オーバー・ターン!

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2,賢くなりたい子犬たち

2-1

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 朝は五時半に起床する。寮の決まりという訳ではなく、長年培ってきた生活サイクルである。
 起きると、運動用のスエットとTシャツに着替えて、縁側の雨戸を開ける。一応役割が決まっており、部屋の西に面した雨戸が俺の担当である。
 雨戸を開けると、縁側の床下に置いてあるジョギングシューズを履いて庭に出る。
 外に出ると、まずは柔軟体操、ゆっくりと体をほぐしていると、エスターが寝ぼけ眼で時折柱に頭をぶつけながら庭に出てくるので、柔軟を手伝い、それからジョギングが始まる。
 併走するエスターと、きっちり一時間走る。走った後に柔軟体操を行い、風呂で汗を流して、布団を畳み、制服に着替えて朝食を食べる。朝食を食べ終わると、マリネルが弁当を作り終えるのを待ち、マリネルを自転車の後ろに乗せて、先に登校したエスターとブラッゲを追いかける。
 これが最近の朝の光景である。


 一年二組の教室に入ると、異様な熱気に包まれているのに気がついた。
 俺はクラスメイトに挨拶をしながら自分の席、窓際の一番後ろから二個目の席に向かう。
 クラスの生徒は全員で二十人。五チームがここで授業を受けていた。
 クラスの生徒数に比べて教室の大きさは四十人から五十人を収容できる広さを持っているので、広さと人員の密度で考えるとかなり寂しい感じもするが、実際はかなり広い机が割り当てられているので、スペース的には逆に手狭にさえ感じられる。
 自席に着き机の下に備え付けられているサイドキャビネットを開け、その一番下にデイパックを放り込んだ。辺りを見回すと、いつもは騒ぎの中心にいる筈のマイヤーも自分のチームメイトと共に難しい顔をしている。
 まるで教室全体が静かな熱気に包まれているようである。その原因を隣のブラッゲに聞こうとしたが、机に突っ伏して寝ていたので、仕方なくその後ろのエスターに視線を向けると、こちらもディスプレイに向かって難しい顔をしている。
 特技科では、教科書は使わず、全てディスプレイ一体型のプラッドと呼ばれている端末で授業は進められる為、各個人の机にはプラッドが備え付けられている。仕方なく俺も自分のプラッドのスリープを解除して、パスワードを入力して立ち上げる。ちなみに、各自にタブレットに形が似たパルクと呼ばれる携帯端末も支給されているが、通学に使うバッグに入りっぱなしになっており、こちらはあまり使った試しが無い。
 「何の騒ぎなの?」
 弁当を教室後方に備え付けられたロッカーに入れたマリネルが、俺の後ろの席に座り、プラッドを立ち上げながらエスターに聞いた。
 「ああ、指導教官リストが更新された、見てみろ、少々驚いた事態になっている」
 自分のディスプレイに視線を向ける。特技科共通ニュースの項目から救難クラス専用ニュース欄を選択すると、新規更新欄に臨時講師含む指導教官リストの暫定公表と書いてある項目があった。開くと、指導教官の名前と経歴が写真付きで並べられている。クラス担任のアジス先生もそこに乗っていた。見事なほどに経歴に書かれている事が少ない、と言うよりかは、空白である。反して、ディッケの経歴は賑やかである。やれ海賊を撃退したとか、困難な任務を果たしたとか、その様な事が延々と並び立てられている。
 「へぇ、アジス先生ってここの出身だったんだ、卒業と同時に教師になったのか」
 「見るところが違う」
 俺の言葉に、エスターが突っ込んできた。
 「うぁ、これ本当?ミリエ・オーガスって、あのオーガスさんだよね、臨時講師だとしても、すごい人が来るんだね」
 マリネルの驚いた声。
 「誰だ?それは」
 俺は首を捻った。
 「ふ、無知な原住民は、ミリエ・オーガス殿も知らぬか」
 俺の前の席で金髪が振り向いた。誰の陰謀か解らないが、前の席はペイゼルなのである。
