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二章 龍王と王配の二年目
3.ラバン王国国王に聞く
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ヨシュアのことを抱きたい気持ちは間違いない。
同じ寝台でヨシュアの胸に触れながら眠っていたら、龍王はヨシュアの夢を見た。
白い豊かな胸を晒し、引き締まった腰も露わに寝台の上に横たわっている。
覆い被さってヨシュアの体を深く抱き締めたところで、龍王は視線を感じた。
天蓋付きの寝台の天蓋は閉められているのに、それを透かして見えるひとの気配。
「星宇、わたしに集中して」
「ヨシュア……で、でも……」
逞しい腕に抱き寄せられて欲望は高まるのに、どうしても視線が気になってしまう。
目を覚ましたら案の定下着を汚していたが、満足した気分にもなれず、龍王は衝立に隠れて侍従の用意した濡れた布で下半身を拭い、着替えをした。
まだ四日静養期間は残っている。
その間に本懐を遂げたいと思っているのに、新しい問題が浮上してそれができそうにない。
「ラバン王国の代々の王族はどうしていたのでしょう」
「王族だからな……耐えていたんだろうな」
ぽつりとヨシュアが敬語をなくして呟いたのに、龍王は黒い目を輝かせた。元々ヨシュアの喋り方が格好よくて素敵だと思っていたのだ。できるならそのまま喋ってほしい。
「ヨシュア、わたしにはそのような喋り方をしてくれませんか?」
「あぁ、無意識に出ていたようですね。気を付けます」
「ヨシュアのその喋り方が好きなのです。お願いします」
両手を握り締めて縋り付くようにお願いすると、ヨシュアは躊躇いがちに了承してくれる。
「それなら、二人きりのときだけは」
「ありがとうございます!」
「星宇はその喋り方のままなのか?」
「わたしは年上で最愛のヨシュアに敬意を払いたいのです」
納得できない顔をしているが、ヨシュアが敬語をやめてくれたことは、龍王にとっては距離がますます近付いたようで嬉しかった。
「ラバン王国の文献を探せないでしょうか?」
「一応、兄上に魔術で通信してみるか?」
「お願いします」
ヨシュアは魔術の通信をしながら、魔術の使い方を龍王にも教えてくれる。魔力は十分にあるのだが、龍王はこれまで全く魔術と触れ合ってこなくて、魔術を知らないので、ヨシュアが一つ一つ丁寧に教えてくれていた。
「通信の魔術は相手の魔力を感知して使う。これまでに会った相手なら魔力の波動が分かっているので通信ができるが、星宇はまだ魔力を持たない時期に兄上と会っているので、波動が分からないかもしれない」
「魔術の波動……ヨシュアのものはなんとなく分かります」
「慣れていけば、魔術騎士たちの分も分かるようになると思う。魔術騎士を一人一人星宇にお目通りさせよう」
魔術騎士と通信ができるようになればどういう利益があるのかまだよく分かっていないが、龍王はヨシュアの言葉に頷いていた。
ヨシュアがラバン王国の国王と通信を繋げると、手の平に乗るような小さな立体映像が映し出される。
『ヨシュア、龍王陛下もおられるではないか。龍王陛下、この度は我が弟に玉を賜り、誠にありがとうございます』
「愛するヨシュアと共に生きていくことができて、わたしも幸せです。ラバン王国国王陛下には感謝しております」
『それで、私的な用事と聞きましたが、何か?』
よく考えれば休養を取っているのは龍王とヨシュアだけで、ラバン王国国王は政務の途中だったはずだ。それを呼び出すのだから大変な用事と思われているに違いない。
「その……閨のことなのです」
『ヨシュアとの閨のこと? わたしが聞いてもよろしいのですか?』
「ご相談したくて。実はまだわたしとヨシュアはその……閨ごとに至っておりません」
