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三章 甥の誕生と六年目まで
23.ラバン王国国王陛下一家と共に
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ラバン王国の国王一家が緑葉殿に来訪して、子どもたちは仲良く過ごしていた。
俊宇はジェレミーに懐いていて、レベッカは俊宇の可愛さに結婚したいとまで言っている。
「叔父上と龍王陛下もお年が離れているでしょう? わたくしも少し年が離れていても構わないと思います」
「それは俊宇の気持ち次第だな」
「わたくし、叔父上と龍王陛下の結婚に憧れているのです」
それを聞いてヨシュアが笑い声をあげた。
「今は仲良しだけれど、最初は星宇は酷かったんだぞ?」
「あれはわたしも反省しています」
――わたしは、あなたを愛するつもりはない。褥も共にするつもりはない先に言っておいた通りだ。
――王族で国で五指に入る魔術師を手に入れる、この結婚にそれ以外の意味はないでしょう。それを愛するだのなんだの、あなたはアクセサリーに愛を囁く変態なのですか?
あのときは龍王は酷いことを言ってしまったが、言い返したヨシュアも相当辛辣なことを言っていた。
こんなに愛してしまうだなんて思っていなくて、結婚というものがひたすらに煩わしくて、政略結婚でやってきたヨシュアを愛するつもりはないと口を突いて出た。それに対してヨシュアは政略結婚なのだから当然だろうと平然としていた。
「それ、ラバン王国の劇団で見ました。『あなたを愛するつもりはない。褥も共にすることはない』でしょう?」
「言わないでください、レベッカ殿下。その件に関しては、わたしは忘れたいほど恥ずかしいのです」
忘れたいくらい恥ずかしいのに、ラバン王国でも劇団が龍王と王配の恋物語を演じているし、国内でも劇団が同じ演目を演じて大人気になっているという。
なかったことにしたいのに、龍王の失言は永遠に残ってしまいそうだ。
「星宇が素晴らしい龍王になればなるほど、言われ続けるのかもしれないな」
「それは困ります。今はこんなにヨシュアのことを愛しているのに」
言い訳をするわけではないが、龍王はあのとき自暴自棄になっていたのだと思う。自分には子種がないのに結婚する意義というものが見いだせなかったし、長年子どもができなくても愛し合っていた両親のような関係を作るのが理想だったのに、それが果たされるはずもないと諦めきっていた。
結果としてヨシュアは龍王を最初は冷たくあしらっていたが、一緒に食事を摂ってくれるようになり、食後に眠ってしまった龍王を寝台に運んで眠らせてくれて、一緒の部屋で眠るようになるまで譲歩してくれた。
ヨシュアのそばならば安心して食事ができたし、心配なく眠れたから、少しずつ心を許した龍王はヨシュアを愛するようになった。
そうなってから愛を乞うても遅かったのだが。
「その言葉のせいでヨシュアにどれだけ愛を囁いても本気にされず、つらい時間を過ごしたのですよ。自業自得ですが」
口に出してしまった言葉というのは取り消すことができないのだ。
そのせいで龍王はずっと苦しんだ。
ヨシュアに秘密を打ち明けてもらえるまで時間がかかってしまった。
ヨシュアの小指にはまっている印章のついた指輪は、志龍王国王家の証で、正式な書簡にはそれを押すことになっている。その指輪をヨシュアが付けたときには全く愛情はなかったし、愛情を持てるとは思っていなかった。