 おかげで俺は学園生活で退屈という言葉を未だに体験したことが無かった。
 「ああ、知らない、教えてくれ」
 ペイゼルの隣席のログミールがゆっくりとこちらを振り返った。どことなく期待した目つきである。
 「ならば、俺は卑しい原住民です、崇高なるペイゼル様、どうかご慈悲です、お教え下さいと言ってみろ、そうすれば教えて・・・・・」
 「俺は卑しい原住民です、崇高なるペイゼル様、どうかご慈悲です、お教え下さい」
 「・・・・・・・・」
 間髪入れずに言った俺の言葉に、戸惑った表情のペイゼル。プライドが高いペイゼルにしては自分を卑下するような物言いを強制されることは、許し難い事なのだろうが、生憎俺にはそのようなプライドは無い。
 「ま、まぁいいだろう、ミリエ・オーガス殿は」
 俺はペイゼルに手を挙げて、言葉を止めた。
 「なんだ?」
 途端に不機嫌な口調になる。
 「卑しくないペイゼル様に進言。語ってはならない固有名詞等は、省いて解説した方が、誰かさんのためになるかもしれない」
 「・・・・・・救助チームとしては、今では解散しているが、とてもとても、有名なチームのメインパイロットだった人だ・・・・・」
 「とてもとても良く解った。なるほど、そうなのか」
 俺の言葉に、後ろのマリネルが忍び笑いを漏らした。
 ばつが悪そうに向き直るペイゼルの後ろ姿を見ながら、ログミールに親指を立てる。
 ログミールが親指を立て返してくるのを確認。
 やがてスーツ姿のアジス先生が教室に入ってきて、HRが始まった。
 髪の毛を七三に分けたアジス先生は、エスターやログミールとは比べものにならないほど、無表情な男である。
 「矢田貝」
 HRの最後にアジス先生が俺を呼んだ。
 「今日の昼に第一保健室に顔を出すように言付けられている」
 「はい、承りました」
 アジス先生は俺の返事に頷くと、さっさと教室を出て行った。


 「そういえば、昨日、アジス先生、寮に帰ってこなかったねぇ」
 一時間目は実習のため、俺達は教室を移動しなければならない。その移動の途中で、マリネルが思い出したように言った。
 「ああ、実習のスケジュールを組み直すために、徹夜作業だったらしい、茜さんの所に連絡が入ったそうだ」
 エスターが答えた。
 「たいへんだねぇ」
 俺達はクラスの者達に続いて、特別更衣室とネームプレートが下げられた部屋に入った。
 部屋の中は小さな個室に仕切られており、そこに自分専用ロッカールームがある。
 俺は自分のロッカールームに入ると、さっさとトランクスまで脱ぎ、真っ黒なウエットスーツにも似たボディースーツを着込み、あちこちに取り付けられている小さなセンサーが活性化しているのを確かめる。
 確認の方法は簡単である。指先で触れば、触覚を通じて大脳へ伝達する際に、視覚イメージとして情報が変換され、視界にパラメータの数値がグラフとして表示されるのである。
 もしくは、手足などと同じで、センサー類の関知した情報が、あたかも生まれたときから備わっている器官のように感じられるので、こちらはチェックの必要もない。例えば気圧や気温、それに酸素濃度などの変化状況から割り出される将来的なそれらの遷移予測などが第六感的に感じられるのである。
 いささかべたではあるが、例えば、【今日も一日、地球上には酸素が満ちている事でしょう】などと感じるのである。
 『リンクをかけるぞ』
 エスターの声がセンサー越しに直接頭の中に響いた。
 了解と答えると、意識の相互接続を可能とする表層心理通信を司るセンサーがエスターチームのドメインを承認し、エスターの作成した仮想空間に俺たちの意識の一部がリンクされた。
 結果として俺の目の前にエスター達の姿が現実の光景にオーバーラップして三人称視点で現れるのだが、この光景、例えばエスターがベンチに腰掛けている姿や、ブラッゲが腕立て伏せをしていたり、マリネルがラジオ体操の様な運動をしていたりするのは実際の映像ではない。しかし、現状のエスター達が取っている行動そのものである。