「龍王陛下、詳細に話さないでください」
沈痛な面持ちでヨシュアが言って来るが、龍王はそれどころではなかった。
「わたしはヨシュアと魂で結ばれました。肉体的にも結ばれたい。ですが、ヨシュアが閨ごとのときには無防備になるので、部屋に警護のものを入れるようにと言うのです。わたしはヨシュアの艶っぽい声も、乱れた姿も、誰にも見せたくないのに!」
「龍王陛下!?」
力を込めて言いすぎたようで、ヨシュアが片手で顔を覆って耳まで赤くなっている。
それでも龍王にとってはこれはとても大事なことだった。
『あー……お気持ちは分かりました。それ以上は話さなくて結構です。それ以上話すと、ヨシュアが実家に戻ってきてしまうかもしれません』
「なぜ!? わたしはこんなにヨシュアを愛しているのに!? 実家に戻られたら、即座に迎えに行きますよ!」
『ですから、お気持ちは分かりました。少々時間をいただけますか。ラバン王国の王族の中にも、そのような気持ちで初夜に臨んだものがおりましょう。音が絶対に漏れない、姿も見えない結界を張る方法が見つかるかもしれません』
文献を探させますとラバン王国の国王に言われて、龍王はやっと落ち着いて息を整えた。
ラバン王国国王が、『ヨシュア、お前も大変だな』と言っているのが聞こえる気がする。
ヨシュアはそれに答えずに通信を切ってしまった。
「完全に姿を隠し、声も漏れない結界が張れるかもしれないそうですよ」
「それはよかったのだが……おれとの閨ごとを知られるのは嫌ではないのか?」
「見られるのや聞かれるのは堪えられませんが、やることをやっているというのは、龍王と王配に関しては当然なのではないですか?」
「こういうところだけ王族らしいのだな」
額に手をやって苦悩の顔をしているヨシュアに、何か困らせるようなことを言ってしまっただろうかと龍王はその顔を覗き込む。
目を伏せていると長い金色の睫毛がけぶるようでヨシュアがますます美しく見える。
目を開けているときはその鮮やかな青い瞳に心奪われ、目を伏せているときには長い睫毛に夢中になってしまうのだから、ヨシュアの美しさは限りない。
「龍族の中でも血の濃い王族は、成人すると死の直前まで最高の肉体年齢のまま老いることなく、死の直前になって急激に老いると言われています。わたしとヨシュアはこの年齢のままで死の直前まで生きることになりそうですよ」
「それは好都合かもしれない。三百年、星宇が龍王を務めたら旅に出ようと言っていた。そのときに老いてなくても、違和感なく宮殿を抜け出せるだろう」
「わたしはもう少しヨシュアに届くくらいの年齢の姿になりたいのですが」
「星宇はそのままで可愛いよ。もう少し肉付きがよくなってもいいとは思うけど」
話していると落ち着いたようでヨシュアが手を広げて龍王を招いてくれる。
ヨシュアの腕の中にすっぽりと納まると居心地がよくて龍王は眠くなってくる。
数日前まで体が変化していて熱も出していたのだ、まだその名残があってもおかしくはない。
「ヨシュアは温かい」
これから季節は冬に近付いていく。
冬になっても二人でくっついていれば寒くないのかもしれないと龍王は思った。
王宮の一人の部屋では、一年中寒くて寂しくてたまらなかった。
ヨシュアがいてくれればもうそのようなこともない。
「わたしはずっと寒くて寂しかった。ヨシュアが来てくれたので、わたしは寒くも寂しくもなくなった。愛しています、ヨシュア」
ヨシュアの胸に耳を付けるととくとくと心臓が脈動しているのが分かる。
それは龍王の心臓の音とも重なって、心地よい旋律を奏でていた。
「星宇を更に孤独にさせただけではないのかと思っているが」
「そんなことはありません。ヨシュアの存在がわたしには愛おしく、誰よりも心の虚ろな穴を埋めてくれるのです」