今は左手の薬指に簡素な飾りのない金の指輪を付けている。ヨシュアとお揃いのそれは、思いが通じ合ってからヨシュアが結婚記念日に贈ってくれたものだった。
「ヨシュアが優しくてわたしを受け入れてくれたからこそ、今のわたしたちがあるのです」
「そうじゃないよ。星宇が心からおれを求めてくれたから、おれも星宇に秘密を明かそうと思った」
ヨシュアの眼差しに目の奥が熱くなって、龍王はぎゅっと奥歯を噛み締めた。こんなところで泣くわけにはいかない。
レベッカは話を聞いてうっとりとしていた。
「叔父上と龍王陛下の恋物語は劇で見たけど、劇と真実は違うのですね。二人がどれだけお互いのことを想い合っているかよく分かります」
感動した様子のレベッカに、俊宇もジェレミーもじっと丸いお目目を瞬かせて話を聞いていた。
「シンおじうえとヨーおじうえ、なかよし」
「ジュンユーでんか、シンおじうえとヨーおじうえってよんでるのか?」
「あい。そうよびなさいって」
お手手を上げて返事をする俊宇にジェレミーとレベッカの目が輝く。
「そうですよね、龍王陛下も義叔父上だし、叔父上も叔父上だし、分かりにくいですよね」
「おれもそうよびたい!」
きらきらとした目で見つめられて龍王はヨシュアをちらりと見る。ヨシュアは龍王に頷く。
「星宇がいいならいいんじゃないか」
「レベッカ殿下もジェレミー殿下も、どうぞ、わたしのことは星と、ヨシュアのことはヨーと呼んでください」
「やった! だいすき! シンおじうえ、ヨーおじうえ!」
「わたくしも大好きですわ、星義叔父上、ヨー叔父上」
喜んで飛びついてくるジェレミーを龍王が受け止めて、レベッカをヨシュアが受け止めた。
「レベッカに言われて今更だが、おれと星宇は二十歳以上年が違うんだな」
「わたしはヨシュアが年上でよかったと思っています」
「そうか? 立派なおじさんだぞ?」
「こんなに美しいひとをおじさんなんて呼べません。それにヨシュアの包容力がなければわたしとヨシュアの関係は成り立っていなかった気がします」
鮮やかな青い目を縁取るけぶるような金色の睫毛の長さには驚いてしまう。鼻筋は通っていて、唇はやや薄めだが薄情には見えなくて、眉はきりりと弧を描いている。神の造形としか言いようのない美しいヨシュアは明るい真っすぐな金髪で、それが絹糸のようにさらさらで、それもまた言いようのないくらい美しい。
外見で惚れたわけではないが、見れば見るほど美しい男だと見惚れてしまう。
「おれはちょっと顔が派手なだけじゃないか。体も厳ついし、美しさとは程遠い気がするが」
「ヨシュアは美しいですよ。自覚がなかったのですか?」
「そんなことを言うのは星宇だけだ」
困ったように眉を下げるヨシュアに俊宇とレベッカとジェレミーが寄ってくる。
「ヨーおじうえはうつくちいです」
「ヨーおじうえはとてもきれいだよ」
「ヨー叔父上ほど美しい方をわたくしは見たことありませんわ」
「いやいや、それは身内の欲目って奴だろう。おれよりもよっぽどレベッカの方が美しいし、ジェレミーの方が可愛いし、俊宇殿下の方がお可愛らしい」
レベッカもヨシュアに雰囲気が似て美人になりつつあるのだが、やはりヨシュアには敵わないと龍王は思っていた。
確かに筋肉質で体も厚みがあり、手足もがっしりとして逞しく、身長も龍王より頭半分以上大きいのだが、そんなことを気にさせない美しさがヨシュアにはあると思わされる。逞しい体付きでさえ、彫刻のような美しさを誇っていた。
「何にせよ、ヨシュアの全てがわたしには愛しいのです」
真っすぐに言えばヨシュアが「家族の前で恥ずかしいことを言う」と照れている。