 これらの映像は表層心理通信を通じてエスター達が認識している自身の行動情報を俺が受け取り、それを俺自信が視覚イメージとして変換しているのだ。結果として相手が実際に目の前にいるかのような状況で互いにコミュニケーションを取ることができるのだ。
 『センサーの調整はどうだ?』
 俺はグラブをはめ、ブーツを履く、さらにその上から、バックル類がたくさん取り付けられた白いジャンプスーツを着込んでいた。その辺りでエスターが片目を開けて俺たちを見回した。
 『も、もう少し、待って』
 マリネルの声と共に、マリネルはまだ半分以上のセンサーの活性化確認ができていないのが解った。それはマリネル自身が知覚している状況である。
 俺は密閉式のヘルメットを手に取る。
 『は、早すぎだよ、友弥・・・』
 俺の行動を見たマリネルの声。これはマリネルだけではなく、クラス全員が同意見であるらしい。
 たかが着替えで何でそんなに時間がかかるのか俺には解らないが、センサーが体に馴染み、正確な情報をフィードバック出来る様になるのに時間が掛かるのだそうだ。着込んだ瞬間に馴染む、俺が異常だとエスターが言っていた。
 『先に行ってるぞ』
 俺は個室を抜け出すと、特別更衣室から直接実習室に抜けるドアをくぐった。
 実習室はちょっとした体育館並の広さがあり、その左右に四機ずつの卵形に近いシミュレータが台座の上に横たわった状態で並んでいる。
 実習室にはまだアジス先生しかいない。あと最低でも二十分ぐらいしないと、全員が揃わないのはいつものことである。
 アジス先生は俺を一瞥しただけで、手元のバインダーに視線を戻した。
 「エスターチームの機体は四号機だ」
 アジス先生が割り振りを教えてくれたので、俺は四号機と書かれたプラットフォームを登った。運用前のチェックを行うために、俺は筐体のスライドハッチを開ける。四人が下方に二人、上方に二人ずつ乗り込めるように洋式のバスタブを立てかけたようなバケットシートが四個配置されている。
 『どうする?』
 『友弥がポッド操船、マリネルが統合指揮、ブラッゲがメインパイロットでいく』
 相変わらず自分のロッカーでセンサーを馴染ませているエスターが答えてきた。もっとも俺の視覚では目の前の黒い革張りの様な光沢を放っているシュミレータのコクピットの内装にオーバーラップして上半身を捻っているエスターが言葉を発したように見える。
 『昨日とは、僕とエスターの位置が入れ替わるんだね』
 けんけんをしながらブーツを履いているマリネルはどことなく、ほっとした様子である。俺が原因でマリネルは昨日説教に付き合わされているので、仕方がない。
 『まぁ、エスターがそう言うなら、それでいい』
 腕立て伏せを終えたブラッゲはどことなく諦めた様で手の埃りを払っていた。今日も盛大な花火が上がるのかと、ため息をついたのが解る。
 表層心理通信で本音を隠すことはかなり難しい。自分の認識をそれと知っていながら、違うことを認識するという離れ業が必要になるからだ。
 人間の基本的な感情である喜怒哀楽は殆どだだ漏れ状態になるのだが、驚いたことに、エスターが時々、この離れ業を行っているとしか考えられないことをしていた。そのことについて訪ねた俺に、エスターは戸惑った様に、お前に解ると言うことは、まだ完全にコントロールが出来ていないということだから、教えるレベルにはないと答えられたのだが、それでも凄い奴だと俺は感心していた。


 俺は最初に上段後方のシートを覗き込み、計器類のリンクを俺のセンサー経由でマリネルに委ねた。コクピットに赤いLEDが灯り、スーツのセンサー類を馴染ませながら、マリネルが早々に計器類のチェックを始めたのが解った。
 上段前はブラッゲに、下段後方はエスターへと計器類のリンクを行い、最後に下段前のシートに乗り込み、リンクを自分に設定した。
 チーム内で、スーツの馴染みが早い者がいると、それだけチェックが念入りに出来る分、有利になると言われている。しかし、俺達のチームは馴染みが極端に早いと言われる俺が、毎回花火を打ち上げているので、有利に働いたことは無いともっぱらの評判である。
 俺はコックピット内を見渡した。
