63 / 221
運命は勇者に従う⑤
しおりを挟む
子供とはいえ勇者を甘く見過ぎていたのか、まさかの事態に焦る。
スキルの中でもカテゴリー6に属するアブソーブをレジストするとなると同等の特別な強さを持つスキルの発動になるからだ。
身の危険を感じたので、DEBUG MASTERを発動し“ヒットボックス変更”を使用。これで私の当たり判定を0にしてマイナス効果もダメージも0になるお手軽な無敵化だ。
この無敵化は便利に見えて弱点もあり、ヒットボックスを0にした状態中は私の攻撃も一切当たらなくなるので戦闘で使うとなるといちいち切り替えが面倒になる。
ちなみに体がキラキラ光ったり特殊なBGMがついたりしない。
「おかあさん。お願い、目を開けて!!!」
直ぐには何もおこらなかった。
諦めたのか、失敗してしまったのかまた泣き始めてしまうノルク。
ただ私への警告は消えていないのでスキルの発動には成功していたようだ。
急にノルクの泣き叫ぶ声が止まり、空気の流れすら止まった。タイムも動いていない。
となると私とタイム以外の誰かが時を止めている。
「はぁーまったくまったく。こーゆーことは通る運命なんだから我慢してくれよー」
現れたのはこの異世界に来るときにお世話になった死神のレトによく似た感じの子だ。淡い黄色のパーカーを着ている。
死神と見て間違いないだろう。
私の収納空間という特殊な場所なのにも関わらず、次元を超越し死神を引きずり出す力。
発動に成功した勇者の固有スキル起死回生。
運命操作系統の特殊スキルで使用する場面といえば専《もっぱ》ら戦闘で窮地に立たされたとき、そこから大逆転をするためのスキルなのだけど。
死神の手のひらにはふわふわと光り輝く魂。
それをそっと母親の体に戻していく。
「ねぇ、きみ。ぼくのこと見えてるよね? 声もきこえてるよね?」
その死神の言葉は勇者にではなくこちらに向けての言葉だった。
「はい。見えてますし、聞こえてます」
「あのさー。このちびっこに言っておいてくれない? 次同じことやったら君の魂持ってくよって。死人を生き返らすために使わないでねって」
「で、でも、どうやって?」
「脅しでも、洗脳でもこの際なんでもいいよ」
「え?」
「今、こうやってキミとボクが話できるのって異常なことなんだよ。時が止まってるのに普通に動いてるしさ。それができるのに、この子の躾けができないとか、ボクのことおちょくってるの?」
なんかスミマセン。
ナナスキルのおかげと言えばいいのか。元々神から貰ったスキルだから神の影響も受けないと言うことなのか。
「なんとかします」
「よろしくね。ほんと頼むよ。こっちだって暇だけど暇を邪魔されたくないいんだからさ」
(……サボりなのでは?)
