27 / 38
5,少しだけ賢くなりつつある子犬たち
5-1
しおりを挟む
「友弥、さっきのインタビューの記事、もうアップされているよ」
俺はぐったりしながら、校舎が仰ぎ見える裏山に近い芝生に横たわっていた。
生徒会役員と風紀委員に囲まれながら、ペイゼル達と各部活を巡っていた俺達は生徒会長に呼び出されたのだ。どうやら、俺に対する取材制限に対して、不満の意見が吹き出たらしい。特に昨日の理事会で俺の退学が決定になった時点で、その声は頂点に達したらしく、これ以上の取材制限は効果が無いと判断したらしい。そこで、生徒会の立ち会いの下、俺は新聞部のインタビューに答えたのだが、これがまた誘導尋問的な質問が多発し、エスターのサインを確認しながらの受け答えになり、神経がすり減ったのである。
「でもすごいねぇ、さっきの受け答え、友弥ってああいうの慣れてるの?」
「ぜんぜん」
突っ伏したまま俺は答えた。
「いえ、とても素敵でしたわ、堂々としていて、それでいて奥ゆかしく、決して相手の挑発などにも怒るような事はせず、最後の方では嫌味な質問を繰り返す相手の方が恐縮していましたもの」
ペイゼルが感動したように両手を組んだ。
「あれは、エスターの指示だ、俺はエスターの指示通りに受け答えをしただけだ」
「そうなのか?」
当のエスターが驚いたように聞いてくる。
「エスター、俺のことフォローしていてくれてたよな?」
「いや、そんなつもりはなかったが・・・・・ただ、厭な質問をしてきた時は少々苛つきはしたがな」
「・・・・・俺の勘違い?」
「少なくとも、私はお前に指示を出した覚えはない」
「凄い偶然だね」
マリネルの言葉で俺の疲労感が増した。
「そ、それより、早いところご飯食べないと、エントリーに間に合いません」
トライが慌てた様子で腕時計を確認している。
「食べていないのは友弥だけだよぉー」
マリネルがバスケットを振った。
「さっきので食欲が吹き飛んだ・・・だめ、俺帰る」
「何を繊細なふりしてるんだ、飯食え、もしくは私に食っても良いと言え」
ブラッゲが俺に詰め寄ってきた。以前なら叩かれていたところだ。
「まさか、マリネルではなく、友弥がこうなるとはな」
女性恐怖症の気があるマリネルは、俺の近くにいれば普段通りであった。それでも女性の集団がこちらを見ていると、腰が引けるのは仕方がない。
俺も集団で女性に見られると、腰が引けるのは確かだ。しかも黄色い声や、鼻血付きともなると腰が引けるだけではなく、逃げ出したくなる。なんというか異様な興奮をしている女性の集団というのは恐ろしい。
中にはぎらぎらとした欲望丸出しの女性もいるわけで、頭の先からつま先までじっくりとなぶるように視線を這わされたあげくに、股間とか胸元とかを凝視されると、背中に悪寒を感じてしまうのだ。
先程のインタビューをしてきた二人の先輩の片方がそうであった。
やたらと触ろうとしてくるし・・・・・・
そのたびに生徒会長に注意されていたので、触られることは無かったが、逆に生徒会長の注意がなかったら、俺がはり倒していたかもしれないと思うと、これはこれで凹む事実である。
ああ、もっと物事に動じない冷静な自分になりたい・・・・・
「諮らずとも、昨晩のマリネルの言葉が現実となるとは・・・・」
エスターが口にした昨晩のマリネルの言葉とは、つまり全ては危険に飛び込むことを俺がしないという前提条件が必須だと言うことであったのだが、別の意味でマリネルの言葉が現実となったと言う訳である。
「ペイゼル様、ライバルに死を送っても良いですか?」
「な、な、なんて言うことを言うのですかログミール」
「間違えました、塩を送っても良いですか?」
お前今の絶対にわざとだろうと思いながら、親指を立ててしまった。俺の事であったとしてもナイスなタイミングでの突っ込みである。
ログミールが親指を立て返してくる。
「構いません、早くおやりなさい」
では失礼いたしますとログミールは言うと、傍らに置いてあったパルクを手に取った。
俺以外の全員がそれぞれのパルクを携帯していた。俺の記事をリアルタイムで読むためと、今日のデモに参加するチームはチームに一台はパルクを持ってくるように言われているかららしい。
「友弥様、三十五分の一スケールのタイガーI型です」
「?」
「タイガーI型のプラモデルを景品に出している部活があります、しかも塗料付きです」
俺は跳ね起きて、ログミールの傍らに座った。
「な、な、なに?今の早さ・・・友弥の体が一瞬霞んだよね?」
マリネルの声を無視して、ログミールがリンク解放してきたので、リンクを確立させた。
赤と青地に白く切り抜いたメーカーのマークと、1/35の文字。
【傾斜をつけて砲弾を弾くなんて邪道だ、俺は正面から、鉄板の厚さで勝負するぜ、それが男というのもだ】的な一種の無謀さを感じさせるフォルムのパッケージイラスト。
「あの時の三割引タイガーか!」
「塗料の方は、サーフェサーは付いていませんね、接着剤も付いていませんが」
「混合格闘技部のミニゲーム?」
「部員が頭にくくりつけているアイテムを制限時間三分以内で取るというのをトーナメントで行うらしいですね、未だに景品を手にした者はいないようです。如何ですか?」
「マリネル、俺の飯くれ」
俺のテンションが上がってきた。マリネルからバスケットを受け取り、太巻きにかぶりついた。
「タイガーI型、取りに行くぞ!」
俺はログミールに親指を立てた。ログミールも親指を立てて返してくる。
「その前に、デモに集中しろ・・・・・頼むから・・・・」
エスターが額に手を当てながら首を振った。