 シミュレータ内部に実際の計器類は配置されていない。全てが表層心理通信越しの仮想計器類となっているためである。コクピットにあるのは、起動状態や搭乗員のライフパラメータを示すLEDが数個設置されているだけである。
 ヘルメットを着用してシートに座ると、俺の目の前に、沢山の計器類が現れた。表層心理通信を通して俺の視覚に投影された仮想計器類である。
 操縦桿やスロットルレバー、左右のフットペダルに手足が接地されていないことを示す警告が他の警告を押しのけて一番手前に現れて点滅している。
 実際の操縦桿やスロットルレバーやフットペダルその他の調整スティックなどは、全て、この仮想計器類と同じ様に仮想コントローラとなるので、これらの機械式レバー類は全てダミーではあるが、定位置に体が納まっていないことを警告しているのだ。
 ブーツを足下のフットペダルに乗せると左右それぞれの足を覆い隠すようにプロテクターがせり出し、フットペダル警告が消えた。同じように、左右の溝に腕を乗せ、ダミーのレバー類を握りしめると同じように俺の腕を覆うようにプロテクターがせり出し、こちらの警告も消えた。シートの各部位の溝にスーツのハーネスが自動的に引き込まれ、体が固定されると、ヘルメットの後頭部までもが固定された。
 後は教科書通りに視覚に直接投影されている計器類の確認である。
 実際の手は物理的に位置が固定され動かせないが、仮想空間内の俺は各計器類の調整スイッチを指先でなぞりながら調整していく。人間は不思議な物で、こうすると実際には腕を動かしていなくても、腕が動かないことに対するストレスを感じることはなくなるのだ。
 自分の計器類の確認を終え、仮想空間内で一度大きくのびをして、上半身を左右に回して腰の運動をした。次にハーネスボードと呼ばれるシート上面にスライドした状態の衝撃吸収のプロテクターバーにセット命令を下し、胸から下を覆い隠すと、俺はやることが無くなった。
 暇に飽かして、センサーのサンプリング速度を早めると、ハッチの外の光景がスローモーションになった。歩いていたアジス先生がゆっくりと足を上げていく。
 俺の感覚が高速化された結果である。
 元来、低速な脳の処理速度を高速化している為にこのように見えるのだ。
 まだサンプリング速度をあまり早くはしていないので、スローモーションで済んでいるが、これ以上に高速化した状態が、操船時の通常状態になるのだ。
 仮想コントローラが実際の操船に使われる理由は単純で、宇宙空間では手足を動かして操船していては到底追いつかない程の手早さが求められるからである。
 早い話が、実際に手足を動かすのではなく、サンプリング速度を速めた手足を動かそうとする意識をAIが感知してそれがフィードバックされるのだ。そうでもしなくては、一秒間に一万回以上のジグザグ運動を行えと言われても不可能である。
 俺はサンプリング速度を通常に戻した。
 『待たせた』
 暫くするとエスターが後方のシートに潜り込んでくる。
 『待たされた』
 俺の言葉を聞き流して、ブラッゲが俺の肩に足をかける。なんでも下段シートの者を踏むと縁起が良いなどという特技科独特の慣習らしい。
 『よいしょ』
 マリネルもエスターの肩に足をかけて、上段の席に乗り込む。縁起などではなく、単にコクピットの作りから、こうした方が乗り込みやすいからだと言うのが正解かもしれない。
 上段後方のマリネルが今回の実技統括を行う事になる。
 マリネルが全員のステータスを確認し、主回線を開く。俺達の視覚にシミュレータからの実運用仮想ディスプレイが直接投影され、ハッチが閉まる。
 『あいつ、何してるんだ?』
 ブラッゲの言葉に、視覚に投影された仮想外部モニターを見ると、そこにはディッケがいた。数名の生徒に囲まれて、なにやら指示をしているように見える。
 『あいつは、ああ見えても、自分の言うことを聞く生徒には、面倒見が良いと評判らしい』
 俺は答えた。
 『に、しても、アジス先生が文句を言わないのを良いことに、自分の授業の様に振る舞っているのは気に食わん』
 ブラッゲが吐き捨てるように言う。