レベッカもジェレミーも俊宇もヨシュアが美しいことに関しては同意してくれていた。
「龍王陛下はヨシュアが本当に気に入ってくださっているようで」
笑いながらラバン王国国王が言うのに、龍王は真剣な眼差しで頷いた。
そのとき、緑葉殿の入り口が騒がしくなり、誰かが入ってくる気配がした。
警備の兵士が龍王に告げる。
「侵入者です。高位の官吏がラバン王国国王陛下に一言申し上げたいことがあると押し入って参りました」
「何と言っているのだ?」
「それが直接申し上げたいと言っているのです」
高位の官吏であろうとも国同士の交流を持っているときに入らせるような警備ではない。捕らえたようだが、その官吏がラバン王国国王に何を言いたいのかは聞き出せていないようだ。
「揉め事ですか?」
「こちらの官吏が国王陛下にお会いしたいと言っていると」
「何事なのでしょう」
ラバン王国国王も王妃も顔を見合わせている。
どうするか迷ったが、官吏が何を言うのかだけは聞いておきたい気がして、龍王が立ち上がると、ヨシュアも付いてくる。
捕らえられた官吏は緑葉殿の入り口で警護の兵士に縛られていた。縛られた状態で龍王とヨシュアを見ると必死に訴えてくる。
「龍王陛下、ラバン王国国王陛下とお話をさせてください。その後でわたしの処遇はどうなっても構いません」
「会わせることはならん。何を言うつもりだったのだ?」
「ラバン王国国王陛下に会わせてくださいませ」
「何を言うつもりだったのか正直に話せ」
龍王が詰め寄ると、高位の官吏は深く息を吐いた。
「ラバン王国には男性も子どもを産めるようになる薬があると聞きました」
それは龍王も聞いたことがあったが、禁忌だとされているとも知っている。
「それは禁忌だ」
何よりも、ヨシュアにその薬を使ってもらっても、龍王は子種がないので子どもを作ることができない。
そう考えていると、高位の官吏は雪の上に額をこすり付けるようにして願う。
「龍王陛下がその薬をお使いになり、王配陛下のお子を産んでいただけないかと」
龍王がその薬を使って、ヨシュアの子どもを産む。
その意味が一瞬分からなくて固まる龍王に、ヨシュアがすかさずその官吏を叱責した。
「その薬が禁忌と言われる所以を教えよう。その薬は母体となる男性に大きな負担を強いる。龍王陛下にそのようなことをさせられると思っているのか!」
「ですが、龍王陛下に直系のお子が生まれれば……」
「龍王陛下は梓晴殿下のお子を次の龍王にすると決めていらっしゃる。お前が口を出すことではない!」
ぴしゃりと官吏の願いを退けて、ヨシュアが警備の兵士に官吏を連れて行くように促す。
官吏がいなくなった緑葉殿の前で立ち尽くす龍王を、ヨシュアが肩を抱き、暖かな室内に連れて行ってくれた。
俊宇はジェレミーに懐いていて、レベッカは俊宇の可愛さに結婚したいとまで言っている。
「叔父上と龍王陛下もお年が離れているでしょう? わたくしも少し年が離れていても構わないと思います」
「それは俊宇の気持ち次第だな」
「わたくし、叔父上と龍王陛下の結婚に憧れているのです」
それを聞いてヨシュアが笑い声をあげた。
「今は仲良しだけれど、最初は星宇は酷かったんだぞ?」
「あれはわたしも反省しています」
――わたしは、あなたを愛するつもりはない。褥も共にするつもりはない先に言っておいた通りだ。
――王族で国で五指に入る魔術師を手に入れる、この結婚にそれ以外の意味はないでしょう。それを愛するだのなんだの、あなたはアクセサリーに愛を囁く変態なのですか?