「聞えてるからね。あ、あと、キミの事は見なかったことにするから。これ以上事態をややこしくしたくないからさ」
「……わかりました」
「じゃあっねぇーー」
すぅっと消えて時間の流れが戻る。
母親の状態が死から正常に変化している。これぞ奇跡というものなのか。
死という運命さえも捻じ曲げ望み通りに事を進める。
(勇者が特別強いわけだわ)
ゆっくり目を開けた母親は泣き続ける勇者の頭をそっと撫でる。
母親の胸に顔をうずめて泣いていた勇者もその優しい手に気づいた。
「ふぁ、お母……さん」
「ノルク……良かった……無事、だったのね」
「お母さん! 生きてる! お母さん!」
「ノルク!」
母親がギュッと子供を抱きしめ、共に生きている喜びを分ちあう。
もうこっちまで嬉しくなって泣きそうになっていた。
奇跡の再会。幸せな時間。
ホント、これで、めでたしめでたしにしたい。
だが、そうも言ってられないので、まず死神との約束から進めていく。
とりあえず2人を再び時間停止。
ノルクのステータスを鑑定眼で確認しつつナナスキルを発動さえマインドプロンプトを使用。
スキル起死回生のクールタイムを1年から10年に変更した。
これで次発動するのは早くても10年後だ。
完全に封印したり、削除したりしては勇者として本領を発揮できないかもしれないのでまた使える方向で考えた結果だ。
停止を解除してまずは自己紹介。その後、母親とノルクにどうして倒れていたのかを聞いてみた。
経緯としては生き残りの親子とほとんど一緒だった。
だがノルクの母親は魔人の姿を見ていた。全身が黒い魔人が3体もいたそうだ。
それに恐怖し、森へ逃げる途中で攻撃を受けてしまい気絶してしまったとのこと。
(絶命してそのまま死神にエスコートされてたんだけどね)
気がついた時はここにいたということだ。
「ケーナさんには助けていただきありがとうございます」
「いえいえいホント気にしないで。ただ問題が……村がめちゃくちゃになって、お二人を暫くここで匿えないかと思ってるんですけど」
空間収納内であることは伏せ。転移魔法で私の住処に移動してきたと誤魔化してある。
「それはこちらとしては願ってもない事ですが、お邪魔でなければよろしくお願いします」
「ここにいる間は、あの家自由に使ってもらって。元々宿屋なので部屋はいくつかあるのでご心配なく。分からないことがあればタイムって子か、私のそっくりさんに聞けば教えてくれるので大丈夫なはずです」
ノルクの取り扱いは事が終わった後にハイドを王に任せようと思う。
勇者を私が面倒見つづけるのはちょっと荷が重い。
ただ、今回の魔人の襲撃が勇者を狙ったものだとしたら、勇者が生き残ったのがバレた場合また襲い掛かってくるかもしれない。
(預け先が惨劇なことにならなきゃいいけど、考え過ぎかな……)
それでも念のため勇者であることは伝えようと思う。
空間収納から戻りふかふかのソファに座ると、さすがに疲れていたのかもしれないストンと深い眠りに落ちてしまった。
スキルの中でもカテゴリー6に属するアブソーブをレジストするとなると同等の特別な強さを持つスキルの発動になるからだ。
身の危険を感じたので、DEBUG MASTERを発動し“ヒットボックス変更”を使用。これで私の当たり判定を0にしてマイナス効果もダメージも0になるお手軽な無敵化だ。
この無敵化は便利に見えて弱点もあり、ヒットボックスを0にした状態中は私の攻撃も一切当たらなくなるので戦闘で使うとなるといちいち切り替えが面倒になる。
ちなみに体がキラキラ光ったり特殊なBGMがついたりしない。
「おかあさん。お願い、目を開けて!!!」
直ぐには何もおこらなかった。
諦めたのか、失敗してしまったのかまた泣き始めてしまうノルク。
ただ私への警告は消えていないのでスキルの発動には成功していたようだ。
急にノルクの泣き叫ぶ声が止まり、空気の流れすら止まった。タイムも動いていない。
となると私とタイム以外の誰かが時を止めている。
「はぁーまったくまったく。こーゆーことは通る運命なんだから我慢してくれよー」
現れたのはこの異世界に来るときにお世話になった死神のレトによく似た感じの子だ。淡い黄色のパーカーを着ている。
死神と見て間違いないだろう。
私の収納空間という特殊な場所なのにも関わらず、次元を超越し死神を引きずり出す力。
発動に成功した勇者の固有スキル起死回生。
運命操作系統の特殊スキルで使用する場面といえば専《もっぱ》ら戦闘で窮地に立たされたとき、そこから大逆転をするためのスキルなのだけど。
死神の手のひらにはふわふわと光り輝く魂。
それをそっと母親の体に戻していく。
「ねぇ、きみ。ぼくのこと見えてるよね? 声もきこえてるよね?」
その死神の言葉は勇者にではなくこちらに向けての言葉だった。
「はい。見えてますし、聞こえてます」
「あのさー。このちびっこに言っておいてくれない? 次同じことやったら君の魂持ってくよって。死人を生き返らすために使わないでねって」
「で、でも、どうやって?」
「脅しでも、洗脳でもこの際なんでもいいよ」
「え?」
「今、こうやってキミとボクが話できるのって異常なことなんだよ。時が止まってるのに普通に動いてるしさ。それができるのに、この子の躾けができないとか、ボクのことおちょくってるの?」
なんかスミマセン。
ナナスキルのおかげと言えばいいのか。元々神から貰ったスキルだから神の影響も受けないと言うことなのか。
「なんとかします」
「よろしくね。ほんと頼むよ。こっちだって暇だけど暇を邪魔されたくないいんだからさ」
(……サボりなのでは?)
