龍王陛下は最強魔術師の王配を溺愛する

秋月真鳥

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三章 甥の誕生と六年目まで

22.ラバン王国国王一家の来訪

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「ラバン王国の国王陛下御一家ですか? わたくし初めてお会い致します」
「わたしも初めてですね。王配陛下の御家族なので素晴らしい方たちだろうとは思っていますが」
「おじうえの、なぁに?」

 梓晴と浩然と俊宇にラバン王国国王一家が来訪することを告げると、梓晴と浩然は楽しみにしているようだが、俊宇は関係が分からずにヨシュアを黒い目で見上げて聞いてくる。
 ヨシュアは俊宇を膝の上に抱き上げるときちんと説明する。

「わたしの兄と兄の妻と姪と甥です」
「おじうえのおにいさん?」
「そうです。血は繋がっていませんが、形式上では姪と甥は俊宇殿下の従兄弟になります」
「いとこ!? いとこ、なぁに?」
「親の兄弟の子どもです。甥のジェレミーが俊宇殿下と年が近いので仲良くなれると思います」
「じぇれみー……たのちみ!」

 最終的には友達ができるかもしれないと聞いて俊宇も楽しみにしているようだった。
 王宮で生まれ育った俊宇には友達というものがいない。乳母になった女性は子どもを王宮には連れてきていないようなのだ。

 乳母の元で乳兄弟のネイサンと一緒に育ったヨシュアにしてみれば、それは意外なことだったが、志龍王国ではよくあることらしい。志龍王国の乳母は子どもが卒乳するころの女性を雇って、まだ出る乳を飲ませてもらっているのだという。
 龍王も梓晴も乳兄弟と触れ合う機会はなかったようなので、同じようにされたのだろう。

 ラバン王国とこういうところも違うのだと実感する。

 俊宇が大人しいのも、年が近い友達が近くにいなくて、大人の中で暮らしているからかもしれない。ジェレミーと俊宇を会わせるのが心配だという龍王の気持ちも分からないでもなかった。

 ラバン王国の国王、マシュー一家は結婚したレイチェルを置いて、マシューと妻のハンナ、娘のレベッカと息子のジェレミーの四人で志龍王国に来た。
 新年の祝賀が終わった後で、国は祝いの雰囲気に満ちていた。
 魔術で転移してきたが、王都に張り巡らされる結界の前で一度止められて、身分を確かめてから、結界の中に入って、王宮の入り口まで転移してきたマシュー一家を龍王もヨシュアも緑葉殿で迎えた。
 緑葉殿には梓晴と浩然と俊宇も待っている。

 雪を踏み分けてやってきたマシュー一家は入り口で外套を脱ぎ、ゆっくりと緑葉殿の廊下を歩いて食堂までやってくる。
 食卓に着いていた梓晴と浩然が立ち上がり、俊宇が抱き上げられた。

「お初にお目にかかります、ラバン王国国王陛下、王妃殿下、レベッカ王女殿下、ジェレミー王子殿下。わたくしは龍王陛下の妹の梓晴と申します」
「わたしは梓晴の夫の浩然と申します」
「ジュンユー! みっちゅ!」

 指で三の文字を作る俊宇にジェレミーが駆け寄る。

「おれ、ジェレミー! よっつ!」
「よっつ!? ひとちゅ、おおい!」
「おれ、ふゆにうまれた。おじうえとおなじ。おれ、このまえたんじょうびだった!」
「わたち、いつうまれた?」
「ジェレミー王子殿下は冬生まれなのですね。俊宇は夏生まれですよ」

 早速俊宇に話しかけているジェレミーに、俊宇も黒いお目目をきらきらさせてジェレミーを見ている。

「わたしたちは家族のようなものですから、梓晴殿下も、浩然殿下も、ジェレミーのことはそのまま呼んでくださって構いません」
「それでしたら、ジェレミー殿下と呼ばせていただきます」
「ジェレミーでんか!」
「ジュンユーでんか、あそぼう!」
「あそぶ!」

 誘われて俊宇は浩然の手から飛び降りてジェレミーの後について行く。
 昼食を先にしようかと思っていたが、子どもたちは先に友好を深めたいようなので、外套を羽織って外に出た。
 レベッカがジェレミーと俊宇を追いかけている。

「俊宇殿下、わたくしが雪だるまをつくってあげましょう」
「おぉー!」

 雪を丸めだすレベッカに、俊宇が手を叩いて喜んでいる。
 丸めた大小の雪を乗せて雪だるまを作ったレベッカに、俊宇が寒さにぴるぴると震えていた俊宇の人参マンドラゴラを掴んだ。