前龍王である父が死んでからは龍王の責務に押しつぶされそうになりながら、必死に龍王は生きてきた。
今はヨシュアとその責務も共に背負うことができる。
ヨシュアなしの人生など龍王は考えられなくなっていた。
同じ寝台でヨシュアの胸に触れながら眠っていたら、龍王はヨシュアの夢を見た。
白い豊かな胸を晒し、引き締まった腰も露わに寝台の上に横たわっている。
覆い被さってヨシュアの体を深く抱き締めたところで、龍王は視線を感じた。
天蓋付きの寝台の天蓋は閉められているのに、それを透かして見えるひとの気配。
「星宇、わたしに集中して」
「ヨシュア……で、でも……」
逞しい腕に抱き寄せられて欲望は高まるのに、どうしても視線が気になってしまう。
目を覚ましたら案の定下着を汚していたが、満足した気分にもなれず、龍王は衝立に隠れて侍従の用意した濡れた布で下半身を拭い、着替えをした。
まだ四日静養期間は残っている。
その間に本懐を遂げたいと思っているのに、新しい問題が浮上してそれができそうにない。
「ラバン王国の代々の王族はどうしていたのでしょう」
「王族だからな……耐えていたんだろうな」
ぽつりとヨシュアが敬語をなくして呟いたのに、龍王は黒い目を輝かせた。元々ヨシュアの喋り方が格好よくて素敵だと思っていたのだ。できるならそのまま喋ってほしい。
「ヨシュア、わたしにはそのような喋り方をしてくれませんか?」
「あぁ、無意識に出ていたようですね。気を付けます」
「ヨシュアのその喋り方が好きなのです。お願いします」
両手を握り締めて縋り付くようにお願いすると、ヨシュアは躊躇いがちに了承してくれる。
「それなら、二人きりのときだけは」
「ありがとうございます!」
「星宇はその喋り方のままなのか?」
「わたしは年上で最愛のヨシュアに敬意を払いたいのです」
納得できない顔をしているが、ヨシュアが敬語をやめてくれたことは、龍王にとっては距離がますます近付いたようで嬉しかった。
「ラバン王国の文献を探せないでしょうか?」
「一応、兄上に魔術で通信してみるか?」
「お願いします」
ヨシュアは魔術の通信をしながら、魔術の使い方を龍王にも教えてくれる。魔力は十分にあるのだが、龍王はこれまで全く魔術と触れ合ってこなくて、魔術を知らないので、ヨシュアが一つ一つ丁寧に教えてくれていた。
「通信の魔術は相手の魔力を感知して使う。これまでに会った相手なら魔力の波動が分かっているので通信ができるが、星宇はまだ魔力を持たない時期に兄上と会っているので、波動が分からないかもしれない」
「魔術の波動……ヨシュアのものはなんとなく分かります」
「慣れていけば、魔術騎士たちの分も分かるようになると思う。魔術騎士を一人一人星宇にお目通りさせよう」
魔術騎士と通信ができるようになればどういう利益があるのかまだよく分かっていないが、龍王はヨシュアの言葉に頷いていた。
ヨシュアがラバン王国の国王と通信を繋げると、手の平に乗るような小さな立体映像が映し出される。
『ヨシュア、龍王陛下もおられるではないか。龍王陛下、この度は我が弟に玉を賜り、誠にありがとうございます』
「愛するヨシュアと共に生きていくことができて、わたしも幸せです。ラバン王国国王陛下には感謝しております」
『それで、私的な用事と聞きましたが、何か?』
よく考えれば休養を取っているのは龍王とヨシュアだけで、ラバン王国国王は政務の途中だったはずだ。それを呼び出すのだから大変な用事と思われているに違いない。
「その……閨のことなのです」
『ヨシュアとの閨のこと? わたしが聞いてもよろしいのですか?』
「ご相談したくて。実はまだわたしとヨシュアはその……閨ごとに至っておりません」
「龍王陛下、詳細に話さないでください」
沈痛な面持ちでヨシュアが言って来るが、龍王はそれどころではなかった。