「聞えてるからね。あ、あと、キミの事は見なかったことにするから。これ以上事態をややこしくしたくないからさ」
「……わかりました」
「じゃあっねぇーー」
すぅっと消えて時間の流れが戻る。
母親の状態が死から正常に変化している。これぞ奇跡というものなのか。
死という運命さえも捻じ曲げ望み通りに事を進める。
(勇者が特別強いわけだわ)
ゆっくり目を開けた母親は泣き続ける勇者の頭をそっと撫でる。
母親の胸に顔をうずめて泣いていた勇者もその優しい手に気づいた。
「ふぁ、お母……さん」
「ノルク……良かった……無事、だったのね」
「お母さん! 生きてる! お母さん!」
「ノルク!」
母親がギュッと子供を抱きしめ、共に生きている喜びを分ちあう。
もうこっちまで嬉しくなって泣きそうになっていた。
奇跡の再会。幸せな時間。
ホント、これで、めでたしめでたしにしたい。
だが、そうも言ってられないので、まず死神との約束から進めていく。
とりあえず2人を再び時間停止。
ノルクのステータスを鑑定眼で確認しつつナナスキルを発動さえマインドプロンプトを使用。
スキル起死回生のクールタイムを1年から10年に変更した。
これで次発動するのは早くても10年後だ。
完全に封印したり、削除したりしては勇者として本領を発揮できないかもしれないのでまた使える方向で考えた結果だ。
停止を解除してまずは自己紹介。その後、母親とノルクにどうして倒れていたのかを聞いてみた。
経緯としては生き残りの親子とほとんど一緒だった。
だがノルクの母親は魔人の姿を見ていた。全身が黒い魔人が3体もいたそうだ。
それに恐怖し、森へ逃げる途中で攻撃を受けてしまい気絶してしまったとのこと。
(絶命してそのまま死神にエスコートされてたんだけどね)
気がついた時はここにいたということだ。
「ケーナさんには助けていただきありがとうございます」
「いえいえいホント気にしないで。ただ問題が……村がめちゃくちゃになって、お二人を暫くここで匿えないかと思ってるんですけど」
空間収納内であることは伏せ。転移魔法で私の住処に移動してきたと誤魔化してある。
「それはこちらとしては願ってもない事ですが、お邪魔でなければよろしくお願いします」
「ここにいる間は、あの家自由に使ってもらって。元々宿屋なので部屋はいくつかあるのでご心配なく。分からないことがあればタイムって子か、私のそっくりさんに聞けば教えてくれるので大丈夫なはずです」
ノルクの取り扱いは事が終わった後にハイドを王に任せようと思う。
勇者を私が面倒見つづけるのはちょっと荷が重い。
ただ、今回の魔人の襲撃が勇者を狙ったものだとしたら、勇者が生き残ったのがバレた場合また襲い掛かってくるかもしれない。
(預け先が惨劇なことにならなきゃいいけど、考え過ぎかな……)
それでも念のため勇者であることは伝えようと思う。
空間収納から戻りふかふかのソファに座ると、さすがに疲れていたのかもしれないストンと深い眠りに落ちてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
戦国鍛冶屋のスローライフ!?
山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。
神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。
生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。
直道、6歳。
近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。
その後、小田原へ。
北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、
たくさんのものを作った。
仕事? したくない。
でも、趣味と食欲のためなら、
人生、悪くない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる