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一章 セラフィナ誕生
11.アルマンドール公爵家のアンリエット
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アルベルト様と両親が話していると、お母様とお父様が近付いてきた。お母様もお父様もアルベルト様が抱いているわたくしに視線を向けている。
「アルベルト、セラフィナを抱っこしていてくれたのだね。ありがとう」
「ラファエル殿下に頼まれました」
「ベルンハルト公爵夫妻もご一緒だったのですね」
「兄上、義姉上、この度はラファエル殿下のお誕生日おめでとうございます」
「アルベルトもラファエル殿下の学友として仲良くしていただいているようでありがたく思っています」
そうだった。
アルベルト様の両親、ベルンハルト公爵夫妻はお父様の弟夫婦になるのだ。
わたくしにとっては叔父様になる。
ラファエルお兄様は血の繋がりがあるからアルベルト様に安心してわたくしを預けたのかもしれない。
「おいで、セラフィナ」
「泣きそうな顔をしていますね。お腹が空きましたか? 喉が乾きましたか? それともオムツでしょうか」
「乳母に見てもらおう」
乳母に手渡されてわたくしは別室に連れて行かれてしまう。もっとアルベルト様のそばにいたくてもわたくしがじたばたしたくらいでは乳母は揺るがなかった。
乳母にオムツを確認されて、汚れていないことを確かめた後にわたくしはお茶会の会場に戻された。
お茶会の会場ではラファエルお兄様がわたくしを待っていた。
「セラフィナ、待たせてしまったね。アルベルトにも世話をかけてしまった。父上と母上に場を離れるのならばアルベルトではなくて乳母か自分たちに預けるように言われてしまったよ」
まだ十一歳のアルベルト様に預けたのはお父様もお母様も心配だったようだ。
わたくしは大人しくラファエルお兄様のお膝に抱っこされたが、わたくしの方をちらちらと見てくる視線には気付いていた。わたくしがいるせいでラファエルお兄様に近寄れない令嬢たちがわたくしによくない視線を向けてきているのだ。
わたくしはラファエルお兄様の邪魔をするつもりはなかったので、ラファエルお兄様の腕をぺちぺちと叩いて自己主張する。
「にぃに、おりう」
「ダメだよ、セラフィナ。セラフィナは小さいんだから迷子になってしまう」
「にぃに!」
わたくしがラファエルお兄様といい合っているとアンリエット嬢が声をかけてきた。
「愛らしいセラフィナ殿下を抱っこする栄誉をわたくしにお与えくださいますか?」
「アンリエット嬢もかわいいセラフィナを抱っこしたいのですか?」
「はい。リヴィアよりも小さくて、リヴィアがこれくらいのころを思い出します」
兄バカは姉バカに弱いのかもしれない。
アンリエット嬢に手渡されて、わたくしは抱っこされる。アンリエット嬢はしっかりとわたくしのお尻と背中を支えて、落ちないように両足で胴を挟むようにさせてくる。これは抱っこに慣れた姉に間違いない。
実のところ、アンリエット嬢を疑っていないわけではなかった。リヴィア嬢を口実にラファエルお兄様に近付いて、ラファエルお兄様と縁を持とうとしているのではないか。
アンリエット嬢はわたくしを抱っこすると、すぐにはわたくしの顔を見なかった。顔を見ないようにして少し離れた場所にある花瓶に近付いて花を見せている。
人見知りをする幼子にとっては、抱っこされてすぐに顔を見られるのは恐ろしいものだ。そういうことも分かっているのだろう。
「きれいなお花が咲いていますよ。リヴィアもお花が大好きなのですよ。セラフィナ殿下はお花は好きですか?」
「おはな、すち」
「お喋りが上手ですねセラフィナ殿下は他に好きなものがありますか?」
「にぃに、すち! パパすち! ママすち!」
「まぁ! なんてことでしょう。わたくしの言っていることが分かるのですね。どうしましょう、セラフィナ殿下はものすごく賢いのではないでしょうか!」
驚き感激しているアンリエット嬢は、どう見ても小さな子ども好きのよいお姉さんだった。