あのときは龍王は酷いことを言ってしまったが、言い返したヨシュアも相当辛辣なことを言っていた。
こんなに愛してしまうだなんて思っていなくて、結婚というものがひたすらに煩わしくて、政略結婚でやってきたヨシュアを愛するつもりはないと口を突いて出た。それに対してヨシュアは政略結婚なのだから当然だろうと平然としていた。
「それ、ラバン王国の劇団で見ました。『あなたを愛するつもりはない。褥も共にすることはない』でしょう?」
「言わないでください、レベッカ殿下。その件に関しては、わたしは忘れたいほど恥ずかしいのです」
忘れたいくらい恥ずかしいのに、ラバン王国でも劇団が龍王と王配の恋物語を演じているし、国内でも劇団が同じ演目を演じて大人気になっているという。
なかったことにしたいのに、龍王の失言は永遠に残ってしまいそうだ。
「星宇が素晴らしい龍王になればなるほど、言われ続けるのかもしれないな」
「それは困ります。今はこんなにヨシュアのことを愛しているのに」
言い訳をするわけではないが、龍王はあのとき自暴自棄になっていたのだと思う。自分には子種がないのに結婚する意義というものが見いだせなかったし、長年子どもができなくても愛し合っていた両親のような関係を作るのが理想だったのに、それが果たされるはずもないと諦めきっていた。
結果としてヨシュアは龍王を最初は冷たくあしらっていたが、一緒に食事を摂ってくれるようになり、食後に眠ってしまった龍王を寝台に運んで眠らせてくれて、一緒の部屋で眠るようになるまで譲歩してくれた。
ヨシュアのそばならば安心して食事ができたし、心配なく眠れたから、少しずつ心を許した龍王はヨシュアを愛するようになった。
そうなってから愛を乞うても遅かったのだが。
「その言葉のせいでヨシュアにどれだけ愛を囁いても本気にされず、つらい時間を過ごしたのですよ。自業自得ですが」
口に出してしまった言葉というのは取り消すことができないのだ。
そのせいで龍王はずっと苦しんだ。
ヨシュアに秘密を打ち明けてもらえるまで時間がかかってしまった。
ヨシュアの小指にはまっている印章のついた指輪は、志龍王国王家の証で、正式な書簡にはそれを押すことになっている。その指輪をヨシュアが付けたときには全く愛情はなかったし、愛情を持てるとは思っていなかった。
今は左手の薬指に簡素な飾りのない金の指輪を付けている。ヨシュアとお揃いのそれは、思いが通じ合ってからヨシュアが結婚記念日に贈ってくれたものだった。
「ヨシュアが優しくてわたしを受け入れてくれたからこそ、今のわたしたちがあるのです」
「そうじゃないよ。星宇が心からおれを求めてくれたから、おれも星宇に秘密を明かそうと思った」
ヨシュアの眼差しに目の奥が熱くなって、龍王はぎゅっと奥歯を噛み締めた。こんなところで泣くわけにはいかない。
レベッカは話を聞いてうっとりとしていた。
「叔父上と龍王陛下の恋物語は劇で見たけど、劇と真実は違うのですね。二人がどれだけお互いのことを想い合っているかよく分かります」
感動した様子のレベッカに、俊宇もジェレミーもじっと丸いお目目を瞬かせて話を聞いていた。
「シンおじうえとヨーおじうえ、なかよし」
「ジュンユーでんか、シンおじうえとヨーおじうえってよんでるのか?」
「あい。そうよびなさいって」
お手手を上げて返事をする俊宇にジェレミーとレベッカの目が輝く。
「そうですよね、龍王陛下も義叔父上だし、叔父上も叔父上だし、分かりにくいですよね」
「おれもそうよびたい!」
きらきらとした目で見つめられて龍王はヨシュアをちらりと見る。ヨシュアは龍王に頷く。
「星宇がいいならいいんじゃないか」
「レベッカ殿下もジェレミー殿下も、どうぞ、わたしのことは星と、ヨシュアのことはヨーと呼んでください」
「やった! だいすき! シンおじうえ、ヨーおじうえ!」
「わたくしも大好きですわ、星義叔父上、ヨー叔父上」
喜んで飛びついてくるジェレミーを龍王が受け止めて、レベッカをヨシュアが受け止めた。
「レベッカに言われて今更だが、おれと星宇は二十歳以上年が違うんだな」
「わたしはヨシュアが年上でよかったと思っています」
「そうか? 立派なおじさんだぞ?」
「こんなに美しいひとをおじさんなんて呼べません。それにヨシュアの包容力がなければわたしとヨシュアの関係は成り立っていなかった気がします」