俺はぐったりしながら、校舎が仰ぎ見える裏山に近い芝生に横たわっていた。
生徒会役員と風紀委員に囲まれながら、ペイゼル達と各部活を巡っていた俺達は生徒会長に呼び出されたのだ。どうやら、俺に対する取材制限に対して、不満の意見が吹き出たらしい。特に昨日の理事会で俺の退学が決定になった時点で、その声は頂点に達したらしく、これ以上の取材制限は効果が無いと判断したらしい。そこで、生徒会の立ち会いの下、俺は新聞部のインタビューに答えたのだが、これがまた誘導尋問的な質問が多発し、エスターのサインを確認しながらの受け答えになり、神経がすり減ったのである。
「でもすごいねぇ、さっきの受け答え、友弥ってああいうの慣れてるの?」
「ぜんぜん」
突っ伏したまま俺は答えた。
「いえ、とても素敵でしたわ、堂々としていて、それでいて奥ゆかしく、決して相手の挑発などにも怒るような事はせず、最後の方では嫌味な質問を繰り返す相手の方が恐縮していましたもの」
ペイゼルが感動したように両手を組んだ。
「あれは、エスターの指示だ、俺はエスターの指示通りに受け答えをしただけだ」
「そうなのか?」
当のエスターが驚いたように聞いてくる。
「エスター、俺のことフォローしていてくれてたよな?」
「いや、そんなつもりはなかったが・・・・・ただ、厭な質問をしてきた時は少々苛つきはしたがな」
「・・・・・俺の勘違い?」
「少なくとも、私はお前に指示を出した覚えはない」
「凄い偶然だね」
マリネルの言葉で俺の疲労感が増した。
「そ、それより、早いところご飯食べないと、エントリーに間に合いません」
トライが慌てた様子で腕時計を確認している。
「食べていないのは友弥だけだよぉー」
マリネルがバスケットを振った。
「さっきので食欲が吹き飛んだ・・・だめ、俺帰る」
「何を繊細なふりしてるんだ、飯食え、もしくは私に食っても良いと言え」
ブラッゲが俺に詰め寄ってきた。以前なら叩かれていたところだ。
「まさか、マリネルではなく、友弥がこうなるとはな」
女性恐怖症の気があるマリネルは、俺の近くにいれば普段通りであった。それでも女性の集団がこちらを見ていると、腰が引けるのは仕方がない。
俺も集団で女性に見られると、腰が引けるのは確かだ。しかも黄色い声や、鼻血付きともなると腰が引けるだけではなく、逃げ出したくなる。なんというか異様な興奮をしている女性の集団というのは恐ろしい。
中にはぎらぎらとした欲望丸出しの女性もいるわけで、頭の先からつま先までじっくりとなぶるように視線を這わされたあげくに、股間とか胸元とかを凝視されると、背中に悪寒を感じてしまうのだ。
先程のインタビューをしてきた二人の先輩の片方がそうであった。
やたらと触ろうとしてくるし・・・・・・
そのたびに生徒会長に注意されていたので、触られることは無かったが、逆に生徒会長の注意がなかったら、俺がはり倒していたかもしれないと思うと、これはこれで凹む事実である。
ああ、もっと物事に動じない冷静な自分になりたい・・・・・
「諮らずとも、昨晩のマリネルの言葉が現実となるとは・・・・」
エスターが口にした昨晩のマリネルの言葉とは、つまり全ては危険に飛び込むことを俺がしないという前提条件が必須だと言うことであったのだが、別の意味でマリネルの言葉が現実となったと言う訳である。
「ペイゼル様、ライバルに死を送っても良いですか?」
「な、な、なんて言うことを言うのですかログミール」
「間違えました、塩を送っても良いですか?」
お前今の絶対にわざとだろうと思いながら、親指を立ててしまった。俺の事であったとしてもナイスなタイミングでの突っ込みである。
ログミールが親指を立て返してくる。
「構いません、早くおやりなさい」
では失礼いたしますとログミールは言うと、傍らに置いてあったパルクを手に取った。
俺以外の全員がそれぞれのパルクを携帯していた。俺の記事をリアルタイムで読むためと、今日のデモに参加するチームはチームに一台はパルクを持ってくるように言われているかららしい。
「友弥様、三十五分の一スケールのタイガーI型です」
「?」
「タイガーI型のプラモデルを景品に出している部活があります、しかも塗料付きです」
俺は跳ね起きて、ログミールの傍らに座った。
「な、な、なに?今の早さ・・・友弥の体が一瞬霞んだよね?」
マリネルの声を無視して、ログミールがリンク解放してきたので、リンクを確立させた。
赤と青地に白く切り抜いたメーカーのマークと、1/35の文字。
【傾斜をつけて砲弾を弾くなんて邪道だ、俺は正面から、鉄板の厚さで勝負するぜ、それが男というのもだ】的な一種の無謀さを感じさせるフォルムのパッケージイラスト。
「あの時の三割引タイガーか!」
「塗料の方は、サーフェサーは付いていませんね、接着剤も付いていませんが」
「混合格闘技部のミニゲーム?」
「部員が頭にくくりつけているアイテムを制限時間三分以内で取るというのをトーナメントで行うらしいですね、未だに景品を手にした者はいないようです。如何ですか?」
「マリネル、俺の飯くれ」
俺のテンションが上がってきた。マリネルからバスケットを受け取り、太巻きにかぶりついた。
「タイガーI型、取りに行くぞ!」
俺はログミールに親指を立てた。ログミールも親指を立てて返してくる。
「その前に、デモに集中しろ・・・・・頼むから・・・・」
エスターが額に手を当てながら首を振った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる