転生皇女セラフィナ

秋月真鳥

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二章 ミカエル誕生

12.エリカを紹介する

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 学園が冬休みに入って、アルマンドール公爵家からアンリエットお義姉様とリヴィア嬢とニコ様、ベルンハルト公爵家からアルベルト様、ルクレール公爵家からユリウス様とルカ様がやってきた。
 お茶会が開かれるかと思ったのだが、今回は全員で子ども部屋を訪ねて来てくれた。

「お久しぶりです、お元気でしたか、セラフィナ殿下」
「アンリエット嬢はわたしの婚約者なのだから、殿下はいらないんじゃないかな」
「そうですね、セラフィナ」

 ラファエルお兄様ったらいいことを言う!
 わたくしはアンリエットお義姉様に「セラフィナ」と呼んでもらえてとても嬉しい気持ちになった。

「いらったいまて、アンリエットおねえたま、リヴィアじょう、ニコたま、アルベルトおにいたま、ユリウスたま、ルカたま。このこ、わたくちのわんわん、エリカたんでつ」

 わたくしがエリカを紹介すると、リヴィア嬢がアンリエットお義姉様の後ろに隠れて、ルカ様が興味津々でエリカに近寄ってくる。
 エリカは静かに寝そべっていたが、ルカ様に上に乗られそうになって、すっと立ち上がってわたくしの後ろに隠れた。

「わんわん! おにいたま、わんわん!」
「おねえたま、おっきーの。こわーい!」

 テンションが上がっているルカ様と対照的にリヴィア嬢は大きなエリカが怖いようだ。

「こわくないでつ。やたちいでつ」
「やたちい?」
「あい。エリカたん、ふせ!」

 わたくしが命じると、エリカは耳を倒してじっと床の上に伏せている。恐る恐るリヴィア嬢が近付いて来ていると、それより先にルカ様がエリカの耳を引っ張った。

「あ! ルカ! ダメだよ!」
「いたいいたいよ! めっ!」

 ユリウス様が素早くルカ様をエリカから引き剥がして、わたくしがルカ様に注意したのは同時だった。

 耳を引っ張られても耐えているエリカを見て、リヴィア嬢も恐怖が薄れたようだ。そっと手を伸ばしてエリカの頭を撫でている。

「もふもふ、かわいい」
「エリカたん、かわいいでつ」
「ルカがすみません。ルカも謝って」
「やーの! おにいたま、きらい!」

 首を振って嫌がっているルカ様は、まだ三歳の反抗期真っただ中なのだろう。エリカに興味はあるが、ユリウス様がしっかりとガードして近寄れないようにしてしまった。


「わたくしも撫でていいですか?」
「わたしも撫でたいです」

 アンリエットお義姉様とニコ様が近寄ってくるのに、わたくしはラファエルお兄様の方を見て、ラファエルお兄様が「大丈夫だよ」と言ってくださったのを確認して頷いた。

「どうじょ」

 アンリエットお義姉様とルカ様がエリカのお腹の白い部分を撫でる。ふさふさとした毛が生えているお腹は特に触り心地がいい。
 わたくしはそのお腹を背もたれにして寛ぐのがお気に入りだった。

「ルカたま、ユリウスたまといっちょなら、いーよ」
「ルカ、犬は生きているんだからね。丁寧に扱わないといけないよ」
「やー!」

 反抗するルカ様の体に腕を回して、いつでも引き剥がせる状態でユリウス様がルカ様をエリカに接近させる。ルカ様は嫌だと言っている割には、優しくエリカの尻尾を撫でていた。

「リヴィアじょう、ルカたま、どうじょ」

 床に寝そべるエリカのお腹にわたくしが寄りかかって、リヴィア嬢とルカ様を促すと、リヴィア嬢はおずおずと、ルカ様は飛び跳ねながらエリカのお腹に寄りかかりに来る。三歳児三人が寄りかかってもエリカは平気な顔をしていた。

「まぁ、かわいい……この光景を永久保存したいですわ」
「わたしもそう思います」
「ルカが大人しくしている……セラフィナ殿下のおかげかな」

 感動しているアンリエットお義姉様とラファエルお兄様の横で、ユリウス様は信じられないものを見ているような顔をしていた。
 アルベルト様が本棚から絵本を一冊抜き取って、わたくしたちの前の床に座って、読んでくれる。アルベルト様は最近声が低くなった気がする。皇女セラフィナとしてわたくしが成長しているように、アルベルト様も成長しているのだろう。
 絵本を聞いていると、ルカ様もリヴィア嬢もじっと絵本を見ていた。暖炉の火がアルベルト様とルカ様とリヴィア嬢をオレンジ色に照らしている。