「リヴィアも賢いのですよ。リヴィアとセラフィナ殿下が一緒にいるところを見たいですわ。絶対にかわいいに決まっています」
興奮してテンションが上がっているアンリエット嬢に、近くに来ていたラファエルお兄様も金色の目を丸くしている。
「セラフィナがこんなに話せたなんて知りませんでした」
「わたくし、いつもたくさんリヴィアに話しかけてしまいますの。かわいい声がたくさん聞きたくて。ラファエル殿下もたくさん話しかけてみてはいかがですか?」
「これからそうしてみます。セラフィナ、もう一度、わたしのこと、好きって言ってみて」
「にぃに、すち!」
「わたしもセラフィナが大好きだよ」
小さい子に話しかけるのに慣れた様子のアンリエット嬢に、ラファエルお兄様は学んでいる様子だった。
お茶会の時間、他の令嬢はラファエルお兄様に近寄れなかったが、アンリエット嬢はラファエルお兄様とよく話をしていた。ラファエルお兄様はアンリエット嬢を気に入った様子だった。
「アンリエット嬢、リヴィア嬢を招いてセラフィナとのお茶会を実現しましょう」
「小さなカップでリヴィアとセラフィナ殿下がお茶をするのを見守るのですね。なんて素晴らしいのでしょう。とても楽しみです」
ラファエルお兄様はアンリエット嬢とリヴィア嬢とのお茶会の約束まで取り付けてしまった。
「ラファエル殿下、アンリエット嬢のことを気に入られたようですね」
「リヴィア嬢はどんな女の子なのだろうか。アンリエット嬢に似ていたら、セラフィナよりも生まれが半年ほど早いようだし、たくさんお喋りをして、セラフィナと打ち解けてくれるんじゃないだろうか」
「そうだといいですね。ルカがお二人のお茶会に混じれるのは何歳になることやら」
ユリウス様はルカ様が宮殿で暴れてしまったことを思い出して頭が痛い様子だった。
わたくしは幼児用の椅子に座ってラファエルお兄様にお茶菓子を取り分けてもらって、小さなカップでほとんど牛乳の薄いミルクティーを飲む。カップを両手で持てば、わたくしもかなり上手に飲めるようになっていた。
わたくしのカップはわたくしの体の大きさに合わせて、小さく作られたものを使っている。それでも両手で持つのは難しいのだから、普通のカップはまだまだ持てないだろう。
ほぼ牛乳のミルクティーを飲んで、お茶菓子を手づかみで食べていると、お父様とお母様も席についていた。
「セラフィナ、口の周りがミルクだらけになっているよ」
「拭きましょうね」
お父様とお母様がわたくしの口の周りと手を拭いてくれる。皇帝と皇后という地位なのに、公の場でもしっかりとわたくしの面倒を見てくれるお父様とお母様に、わたくしは本当に愛されているのだと実感する。
「パパ、すち! ママ、すち!」
「セラフィナ! わたしのことを好きと言ってくれたのか?」
「わたくしのことを好きと言いましたわ。なんて嬉しい」
アンリエット嬢に聞かれて答えたが、わたくしはまだお父様とお母様に「好き」ということを伝えていなかったと思い出して口にすれば、二人とも感激している。
「もうこんなに話せるようになったのですね」
「父上、母上、アルマンドール公爵家のアンリエット嬢がセラフィナの口からその単語を引き出してくれたのです」
「アルマンドール公爵家か。わたしの従弟の家だな」
「アンリエット嬢には二歳になるリヴィア嬢という妹がいて、とても賢くていい子だというのです。今度こそ、セラフィナに同年代の友達を作ってやれるのではないでしょうか」
「アルマンドール公爵家の娘か。今度一家を呼んでお茶会を開こうか」
「お願いします、父上」
「おねちまつ、パパ」
わたくしもラファエルお兄様と一緒に頭を下げてリヴィア嬢に会いたい気持ちを伝える。
優しくて聡明なアンリエット嬢の妹なのだから、リヴィア嬢も期待ができると思うのだ。
何より、リヴィア嬢は女の子である。
ルカ様は男の子だったのでちょっとやんちゃが過ぎるところがあった。
「久しぶりにアルマンドール公爵夫妻ともゆっくりお茶をしたい」
「ヘリオドール様、お茶会の手配を致しますね」
「頼んだよ、セレナ」