「これ!」
「鼻にぴったりですね!」
「ぴょえー!」

 抵抗できず雪に刺されてしまう人参マンドラゴラが凍えないか心配だったが、ヨシュアは子どもの遊びには手を出さないことにしていた。

「ヨシュア、雪兎を作りましょう。こうやって、楕円形に雪を固めるのです」
「ゆきうさぎ?」
「ゆきでうさぎをつくるのか?」

 龍王が無邪気に雪兎を作っていると興味津々の子どもたちが寄ってくる。

「これが南天です」

 庭に生えている赤い小さな実を二粒取って目にして、耳は葉っぱを付ける龍王に俊宇が拍手を送り、ジェレミーがさっそく真似をしてやってみて、レベッカがそれを手伝っている。

 龍王は出来上がった雪兎をヨシュアの手の上に乗せてくれた。

「可愛いな。溶けてしまうのがもったいない」
「それなら、これも解けないようにして、部屋に飾りますか」
「星宇がくれたものだから大事にしたい」

 壊れないように雪兎を板の上に置くと、龍王が水の力で雪兎を溶けないようにして部屋に持って帰れるようにしてくれていた。それを見てジェレミーもレベッカも俊宇も顔を出してくる。

「わたちのゆきうさぎ!」
「俊宇にも作ろうか?」
「あい!」
「おれのゆきうさぎ、じょうずじゃないか?」
「わたくしも作ってみました」

 差し出してくるジェレミーとレベッカの雪兎にも水の力を与えて龍王が溶けないようにしてやる。溶けない雪兎を持って帰れると聞いて、ジェレミーもレベッカもとても喜んでいた。
 俊宇には龍王が雪兎を作ってやって、水の力で溶けないようにしてやっていた。

「ちちうえ、ははうえ、これ、シンおじうえがつくってくれたの」
「よかったですね、俊宇」
「ありがとうございます、龍王陛下」

 大事に部屋まで雪兎を持って帰る俊宇に、梓晴も浩然も微笑ましそうにしていた。

 子どもたちの雪遊びが終わると、手を洗って昼餉の時間になる。
 昼餉は温かな餅が入った汁に、海老の煮たもの、熱々の具材と一緒に炒めたご飯、あんかけの魚などが出て、ヨシュアがマシューとハンナに伝える。

「餅は喉に詰まると危険だから、ジェレミーには小さくちぎって食べさせるといい」
「これは餅と言うのか」
「もち米を突いて作った食べ物だ」

 餅を小さくちぎって俊宇に上げている梓晴と浩然を見習って、マシューとハンナもジェレミーに餅を小さく切り分けている。ジェレミーはまだ箸が使えないので、匙で一生懸命食べていた。
 俊宇の方は小さいころから慣れているのだろう、拙いながらも握り箸で食べている。

 昼食が終わると、子どもたちを室内で遊ばせながらマシューとハンナが梓晴と浩然とお茶を飲みながら寛いでいた。

「ジェレミーと俊宇殿下は仲良くなったようでよかったです」
「俊宇には年の近い子どもがいないのです。一番近いもので、青陵殿でドラゴンを育成している獣人のジャックなのですが、それでも十歳くらいですし、頻繁には会えません。大人の中で育っているので、ジェレミー殿下と遊ぶのが楽しいのだと思います」
「ジェレミーも俊宇殿下と楽しそうに遊んでいます。レベッカも一緒に」

 子どもたちを見守るマシューと梓晴の視線は温かい。

「おれ、こんなでかいむし、みつけたことある!」
「むし、さわっちゃだめなの」
「だいじょうぶ! さわっていいむしもいるから」
「さわっていいむし?」
「アリとか……いもむしとか……せみとか……」

 元気よく話すジェレミーに俊宇は懐いている様子だった。

「父上、俊宇殿下可愛い。わたくし、俊宇殿下が大きくなったら、結婚したい」

 俊宇よりも十歳以上年上のレベッカだが、魔術師と龍族ならばその年齢差はそれほど関係ないだろう。俊宇の可愛さにメロメロになっているレベッカに、マシューが複雑そうな顔になる。

「レベッカと俊宇殿下は年が離れすぎているだろう」
「わたくしも叔父上のように、志龍王国に嫁ぎたいのです。俊宇殿下、大きくなったらわたくしと結婚しませんか?」
「けっこん、なぁに?」
「ずっと一緒にいて、二人で幸せになる約束です」
「けっこん……ちたら、ジェレミーもいっしょ?」

 レベッカよりもジェレミーに興味のある俊宇に、ハンナが「振られましたね」と笑っていた。

「ジェレミーは次期国王だから、志龍王国に嫁ぐことはできません」
「ジェレミー、またあそべる?」
「ちちうえ、おれ、またジュンユーでんかとあそびたい!」
「志龍王国にまた来るのは構わないよ」

 結婚はできないがまた遊べると聞いて俊宇が飛び跳ねて喜ぶ。ジェレミーも一緒になって飛び跳ねていた。

「叔父上のような結婚をするのが理想なのに」
「レベッカ、俊宇殿下はまだお小さい。もう少し大きくなるまで待ちなさい」

 俊宇を諦めきれないレベッカに、ヨシュアは笑いながらその髪を撫でた。
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