「わたしはヨシュアと魂で結ばれました。肉体的にも結ばれたい。ですが、ヨシュアが閨ごとのときには無防備になるので、部屋に警護のものを入れるようにと言うのです。わたしはヨシュアの艶っぽい声も、乱れた姿も、誰にも見せたくないのに!」
「龍王陛下!?」
力を込めて言いすぎたようで、ヨシュアが片手で顔を覆って耳まで赤くなっている。
それでも龍王にとってはこれはとても大事なことだった。
『あー……お気持ちは分かりました。それ以上は話さなくて結構です。それ以上話すと、ヨシュアが実家に戻ってきてしまうかもしれません』
「なぜ!? わたしはこんなにヨシュアを愛しているのに!? 実家に戻られたら、即座に迎えに行きますよ!」
『ですから、お気持ちは分かりました。少々時間をいただけますか。ラバン王国の王族の中にも、そのような気持ちで初夜に臨んだものがおりましょう。音が絶対に漏れない、姿も見えない結界を張る方法が見つかるかもしれません』
文献を探させますとラバン王国の国王に言われて、龍王はやっと落ち着いて息を整えた。
ラバン王国国王が、『ヨシュア、お前も大変だな』と言っているのが聞こえる気がする。
ヨシュアはそれに答えずに通信を切ってしまった。
「完全に姿を隠し、声も漏れない結界が張れるかもしれないそうですよ」
「それはよかったのだが……おれとの閨ごとを知られるのは嫌ではないのか?」
「見られるのや聞かれるのは堪えられませんが、やることをやっているというのは、龍王と王配に関しては当然なのではないですか?」
「こういうところだけ王族らしいのだな」
額に手をやって苦悩の顔をしているヨシュアに、何か困らせるようなことを言ってしまっただろうかと龍王はその顔を覗き込む。
目を伏せていると長い金色の睫毛がけぶるようでヨシュアがますます美しく見える。
目を開けているときはその鮮やかな青い瞳に心奪われ、目を伏せているときには長い睫毛に夢中になってしまうのだから、ヨシュアの美しさは限りない。
「龍族の中でも血の濃い王族は、成人すると死の直前まで最高の肉体年齢のまま老いることなく、死の直前になって急激に老いると言われています。わたしとヨシュアはこの年齢のままで死の直前まで生きることになりそうですよ」
「それは好都合かもしれない。三百年、星宇が龍王を務めたら旅に出ようと言っていた。そのときに老いてなくても、違和感なく宮殿を抜け出せるだろう」
「わたしはもう少しヨシュアに届くくらいの年齢の姿になりたいのですが」
「星宇はそのままで可愛いよ。もう少し肉付きがよくなってもいいとは思うけど」
話していると落ち着いたようでヨシュアが手を広げて龍王を招いてくれる。
ヨシュアの腕の中にすっぽりと納まると居心地がよくて龍王は眠くなってくる。
数日前まで体が変化していて熱も出していたのだ、まだその名残があってもおかしくはない。
「ヨシュアは温かい」
これから季節は冬に近付いていく。
冬になっても二人でくっついていれば寒くないのかもしれないと龍王は思った。
王宮の一人の部屋では、一年中寒くて寂しくてたまらなかった。
ヨシュアがいてくれればもうそのようなこともない。
「わたしはずっと寒くて寂しかった。ヨシュアが来てくれたので、わたしは寒くも寂しくもなくなった。愛しています、ヨシュア」
ヨシュアの胸に耳を付けるととくとくと心臓が脈動しているのが分かる。
それは龍王の心臓の音とも重なって、心地よい旋律を奏でていた。
「星宇を更に孤独にさせただけではないのかと思っているが」
「そんなことはありません。ヨシュアの存在がわたしには愛おしく、誰よりも心の虚ろな穴を埋めてくれるのです」
前龍王である父が死んでからは龍王の責務に押しつぶされそうになりながら、必死に龍王は生きてきた。
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