お父様とお母様も今回のお茶会には乗り気のようだった。
私的なお茶会がどうなるかは分からない。
それでもわたくしはお茶会を楽しみにしていた。
「アルベルト、セラフィナを抱っこしていてくれたのだね。ありがとう」
「ラファエル殿下に頼まれました」
「ベルンハルト公爵夫妻もご一緒だったのですね」
「兄上、義姉上、この度はラファエル殿下のお誕生日おめでとうございます」
「アルベルトもラファエル殿下の学友として仲良くしていただいているようでありがたく思っています」
そうだった。
アルベルト様の両親、ベルンハルト公爵夫妻はお父様の弟夫婦になるのだ。
わたくしにとっては叔父様になる。
ラファエルお兄様は血の繋がりがあるからアルベルト様に安心してわたくしを預けたのかもしれない。
「おいで、セラフィナ」
「泣きそうな顔をしていますね。お腹が空きましたか? 喉が乾きましたか? それともオムツでしょうか」
「乳母に見てもらおう」
乳母に手渡されてわたくしは別室に連れて行かれてしまう。もっとアルベルト様のそばにいたくてもわたくしがじたばたしたくらいでは乳母は揺るがなかった。
乳母にオムツを確認されて、汚れていないことを確かめた後にわたくしはお茶会の会場に戻された。
お茶会の会場ではラファエルお兄様がわたくしを待っていた。
「セラフィナ、待たせてしまったね。アルベルトにも世話をかけてしまった。父上と母上に場を離れるのならばアルベルトではなくて乳母か自分たちに預けるように言われてしまったよ」
まだ十一歳のアルベルト様に預けたのはお父様もお母様も心配だったようだ。
わたくしは大人しくラファエルお兄様のお膝に抱っこされたが、わたくしの方をちらちらと見てくる視線には気付いていた。わたくしがいるせいでラファエルお兄様に近寄れない令嬢たちがわたくしによくない視線を向けてきているのだ。
わたくしはラファエルお兄様の邪魔をするつもりはなかったので、ラファエルお兄様の腕をぺちぺちと叩いて自己主張する。
「にぃに、おりう」
「ダメだよ、セラフィナ。セラフィナは小さいんだから迷子になってしまう」
「にぃに!」
わたくしがラファエルお兄様といい合っているとアンリエット嬢が声をかけてきた。
「愛らしいセラフィナ殿下を抱っこする栄誉をわたくしにお与えくださいますか?」
「アンリエット嬢もかわいいセラフィナを抱っこしたいのですか?」
「はい。リヴィアよりも小さくて、リヴィアがこれくらいのころを思い出します」
兄バカは姉バカに弱いのかもしれない。
アンリエット嬢に手渡されて、わたくしは抱っこされる。アンリエット嬢はしっかりとわたくしのお尻と背中を支えて、落ちないように両足で胴を挟むようにさせてくる。これは抱っこに慣れた姉に間違いない。
実のところ、アンリエット嬢を疑っていないわけではなかった。リヴィア嬢を口実にラファエルお兄様に近付いて、ラファエルお兄様と縁を持とうとしているのではないか。
アンリエット嬢はわたくしを抱っこすると、すぐにはわたくしの顔を見なかった。顔を見ないようにして少し離れた場所にある花瓶に近付いて花を見せている。
人見知りをする幼子にとっては、抱っこされてすぐに顔を見られるのは恐ろしいものだ。そういうことも分かっているのだろう。
「きれいなお花が咲いていますよ。リヴィアもお花が大好きなのですよ。セラフィナ殿下はお花は好きですか?」
「おはな、すち」
「お喋りが上手ですねセラフィナ殿下は他に好きなものがありますか?」
「にぃに、すち! パパすち! ママすち!」
「まぁ! なんてことでしょう。わたくしの言っていることが分かるのですね。どうしましょう、セラフィナ殿下はものすごく賢いのではないでしょうか!」
驚き感激しているアンリエット嬢は、どう見ても小さな子ども好きのよいお姉さんだった。
「リヴィアも賢いのですよ。リヴィアとセラフィナ殿下が一緒にいるところを見たいですわ。絶対にかわいいに決まっています」
興奮してテンションが上がっているアンリエット嬢に、近くに来ていたラファエルお兄様も金色の目を丸くしている。
「セラフィナがこんなに話せたなんて知りませんでした」