 絵本を聞き終わると、ルカ様が立ち上がってベビーベッドの方に走って行った。興味が変わったのだろう。わたくしもミカの様子を見にベビーベッドの方に行くと、リヴィア嬢もついてくる。

 オレリアさんがミカを抱き上げて、離乳食の準備をしていた。
 ミカが食べさせられている様子を、リヴィア嬢もルカ様も興味深そうに見ている。ルカ様の口の端から垂れたよだれは、素早くユリウス様がハンカチで拭いていた。

「ミカエルでんか、おいちい?」
「ミカたん、いっぱいたべまつ」
「ミカエルでんか、おっきくなった?」
「ミカたん、おおきくなりまちた」

 リヴィア嬢と話しながらミカの方を見ているわたくしたちの背中に、ラファエルお兄様とアンリエット嬢とユリウス様とアルベルト様の視線が刺さる。微笑ましく見守られているのが分かる。

「おなかすいた」

 ルカ様が呟いて、わたくしたちもお茶の時間になった。
 ティールームに移動して、椅子に座ってお茶とお菓子をいただく。
 今日のお茶菓子は、苺のロールケーキだった。
 手づかみで食べようとするルカ様に、ユリウス様がフォークを渡すが、ルカ様はフォークを投げ捨てている。

「ルカ、もう三歳になのに、手掴みはおかしいよ」
「いやー!」

 ルカ様は絶賛反抗期だ。

 リヴィア嬢はアンリエットお義姉様に切ってもらったロールケーキをフォークで刺して口に運んでいる。わたくしもラファエルお兄様にロールケーキを切ってもらって、フォークで刺して口に運んだ。

「ルカ、リヴィア嬢とセラフィナ殿下はできているよ?」
「おにいたま、あっちいってー!」

 反抗するルカ様にユリウス様は困らされているようだ。
 その様子を見て、アルベルト様がフォークを手に取る。

「ルカ様は自分で食べられないのですか? わたしがお手伝いしましょうか?」
「やー! ルカ、でちるー!」
「そうですか? 遠慮しなくていいのですよ」
「できるもー!」

 アルベルト様の手からフォークをもぎ取って、フォークでぎこちなく食べ始めたルカ様に、ユリウス様がアルベルト様を見つめて目を丸くしている。

「アルベルト様、すごいです」
「ルカ様は嫌だと言いたいだけの時期ですから、声掛けを工夫してみたらいいのではと思っただけです」
「弟妹がいないのに、詳しいですね」
「セラフィナがわたしの妹のようなものです」

 わたくしはルカ様のように反抗したりしないけれど、アルベルト様はわたくしを見て学ぶところがあったのだろう。
 アルベルト様の対応にラファエルお兄様もアンリエットお義姉様も感心しているようだった。

「うちのリヴィアはいい子だから」
「わたくち、いいこ」
「いい子だよ。大好きだよ、リヴィア」

 ニコ様がリヴィア嬢に微笑みかけている。
 それを見てアンリエットお義姉様は「うちの弟妹尊い」と呟いていた。

 お茶の時間が終わると、少しだけ庭に出て雪の中を遊んだ。
 雪の中を駆け回るエリカの姿を眺めたり、雪だるまを作ったりして遊ぶのは楽しかった。
 ルカ様も遊ぶときは、イヤイヤ言わなくて、ユリウス様と楽しそうにしていた。

「たのちかったでつ。ありがとうございまちた」

 帰るアンリエットお義姉様とニコ様とリヴィア嬢、ユリウス様とルカ様、アルベルト様を見送っていると、アルベルト様がそっとラファエルお兄様に囁きかけた。

「ラファエル、今度泊りに来ていいですか?」
「父上と母上に聞いておくよ。わたしもアルベルトのところに泊まりに行きたいな」
「セラフィナもご一緒にどうぞ」
「セラフィナは泊まれるかな?」

 小声で話し合うラファエルお兄様とアルベルト様に、わたくしはまだまだ楽しいことがありそうな予感にわくわくしていた。
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