鮮やかな青い目を縁取るけぶるような金色の睫毛の長さには驚いてしまう。鼻筋は通っていて、唇はやや薄めだが薄情には見えなくて、眉はきりりと弧を描いている。神の造形としか言いようのない美しいヨシュアは明るい真っすぐな金髪で、それが絹糸のようにさらさらで、それもまた言いようのないくらい美しい。
外見で惚れたわけではないが、見れば見るほど美しい男だと見惚れてしまう。
「おれはちょっと顔が派手なだけじゃないか。体も厳ついし、美しさとは程遠い気がするが」
「ヨシュアは美しいですよ。自覚がなかったのですか?」
「そんなことを言うのは星宇だけだ」
困ったように眉を下げるヨシュアに俊宇とレベッカとジェレミーが寄ってくる。
「ヨーおじうえはうつくちいです」
「ヨーおじうえはとてもきれいだよ」
「ヨー叔父上ほど美しい方をわたくしは見たことありませんわ」
「いやいや、それは身内の欲目って奴だろう。おれよりもよっぽどレベッカの方が美しいし、ジェレミーの方が可愛いし、俊宇殿下の方がお可愛らしい」
レベッカもヨシュアに雰囲気が似て美人になりつつあるのだが、やはりヨシュアには敵わないと龍王は思っていた。
確かに筋肉質で体も厚みがあり、手足もがっしりとして逞しく、身長も龍王より頭半分以上大きいのだが、そんなことを気にさせない美しさがヨシュアにはあると思わされる。逞しい体付きでさえ、彫刻のような美しさを誇っていた。
「何にせよ、ヨシュアの全てがわたしには愛しいのです」
真っすぐに言えばヨシュアが「家族の前で恥ずかしいことを言う」と照れている。
レベッカもジェレミーも俊宇もヨシュアが美しいことに関しては同意してくれていた。
「龍王陛下はヨシュアが本当に気に入ってくださっているようで」
笑いながらラバン王国国王が言うのに、龍王は真剣な眼差しで頷いた。
そのとき、緑葉殿の入り口が騒がしくなり、誰かが入ってくる気配がした。
警備の兵士が龍王に告げる。
「侵入者です。高位の官吏がラバン王国国王陛下に一言申し上げたいことがあると押し入って参りました」
「何と言っているのだ?」
「それが直接申し上げたいと言っているのです」
高位の官吏であろうとも国同士の交流を持っているときに入らせるような警備ではない。捕らえたようだが、その官吏がラバン王国国王に何を言いたいのかは聞き出せていないようだ。
「揉め事ですか?」
「こちらの官吏が国王陛下にお会いしたいと言っていると」
「何事なのでしょう」
ラバン王国国王も王妃も顔を見合わせている。
どうするか迷ったが、官吏が何を言うのかだけは聞いておきたい気がして、龍王が立ち上がると、ヨシュアも付いてくる。
捕らえられた官吏は緑葉殿の入り口で警護の兵士に縛られていた。縛られた状態で龍王とヨシュアを見ると必死に訴えてくる。
「龍王陛下、ラバン王国国王陛下とお話をさせてください。その後でわたしの処遇はどうなっても構いません」
「会わせることはならん。何を言うつもりだったのだ?」
「ラバン王国国王陛下に会わせてくださいませ」
「何を言うつもりだったのか正直に話せ」
龍王が詰め寄ると、高位の官吏は深く息を吐いた。
「ラバン王国には男性も子どもを産めるようになる薬があると聞きました」
それは龍王も聞いたことがあったが、禁忌だとされているとも知っている。
「それは禁忌だ」
何よりも、ヨシュアにその薬を使ってもらっても、龍王は子種がないので子どもを作ることができない。
そう考えていると、高位の官吏は雪の上に額をこすり付けるようにして願う。
「龍王陛下がその薬をお使いになり、王配陛下のお子を産んでいただけないかと」
龍王がその薬を使って、ヨシュアの子どもを産む。
その意味が一瞬分からなくて固まる龍王に、ヨシュアがすかさずその官吏を叱責した。
「その薬が禁忌と言われる所以を教えよう。その薬は母体となる男性に大きな負担を強いる。龍王陛下にそのようなことをさせられると思っているのか!」
「ですが、龍王陛下に直系のお子が生まれれば……」
「龍王陛下は梓晴殿下のお子を次の龍王にすると決めていらっしゃる。お前が口を出すことではない!」
ぴしゃりと官吏の願いを退けて、ヨシュアが警備の兵士に官吏を連れて行くように促す。
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