「わたくし、いつもたくさんリヴィアに話しかけてしまいますの。かわいい声がたくさん聞きたくて。ラファエル殿下もたくさん話しかけてみてはいかがですか?」
「これからそうしてみます。セラフィナ、もう一度、わたしのこと、好きって言ってみて」
「にぃに、すち!」
「わたしもセラフィナが大好きだよ」
小さい子に話しかけるのに慣れた様子のアンリエット嬢に、ラファエルお兄様は学んでいる様子だった。
お茶会の時間、他の令嬢はラファエルお兄様に近寄れなかったが、アンリエット嬢はラファエルお兄様とよく話をしていた。ラファエルお兄様はアンリエット嬢を気に入った様子だった。
「アンリエット嬢、リヴィア嬢を招いてセラフィナとのお茶会を実現しましょう」
「小さなカップでリヴィアとセラフィナ殿下がお茶をするのを見守るのですね。なんて素晴らしいのでしょう。とても楽しみです」
ラファエルお兄様はアンリエット嬢とリヴィア嬢とのお茶会の約束まで取り付けてしまった。
「ラファエル殿下、アンリエット嬢のことを気に入られたようですね」
「リヴィア嬢はどんな女の子なのだろうか。アンリエット嬢に似ていたら、セラフィナよりも生まれが半年ほど早いようだし、たくさんお喋りをして、セラフィナと打ち解けてくれるんじゃないだろうか」
「そうだといいですね。ルカがお二人のお茶会に混じれるのは何歳になることやら」
ユリウス様はルカ様が宮殿で暴れてしまったことを思い出して頭が痛い様子だった。
わたくしは幼児用の椅子に座ってラファエルお兄様にお茶菓子を取り分けてもらって、小さなカップでほとんど牛乳の薄いミルクティーを飲む。カップを両手で持てば、わたくしもかなり上手に飲めるようになっていた。
わたくしのカップはわたくしの体の大きさに合わせて、小さく作られたものを使っている。それでも両手で持つのは難しいのだから、普通のカップはまだまだ持てないだろう。
ほぼ牛乳のミルクティーを飲んで、お茶菓子を手づかみで食べていると、お父様とお母様も席についていた。
「セラフィナ、口の周りがミルクだらけになっているよ」
「拭きましょうね」
お父様とお母様がわたくしの口の周りと手を拭いてくれる。皇帝と皇后という地位なのに、公の場でもしっかりとわたくしの面倒を見てくれるお父様とお母様に、わたくしは本当に愛されているのだと実感する。
「パパ、すち! ママ、すち!」
「セラフィナ! わたしのことを好きと言ってくれたのか?」
「わたくしのことを好きと言いましたわ。なんて嬉しい」
アンリエット嬢に聞かれて答えたが、わたくしはまだお父様とお母様に「好き」ということを伝えていなかったと思い出して口にすれば、二人とも感激している。
「もうこんなに話せるようになったのですね」
「父上、母上、アルマンドール公爵家のアンリエット嬢がセラフィナの口からその単語を引き出してくれたのです」
「アルマンドール公爵家か。わたしの従弟の家だな」
「アンリエット嬢には二歳になるリヴィア嬢という妹がいて、とても賢くていい子だというのです。今度こそ、セラフィナに同年代の友達を作ってやれるのではないでしょうか」
「アルマンドール公爵家の娘か。今度一家を呼んでお茶会を開こうか」
「お願いします、父上」
「おねちまつ、パパ」
わたくしもラファエルお兄様と一緒に頭を下げてリヴィア嬢に会いたい気持ちを伝える。
優しくて聡明なアンリエット嬢の妹なのだから、リヴィア嬢も期待ができると思うのだ。
何より、リヴィア嬢は女の子である。
ルカ様は男の子だったのでちょっとやんちゃが過ぎるところがあった。
「久しぶりにアルマンドール公爵夫妻ともゆっくりお茶をしたい」
「ヘリオドール様、お茶会の手配を致しますね」
「頼んだよ、セレナ」
お父様とお母様も今回のお茶会には乗り気のようだった。
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それでもわたくしはお茶会を楽しみにしていた。
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