雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

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続々.雪豹くんと新しい家族

3-31.実行前夜

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 ルイスとの『運命の出会い』討論は、なんとか決着した。後は実行あるのみ。
 執務を終えたアークと部屋に戻ってきたスノウは、ソファの上に寝そべるように寛いだ。

「ルイスとの話、楽しそうだったな」
「ふふっ。うん、なんだかワクワクしてきたよ」

 ちゅ、と額に触れる唇。
 覆いかぶさるように身を屈めたアークが、楽しそうに目を細めていた。スノウが微笑んでいれば、アークも嬉しくなるのだ。

 額に、こめかみに、頬に、鼻の先に――羽のように柔らかな口づけに、スノウはさらに頬を緩める。
 アークに触れられると幸せでいっぱいになる。でも、もっと欲しくなってしまうから、自分が強欲な気がして悩ましい。

「――もっと欲しがっていいんだぞ」

 思わず目をパチリと瞬かせる。
 ポカンと開いたスノウの唇に、アークがちゅぅ、と吸い付いた。

「……どうして、分かったの?」

 離れ行くアークの唇を舌で追い、ペロッと舐める。
 アークの目が、ギラリとした光を孕んだ。でも、口元には優しげな笑みが浮かんだまま。そのギャップにひどく惹かれる。

「スノウのことなら何でも分かる」

 カプッと唇が食べられて、熱い舌に舐められる。唇の柔らかさを確かめるような仕草だ。
 同時に、耳の内側を指先でくすぐられて、ゾワッと痺れるような感覚があった。ムズムズする。

「んっ……んぅ……」

 涙で潤む視界に夕陽色が飛び込んできた。熱く甘い眼差しに思考が蕩ける。

「……ふっ、色っぽい顔だ」
「アークが触るからでしょ……」

 互いの唇を繋ぐ銀の糸を、アークの舌が絡め取った。その光景があまりに目の毒だ。
 ドキドキとしながら思わず目を逸らす。

(そういえば、このまましちゃってもいいのかな?)

 ふと疑問が湧いて、スノウはお腹を撫でた。
 そこに膨らみは感じられない。卵はもうあると思うのだけれど。

「どうした?」

 心配そうな声で囁かれ、視線を上げる。

「……卵。ここで寝ているなら起こしちゃ駄目だよね?」
「ん? ……あぁ、そうだったな」

 アークはちらりと視線を落とし、ぽつりと呟いた。全くそのことが頭になかったのだと、その声音が物語っていた。
 スノウはむぅと唇を尖らせてアークを見据える。

「……僕たちの、二人の子どもだよ」
「分かってる。……あぁ、分かっているとも」

 機嫌を取るようにお腹を撫でられて、顔中にキスを落としてくる。
 まだまだ親になる自覚が薄いアークに思うことは多々あれど、それはあらかじめ覚悟していたことでもあった。

(僕が守ってあげなくちゃ)

 子どもに関して、アークのことは全面的に信用することはできない。
 アークが最優先するのはスノウ一択。スノウと過ごす時間やスノウにもらったものなど、大切にしているものの中で、子どもの優先順位は低い。

 そのことをスノウは重々理解している。それが竜族の性であるのだから仕方ないのだ。

「……よし、今日はもう寝よう!」
「え……」

 ショックを受けた様子で固まるアークの肩を押し、身を起こす。
 湯浴みして、身体をほぐして、ゆっくり休む。明日はマルモに会いに行くついでに医務室で診察してもらおうか。

(アークと触れあっても大丈夫なのか、ちゃんと確認しなくちゃね)

 スノウの意思を翻意させようと、アークが甘い言葉を囁く。
 それを聞き流し、スノウはにこりと笑って宣言した。

「お医者さんに卵が大丈夫って言われるまで、アークも我慢してね」
「スノウ、そんな……!」

 嘆くアークの頬に口づける。
 これくらいはまったく問題ないはずだ。アークが暴走さえしなければ。

「僕の大事なもの、アークも一緒に守ってくれるよね?」
「ぐっ……」

 スノウを抱きしめ、アークが呻く。
 その首筋にちゅっと吸い付きながら、スノウはゴロゴロと懐き返した。

 スノウだってしたくないわけではないのだ。今の優先順位がアークと深く触れ合う行為ではないだけで。

「ーーこれから、医者を呼ぶ」
「え、こんな深夜に可哀想だよ。今日は我慢して」
「嫌だ」

 珍しく駄々を捏ねるアークに、スノウはクスクスと笑った。

(かっこよくて、可愛い、僕の自慢の愛しい番。だーい好きだけどーー)

「だーめ。ほら、未来のお父さん、お風呂行きますよー」
「お父さん……」

 呆然とするアークの手を引いて歩く。
 湯浴みの準備を整えて部屋に戻ってきたルイスが、「何事ですか?」と不審そうな目をアークに向けた。

「アークが駄々っ子になってるだけ」
「駄々っ子……」

 単語の意味が分からないかのように、ポツリと呟いたルイスを、アークがギロッと睨んだ。ルイスに駄々っ子扱いされるのは許しがたいらしい。

 そんなところも可愛らしい、と思ってしまうのは、惚れた欲目だろうか。

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