 『友弥のこと監視しに来てるのかな』
 マリネルは昨日の説教を思い出したように呟いた。
 『友弥の事だけではないだろ、本命はあっちじゃないか』
 エスターが言うあっちとは、ようやく全員が乗り込み終えたペイゼル達のチームである。
 『現在トップだからな』
 『へーーーーーー』
 俺の関心のない答えに、マリネルとブラッゲが落胆の意志を示した。
 『と、とりあえず、予備起動するよ』
 気を取り直したマリネルが宣言する。
 『予備起動確認』
 エスターの確認と供に、上段と下段のシートが上下に動き、間を仕切る防護壁が競り出てきた。シミュレーターなので、単に壁で仕切られるだけだが、本物のボートになると、物理的に上段と下段が切り離される事になるそうだ。上段はメインの航行に携わるパイロットと統合指揮のいわば船長的な役割を果たすことになる。下段は、現地での救助活動時に主機関部より、射出される救助用のポッドとなる。従って、上段をメインボート、下段をポッドと呼ぶらしい。
 この二つを合わせて、ボートと呼ぶのである。
 『本日のミッション内容を転送する、基本設定は一昨日と同様だ』
 暫くするとアジス先生が、訓練内容を転送してきた。
 『ホントだ、一昨日と同じ、辺境の固定空間内で、遭難した客船だ』
 ファイルを開いたマリネルが内容を確認する。
 『異なる点は、現場までお前達を運ぶ手段が無いということだ』
 『ははーーーー、すげーな、約百ループを自走しろってか』
 厳密的にループと言うのは、距離の単位ではなく、時間の単位である。
 そしてまた、仮想的な空間の呼び名でもある。
 この空間内は時間の進みが極端に遅い。いや、遅いというよりは、ほぼゼロに等しいのである。それでいて空間の内径はほぼ無限大となっている。この空間内をループ空間から隔離され、その内側は通常時間が流れる事を可能にしたボートで移動して、通常空間に戻ると、通常空間では、ループ空間内を移動した距離と等しい距離を移動したことになっているのである。
 ただしループ空間は自然消滅特性を持っている。一ループとは、このループ空間の論理的な安定から崩壊までの通常時間ということである。
 『サンプリングレートはノーマルだから、実時間と体感時間は同じで、だいたい往復三十分ぐらい?』
 マリネルがざっと暗算してみる。
 『途中に何も無ければな』
 エスターが呟く。
 宇宙空間は、いわば海のようなもので、嵐の時もあれば、晴れの時もある。その地域により色々な自然現象が発生しているのだが、これが現地近くに接近しなければ判断が出来ないのである。
 俺のイメージでは、ループ空間を移動するのは、海に浮かべた高速艇の様な物である。
 この高速艇にはジェットエンジンが搭載されており、ジェットエンジンで海の上を移動するのがループ空間内移動である。
 嵐の海でジェットエンジン全開にすると、制御不能になることは目に見えている。というか、目に見えた。以前にアジス先生の言うやってはならない事で、次元振動を起こしている場合のループ空間突入は厳禁というのがあり、これを実行したのだが、操舵不能に陥るというのはああいうことなのかとしみじみと体感した物である。もちろんブラッゲは激怒し、マリネルは気を失い、エスターは喉の奥で笑った。
 ちなみにワープは、ループとは異なり、空間座標そのものを無理矢理接合した空間を移動するものである。小規模な空間を生成するループに対して、ワープは広大な空間を歪ませる為に、その座標演算が複雑である。その上、ワープ空間には移動する距離により必要突入最低速度が存在し、それが最高で光の速度を上回るエーテル速度と同等の速度まで加速しなければならない等、エネルギー消費が膨大になるのである。しかし、ワープの場合は、ループ空間に比べて比較的重力嵐などの影響は受けづらいと言われている。
 かなり端折っているが、それぞれ一長一短あるこのループ空間とワープ空間、そして通常空間を使い分けて宇宙空間を移動するわけである。

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