雨で懲りて、無闇に飛び出さなかったから、守るのも簡単だったよ」

 ラトが肩をすくめた。その横で、ナイトが苦笑している。
 事前に雨の洗礼がなかったら、無謀にも飛び出して白狼族が全滅していたという可能性はなくもないのだ。白狼族があまり頭を使わない戦闘タイプであることを、ナイトはよく知っている。

「……うん、良かったね! 僕も、たくさん頑張ったんだよ」
「へぇ、どんな魔法を?」

 首を傾げるラトに説明すると、なぜか爆笑されてしまった。

「――スノウ、っ、まさか、そんなところで、白狼の血を引いているところが表れるなんて……!」
「おい。白狼は単純馬鹿って言いたいんだろうが、それ、孫も貶してるからな?」
「この場合、間違ってないだろう。スノウは可愛いから許される」

 真顔で言いきるラトを、ナイトがなんとも言えない顔で見つめた。
 スノウはきょとんとしたけれど、ラトが楽しんでくれたので『まぁ、いっか!』と受け流す。

(それにしても、みんな賑やかだなぁ……)

 広間を見渡すと、白狼たちが戦果を主張して騒いでいる姿がそこかしこにあった。昨日の宴から引き続き、彼らは陽気で楽しそうだ。
 一族以外への態度には難ありのようだが、白狼族は元々は明るい性格なのだろう。単純とも言い換えられるけれど。

「――全員集まったようだな」

 上座に現れた白狼が言った途端、雑談がピタリと止まる。白狼たちの視線が一人に集まった。
 スノウはラトと一旦別れ、最上位に座すアークの元へ戻る。

「ここにおいで」
「やぁだ」

 アークが膝をポンポンと叩くのを見て、にこりと笑いながら隣に座る。
 こんなにたくさんの人がいる前で、アークの膝に座るなんて子どもみたいな真似はできない。アークは番だから構わないだろう、なんて言うかもしれないけれど。

 静まり返った一同を眺めて、スノウはリダがいないことに気づいた。
 一緒に帰ってきたけれど、家のどこかで寝込んでいるのだろう。アークの治療を受けず、回復はいつになることか。

「まず、謝らせてほしい。……愚息が世話をかけた。あれは家に閉じ込めておく。反省が見られるまで、相手をしなくてもいい」

 傍にいる白狼が苦々しい表情で呟き、頭を下げた。彼が族長なのだ。
 スノウは初めて会った白狼をまじまじと見つめる。
 壮年に見える顔立ち。おそらく、彼の命はもう長くない。白狼族の中で、もっとも年かさだろう。

(こんな年まで、息子のことで思い悩むなんて、親って大変だなぁ……)

 族長としての威厳よりも、親としての顔が窺えた。
 スノウが子どもを持った時、同じような悩みを抱くことがあるのだろうか。

「――では、俺が分かったことについて、説明しようか」

 いつの間にか話が進んでいたことに、アークの言葉で気づく。
 スノウはハッと顔を上げて、アークを見つめた。どのような真実が語られるのか気になる。
 それは白狼族も同様で、真剣な眼差しがアークに集まった。

「人間が仕掛けたことですな?」
「そうだ。先程の泥人形の襲撃。あれは間違いなく、白狼族を根絶やしにするために行われたものだろう」
「っ……さようですか。確かに、雨への対策ができていなければ、我らはろくに戦うこともできず、戦ったとしても泥にやられて地に伏していたでしょうな」

 族長が苛立ちの籠もった声で応える。
 白狼族をコケにされたことに鬱憤が溜まっているようだ。多くの白狼族も目に鋭い光を浮かべている。

「泥人形は自律行動が可能だった。里の内部に侵入し、家で雨を逃れても泥の餌食になっただろう」
「そうなっていれば、我らは終わりでしたな」

 アークの言葉で、スノウは先程の襲撃の危険性をより明確に感じた。
 押し寄せてくる泥人形の群れ。それを狭い空間で泥に触れずに倒すことができるとは思えない。
 白狼族は全滅の危機だったのだ。

「人間はどのようにして、そのような仕掛けを作り出したのでしょうか」

 セイローが真剣な表情で呟く。
 アークはセイローを含め、白狼たちの顔を見渡してから口を開いた。

「……穢れだ。魂の寄せ集めとも言えるな」
「は……?」

 困惑の声があふれる。
 スノウもその言葉が理解できなくて、眉を寄せて首を傾げた。

しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/01/23 19:00 アルファポリス版限定SS公開予定  累計で6300♡いいねと累計ポイント285000突破の御礼SSになります

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。